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すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

破たんの挙句の2015年4月子育て新制度実施、安倍の安保・戦争国会、最末期新自由主義もろとも粉砕を

2014年12月31日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

四月杉並区議選に児童館全廃阻止で全力で勝利し、安倍の4月子育て支援制度実施を打ち破って大反乱の口火を切ろう

  ★ 「子育て支援」のウソとだまし打ちの無責任看板はげ落ち、むきだしの民営化・非正規化で、子どもたちを残酷悲惨な犠牲に、女性を超低賃金酷使の非正規労働力に、労働者家族は高齢から若年まで貧困地獄へ!だって!!! ⇒冗談じゃない!
  ★ もはや黙っていない!「命よりカネ」「富める大企業と大金持ちにカネを回し、大減税。食うこと、生きることも厳しい労働者人民に無慈悲な増税と強搾取」のこの国の1%勢力をたおせ!私たちは職場でも地域でも、ましてや戦場で死ぬ、殺される、使い捨てられるわけにはいかない!
  ★ 新自由主義的資本主義の時代は終わった!次の社会・世界を担う若者と子どもの未来のことなどどうなってもかまわないという政府・政治家、目先の、そして永遠の「カネがすべて」の資本家にもう社会をいいようにさせない!社会は99%の私たちのものだ。私たちに権力をよこせ!連中に奪われたすべてを取り戻し、労働者中心、人間主体の社会につくりかえよう!


安倍はじめこの国の政府財界は、子どものために動かすカネはないという考え
  (1) この4年と6カ月の間、民主党政権(菅政権・野田政権)、自民党(自公)政権(安倍政権)は子育て支援、子育てと就労の両立を看板に掲げ続けてきた。鳴り物入りで「子ども子育て新システム」を民主党政権が打ち出し、「税・社会保障一体改革」自公民合意で2015年新制度実施を国会に通し、安倍自民党政権下で「子育て支援・待機児童解消加速」を看板に、2015年を待たず前倒し、「保育所待機解消に保育受け皿40万人増」「学童保育待機解消に学童保育定員枠30万人増、放課後子ども教室2万箇所への倍増」の数値目標を掲げてきた。それでどうなったか?何か「進捗」はあったのか?

  (2) いかなる「進捗」もない。宣言した政府「数値目標」に対する現在的「達成」数値の報告もない。二桁の万単位の目標を繰り返し言っていれば、ごまかせるとでも思っているのか!安倍は、「税・社会保障改革一体改革」法に基づく10%消費税の実施の1年半の延期によって、「税・社会保障改革一体改革」自公民合意・法制化に明記した「子育て支援」への10%増税分からの7000億円の投入も1年半先延ばしにした。

  (3) 仮に消費税率10%となっても、「子育て支援」で国が想定している必要額に4000億円不足を生じるということは、民主党政権時代から今の自民党政権にいたるまで一貫して政府国会答弁で明らかにされていることだ。安倍・自公もこのことは百も承知している。そもそも10%消費税で捻出できる「子育て支援」国費は7000億円で必要な規模に逆立ちしても4000億円たらないということが国会で最初に明らかになったのは民主党・安住財務大臣の公明党・松あきら質問への答弁だ。以来、10%税率への消費増税で「子育て支援」に充てられるのは7000億円という枠が継承され不変のものとされている。この国は「子育て支援」にはそれ以上のカネを追加的に注がないということだけが確認され、そのうえで、デタラメな「数値目標」だけが並べられ、実際には「子育て支援・待機児童解消」にはいかなる政策努力も政府責任もとらなかったということだ。4年6カ月!である。

  (4) 安倍首相は、2014年12月衆院選後の第三次安倍政権発足に際して「10%への消費税率引き上げは延期したが、子育て支援は我が国の将来にとって喫緊の重大問題であり、全力で政権として取り組む」とまたぞろアナウンスしている。しかも「子育て支援で新たな国債は発行せず、医療費の削減、介護報酬の引き下げ、生活保護費の効率化で賄う」としている。それも7000億円が基準額で、足らずの4000億円とされている不足は頬かむりしている。同様の議論はこの数年間何回も繰り返されてきた。これは、何もやらないか、社会保障費の全体としての底下げ(削減)ということだ。

  (5) これは政府財界の根本的な考え方と勝手で一方的な都合によるものだ。ふざけるな。1200兆円になんなんとする世界最大の借金国(ギリシャどころではないGPD比243%の債務比率)といえどもカネはあるところには屋上屋を超す340兆円もの大企業の内部留保として隠され、労働者人民の食っていけない貧困地獄をよそにどんどん膨れ上がっている。オリンピックに関連予算も含めれば兆のケタのカネをつぎ込むこの国は、国自身が算定する1兆1000億円の「子育て支援」費に、「いまは増税実施までとても7000億円も準備できない。やるとしたら他の社会保障費を削減しそれを回すしかない。足らずの4000億円については10%実施後の消費税再増税によるしかない」と言っているのだ。


  (6) 保育所待機にしても学童保育待機にしても、財界と政府の10割非正規化の雇用政策、超低賃金不安定非正規雇用への労働力動員政策、女性労働力の超廉価な動員政策のもとで、不可避につくりだされているものだ。貧困地獄のもとで働くしかない、しかし、子どもを預けるところがない、この非正規共働き労働者世帯の苦しみと叫びを何だと思っているのか。労働者の労働でまわっているのがこの社会だ。労働者人民の血税によって養われているのがこの国であり、政府だ。こんな国とそれを牛耳る財界・企業・政府・政治家はうちたおし、私たちがとってかわって、労働者人民、子どもたちが人間らしく生きられ、人間として育っていける社会につくりかえるしかない。

 (7) 「子ども・子育て支援」「待機児童解消」の看板は完全にはげ落ち、大ウソとだまし打ちは完全にあからさまになった。ここでは細々としたああだこうだは枚挙にいとまがないが、結論的に確認しておこう。

  ① もともとの「子ども・子育て支援」関連法の目玉であった幼保連携認定こども園はどうなっているか?

  2015年度実施までに2年間で2000達成の目標値は6割前後。しかも、いったん認定こども園への移行を決めた園が1割超辞退している。こんな制度には経営上も運営上もいかなる希望も持てない、やっていけないというのが、これまで幼稚園や保育園を経営・運営してきた施設当事者の端的な意見・所感だということだ。移行した園には手厚い補助を継続するという幼保連携認定こども園と政府新制度への移行への利益誘導、移行しない園には補助金交付打ち切りという脅しで進められてきたが、実施を前に、また実施後も辞退、拒否は相次ぎ激増する。根本に、園経営者・運営者の危惧とともに、何よりも園で働く職員、園に子どもを預ける親たちの怒りと危機感がある。実施・強行しても、ボロボロに形がい化し、頓挫する。新制度とはそういう代物だということだ。

  ② 新制度に向かう以前に、保育の規制緩和と民営化の動いの中で顕著になっていたが、新制度実施を前に保育事故はけた違いに激増している。


  厚生労働省の発表は、アンケート調査への回答があったものだけであり、総数・全体像はもっと件数は多いと考えられるが、2013年に認可保育所等の保育施設で起きた重大事故は年間162件にも上り、2010年の3倍以上となっている。そのうち死亡事故は19件であり、年々増加している。放課後小学生を預かる学童保育でも、毎年200件を超える事故の発生が続いている。幼児が昼寝中に心肺停止になった、おやつの白玉団子を喉に詰まらせた、川での水遊び中に流された、・・・・こういった事故が増えている。保育所や幼稚園、学童クラブでの事故の頻発は、職員のせいや職員への教育不足のせいではない。定員を超える園児数や職員数の規制緩和、パート・アルバイトのシフト・ローテーション制で低賃金非正規で職員を確保すること、就労している職員もダブルジョブ・トリプルジョブで疲労困憊の中で「かたときも目を離せない子どもたち」に目が届かない現実が、過酷劣悪な労働条件のもとで起きているからである。あいつぐ命の事故、重大事故、園の安全崩壊は、規制緩和、民営化、非正規化からひき起こされている。


写真:日比谷野外音楽堂埋め尽くした「子ども子育て支援新システムNOの大集会
   政府の方針は、公立認可保育所の拡充・増設ではない。政府の方針は、公立保育所の廃止・民営化であり、株式会社立の大型認可保育園の促進、大型の幼保連携認定こども園の拡大、保育ルーム・保育ママを中心とした認可外小規模保育(施設保育ならざる密室保育)の促進による待機児童解消の受け皿づくりであり、保育者の資格要件の全面的規制緩和(ごく短期間の研修受講)である。放課後学童保育については、児童館を廃止し、学童クラブと放課後子ども事業を一括して、小学校の放課後子ども教室に統合し、民間委託のもとで子どもを放課後空き教室にとじこめるというものだ。幼稚園も保育園もこども園も、学童保育も、新制度のもとで、子どもたちにとって、より危険な場所となる。

   安倍は、2013年4月の成長戦略スピーチのトップで、「子育て支援・待機児童解消加速」を掲げ、要は「やるかやらないかだ」「ありとあらゆる政策手段を動員して女性の就労支援と待機児童解消を果たす」として「空きビルの活用はじめ何でもやる」と言い、2014年の「小1の壁の突破、30代~40代の女性の就労支援が成長戦略の成功のカギ」の力説で「学童保育30万人増、放課後子ども教室倍増」方針を打ち出した際も「空き教室の利用」と言っている。安倍の眼中には子どもたちの姿はない。あるのは「子どもを放り込む入れもの(場所)さえあればいい、入れものつくらせるから、四の五
の言わずに女性は働きに出ろ」ということだけである。しかも、株式会社の民営保育にせよ、無認可民間保育にせよ、非正規世帯の収入では保育料に手が届かない。これほど無責任な「子育て支援」があるか。子どもは人間だ。わが子を危険がある場所に預けようとか、子どもを教室に閉じ込めておけば安心だ」などという親がどこにいるか。子どもはモノじゃない。もっとも保育、学童保育を必要としている、そして働かなくては生きていけない非正規共働き世帯が、その保育を切り捨てられ、あるいは犠牲になれと、奪われている。

 ③ それでは、この「子育て支援」で「子育てと就労の両立」は進んでいるか?

 まったく目に見える「進捗」はない。起きている現実は、この新制度が準備する「名ばかり保育」では安心してわが子をそこに預けることはできないからであり、また準備された「名ばかり保育」もみな有料高額で、非正規世帯やひとり親世帯には経済的理由から手が届かないからだ。確かにM字型カーブといわれる、これまで就労率が低かった女性の30代・40代の就労人口は微増した。しかしきわめて不安定な非正規不規則就労が増えたに過ぎない。
この中で鋭く突き出されている重大問題とは、
  第一に、爪に灯をともすような乏しい生計の中で貧しくとも入れられる公立認可保育所への入所を絶望的に希望して待機耐乏生活でしのいでいる世帯が増えていることであり、
  第二に、同じ生活困窮状況下で、どんな劣悪でもとにもかくにも食うためには一時預かりであれ密室保育であれ、子どもをそこに預けて就労せざるを得ない世帯も増えていることであり、そうした世帯では、親子が同じ食卓につくことはなく、親子が一緒にいるのは預けるまでと家に帰るまでと寝る時間だけという対話も遊びもない深刻な状態が起きている。
  第三に、今や2千万人を超え、ますます増えるばかりの、そして財界・企業も国も労働力を全部非正規にするまで増やす方針である非正規労働者は保育がもっとも切実に必要としている膨大な層であるにもかかわらず、口先は別として保育をきりすてられているということであり、
  第四に、この現状の中で、若い世代は結婚も子どもをつくることもあきらめざるを得ない非人間的な現実が社会的にひろがっていることだ。

  人間社会は、自分と他人とその生活を生産・再生産することによって、人類として社会たりえている。それが自分自身が食うこともままならず、子どもを作ることも育てることも絶望的な閉塞状態に「命よりカネが全て」の新自由主義的資本主義によって直面させられている。利潤を産む(カネ儲け)がすべての資本とその人格的表現である資本家階級にとっては、わが世の際限なき富の独占がすべてでそれを維持し護持するためには99%の人々の生き死にや貧困地獄などどうでもいいことで、挙句の果ての戦争に突き進んでも次世代や人類の未来のことなどどうでもいいのだろうが、私たちはそうはならない。私たちには贅沢や強欲は縁がないが、生きる必要があり権利があるのだ。人間史、人類史がここで資本家たちのせいで幕を閉じることなど起こしてはならないし、絶対にそうはならないし、そうはさせない。新自由主義的資本主義こそ、こうして貧困地獄と戦争と未来の担い手である子どもたちを犠牲にする子殺しによって、私たちに重大な歴史選択、それも人類の歴史が続けられるかどうかという意味で、新しい人類史の扉を開けろと促迫している。人間社会は、社会をまわし動かしている労働者階級を中心にして、もはやつくりかえるしかない。


「もっと低賃金の労働力が必要だ、女性労働力を非正規で極限的に動員することによってしか利潤はあがらない」―これが「子育て支援・待機児童解消」の正体。子ども・保育をダシに使って、企業のカネ儲けのために強搾取と福祉撲滅・民営化、さらに子ども支配の国家主義教育めざす!
  
 (1) 民主党が政権担当時に打ち出した「子ども子育て新システム」要綱は、「成長戦略と連携し」「新たな雇用とマーケットの創出」という二つのサブタイトルで出されたものだ。御手洗経団連が準備した産業構造審議会答申がベースだ。
 以来、菅、野田(以上民主党政権)、安倍第一次~第三次政権が目玉政策としてきた「子育て支援」は、安倍第一次政権時の安倍首相「成長戦略スピーチ」はじめ「学童30万人増・放課後子ども教室2万確保・倍増」宣言まですべて「成長戦略」とリンクして打ち出されてきた。

 (2) 政府財界にとって、「子どもの安心・安全」「子育て支援」「待機児童解消」など口先・名ばかりであって、基軸、核心は、大恐慌・大不況下で没落から再生するための企業の利潤向上のためには、労働条件の切り下げ、労働力のほとんど10割を非正規雇用にすることが戦略とされ、そのカギは廉価労働力としての女性を超低賃金非正規雇用に動員することであり(「子ども子育て支援新システム」がいう「雇用の創出」とはこのことだ!)、労働者派遣法の派遣26業種を規制撤廃し、男女を問わず生涯非正規で使いまわし使い捨て自由にすることであり、労働組合を解体・一掃することであった。

 (3) 公務員労働者・自治体労働者の団結、保育労働者・児童館労働者の団結によって守られてきた保育・学童保育(社会保障・福祉の最後の砦)を解体・廃止し、労働組合もろとも児童福祉を廃止し、株式会社を全面的に参入させカネ儲けビジネスとして展開させる(「子ども子育て支援新システム」がいう「マーケット(市場)の創出」とはこのことだ!)、つまり、保育のまるごと民営化であった。

 (4) しかも、新制度の実施開始を前ににわかに前面化した児童館廃止・学童保育解体、小学校での放課後子ども教室への統合で明らかになったことは、これまで児童福祉法による福祉実施として行われてきた学童保育をなくし、学校基本法による小学校・放課後子ども教室へ統合することで、児童福祉そのものを撲滅・解体・廃止することだった。(杉並区の田中区政が施設再編整備計画による区立施設の廃止、売却・転用、民営化の最大の実体となっている42児童館の全廃と小学校への学童機能の移転はその先端である。)ここでハッキリ確認すべきことは、「子育て支援関連法」の核心の一つである幼保連携認定こども園は、幼保一体型、幼稚園型、保育所型の3形態としているが、これは、0~2歳児保育の保育所型への特化以外は、児童福祉法ではなく学校教育法に基づくものとして再編させるものだということだ。核心は、小学校就学前の3~5歳児については、学童保育を小学校子ども教室への統合によって廃止し、福祉ではなく教育に変えるのと同様に、3~5歳児を児童福祉の対象ではなく、学校教育の中にくみこむということなのである。

 (5) ここに0~2歳児保育の株式会社への開放・民営化、3~5歳保育の幼保一体型・公私連携型幼保連携認定こども園と学童保育の小学校への統合と民間委託・民営化という新制度法実施の行き着く先、この国の政財界が狙う正体が確定する。待機児童をどう解消するのか、財源があるのか等々、ああだ、こうだの議論の大紛糾がありながら、安倍政権が一向に何の手も打たないのは、この隠された正体があるからだ。幼保一体型・公私連携型幼保連携認定こども園は、民設民営化であり、国費補助は必要なく、放課後子ども教室も小学校の活用で民間委託だから国費補助は必要ないからである。経営や運営は民間企業が行い、施設にはまさに子どもを放り込むだけでよいからである。保育園や幼稚園の創始者と言われるフレーベルやロバート・オウエンは子どもの自然との触れあい、自由遊びの重要性、その中での子どもの成長を重視した。

写真:児童館行事

子どもたちは、入れものに放り込む、学校にとじこめ、そのいれものさえあればいい、という「子育て新制度」はその対極・反対物であり、子どもたちから自由を奪い、遊びを奪い、学校教育の監視・おしつけのもとに子どもたちを閉じ込めるものだ。子どもたちの健やかでのびのびとした成長は圧殺の対象であり、そこは子どもたちが自分たちの居場所と実感できる居場所ではない。そこは子どもたちの自由を抑圧し、監視する、暗欝たる行きたくない場所となる。安倍ら政財界は、むしろ、そうした教育環境こそ、やれ自由だ、やれ遊びだという子どもたちを強制に殉じさせる秩序であり、幼い時からこの国を守る気概を植え付けるのに格好の環境だと国家主義的にこのプランの制度実施に血道をあげている。

 (6) 麻生太郎の「子を産まない女が悪い」という大暴言は、この国家主義的な「子ども支配」「子ども教育」と表裏一体の本音である。子どもをつくらない、子どもをつくれないという世帯、これでは結婚もできない、結婚しても夫婦非正規共働きで生計費やっとの現実では子どもをつくれないと結婚をあきらめている青年が圧倒的に増えているのは、新自由主義の国策で政財界がつくりだしている現実だ。その張本人の政界の大ボスが恫喝まがいの言辞で「産めよ増やせよ」と言っているのだ。「お国のために、子どもをつくれ」というのと、「お国のために、子どもを産んで、子どもは国の新制度に委ね、就労して、お国のために働け」というのはイコールだ。

 (7) すべてのウソ看板がはぎ落された中で、始まっているのはむきだしの激突だ。公的保育廃止・民営化、児童館全廃・学童保育廃止・民営化との闘いは、非正規労働者世帯の死活を賭けた闘いであり、子どもたちの自由と命と未来の懸った闘いであり、保育労働者、自治体労働者のおのれの職場と仕事、自分の首が懸った闘い、使命と誇りを賭けた闘いであり、地域・住民にとっても保育園・児童館という地域コミュニティ拠点の存亡を賭けた闘いである。2015年新制度実施に断固たる抗議と絶対反対、安倍政権たおせの闘いに立とう。



安倍の4月子育て支援新制度実施に対し、杉並から児童館全廃ぜったい阻止、安倍たおせ、田中区政たおせの大闘争で大反乱の口火を切ろう!

写真:荻窪駅南口のあんさんぶる荻窪

 ここでは詳述しないが、正規250名・非正規250名の職員が職員の団結と住民との連帯で守り抜いてきた児童館42館の全廃が、田中区政の「区立施設再編整備計画」(例外なき廃止、売却・転用、多機能化・複合化、民営化)の最大の攻撃として開始されている。しかも、それは麻生財務大臣と田中区長のあんさんぶる荻窪と荻窪税務署の資産交換の「最終合意」による強行計画のもとで、あんさんぶる荻窪内にある杉並区内最大の児童館、荻窪北児童館の廃止、2年後に改築工事を急きょ決定した桃井第二小学校の工事中にその同じ現場の仮設校舎内への学童クラブの移転を最大の突破口にしようとしている。

写真:あんさんぶる荻窪の二階にある荻窪北児童館
  2013年の荻窪北児童館総利用者数は年間5万7675名、学童クラブ利用児童数は年間1万4785名だ。区議会は麻生・田中談合による「最終合意」の発表があった全員協議会でこれに異議や抗議を申し立てる議員がひとりもいないオール与党で荻窪北児童館廃止にもあんさんぶる廃止にも全面的に協力している。杉並区職労児童館学童保育分会は児童館全廃に対する反対を決議して闘っており、区立施設再編整備計画の攻防の帰趨と荻窪駅南北再開発がらみの田中区政の住民無視・子どもの居場所(児童館)廃止のあんさんぶる荻窪廃止・荻窪北児童館廃止に区民の鋭い反撃が区議会の翼賛に屈せず、開始されている。2016年3月第1回区議会定例会に区はあんさんぶる荻窪と荻窪税務署の交換に係る条例案を提出するとしている。


  2015年は、あんさんぶる荻窪の存続か廃止か、荻窪北児童館廃止・桃井第二小学校への学童機能移転か、その阻止かを賭けた攻防となることは必至である。その来春4月には統一地方選(杉並区議選)が実施される。4月杉並区議選をあんさんぶる荻窪・荻窪税務署交換ぜったい反対、児童館全廃阻止、施設再編整備計画ぜったい反対の闘い、安倍たおせ、杉並の安倍=田中区政たおせの闘いで大爆発させ、児童館全廃反対の議員を圧倒的支持で翼賛議会打ち破る絶対反対派として送りこみ、空前の大運動をまきおこそう。2015年、大反乱・大運動へ!

(※杉並区の児童館全廃・施設再編整備計画との闘い、あんさんぶる荻窪廃止との闘いについては、当通信のカテゴリーで各記事をごらんください。)
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アベが「2019年度までに放課後教室倍増、学童保育30万人増」

2014年05月24日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

アベノミクス版「子ども・子育て支援・待機児童加速化」戦略批判 シリーズ⑬

 シリーズ前回⑫(2014年5月6日記事)での予告を違えることになりますが、予定を変更します。

 安倍政権が、子ども・子育て支援新制度の2015年度実施を待たず、保育所待機児童解消を加速させると称して昨年4月に打ち出した「2015年度までに、20万人分増、2017年度までに40万人分増」の前倒しプランの進捗の総括もなく、その惨憺たる現状に頬かむりして、今度は就学後の小学生児童の領域で「2019年度までに放課後子ども教室の①万箇所⇒2万箇所への倍増、学童保育の30万人分増」と打ち出したからです。これはコテンパンに批判し、ここでカタをつけておくべきだろう。

 昨年4月に出された「保育所待機児童解消加速化」プランは、アベの
「成長戦略スピーチ」で「成長戦略の第一弾」として打ち出された。今度の「放課後子ども教室倍増、学童保育30万人分増」プランも、6月に改定するとしている「成長戦略」の柱に据えると言っている点、同じホラを吹くなら、ホラは大きければ大きいほどいいとばかりに)ベラボウにどでかい数値目標を掲げている点が、際立って特徴的だ。

 昨年4月のアベ「成長戦略スピーチ」でもそうだったが、またぞろ、「子育てしやすい環境づくり、女性の社会進出を後押しする」のが狙いだと言っている。ふざけんな!ということだ。

      【1】 

女性の年代別就労率のM字型カーブは、ぜんぶ、政府財界の低賃金非正規職化と「子どもの将来・未来よりカネ儲け」の国策のせいだ!

 アベは、しばしば思い出したように、「女性が持っている力を発揮することが成長戦略の爆発のカギだ」、「子どもの出産のために休職・離職した母親の大半が職場に復職・再就職できていない現状を改善し、女性が育児と仕事を両立できる環境を整えるために、子育て支援に全力を傾けたい」、「成長戦略はM字型カーブの現状の改善にかかっている」等々と言っているが、なぜ、M字型カーブになっているか、一度でも真面目に考えたことがあるのか?全部、アベ、政府財界のせいだ。

 政府財界は、一体どこに国や自治体の責任で、女性が出産後も不安なく就労できる保育所をつくったか。国が保育責任を投げすてたために、保育料金が高すぎて子どもを預けられないか、安心して預けられるような保育施設がないからだ。根本に、今や2000万人を超えて拡大する、おしなべての低賃金非正規化、不安定雇用化の雇用情勢がある。非正規世帯の子どもは公立保育所にしか、経済的理由から入所できない。だが国は公立保育所を新設・増設する方針
をとらない。反対に、保育は福祉ではなく、民間企業にやらせてカネもうけさせるという方針で突っ走っている。(公立にしか入れられない)労働者世帯には手が届かない民間保育園や施設しか促進しない。国が保育責任を放棄したことから、たとえ就労したくても、また就労しなければ生活を維持できない経済状態にあっても、就労できないという苦難、悲惨な子育て世帯の状況がつくりだされているのだ。(公立保育所に)入所を希望してかなえられずに苦しんでいる待機児童世帯は実際には100万世帯になんなんとする膨大な数に至っている。実際の未入所児童世帯をごまかして、横浜市や福岡市に「待機児童ゼロ宣言」を出させても、待機児童数は増えるばかりだ。言いかえれば、それだけ就労できない女性が増加し顕在化しているということだ。アベ!政財界!お前らの強欲の犠牲にされて苦しめられているんだ。

 「2015年度までに20万人分増」「2017年度までに40万人増」のアベの昨年4月の「待機児童解消加速化」宣言、「子ども・子育て支援新制度の2015年度実施を待たず前倒し」宣言は、どこかで進捗があったか?あれから1年が経過した。そんなものはありはしない。
 

 「M字型カーブの改善」の問題でごまかしようがない問題をハッキリさせておこう。アベは、「子育て支援・待機児童解消加速化」戦略で、「待機児童解消の受け皿」問題とともに、「保育士不足の解消」を重要課題として掲げていた。「保育士不足」の原因は、保育士有資格者でありながら保育職に就労していない保育士が膨大にいること、若い保育従事者が出産で離れたまま保育職に戻っていないこと、その最大の原因は一般標準給与より10万円以上低い給与水準にみられる保育職の処遇にあり、その改善をやりぬくと言っていた。いったい、どこの施設で10万円クラスの保育職給与アップがあったか?政府の方針のもと、1万円、2万円規模の官製アップをしたところはあるようだが、雀の涙のような話だ。また、保育従事者が就労先の保育園に自分の子どもを入所させて、働けるようにするというようなことも言っていた。それで復職したというような話はあればニュースにでもなりそうな話だが、まったくニュースにもなっていない。M字型カーブ、母親が就労できない現実がここでは、凝縮して突き出されている。 

 母親にとって、親にとって、子どもの保育、子育ての問題とはどういう問題かについて、アベは何一つわかっていない、わかろうともしない。アベは、成長戦略(カネ儲け)のために低賃金労働力として女性労働力を動員するという女性の就労政策としてしか、子育て支援を考えていない。そのためには子どもを放り込む「受け皿」「入れ物」さえ揃えれば何とかなるはずだ、その程度にしか考えていない。アベが掲げた「◇◇年度までに◇◇万人分増」という数値目標は、実体は「◇◇年度までに◇◇万人の女性の新たな就労」という女性労働力の動員目標でしかないのだ。女性にとって、母親にとって、親にとって、労働者にとって、わが子の安全で健やかな育ちと成長にとって重要な保育の問題、わが子の命と育ち、将来、子どもの将来・未来の問題だ。「子どもの育ちと将来よりカネ儲け、そのための就労」で子ども・子育てを二の次の問題にされ、わが子を荷物のようなモノとして扱われてたまるか。子どもはかけがえのない人間だ。

      【2】

就学前の保育の責任を投げ出したアベの「子育て支援」に続いて出された就学後(小学生児童)の学童保育の解体が今回の「小学校の空き教室を利用した放課後子ども教室と学童保育の一体的推進」方針

 今回アベが発表した「放課後子ども教室2万か所への倍増、学童保育30万人分増」プランの本質も、まったく同じだ。 「小1の壁」が「女性就労率M字型カーブ」の大きな要因だと言ってのける。「こどもが小学校に入ると保育所に代わる預け先がなくなり、親が仕事を辞めざるを得なくなる、この『小1の壁』が女性の就労を難しくしている」というのだ。

 ここからアベ、政府財界は、「放課後子ども教室と学童保育を増やせ」、「小学校の空き教室を活用すれば、現在の放課後子ども教室と学童保育を一体的に推進できるではないか」とわめきだしたということだ。これを昨年4月に打ち出した「待機児童解消加速化」に続く「子育て支援第二弾」、6月改定の成長戦略の目玉にするというのだ。これは第一弾の「待機児童解消加速化」「2015年度までに20万人分増、2017年度までに40万人分増」が着々と成功裡に進捗しているなら、「第二弾」と有頂天で豪語もできるだろうが、「第一弾」が全然そうではない以上、材料尽きて、ネタ切れ感が否めない中で、打ち出された「材料」(ネタ)に過ぎない。ほとんど空叫びだ。

 これは、「子どもの保育、安全や成長は二の次、成長戦略(企業のカネ儲け)のための女性の動員」「子どもの成長や将来より、それを犠牲にしろというカネ儲けの国策」というもので、根本的な批判は、この記事の前半で指摘している通りなので、繰り返さない。但し、本当の狙いは、もう一つ、別の次元にあるということではないか。アベの大ウソとだまし討ちのとんでもないありようをここでも見る思いだ。私たちは、お人よしではいられない。アベは、ウソの世界でもだまし討ちの世界でも本気でとんでもないことを平気で口にし、実行してくる輩だということをはっきり確認しておきたい。アベは、「子育て支援」「待機児童解消加速化」で公立保育所を全廃し株式会社のカネ儲けを実行しようとしているように、「放課後支援」「女性の就労支援」「子どもの安全確保」で児童館を全廃し、子どもを地域に出さず、小学校の教室に放課後子どもたちを全員ほうりこみ、とじこめ、子どもから自由を奪おうとしている。

      【3】

アベの 「放課後子ども教室と学童保育の一体的推進」は児童館廃止・学童保育解体に狙い。絶対反対の声あげよう!

 ここでは、次の点を指摘、暴露し、抗議、絶対反対の声をあげることを呼びかけたい。「放課後子ども教室と学童保育の一体的推進」を「空き教室の利用」で進めると言っている狙いはどこにあるのかということです。

 ここには、幼稚園と保育所の一体化・連携による就学前の子ども・子育て支援新制度と同じ基本構造が、現在、文科省管轄で行われている放課後子ども教室(学校教育)と厚労省管轄で行われている学童保育(児童福祉)の一体化がグランドデザインのバックにあって、新たな制度設計が政策化・実体化されようとしているということです。
 就学前の子ども・子育て支援新制度では公立保育所の廃止(全廃)による保育(福祉)の解体(なくし、廃止してしまう、奪う)と民営化(株式会社化)が最大の狙いになっています。今回の「放課後子ども教室と学童保育の小学校空き教室での一体的推進」では、児童館の廃止、児童館で行われている学童保育の解体を狙っているということです。政府財界は、「教育は国家百年の計」という国家戦略として、小学校の就学児童を学校の授業だけでなく、放課後の生活・居場所についても小学校(教室)という教育機関のもとに統括・管理しようとしているということではないか。
 学童保育の小学校への統合、放課後子ども教室との一体的推進では、児童館の廃止、児童館における学童保育の廃止に最大の照準がすえられているということです。

 従って、「放課後子ども教室倍増」「学童保育30万人増」とは放課後の子どもの居場所づくりや、学童保育の増強ではなく、学童保育廃止・児童館全廃が、その正体だということです。就学後の小学生は、地域に置くな!小学校の教室に子どもを放り込み、とじこめ、管理しろ、というのが、狙いです。地域の中での社会的な人間的成長と交流ではなく、地域から遮蔽して教室にとじこめ監視する、そのものズバリ、そういうことです。それを「子どもの安全確保」を大義名分にしてやろうとしています。子どもを教室・学校にとじこめ、管理、しつけすることが、「親の安心・安全」だというのです。

 
子どもたちは伸び伸びと遊ばせなければならない!子どもたちは自由な環境と人間的な触れ合い・交流の中で育てられねばならない。子どもたちは、学校の授業で学んだり校庭で遊んだりするだけでなく、地域社会の中で見守られながら、友だちをつくり友だちと遊び、生活し、そうやって育ち、学び、生きていくうえで必要なことを身につけるのである小学生の時期は人間形成にとってきわめて重要だ。今回の学童保育の小学校教室での放課後子ども教室への一体化・統合、これは教師が生徒(子どもたち)に教える授業(教科課程)の関係(秩序)を放課後まで延長・拡大して子どもたちの生活を束縛・拘束し、社会で育ち成長する子どもを国家が管理する対象にし、子どもの自由も権利も奪うものにほかなりません。教室という名の「子どもの収容所」教室という名の「自由なき監獄」にとじこめるものです。戦前の学校そのものではないですか。

 【機会を改めて、また批判しますが、就学前の子どもの場合の保育所廃止、小学生児童の児童館廃止、学童保育の解体=放課後子ども教室への統合は、子どもの問題を、社会政策(福祉)の廃止を通して、国家政策(教育)として根本的に転換するということの始まりです。その視点から、学校教育機関としての幼保連携認定子ども園、特に3~5歳児問題について、捉えなおす必要があります。】

      【4】

東京・杉並区ー田中良現区長はアベ「放課後子ども教室への学童保育の一体的統合、児童館廃止・学童保育解体」の先兵だ!田中区政による児童館全廃、学童クラブ・小学生放課後居場所事業の小学校への全部統合(区立施設再編整備計画)に絶対反対!

 ここでは前回記事を参照いただくことにして、あらためて触れませんが、今回のアベ発表を通して、田中区政の児童館全廃、学童クラブ・小学生放課後居場所事業の小学校への全部移行が持っている位置と狙いも非常に鮮明になったのではないでしょうか。この6月に「成長戦略『改定』」がアベから出され、その目玉として、この「放課後子ども教室倍増、学童保育30万人増による放課後支援・女性就労支援」「放課後子ども教室への学童保育の一体的統合」が出てくる。その折も折、6月29日の東京杉並区の区長選に「区立施設再編整備計画-児童館時廃止、学童クラブと放課後子ども居場所事業のすべての小学校への統合」を掲げる田中良現区長が立候補し、同じ日に区議会議員補欠選挙が実施される。子どもの未来がかかっています。子どもたち、親たち、地域住民とともに、地域に根ざしたコミュニティ事業として児童館をつくりだしてきた正規259名・非正規250名の労働者の誇りに立った仕事・職場と生活と今後がかかっています。児童館廃止に絶対反対!アベたおせ!田中区政たおせ!杉並区での闘いは特別に重大な闘いになっています。職場で。駅頭で、地域で、絶対反対の闘いをまきおこそう。

 

 
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保育所の原点とロバートオウエン(前回の続き・③)

2014年05月09日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

《前回記事からの続き ③》

  小括にかえて―世界初の保育所をつくったロバート・オウエンの闘い

                          Ouen179a

                          ロバート・オウエン
<o:p></o:p>

  記事の始めの方で「原点に立って」と書きました。幼児教育・保育が歴史上登場するのは、キンダーガーデンの名で知られる幼稚園の生みの親といわれているドイツのフリ―ドリッヒ・フレーベル(1782年~1852年)が最初といわれるが、その数年前にイギリスのロバート・オウエン(1771年~1858年)が「キンダ―ガーデン(“幼稚園“”子どもたちの庭“)」と比べると「性格形成新学院」といういささか哲学的な名称だが、ニュー・ラナ―クの紡績工場の敷地内に世界で初めての保育所を開設している。<o:p></o:p>

 ( ここでは、フレーベルの「幼稚園」、オウエンの「保育所」という記述をしているが、そこで創始者が構想し精力的にとりくんだ実践の中身は、幼児の保育・教育としては、日本における学校教育の幼児教育よりも、自然との交流、子どもの遊び、食事、子ども間の人間関係を最大限自然で自由に保障することを目的としており、日本の場合には昨今「教育一辺倒」を強いられている幼稚園の幼児教育より、保育所で取り組まれている保育の理念や実際のほうが実体は近い。フレーベルによれば、「教育者も子供の本質に追随的に、その無傷の展開を保護し、助成するように働きかけなければならない」とされ、そこからKindergarten―幼稚園(子どもたちの庭)という名称が生まれた。またフレーベルは「人間の発達の連続性」を尊重し、この立場から「子どもへの共感的理解と、それに基づく教育」を擁護し、早教育に反対した。フレーベルは幼稚園の教育内容は、遊びや作業を中心にすべきものと考え、そのために遊具を考案し、花壇や菜園や果樹園からなる庭を幼稚園に必ず設置すべきであると主張した。日本や世界の国々の幼稚園も保育所も名称はともあれ、このフレーベルの考え方、施設運営・事業内容をモデルにしているが、園庭を不可欠視するフレーベルと運動場を重視・不可欠とするオウエンにみられるように、主だった内容はほとんど共通する。)<o:p></o:p>

 ここでオウエンを世界最初の保育所(又は幼稚園)を作ったとし、保育所(または幼稚園)の原点として記述するのは、ほかでもない、オウエンを保育所へと衝き動かしたその動機、契機が、何にもまして重要だと思えるからです。
 1816年1月1日オウエンは、ニュー・ラナークの工場敷地内に彼の理想とする学校を設立し、「性格形成新学院」(The New Institution for the Formation of Character)と名付けています。あえて「新学院」としたのは、これまでの学校とは全く違う性格をもつという意欲と位置付けからで、この学校で、1 歳から6 歳までの幼児を対象とする施設が「幼児学校」(Infant School)と呼ばれた。これが世界最初の保育所(幼稚園)です。<o:p></o:p>

 オウエンはそこで何を試みたのか。ニュー・ラナークで顕著な仕方で行なわれたのは「労働者の子どもたちを昼間収容し勉学させることにより、労働者の子どもをどの階級の子どもたちの環境よりも優った環境におくこと」でした。<o:p></o:p>

 オウエンはニュー・ラナ―クの大紡績工場の経営者だった。当時のイギリスの状態は、後にエンゲルスの『イギリスの労働者階級の状態』に次のように描かれた通りのもので、<o:p></o:p>

 「イングランドのブルジョアにとっては、カネさえ稼げれば、自分の労働者が餓死しようとしまいと、まったくどうでもよいことなのである」とされ、 

「住めたものではない不潔な家。その家は夜の宿にもほとんど役にたたず、家具の備えは悪く、しばしば雨もりがして、暖房もない。人間でいっぱいになった部屋のかびくさい空気は家庭生活を成立させない。夫は一日じゅう働き、おそらくは妻や年長の子どももそうする。全員が別々の場所にいて、朝と夜しか顔をあわせない。くわえてジンへの誘惑が不断にある。このような状態で、どこに家庭生活が成立するというのか?それにもかかわらず、労働者は家庭からのがれることができない。労働者は家庭の中で生活しなければならない。その結果、家庭の破壊や家庭不和がたえまなくつづき、夫婦にたいしても、またことに子どもにたいしても、きわめて堕落的な影響をおよぼす。あらゆる家庭的義務をおろそかにすること、ことに子どもをおろそかにすることは、イングランドの労働者のあいだではあまりにもひんぱんに見られ、また既存の社会制度によってはなはだしく引き起こされている。そして子どもは両親自身も属していることの多い堕落的な環境の中で、このようにして粗野な育ち方をする」というものでした。<o:p></o:p>

 オウエンの保育所開設、それも自ら経営し監督・管理する工場の敷地内での開設と運営は、慈善による名声を得ることを目的にしたものでも新たな形で救貧院を試みたものでもなかった。紡績工場で働く労働者とその子どもたちの家庭での悲惨な状態を目の当たりにして、人間的慟哭から人道主義で、全精力を自工場の労働者の労働時間や労働条件の改善、その子どもたちの保育・教育に傾注したのでした。<o:p></o:p>

  (※ここでは多岐かつ詳細にわたるので委細、割愛しますが、オウエンが「性格形成新学院」と名付けた保育所(幼稚園)で実施した保育・教育の実践・成果とオウエン自身によるその位置づけや総括は、富山国際大学子ども育成学部紀要1巻2010年3月 水田聖一:子ども育成学序説 ; ロ一バートオウエンに見る教保育福祉思想  をご参照下さい。)<o:p></o:p>

  エンゲルスは『空想より科学へ』で次のようにオウエンを高く評価している。<o:p></o:p>

 「彼は崇高なまでに子どもらしくて素朴な性格の持ち主であり、同時に稀にみる天性の人間指導者だった。彼ロバート・オウエンは人間の性質は一方では持って生まれた体質の産物であり、他方ではその生涯、特に発育期の個人の環境の産物であるという、唯物論に立つ啓蒙主義者の学説を信奉していた。彼と同じ階層の人々にとっては、産業革命とは混乱に乗じて漁夫の利を占め、一挙に成金となるに適した混乱と混沌に過ぎないものであったのに、彼にとっては、それは、彼のモットーとするところのものを社会に提起して、混沌の中に秩序をつくりだすべき機会であった。彼は、マンチェスターで五百人を超える労働者を使用する一工場の支配人として、早くからそれを試みて成功していたが、1800年から1829年にわたって、スコットランドのニュー・ラナ―クの大紡績工場で、業務監督として同じ考えをもって経営をやり、前よりも自由に活動して好成績をあげた。それによって彼はヨーロッパに名声を博した。彼は、後には次第に増加して2500人になったが、はじめは種々雑多な著しく堕落した分子からなっていた居住区域を、完全な模範的居住地域につくりかえた。そこでは泥酔、警察沙汰、裁判沙汰、訴訟沙汰、救貧、慈善の必要はまったくなくなった。そして、そうなったのは、ただ彼が人間を人間らしい状態に置き、特に青少年を注意深く教育したというだけのためであった。彼は幼稚園の発案者であって、はじめてそれをこの地に開設した。児童は二歳になると幼稚園に入れられたが、幼稚園があまりにも楽しいところだったので子どもたちは家に帰ることを嫌がった、ということであった。彼の競争者が毎日13時間~14時間もその職工を働かせているのに、ニュー・ラナ―クでは10時間半しか働かせなかった。綿花恐慌で4ケ月間の休業を余儀なくされた時でも、休業労働者に対して賃金全額が払われた。それでいてこの会社は価値を倍以上に増加し、所有者には最後まで豊かな利益が配当された。」 

続けてエンゲルスは、オウエンが実践を通して社会主義者になったと報告している。

「オウエンは、これ(前掲引用箇所)だけでは満足しなかった。彼が自分の労働者のためにつくってやった生活も彼にはまだ人間らしいものとは見えなかった。『青人たちはまだ私の奴隷じゃないか』、彼が労働者に与えた状態は他と比べて良好であったが、それでも、なお、性格と知力を全面的合理的に発揮するというには十分とは言えなかった。いわんや、各自に自由な生活をゆるすというには及びもつかなかった。『それでもこの2500人の労働者が社会のために生産した現実の富は、半世紀前に60万人がつくりだした富の量と大差がない。そこで私(オウエン)は自問した。それならこの2500人の消費する富とかの60万人が消費したはずの富の差はいったいどうなったのだろうか?』と。答えは明らかだった。それは払込資本に対する5分の利子と30万ポンド(6百万マルク)余の利益を会社の所有者に配当したからであった。もし、ニュー・ラナ―クについてこう言えるならば、イギリスの全工場にはもっとよくあてはまるはずであった。『この新しい、機械がつくりだした富がなかったとしたら、ナポレオンに抗して、貴族政治の社会原理を守ったあの戦争はやりえなかったはずだ。それならば、この新しい力は労働者階級がつくりだしたものといっていのではないか。』それなら、この果実もまた労働者階級のものではあるまいか。従来は、これが個人を富ませ、大衆を奴隷化するためにのみ役立ってきたが、オウエンにとっては、この新しい巨大な生産力は、社会改造の基礎となすべきものであって、それは当然万人の共有財産として、万人の共同福利のためにのみ使用さるべきものであった。」<o:p></o:p>

 オウエンの共産主義は、純然たる事務的な方法のものでいわば商人的打算の結果だったが、オウエンは徹頭徹尾実際的実務的な性格を持っている。オウエンは1823年にはアイルランドの窮乏の解決のために、共産主義コロニ―を提案し、建設費、年度の収支見込みを添えているが、「彼の明確な未来計画は平面図・正面図及び鳥瞰図を含む細目の技術的仕上げにいたるまで、専門的知識でできていて、それをひとたび認めれば、オウエンの社会改良の方法については、専門家にも批判の余地はほとんどないようなものであった。」とエンゲルスは指摘している。<o:p></o:p>

 オウエンが共産主義に進むや、オウエンは公的社会から追放されいっさいの社会的地位を失うが、オウエンはまっすぐに労働者階級の陣営への移行を決断し、その後30年、労働者階級とともに、その中で先頭で活動した。<o:p></o:p>

 「イギリスで労働者の利益のために行われた一切の社会運動、一切の現実の進歩は、すべてオーエンの名前に結びついている。」<o:p></o:p>

  1816年、ニュー・ラナ―クでの労働者の子どもたちの保育所の開設
  1819年、工場法(工場における婦人及び児童労働の制限に関する法律)の実現
 1834年 全国の労働組合の単一の連合体―大ブリテン・アイルランド労働組合大連合の結成 第一回大会議長  賃金と労働条件の改善を掲げて全国ストライキの決行
 完全な共産主義的社会組織ができるまでの過渡的方策としての協同組合(消費組合及び生産組合)の開始
 労働時間を単位とする労働貨幣による労働生産物の交換施設の設立<o:p></o:p>

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<o:p></o:p>

 ロバート・オウエンについて記事の大半を割いて引用、紹介しました。オウエンについて新たな認識で再評価された方もいれば、オウエンの世界初の保育所開設はたまたまの歴史のエピソードで現在問題となっている保育民営化や子ども・子育て支援新制度をめぐる攻防との関係で重要視すべき教訓があるとは必ずしも思えないというかたもいると思います。当サイトがオウエンの保育所開設に注目・重視したのは、当時のイギリスの労働者階級の状態と新自由主義のもとで日本の労働者階級が突き落とされている状態がリアルに重なるからであり、それが労働者階級特におしなべて貧困世帯である非正規世帯の子どもたちと親たちの今日的悲惨で突き出されているように思えるからです。ロバート・オウエンが眼前の労働者の状態と子どもたちの状態から社会を変える闘いに突き進んでいったということ、日本における保育所設置も、まさに時代状況の節々での紛れもない労働者階級の闘いでかちとられてきたということをあらためて強く再確認する必要があると思いました。保育をめぐって今闘われている攻防、これは労働者階級のための労働者階級自身の闘い、労働者階級自己解放の闘いなのです。<o:p></o:p>

★お知らせ★

シリーズとしての次回では、子ども・子育て支援制度に関して当サイトでお伝えしてきた主な記事・詳論のバックナンバーを掲載します。

★そのうえでシリーズ次々回をシリーズ今回の続きとする予定です。

★いま杉並区で6月29日の選挙で再選を狙う田中良現区長が、杉並区立施設整備・再編の強行への信任を得ようとしています。杉並区立施設整備・再編の最大の実体に、42か所の児童館の廃止(ゆうキッズの「子どもセンター」への統合、学童クラブの小学校への移行、児童館で実施してきた小学生の放課後居場所事業の小学校への移行)、つまり児童館の全廃がもくろまれています。これもまた2015年度子ども子育て支援新制度実施の杉並版です。

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保育所かちとった労働者階級の闘い(続き・②)

2014年05月08日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

2014-05-06記事からの続きです。

   この国ではじめて「保育所」について法制化した児童福祉法制定

  ご存知のように、日本では第二次大戦の敗戦後の1947年、学校教育法によって幼稚園が、児童福祉法によって保育所が制度としてスタートします。1947年といえば、敗戦直後、飢餓と貧困のもとで、治安維持法支配、国家総動員体制によって敗戦まで禁圧されていた労働組合が雨後のタケノコのように全国で結成され、米軍GHQの中止命令で絞殺されたとはいえ21ゼネストを頂点に戦後革命が高揚を遂げた年であり、日本国憲法が制定された年です。ここでは委細を省きますが、戦後の幼児教育と保育、とりわけ、児童福祉法に基づく国と自治体の実施責任による保育所の設置は、保育(福祉)は労働者階級(とその子どもたち)の権利、国の義務として規定した、日本で初めての保育の法制化でした。

  敗戦直後の焼け野原での保育所作りの婦人労働者(母親たち)の闘い

 前述のように言ってしまうと、スッキリ、保育所が設置、設立されたように聞こえるかもしれませんが、国が法制化したことから保育所がスタートしたというわけではまったくありません。


 そもそも戦前、幼稚園は、欧米の幼児教育が、明治政府のもとで、1870年代にアメリカから「輸入」され、幼児教育の学校として設置され、一定普及したが、専ら上流階級の子弟を対象に法律をもって設置した学校であり、保育料を支払えない労働者階級、貧困世帯の子どもたちは通うことはなかった。資本家階級は、戦前、廉価な女性労働力を工場に駆り出すための就労政策として、託児所を設置はしたが、それは子どもの保護や母親の支援のためなどではまったくなく、労働力の確保のためにそうしたに過ぎない。紡績工場やマッチ工場への託児所の設置に典型が見られるように、早朝から深夜まで女工として母親を酷使し、ほんのわずかの休憩時間に工場の敷地内の託児所に駆けつけ、大半の時間をわが子への授乳のために費やし、健康を損ないながら働かざるを得ないという劣悪なものだった。こうした労働者たる母親や子どもの悲惨な状態を目の当たりにした篤志家による託児所開設や社会啓蒙家によるセツルメント運動として、託児所・保育所が戦前には取り組まれ、社会運動として広がりをみせたが、国は託児所・保育所について法律・制度は整えようとはいっさいしなかった。その必要性を認めなかったのである。幼稚園と保育所では、階級により子どもが受ける養育・教育が違ったということである。戦後の児童福祉法制定まで保育所のためには、この国には、いかなる法律もなかったということは、明記しておく必要がある。

  だから保育について、戦後、この国が法制化した児童福祉法についても、保育(福祉)の法制化としてはそれまでと比べれば画期的な意味を持つが、制度が整ったから保育所が設置されたというものでも必ずしもなかった。

 実際には敗戦直後の文字通りの焼け野原からの戦後再建(国民にとっては生活再建)の過程は、親たちが貧困と飢餓で今日明日の食糧を得るために苦闘し、子どもたちは親の保護・養育も受けられずバラック、スラムに放置されるという悲惨な現実の中で、とにもかくにも子どもたちを集めて活動する青空保育、子どもたちの食料を確保するために立ちあがった人々が奔走することから始まり、母親たちが就労するためには何が何でも保育所が必要であるという信念に立った保育所設立運動が都市部を中心に懸命に取り組まれた

              Photo

   労働者階級が今日明日の生存のための、そして子どもたちの生存と未来のための苦労と闘いが、戦後革命期の労働組合運動の目を見張るような高揚の中で、必ずしも大きくは歴史的に位置づけられてはいないが、都市の地域で闘われていた。この敗戦直後の保育所づくりの闘いは、戦前、国民総動員体制のもとで「赤化の芽は断つべし。銃後にあって国に報ずべし」と解散・禁圧・解体させられた青年・インテリゲンチャのセツルメント活動による工場地域と貧民居住区での保育所運動を引き継いで取り組まれたものでもあったのです。<o:p></o:p>

 
  共働き世帯の増大と「ポストの数だけ保育所を」の大運動、保母(保育労働者)による労働組合の結成・拡大<o:p></o:p>

   1960年代になると日本経済の高度成長のもとで夫婦共働き世帯が拡大し一般化した。高度成長下で財界・企業サイドが女性労働力の拡充・拡大を必要とし促進したしたことが一つ。国が女性におしつけてきた伝統的保守的な「子どもの養育は家庭で行うのが基本」「家事と育児は女性の仕事」のカラを打ち破る女性の側からの積極的な社会参加への意欲と要求がもう一つの要因だ。この女性の意欲的な社会参加の背景には、1950年代の原水禁運動の爆発と高揚(母親たちはその先頭に立った)、勤評闘争、60年安保闘争の大爆発があった。

 


  財界・企業サイドの労働力政策は内外の景気動向や技術革新で左右される調整の面を常に持っているが、母親たちの側から就労を通しての社会参加の要求は堰を切ったように広がり、保育所設置運動は急速に広がって行った。母親たちは、婦人労働を婦人解放・女性解放の要求としてとらえ、官民のあらゆる部面の職場に進出し、子どもが分け隔てなく平等に育ち、教育を受ける権利を掲げて保育所設置運動を繰り広げたのだ。<o:p></o:p>

   この保育所設置運動は、企業による合理化・人員削減、女性の進出に対しての「母親は家庭に帰れ」という攻撃にも屈せず、「ポストの数だけ保育所を」をスローガンとして地域に共同保育所・小規模保育所(※注・・・こんにち、子ども・子育て支援新制度で、公立保育所・認可保育所をつくらないで保育責任をとらないことをごまかすために、待機児童を放り込む「入れもの」として国によって施策化されている「小規模保育」とはまったくベクトルが逆のものだ。公的責任で保育所をつくれ、公立の保育所を増やせ、そのためのやむにやまれぬ運動、闘いだ)を次々と生み出して行った。<o:p></o:p>

 この時期で重要な特筆すべきこととして、この保育所設置運動と軌を一にして、保母たちが、長時間労働の改善・解消、賃金の値上げ、保育労働者としての身分保障を掲げて労働組合を結成したことが挙げられねばならない。労働者の職場での団結、労働組合を武器にして、労働条件、職場環境、そして子どもの命と安全、伸びやかな成長を子どもを預けている親たちへの責任として果たしていくための職員配置、園児定数等々であらゆる労働者的な取り組みに取り組んでいくのである。<o:p></o:p>

 国も自治体も、この保育所設置運動と保育労働者の労働組合の結成・拡大の勢いを前に、1971年から1975年にかけて保育所整備計画を策定し、公立保育所の増設に踏み切らざるを得なかった。保育所の設置、基準にのっとった設備と運営、職員給与と職員数の保障はじめ、保育には一定の相当額の費用を要するのは当たり前のことである。移設の設置・維持・管理にカネがかかるとともに、職員給与等人件費がかかる。そして何より営利事業ではなく公的責任・公費負担だから当然儲けは出ない。自民党は「保育はカネ食い虫だ」「乳幼児の養育は本来家庭の責任だ」という考えを改めたわけではない。そればかりか1970年代には早くも児童福祉法の改定の準備を始めている。しかし、国も社会も労働者の労働で支えられ回っている。その労働者の仕事のために親代わりの保育を保障するのは国と自治体の責任であり、保育にいくらカネがかかろうが、あたりまえのことだ保育所設置運動と保育労働者の労働組合の闘いは、「保育にはカネをかけたくない」という政財界の一貫した保育抑制の壁もガタガタにするような勢いをもって、労働者階級の力、労働者階級の闘い、運動でおし渡り、保育所をもぎとったのである。1975年時点で、保育所数は1万か所を超え、措置児童の数は170万人を超えた。<o:p></o:p>

 ここで確認しておきたいのは、児童福祉法があったから、それを大義名分として保育所設置運動が効を奏したということではない。労働者階級にとってその権利を獲得したり拡大する法律や制度が整えられることは重要なことだが、それは労働者階級の一歩も譲れないという懸命の闘いがあってそうなるのであって、国が整えてくれるわけではない。労働者階級にとっての必要こそが闘いを生み出し、嫌がる国に保育所設置運動の正義を認めさせ公立保育所を増設させる大運動を爆発させた。保母(保育労働者)の団結こそが、子どもの安全と健やかな成長の仕事に責任をとりきれる労働条件と職場支配権をかちとり、数十人から多い場合には百名を超える年齢も個性も健康状態も動きも違う子どもたちを十数人から二十数人の保育労働者が見守り、保護し養育・教育するという大変な仕事に心を一つにしてチームプレーで専念する保育職場の結束をつくりだし、同じ労働者である園児の親たちの信頼と協力をもかち得ていったのである。

  ベトナム反戦闘争、美濃部東京都知事の実現、全国を席巻し大きな社会的インパクトをもって燃え広がった大学闘争の高揚、70年安保・沖縄闘争の大爆発、こうした労働者階級人民の大高揚の中で、かちとられた地平でもあった。

《記事が長くなるのでさらに次回続きとします》

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子どもの日に。保育園・児童館・自治体労働者、20代~40代の非正規労働者の皆さんに(①)

2014年05月06日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

アベノミクス版「子ども子育て支援・待機児童解消加速」批判 シリーズ⑫ 

絶対阻止・反対で声をあげ、団結してたちあがりましょう!資本主義がもたらす労働者階級と子どもたちの悲惨のもとで生みだされ闘いとられたのが保育所。保育、それは、ほかならぬ私たち労働者階級のものです。<o:p></o:p>

  子ども・子育て支援新制度実施をめぐる攻防で何が求められているのか


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 (1) 国と自治体が保育責任を投げ捨て、保育所をなくし、株式会社のカネ儲けに変え、「幼保連携」「幼保一体化」の名のもとに幼稚園と保育所の再編・統合を強引に強行しようとする、その子ども・子育て支援新制度の来年20154月実施に安倍政権は躍起になっています。アベノミクス「成長戦略」の第一弾として打ち出されているのが「子育て支援・待機児童解消加速化」です。
新制度はどうなるのか。否、私たちはどうするのか。

 (2) 2012年8月に可決成立した子ども・子育て3法に基づき、「親の就労支援」「待機児童の解消」「幼児教育と保育の総合的提供」を掲げたこの新制度は、しかし、①消費税率の10%への引き上げ年度2015年に合わせて実施としながら、増税分からの7000億円の確保にとどまり最低でも必要な1兆~1兆1000億円に3000億円~4000億円の不足分の財源確保は手つかずのままであり、②2015年度までに20万人、2017年度までに40万人の保育定員増」を前倒しで打ち出した安倍政権の「待機児童解消加速化」はこの1年、実態はほとんど数値上進捗がなく、③新制度実施のためにクリアすべき関門として安倍首相が打ち出した「保育士不足の解消」、そのための標準賃金より10数万円下回る保育職の低賃金の改善も微々たる上乗せで進捗はない、④新制度の新認定こども園への幼稚園・保育所の移行も自治体の子ども子育て会議への計画任せで、幼稚園・保育所からの当初年度移行数値目標の2000・2000もまったく見通しが不透明な状況にあり、⑤実施まで1年を切っているのに、保育の必要性についての認定や利用料額も基準とすべきガイドラインも確たることは何も定まってもいません。
  新制度実施は来年4月のことです。これはどう見ても実施への行程表は破たん必至、政権公約の破産と言っても過言ではありません。このようにみてくると法案は通ってはいるが、これから実施までの1年を、新制度絶対反対で全力で声を上げ、闘いぬいて、大運動をまきおこせば実施を阻止し、粉砕できる、本来なら、そう断言できる情勢です。

 (3) にもかかわらず、安倍政権は新制度を予定通り、あくまでも強行しようとしています。公立保育所の解体、株式会社参入、戦後の福祉の「最後の砦」と呼ばれてきた保育の解体・きりすて・一掃、民営化のためです。縷々前述した通り破綻が予めハッキリしているような新制度実施に安倍政権が前のめりに強気の強行路線をとっていられるのはただ一点、次の事情に尽きます。国会に議席を持つ野党や保育所に分会をもつ連合等の既成労働組合の中央や保育に強い影響力を持つ日本共産党系の全国保育連絡会等の既存の運動が、新制度の2015年度実施を前提にしてしまい、安倍政権と一緒になって推進する協力者の側に回ってしまっているからです。
  保育所を廃止し、保育をなくする、株式会社にカネもうけさせる、待機児童には小規模保育をあてがえばいい・・・・・このような、労働者階級と子どもたちから保育(福祉)を奪い、切りすてるということが罷り通ることに対して、闘うのかどうか、反対するのか賛成するのかが求められているときに、法律として成立してしまった以上、実施には逆らえない、「反対」で闘ってもどうせ勝てないと安倍政権の新制度実施に屈服し、決められてしまった新制度をいかに「よりよい制度」にするかということに目標を据えるべきだという転倒した立場に転落してしまっているからです。保育現場の労働者、園児やこれから入所を迎える子どもをもつ親たちの声を抑える側に立って、ああだこうだのごまかしの議論に終始しているからです。<o:p></o:p>

 ここで、あいまいにされ、ごまかされているのは、保育を奪われ、保育をきりすてられるのをゆるして私たち労働者階級に未来はあるのかという問題です。 私たち労働者階級の子どもがどうされてもいいのか、どうなってもいいのかという問題です。

 (4) 歴史をひも解けばハッキリとわかることですが、資本主義の勃興から産業革命の時代は、労働者が朝早くから夜遅くまで工場で働き、労働者の子どもたちは親の養育も受けられず、いまだ年齢も行かない子どもが親に代わって、弟や妹をおぶって学校の授業を受け、世話をする、さらにはその子どもたちまでも工場に駆り出されるような時代でした。しかし、この時期に、否、こういう時代ゆえにこそ、子どもたちを保護する目的で、一方では児童労働の禁止・制限を求める運動が闘われ、他方では、託児所をその前身とする保育所設置の運動が社会的運動となって燃え上がりました。<o:p></o:p>

 労働者がおよそ生計の維持すら困難な低賃金と生理的精神的限度を超えた長時間労働、不衛生な職場環境と無権利のもとで酷使されることに対して、「われわれ労働者を人間として扱え」と団結して自ら生きんがための武器として労働組合を結成し資本家に対抗して立ちあがった時代親の養育を受けられない労働者世帯・貧困家庭の子どもたちを人間として保護し大切に養育、教育する目的から、国や資本家に対して児童労働の禁止・制限を要求し、さらに人間としての一生、人格の形成にとって非常に大事な位置を持つ子どもたちの保護・養育に取り組むことが社会を変えることにつながるという気高い理念に燃えて、幼稚園、託児所・保育所をつくる闘いが取り組まれ、今日のような通信手段もない時代、瞬く間に国境を超え世界中に広がって行ったのです。
  今、資本家の儲けのためには労働者やその家族の生活や生き死になどいっさい顧みない「命よりカネ」がすべての新自由主義によって労働者を総非正規職化する攻撃が激しさを増しています。労働者階級は、長時間労働、深夜労働、過労死、無権利、生きていけない低賃金のためにダブルジョブ・トリプルジョブまで強いられ、「嫌なら辞めろ、代わりはいくらでもいる」と使い捨て労働力として、労働者階級は、バラバラに分断され、非人間的な状態に叩き込まれています。闘わねば生きられない。これが労働者階級が直面している今の現実にほかなりません。       <o:p></o:p>

 この国と社会を中心になって支えている、彼ら彼女らの労働なしには社会は回らない、そういう20代・30代・40代の労働者が非正規職とされ、その数は2000万人を超えるに至っています。低収入ゆえに子どもも持てず、また子どもができても両親が就労しなければ生計が成り立たない、そのために子どもを保育所に預けようとしても、保育所に入れられないという状況がいま労働者の圧倒的多数をなす非正規労働者の状態として発生しています。「子ども・子育て支援新制度」は、あたかも「子育て支援」「親の就労支援」「待機児童解消」とこの20代・30代・40代の労働者世帯の支援と子どもたちの保護・保育・教育のためのものであるかのように標榜しているが、現実は真逆です。国は儲けにならない保育にはカネは使わない、公立保育所の廃止と株式会社によるカネ儲け、子どもの養育は自己責任というものです。彼ら彼女らが労働者として強いられている状態も、保育を受けられない子どもたちの状態も、前掲の資本主義の勃興期から産業革命の時代さながらの労働者階級の悲惨そのものです。

  どう立ち向かうのか?いま、保育のきりすてをめぐって根底から問われ、求められている問題と、産業革命と労働者階級の絶対的な貧困と悲惨の時代に無から有をつくりだすように保育所をつくりだした取り組みの問題に、何か、違いがあるでしょうか。<o:p></o:p>

 (5) 保育所とはそもそも何か。誰のためのものか。誰のものか。どのようにしてそれは社会的に生み出され歴史に登場したのか。保育所がなくされようとしており、保育がきりすてられ、奪われようとしている今、この原点から、子ども・子育て支援新制度に立ち向かうことが必要となっているというべきではないでしょうか。労働者階級の団結、労働組合の再生と、労働者階級自身の闘いによる保育の奪回、社会の未来を担う子どもたちの人間的な養育・教育・成長のための保育の奪回の闘いとは、社会をつくり変え、労働者階級の未来をきりひらく闘い、労働者階級の命運がかかった歴史的な闘いです。<o:p></o:p>

 あらためて、ハッキリさせねばならないことは、《保育》《幼児教育》、それはほかならぬ私たち労働者自身のものだ、ということではないでしょうか。そう思います。<o:p></o:p>

 この点について少しばかり歴史から考えてみます。
 今回は、この国で保育所はどのような闘いを経てつくりだされてきたのかという概ね1970年代半ばまでについて、保育所設置運動と保育労働者(当時は「保母」)による労働組合の結成までをかいつまんで俯瞰したいと思います。それ以降の概略、以下の経過はあらためて整理します。<o:p></o:p>

  ・労働者階級全体に対する行財政改革、構造改革・民営化、その一環としての児童福祉法改悪、保育規制緩和の執拗な攻撃 
・中曽根政権による「戦後政治の総決算」を掲げた国鉄分割・民営化の強行。1975年恐慌による戦後経済発展の終焉に対応したこの国における新自由主義、労働組合解体・民営化攻撃の起点 
・世界恐慌・長期大不況の時代に対する「9割非正規化」―「新時代の日本的経営」と1995年日経連報告
・橋本「6大行革」 
・小泉「聖域なき構造改革」
・パリバショック・リーマンショックによる後戻りすることがない世界大恐慌と新自由主義の破たん
・3・11東日本大震災・福島原発事故、安倍政権アベノミクス「成長戦略」

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ・このうえなく明瞭になっている点。
①新自由主義にしがみつくしかない資本主義の末期的攻撃としての労働者階級に対する民営化・外注化・総非正規職化

②「命よりカネ儲け」の新自由主義に絶対反対の「生きさせろ」の反乱が始まっていること 
③既成政党・既成労働組合の雪崩打っての転向にとってかわる労働組合の再生が最大の対決軸、攻防になっているということ
・破たんしたアベノミクス「成長戦略・第一弾」が「子ども・育て支援新制度」「待機児童加速化」 
④公立保育所をなくし、株式会社にカネもうけさせ、労働者階級から保育を奪うという攻撃との闘いに対しても、攻防のカギを握っているのは、労働者階級としての保育労働者の労働組合の闘い、保育を奪われ、きりすてられるその矢面に立たされている非正規労働者世帯】

以下は、長くなるので《続き》として別記事にします。

《記事が長くなるのでさらに次回続きとします》

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公立保育所全廃・株式会社化に反対!カギ握る保育労働者・自治体労働者の闘い

2014年04月17日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

「子ども子育て支援新制度」とは公立保育所全廃・株式会社化であることをはっきりさせましょう!保育職場の労働者の団結、自治体労働者、労働者階級の総決起こそ「新制度」を粉砕する力です。今こそズバリ絶対反対でたちむかおう!

―アベノミクス版「子ども・子育て支援-待機児童解消加速化」批判シリーズ ⑪

【1】ファシスト・アベの大ウソとだまし討ちをゆるさない絶対反対の闘いを

 原発再稼働も防衛装備移転原則(武器禁輸の解禁)も集団的自衛権行使容認・解釈改憲もTPPも労働者派遣法大改悪も国家戦略特区もそうですが、この国の政府、アベ政権が躍起になって強行しようとしていることの正体は、このうえなくあからさまな悪逆不正義です。それをごまかすための政府説明も、詭弁の域をはるかに超える大ウソとして誰も信じていません。当たり前です。「福島原発事故はコントロールされている」「放射能の健康への影響はこれまでも、現在も、これからもまったくない」(アベの昨年9月のIOCでの2020年東京オリンピック招致プレゼン発言)のように、危険を安全と言い、クロをシロと言いくるめる真逆のアベ政治はいつまでも続くものではありません。事実がすべてを明らかにしている。秘密とウソで隠し通せるものではない。アベに言いたい放題、やりたい放題を続けさせては絶対にならないのです。アベ政治によってひきおこされるすべては、ことごとく、私たちにとって譲ることのできない、私たちの生き死に、未来がかかった非和解的な問題です。そのものズバリで絶対反対で抗議し立ち向かう闘いこそが、求められている闘いです。

【2】「子ども・子育て支援新制度」「待機児童解消加速化」とは保育をなくすること

 アベ政権が2015年に実施しようとしている「子ども・子育て支援新制度」、その一環でありその先取りである「待機児童解消加速化」も、このファシスト的な大ウソとだまし討ちの最たるものと言えます。
 その正体は新自由主義の民営化・社会保障制度解体・規制緩和の一連の攻撃の中で戦後福祉の「最後に残された砦」となっている
保育の解体・きりすて、国と自治体の公的保育責任を制度的に体現し担保してきた公立保育所の廃止株式会社化です。さらには「女性の就労支援」「待機児童解消」と称して、国策として総非正規化を強行し、そのもとで大量に生みだされる低賃金低収入の非正規労働者世帯の保育をきりすて、子どもの命と健康を危険にさらす小規模保育、密室保育へ投げ入れるものです。
  この非正規労働者世帯の保育のきりすては、これから始まるのではなく、既にひきおこされ、始まって久しいことです( 「待機児童」の圧倒的過半が0~2歳児です。親は20代・30代・40代の非正規労働者です。「待機児童」問題の核心は、生きていくためにどんなに大変な就労形態にせよ働かざるを得ない状態に置かれている20代・30代・40代の非正規労働者世帯が強いられている状態であり、乳幼児を抱えていて、公立保育所に子どもを入所させられないで保育を奪われ、切り捨てられて苦しんでいるということです。この非正規世帯の保育のきりすては、不規則不安定な就労形態を強いられ、低収入であることから、保育の条件に不安があっても「安い料金で預かる」無届無資格事業者にたよることしかなく、その中でベビーシッター事件のような痛ましい事故が起きるにまで至っているほど深刻です。)

 これは保育制度をAからBに切り替えるといったような制度改革、政策転換などではまったくありません。保育所(公立保育所)に入れたくて入れられないおびただしい非正規労働者世帯の人々や自治体・保育所で働いている労働者が感じているように、「新制度」とそれに先立つ自治体の「待機児童解消」施策は、国策として、保育をなくす、保育を奪う、保育を切実に必要としている人々を切りすてるということです。国が「新制度」実施をもって、認可保育所に対する保育所運営費補助を廃止するということ、「新制度」下の施設(新認定子ども園
)においては、株式会社の参入を自由化するしくみであること、施設への入所は施設と利用者の直接契約とし自治体の実施義務(公的責任)ではなくなるということ・・・・これらは、保育を切りすてるということ、保育所をつぶす、労働者から保育を奪うということです法律が一般にわかりにくいという以上に、この「子ども子育て支援3法」が非常にわかりにくい構造になっていることから、またこの法律でどうなるかどうするかが焦点になっている当の自治体が政府とこの「新制度」に屈服し政府と一緒になってこの「新制度」でこれから起きることをごまかそうとしていることから、ろくなことにはならない、ひどいことになりそうだという漠然たる認識はあっても、いまひとつ本当のことがみえにくくなっています。だからこそ、本当のことを言いきらなくてはなりません。伝えきらなければなりません。

【3】公立保育所の全廃と株式会社化

  つまり、「子ども子育て支援新制度」によって、公立保育所はこのままではなくなるのです、株式会社にやらせるのです政府があれやこれやの手口を通してやろうとしているのは結局これです。ここを徹底的にはっきりさせましょう。
  政府はいっぺんに幼保一元化・一体化を強行することが幼保現場からの猛反発で難航し紆余曲折を経ざるを得ないという政治的判断から、「新制度の幼保連携認定子ども園への移行は
義務付けない」とし、「公立保育所をなくす」とか「認可保育所をなくす」とか「株式会社の参入を自由化する」というような露骨な表現は慎重に避けてはいます。
  しかし、狙いは公立保育所の全廃にあり、最終的には認可保育所というありかたも保育所施設指針・認可基準となっている児童福祉施設最低基準もろとも実際にはなくすところまで持っていこうとしています。まさかそこまではやらないだろうと思う人もいるでしょう。しかし、これは本当のことです。

★公設民営・民間委託-公私連携による公立保育所明け渡し!?

  
事実、「子ども・子育て支援制度」の3法では、法案上程の直前までは盛り込まれていなかった施設の設置・運営主体の適合法人として公私連携法人が可決成立した法律では盛り込まれています。新制度での新認定子ども園の設置・運営主体として認可されるのは「国と地方公共団体、学校法人、社会福祉法人に限る」とあたかも株式会社(民間企業)は認可しないかのような条項を繰り返し確認しながら、「公私連携幼保連携型認定子ども園の特例」「公私連携保育所型認定子ども園の特例」が「新制度」下で認可する新認定子ども園の施設の特例としてこっそりと定義されています。「新制度」の中軸としようとしている幼保連携型認定子ども園は現行法では「教育基本法が定める学校」と規定されており、包括的な民営はいまだ認められていないため、「子ども子育て支援法」でも「新認定子ども園法」でも「株式会社」等の前掲法人以外についてはあたかも認めていないかのようです。しかし、そうではない!

001
【写真は内閣府が行った「子ども子育て関連3法」の自治体説明会資料『地方自治体においてご留意いただきたい事項』からの抜粋。公設民営で「公私連携」を使って新制度の認定子ども園に移行しろ、そうすれば「生き延びられる」といわんばかりの手ほどきをしています!】

  自治体が法人と協定を締結し設備等施設を無償または時価より廉価に譲渡または貸し出し施設が行う教育と保育を法人によって行う場合には、児童福祉法56条8の公私連携法人として指定し、公私連携幼保連携認定子ども園や公私連携保育所型認定子ども園として認可するという特例を新法では明記しているのです。「公」って何ですか?自治体です。「私」って何ですか?私企業、つまり株式会社でしょう!

  ①法律上「学校」である幼保連携認定子ども園への移行の場合には、公私連携法人は「学校法人や社会福祉法人」に限るとしていますから、まず「学校法人や社会福祉法人」に委託しなければならないが、そうすれば公私連携で幼保連携認定子ども園に公立保育所は移行できます(新認定子ども園法34条)。株式会社が「学校法人や社会福祉法人」という擬態の隠れ蓑を着て協定を結び、施設の譲渡が済めば、もう公立ではないのです。
  ②保育所型認定子ども園への移行の場合にはそうしたややこしいことをしなくても移行できます。「公設民営なら児童福祉法56条8を使えば株式会社も公私連携法人に認められ保育所型認定子ども園に移行できる」と内閣府は自治体向け説明会資料で言っています。内閣府政策統括官の村木敦子は3法の公布通知の中で、「公私連携幼保連携型認定子ども園の特例」では「学校法人や社会福祉法人に限る」とコメントしていますが、「公私連携保育所型認定子ども園の特例」では単に民間法人としかコメントしていません。
  内閣府は、「こうすれば新認定子ども園に移行できる。この手でやれ。民間に委託して公設民営ー公私連携なら生き延びられる」とレクチャーしているわけです。株式会社にやらせるために「公私連携」規定を使っているのです。既に公設民営をとっているところは「公私連携」で移行をめざし、いまだ公設民営をとっていない、部分的な委託しかしていないところは移行のために全面的な民間委託や指定管理者制度による公設民営に進もうとしています

  【※以下のPDFでごらんください。
▲参照資料(ⅰ)
公布通知/ 内閣府政策統括官村木厚子(2012・8・31各都道府県知事 各都道府県教育委員会 各指定都市・中核市市長 各指定都市・中核市教育委員会 付属幼稚園を置く国立大学法人の長に対する公布)http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/s-koufu.pdf
▲参照資料(ⅱ)
地方自治体において留意いただきたい事項/内閣府・文科省・厚労省2012・9・18子ども子育て関連3法説明会)
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/administer/setsumeikai/h240918/pdf/s4.pdf 】 

  一見随分ややこしい「公私連携」ですが、何のことはない、自治体が公立保育所の施設(公の施設たる公立保育所)を公私連携適合法人としての株式会社に無償か破格の廉価で譲渡または貸し出しで明け渡す
  
公立とは法律・条例に基づいているという意味では字義の通り自治体がつくったとも言えますが、根本は私たち地域の労働者住民の税金でつくられた、その意味では住民がつくったものです。公私連携認定子ども園とは、株式会社が、私たち住民の血税でつくられた「公の施設」たる公立保育所の施設をまるまる無償または破格の廉価で譲り受け借り受けてカネ儲けをするということです私たちが住民の福祉(保育)のためにつくった施設を株式会社が算奪してカネ儲けをやるということなのです。まったくもって怒りに堪えない!これに自治体が反対もしないで「生き延びるために」と言って保育所明け渡しに応じるなんてどうして許せますか?!

★保育職場・自治体職場から怒りの声あげよう!職場の団結でひっくり返そう!

  国鉄分割・民営化を決定的な岐路として、「官から民へ」「民間にできることは民間で」の歴代政府の行政改革・民営化の国策の中で、自治体の業務の民間委託、外注化はいまに始まったことではありません。多くの自治体で、財政難を理由とするコスト削減で、自治体労働者の人員削減と業務の民間委託、指定管理者制度導入、外部委託・
外注化が行われてきました。それは当該自治体職場で働く職員に対する給与削減・人員削減・労働強化、労働組合破壊の攻撃であるとともに、地方自治体の事業の過半をなす福祉施設の再編、福祉部門の民間委託・民営化と低賃金非正規化として推進されてきました。
 そうした自治体における民間委託・民営化の中で、「福祉で最後に残った砦」といわれてきた保育所を解体し、株式会社化するためにこの「新制度」が実施されようとしているわけです。

 だが、「公私連携」という形で、公の施設を無償または時価より廉価で企業・株式会社に譲渡するという新認定子ども園への移行は、これまでの自治体における民間委託・民営化とは次元を異にする激烈なものです。地方分権一括法による地方自治法改正によって、今ではかすんでしまい、顧みることもなく忘れ去られていますが、戦後の日本の地方自治においては「地方自治の本旨」として「住民の福祉の実施と増進につとめること」は自治体の「責務」とされ、地方自治法では地方公務員法では、「私企業」「営利目的」の関与は排除され、「公の施設」の「私企業」による運営への関与は排除するという明文規定がありました。

 「公の施設」たる公立保育所の公設民営と「公私連携」による公私連携幼保連携型認定子ども園、公私連携保育園型認定子ども園への移行は、自治体の株式会社との協定による施設の無償譲渡等を前提とするものであり、-地方自治法の前記規定等から言えば-自治体の営利企業への「身売り」、自治体の完全な「死」に等しいものです。想像してみてください。

  新認定子ども園の館名盤にはなんと刻まれるのか?これまでなら「◇◇区立◇◇保育所」だったものが、「新制度」では新認定子ども園では「幼保連携認定子ども園 ABC園 公私連携法人◇◇区/株式会社日本DEFサービス」「保育所型認定子ども園 ABC園 公私連携法人◇◇区/株式会社日本DEFサービス」(もちろんそこでは「◇◇区」というのは株式会社運営のどぎつさをごまかすためのお飾りの意味しかありません)といったようなものになるのです。

 その意味を自治体首長や当局がわかっていないはずがない。さらに自治体官僚だけではない。自治体の施策運営に影響力をもつ地方議会、そこに籍を置く政党会派もそうです。自治体職員の労働組合もそうです。
 ところが、「公私連携」による「新制度」移行の意味するところを重々わかっていながら、この「自治体の死」「自治体の株式会社への身売り」に、自治体当局、議会、労働組合が、一緒になって、この「公私連携」で公立保育所全廃・株式会社化に進もうとしているという動きが、新法成立以来進んでいるということです。

 それを正当化し、ごまかすために言われているのが、自治体当局や議会政党や御用組合と化している職員労働組合幹部の「このままで新認定子ども園に移行しないでいたら補助は新制度実施でなくなり、保育所として財政的に存続できない。保育所が機能だけでも生き延びるためには、公設民営で移行の道を決断するしかない」「公私連携を使えば、民間委託形態なら移行できるという抜け道まで新法は準備してくれている」という果てしない屈服と裏切り、自己正当化の屁理屈です。
 冗談ではない!「生き延びるため」だって?? 「身売り」「明け渡し」「無償譲渡」が「生き延びるだって?? 保育所をつぶし株式会社が施設を使ってカネ儲けをやるのが「保育所の存続」だって??

  そもそも、
株式会社を実体とする公私連携法人に運営・経営主体が変わるということは、いまの保育所で働いている職員から職場を奪い、正規も非正規も全部解雇するということではないか!自治体がどんな説明でごまかそうと、自治体といまの保育所職員との雇用関係も委託職員の受託者との雇用関係も、いったんは全部切れる。断たれる。公私連携法人が再雇用してくれる保証はどこにもない。仮に再雇用されるとしても、現在の賃金等労働条件や勤務形態は株式会社の設定するままに劣悪化し切り下げられる。「それが嫌なら働きたい人は他にいくらでもいる」というのは株式会社の常套文句だ。職場を奪い、全員解雇!それも株式会社にカネ儲けさせ、保育をなくすために!こんなことを誰が許せるか!黙ってなんかいられるか!

  保育職場で働く労働者は、絶対に、こんな「公私連携」、民営化・全員解雇・保育所全廃を認めない!
  確かに、「新制度」実施で2015年度からは認可保育所への運営費補助を打ち切ります。そのうえで「新制度」実施に向けて、政府は、義務付けはしないと言いながら、新制度の定める新認定子ども園に移行する自治体に対しては補助を出す経過措置をとるとしています。兵糧攻めで追いつめ、利益誘導で「新制度」下の認定子ども園に移行させ、自治体に公立保育所を株式会社に明け渡させるということです。

  しかし、法律ができてしまっているとか、来年には「新制度」が実施されるとか、自治体も議会も政党も、さらには労働組合まで、「新制度」実施前提で動いているからといって、あきらめてはなりません。はっきりさせなければならないことは、次の点です。
 (1)政府やメディアや自治体、議会、政党、御用組合になり下がっている職員労働組合が、本当のことを隠して「新制度」移行になだれ込もうとしていることです。公立保育所全廃・株式会社化・保育解体、そのための「公私連携」(自治体の身売り、施設の明け渡し、職員全員の解雇)を隠していることに対して、徹底的な暴露・周知を行うことです。なぜ彼らはああだこうだと言ってウソをつき、本当のことをかくしているのか、この点に「新制度」実施も破たんに追い込まれかねないアベ政権の最大の弱点があります。声をあげよう!伝えよう!


 (2)その最大の主体は、この保育職場で身を粉にして働き、保育と職場を守り抜いてきた保育労働者です「新制度」移行と「公私連携」=民営化で職場を奪われ解雇される保育労働者です。株式会社のカネ儲けと福祉解体のために自治体の施設と職場を明け渡す自治体の「身売り」「死」に何とかしなければと思っている自治体労働者です。保育労働者、自治体労働者が絶対反対で反転大反撃の声をあげれば、この「新制度」実施は危殆に瀕します。兵糧攻めと利益誘導と手ほどきで屈服するだろうという思惑から言えば「明け渡し」は結構な可能な話でしょうが、「明け渡さない」という絶対反対の闘いがはじまったら、そんな思惑は吹っ飛ぶのです。なぜなら、施設・職場にいるのは保育労働者であり自治体労働者だからです。ここに大逆転のカギがあります。この保育労働者、自治体労働者の抗議と決起は、保育を必要とする圧倒的な地域住民、非正規世帯に全面的に支持されます。なぜなら、この保育労働者・自治体労働者の決起は、保育所全廃・保育解体・株式会社化に反対する闘いだからです。「子どもの保育より株式会社のカネ儲け」の新制度、「命よりカネ」の社会のありかたにはみんな苦しみ、怒っているからです。
  この保育労働者・自治体労働者が絶対反対で職場で声をあげることに対して「よりよい保育」を対置し、抑え込もうとする政党や労働組合の動きは問題にもなりません。公立保育所全廃・株式会社化で保育をなくし保育所をつぶすという攻撃で一歩も譲れない攻防になっているとき、「よりよい保育」なんて言っている場合か、ということです。「よりよい保育」要求運動のもとで闘っている人々がみんながみんな絶対反対に反対しているわけではありません。しかし、「よりよい保育」を掲げて保育労働者・自治体労働者の絶対反対の闘いの抑圧に回っているその政党・組合のリーダーたちは「新制度」移行を容認し、その推進を補完し、「保育所の株式会社への明け渡し」に無血開城しろという役割を果たしているのです。なぜ反対なのか?何に反対なのか?何を守るのか?誰のために反対し、誰のために守るのか?誰と闘うのか?何のために闘うのか?ここをはっきりさせれば私たちはみんなでひとつになって闘えるはずです。まっすぐに声をあげましょう。労働者は団結し、「明け渡さない!絶対反対」で声をあげよう。

 (3) 「新制度」は幼保連携型認定子ども園、保育所型認定子ども園、幼稚園型認定子ども園の施設類型と小規模保育、地域型保育の施策補完を「子育て支援」「待機児童解消加速化」でめざすモザイク的なひとかたまりの保育解体・保育きりすて・保育はく奪の攻撃です。その攻防上の最大に重心が公立保育所攻防です。ここで新認定子ども園への明け渡しに対する反撃の火の手が上がれば、たちまちのうちに「新制度」絶対反対の大運動、大闘争の爆発に必ずなります。アベ政権は保育所全廃に加えて、学童クラブー児童館に対しても全廃の攻撃に「子ども子育て支援新制度」のもうひとつの柱として踏み切ってきています。戦線は拡大し、子どもたちの未来と居場所をめぐって、働く非正規世帯の怒りに火を注ぐ暴政です。今こそ声をあげる時です。保育を必要としているのにそれを奪われている20代・30代・40代の非正規労働者(世帯)のやむにやまれぬ怒りを解き放ちます。これは労働者階級が闘いとってきた保育を民営化・総非正規化・ワーキングプア化と対決して取り戻す闘いです

《シリーズ次回(12)に続く》

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「待機児童」激増中!大ウソとだまし討ちのアベノミクス版「子育て支援新制度」

2014年03月29日 | アベノミクス版「子育て支援」批判
 今回記事も長いです。章ごとの見出しを目安に、一息入れながらお読みいただけると幸いです。なお記事末尾に、今日知った沢田研ニさんの新曲『一握り人の罪』の動画を掲載しています。

アベ「成長戦略」で「待機児童」はますます増える!核心は非正規世帯・ワーキングプアからの保育のはく奪・きりすて!すべて、アベと一握りの政府財界のせいだ!

■ 国と自治体の保育責任の放棄、「子どもの保育より企業のカネ儲け」!福祉きりすて許すな!・・・・アベノミクス版「子ども子育て支援新制度」の狙いは、全面規制緩和で公立保育所もろとも保育(福祉)を解体・全廃し株式会社に明け渡させること

■ 対決軸は公立保育所の増設!公的保育の奪還!「待機児童」問題の元凶である非正規化・民営化・ワーキングプア化に絶対反対!非正規職撤廃!一握りの政府財界に私たち自身がとって代わり、私たち自身の手で私たちと子どもが生きられる社会をつくろう!

■ 最大の決戦は公立保育所全廃に対する職場から保育労働者が絶対反対の声をあげる抵抗にあり!保育職場の仲間が心をひとつに団結すれば職場は反乱の砦になる!公立保育所を絶対に明け渡さない反乱の火の手をあげよう。職場に労働組合の本来の闘いを復権して闘おう!





 写真は、リオデジャネイロ議会の前デモ姿[出処:http://roarmag.org/}:レイバーネット
(2013年6月、地下鉄運賃値上げに反対から始まって「W杯より福祉を」を掲げた全国主要都市での数百万人のデモに発展した。ブラジルでは今夏そのW杯が、そして2016年にはオリンピック開催が予定されており、労働組合を先頭に、2013年以来の闘いが続いている。アベの「福島原発事故はコントロールされている」の大ウソで東京招致が決定された2020年オリンピックまでの6年間は不可避に「オリンピックより福祉を」「オリンピック返上」の大規模な抗議・反対運動となるでしょう。安倍政権の保育解体・福祉切り捨てと「待機児童」激増に思うのはそのことです。声をあげよう!もっともっと!)

 さて、子育て支援と保育の問題で大きなネックになっているいわゆる「待機児童」問題は、ますます深刻化し、これまた解消のめどは何ひとつ立っていません。杉並区に続いて中野区でも、認可保育所への入所を希望しながら子どもを入所させられなかった母親を先頭に住民の異議申し立てが行われています。

 《1》 「子ども・子育て支援新制度」下の「待機児童解消加速化」の概要
  ① 安倍政権は、女性の就労支援のために待機児童を解消する、子育て支援として保育施設・保育施策で受け皿を2017年度までに40万人分確保し圧倒的に増やすとしています。シリーズの前々回記事(⑧)でも触れた通り政府は「保育定員40万人増」の「量の拡充」を打ち出す原案を準備し、先日(3月12日)子ども子育て会議に提示しています。しかし、そこでは、職員の給与等労働条件の改善や施設要件に関わる「質の改善」は「先送り」「後回し」を決め込んでいます。
  ②「子ども・子育て支援新制度」そのものが、そうですが、本来、「親の就労等の事情で保育に欠ける児童」への保育(福祉)という、子どもを中心に考え、子どもの命と安全を守り、健やかな成長をどう保障するか、という主たるべき制度趣旨(児童福祉、保育)は完全に解体され後景化するばかりで、子育て中の親が働けるように支援するという就労政策として「量の拡充」のだけ面が最前面に出ています。そしてこの「量の拡充」というのも、「質の改善」の「先送り」「後回し」と言っているのも、とんでもない曲者です。およそ「待機児童解消」につながるようなものではありません。また、「まず量の拡充に全力を傾注し、そのうえで(後回しにしている)質の改善に取り組む」というようなものでもまったくありません。「先送り」「後回し」というのは、実際にはいつまで経ってもやらない、今後もやる気などさらさらないということです。
  ③ 問題はこういうことです。「働く親の支援」「親が子どもを安心して預けて働けるように支援する」といえば聞こえはいいが、実際には、「多様な働き方」の名のもとに低賃金不安定雇用の使い捨て非正規労働力として動員することで企業のカネ儲けを全面的に促進するという目的で典型的な新自由主義政策の一環として制度設計されているのが「子ども・子育て支援新制度」だということす。だから、「待機児童解消」とは言っても、政府や財界・企業にとっては、親を就労させるために、(まるで親の就労を邪魔している厄介な妨げであるとでもいわんばかりに)子どもを放り込む「入れもの(受け皿)」をそろえさえすればいい、それも、実際に入所するかどうかに関わりなく数だけ確保すれば後は、入れる・入れない、預ける・預けないは親の自己責任だ、という安直でおよそ無責任な発想で実際には具体的な施策が準備され進められていくわけです。
  「保育定員40万人増」⇒この定員という用語からはあたかも公立等認可保育所の定員のようなものと思われがちですが、そんなものではまったくなく、全面的な規制緩和によってルーズな施設基準で民間企業(株式会社)に小規模保育を軸とした認可外保育施設に参入するよう促進し、「民間企業の小規模保育」で◇万人、「ビルの空き室」活用で◇万人、さらに「マンションの一室に預かり」で◇万人といったものまで含めて、ここで言う「定員増」の「定員」としているのです。】

  安倍首相が「待機児童解消」のモデルにしている「待機児童ゼロ実現」と称する「横浜方式」も、認可外保育施設、とりわけ小規模保育、認可保育所の認可基準と比べればはるかにゆるい施設基準への規制緩和によるJPホールディング・株式会社日本保育サービスを先頭とする株式会社の大量参入によるものです。横浜市は、実際にはゼロを宣言した2013年も「待機児童ゼロ」ではなかった。待機児童は増え続けているのです(後に詳述)

   《2》「待機児童」とは? 保育が必要でも受けられず、きりすてられている人々がどんどん増えている
 ① ハッキリさせなければならないことは、「待機児童」とは、認可保育施設への入所を希望して入所できないでいる児童のことだということです。それを厚労省のデタラメで勝手な定義変更(厚労省の「保育所入所待機児童の定義」:参考資料http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/603058.pdf )
で「保育所以外の家庭的保育や保育室で保育している場合」「入所保留者の場合」「」現在入所中で転園希望が出ている場合」「産休・育休明けの入所希望者」等については認可保育所入所を申し込み入所できなかった場合でも待機児童数には含めず除外しているのです。後述の横浜方式での「ゼロ」発表もそれです。
 ② 認可保育所には公立の保育所と民間の保育園があります。民間とは企業立が大半です。当然に民間認可保育所は利用料は公立より高い。子どもを保育所に預けて働く共働き世帯にとっては、公立の方が利用料が安いからという以上に、民間認可保育園では利用料が高くて公立保育所でない限りおカネがなくて入れられないから、公立保育所への入所を希望しています。「待機児童」とはそのほとんどが公立保育所入所を希望して、入所できない児童といっていいと思います。ここをまずはっきりさせることが重要です。
 ③ そこでは、単に公立保育所への入所希望者が集中することから募集を超えてたくさんの児童が入所できないというだけではない事情があります。定員をオーバーしたので、入所できず、「空き」ができるまで「待機」(!)しているということだけでは決してないのです。
  当初は定員枠と希望者数の問題で、だから「待機児童」とも呼称され、国は定員数を弾力化して、まず詰め込みが基本方針となった(小泉規制緩和)。しかしいかに徹底的詰め込み、青天井の定員枠といっても自治体や保育所の側にも限度、限界というものがある。その中で、自治体や保育所の側では、入所希望者の優先の順位をつけ、審査するという選考基準を設け、実施しはじめた。公立保育所を増設し、すべての入所希望者を受け入れるという本来あるべき施策がとられたなら、こんな“どの入所希望者をはじくか”というようなことにはならなかったはずです。
  公立認可保育所では、両親がともにフルタイム勤務である共働き世帯が、「保育に欠ける児童」の保育の必要性から優先的に入所を認められています。フルタイム共働き世帯に保育を保障するのは当然のことです。だが、フルタイム共働きではない非正規共働き世帯やシングルマザー(シングルファザ―)の過半の非正規就労のひとり親世帯はどうなのか。非正規共働き世帯やひとり親世帯も同じ「保育に欠ける児童」を抱えているのだから当然に保育を保障されてしかるべきでしょう。しかし、週5日以上のフルタイム勤務の正規共働き世帯は子どもを保育所に預けることができるが、そうした両親がフルタイム就労形態という要件を満たさない非正規共働き世帯や本来ひとり親支援の扶助を受け受けていて公立保育所が優先的に無償で保障されるべきひとり親世帯(たとえば、父親が正規で母親がパートの場合、両親が共にパート・アルバイトの場合、ダブルジョブやトリプルジョブで辛うじて生計をまかなっている共働き世帯・ひとり親世帯等々、つまり両親または片方が非正規の共働き世帯やひとり親世帯は実際には子どもを保育所に預けられないという現実が一般的になっています。これは、絶対的な不平等であり、理不尽というべきではないでしょうか?ここに20代、30代、40代の非正規世帯が集中する首都圏はじめ大都市圏でこのかん激増している「待機児童(数)」の実態、その核心問題があります。
  ④ 正規共働き世帯と非正規世帯との間で保育格差、保育・貧富格差が、国が自治体任せにして、公立保育所の増設政策や公的責任で拡充・解決すべき多様な保育施策をとらないことによって甚だしい規模で形成されているということです。考えても見て下さい。共働きでなければ家族を養うことも子どもを育てることもできないから共働きをしているのであり、ひとり親ならなおさらのこと働かなければ子どもを預かってもらえなければ自分も食えないし子どもも食わせられないのです。企業が利潤を確保するために、雇用形態を不安定雇用に根本的に転換し、9割さらには10割を低賃金非正規雇用にしようとしており、国がそれを国策としていることから、フルタイム勤務や常勤ではなく、パート、アルバイト、派遣、ダブルジョブ・トリプルジョブが常態化し一般化し、その就労形態もきわめて不規則化・不安定化し複雑化・多様化しています。
 いまやこの非正規労働者人口は2000万人を超え、労働力人口の4割に達しています。その非正規世帯が、子どもを保育所に預けられない、入所させたくても入所させられない現実が発生しどんどん拡大している。あまりの低賃金低収入のため食っていくためには子どもを保育所に預けてどんな苦労をしても就労するしかない、しかし、その入所希望は《「フルタイムの共働きではない」=“非正規だから”“ひとり親だから“》、という実質的な理由ではじかれているのです。 
  ⑤ 民間の認可保育所では公立保育所より利用料が高くてその次元で入所させられないという面と共に、民間認可保育所に入れようとしても保育所の方で親の定収額や収入の安定性を理由に選考審査ではじくという面からも、認可保育は非正規世帯・ひとり親世帯にとって限りなく閉ざされています。
 では施設水準は認可保育所より低いが、他に預ける施設がないのでやむを得ず認可外保育所に預けるというような選択の余地は非正規共働き世帯やひとり親世帯にあってあり得るのでしょうか?ほとんど困難、厳しいというのが実情です。なぜなら東京の認証保育所や横浜の横浜保育室をはじめとした認可外保育施設の場合を見ればわかるように、公立よりもはるかに利用料が高いため、入所は無理だからです。非正規共働き世帯やひとり親世帯は基本的に例外なく貧困です。△無理を押して認可外保育施設に入れようとすれば、その分より複雑で過酷な就労を両親または片方の親が、そしてひとり親でも、担わねばならない、無理して高い保育料を払って入所させても、親が子どもと顔を合わせ一緒の時間をすごすことができない・・・、△「認可外施設には不安もあるが安いから」と入所させても、「どんな保育を受けているか、事故は起きないか、虐待されていないか」と心配でならない・・・・。認可外保育に預けた場合には、施設基準が劣悪なことから子どもの安全とすこやかな成長については親は全く気が休まることはない、それでも預けるしかない・・・・・。ここに突き出されている問題とは何か?国(自治体)が公立保育所を増やさない、公的責任で社会的に必要な保育施策をとらない、すべて民間企業に委ねようとしていることによって、20代、30代の圧倒的過半をなす非正規世帯が子どもの保育で苦しみ、保育を受けられず、保育を奪われ、切りすてられようとしているということにほかなりません。                 

 「横浜方式=待機児童ゼロ」のウソに示されていること

 わかりやすい具体的事例として2013年度に「待機児童ゼロの目標を達成」したとする横浜市の実際について触れておきます。
  ● 横浜市の認可保育所への2013年度入所の希望児童数は4万8818人、実際に認可保育所に入所できた児童数は4万7072人、認可保育所への入所を申込んだ児童だけに限っても、差し引き1764人の待機児童が発生しています。横浜市の林市長は、これを「潜在的待機児童(数)」と呼んでいますが、「潜在」も「顕在」もあったものではありません。まぎれもない「待機児童」「認可保育所に入所を希望して入れなかった児童」です。1764人という人数を超重大視すべきです。2012年に林横浜市長が「待機児童ゼロ目標」を宣言するにいたった「待機児童全国最多の1552人」「ワーストワンの横浜市の待機児童数」より多いのです。
  ● 横浜市で2013年度認可保育所への入所希望者で実際に入所できなかった前掲1764人の内訳は、どんな実態でしょうか?
①横浜市が開設した認可外保育施設「横浜保育室」に横浜市の「行政努力」で入れた児童887人
②(入所先は内定しているが)第一希望の認可保育所入所にこだわり続けている児童(世帯)
③育児休業延長で育休を選択した児童(世帯)
④インターネット等で求職活動中の世帯
この①~④の除外合計で、実際には1764名もいる待機児童は、「ゼロ」とされた。①は横浜市が設けた保育コンシェルジェが「(認可保育所以外でも)こういう保育サービスがあると説明・説得した」結果、認可外だが横浜保育室に入所を親に認めさせたものを「入所希望をかなえたもの」として除外し、②~④は、認可外保育なら入所がかなえられたのに、親が認可保育所にあくまでこだわって、その選択を放棄して「待機」「育休」「まだ未就労(就活中)」等を自分で選択したのだから、・・・と「待機児童数」から除外しています。そうやって「ゼロ」にしているに過ぎません。厚労省の「待機児童」に関するイカサマ定義によって横浜市は「ゼロ」宣言しているに過ぎません。こんなひどい話があるか。
 ● なぜ認可保育所に入れなかったのか?公立保育所の入所条件・選考基準をクリアできない入所希望世帯が選考で落とされたからです。なぜ公立保育所にこだわって「待機」を選び、また「育休延長」や「求職活動」を選んでいるのか。保育料をみて公立保育所しか入所させられないから、「横浜保育室」等の利用料金が高い認可外保育所に入れることもできないからです。①の「横浜保育室」887名入所も、まったく不本意だが仕方なく入所させることにしたというのが実情です。       

  《3》 アベノミクス版「子ども・子育て支援、待機児童解消加速化」の正体
 ① 現在、安倍政権が進めている「待機児童解消加速化プラン」「2017年度までに保育定員40万人増」とは、株式会社参入による認可外保育施設の増設、圧倒的な小規模保育の促進、ビルの空き室に子どもを詰め込む、保育士無資格者が複数の児童をマンションの一室にあずかる、といった部類まで含めて、それも「待機児童の受け皿」たる保育施設だと、とにもかくにも子どもを「放り込み」「詰め込む」場所を確保するという以外の何物でもありません。これを安倍首相は「成長戦略スピーチ」で「要はやるか、やらないかだ」「あらゆる手段で待機児童解消を加速化する」と言ってのけたわけです。こんなものを「待機児童解消」と呼べるか。こんなものを「子育て支援」と呼べるか。 
 ② ここで横浜方式で横浜市が実際には1764名もの子どもが認可保育所入所を希望して入所できない「待機児童」となっているにもかかわらず、厚労省の定義に沿って「待機児童ゼロ」と規定し「待機児童ゼロ」宣言を行ったということ、その横浜方式を安倍首相が「全国化のモデル」とし方針としていることには、事実や実体に反する大ウソをついているという以上に、きわめて重大な意味があります。「(「厚労省定義」の)横浜方式で行く」ということは、公立保育所や認可保育所への入所を希望しても無駄だ、認可外の小規模保育、「ビルの空き室保育」、「マンションの一室保育」で十分だ、国としては新制度で、公立保育所を続けたり増やすことなど考えてはいない、国と自治体の公的責任で社会的に必要となっている保育の諸施策・諸態様を強化するようなことは全然考えていない、すなわち、原則、民間企業に委ねるということです。今後は基本的に株式会社が提供するものとなる、利用者は施設基準がどうの、料金がどうのとツベコベ言わずに自己責任(利用者責任)で企業(施設)と契約しろ、というのが国の方針だということです。
 ③ 「保育定員40万人増」による「待機児童解消加速化」の中身であるということにはとどまりません。この考え方・方針は、公立保育所含めて現在のすべての保育施設に拡大します。2015年度新制度実施によって、国は認可外施設(これは基本的に民間企業)への支援は行うが、これまでの認可保育所への国の運営費補助は打ち切られます。自治体は公立保育所を自力で運営するしかなく財政上の理由から保育所存続の困難にさらされ、存続のためには、新制度が定める保育所型認定こども園に移行するしかなくなります。その先にあるのは何か?改悪児童福祉法56条8の公私連携規定により株式会社が「公私連携法人」として、自治体から施設が株式会社に譲渡を受ける、または市価よりはるかに廉価で使用できるという話です。新制度の幼保連携型認定子ども園は学校ですから、現行法上はまだ公設民営は認められておらず、株式会社は経営・運営主体としてはタダ土に認められるわけではありませんが、新制度の保育所型認定子ども園は、改正児童福祉法56条8の「公私連携」規定によって株式会社が経営・運営主体になることに道を開いています。 否、「道を開いた」どころか、自治体に公立保育所を手放させ、株式会社に譲渡させるためにこの「公私連携」を設けているのです。政府財界は株式会社にやらせるためにそうしています。そうなれば、利用者は、文字通り営利目的の株式会社と直接契約することによってしか子どもを預けられないのです。
 つまり、これまで保育施設最低基準として利用者が基本的に安心して子どもを預けることができた公立保育所はどんどんなくなっていく、事実上、認可基準も意味のないものとして消滅してしまうに等しいということです。公立保育所がなくなってしまえば、「公立保育所に入れたい」とこだわる世帯もなくなるというわけです。
 ④ 一方で公立保育所含む認可保育所の支援は打ち切る、他方では施設基準を圧倒的にルーズに緩和して認可外保育施設を増やし、認可外保育施設(民間企業立です)にはどんどん支援を行う、⇒民間企業が認可保育施設よりも、認可外保育施設に取り組むのは当然です。公立保育所については兵糧攻めで潰し、公私連携で民間企業に譲渡させ民営化する。こうやって、子ども子育てを民間企業のカネ儲けのマーケットにするというのが新制度の全体像、正体です。    

 《4》子ども・子育て支援新制度は密室保育のグレーゾーンを容認 事故・虐待の危険含む「地域型保育」(「一時保育・預かり保育・保育ルーム・保育ママ」)

 ① 新制度は、民間企業の認可外保育施設の積極的支援を行うとともに、「多様な主体による多様な保育で待機児童を解消する」としています。この「多様な主体による多様な保育」というのもとんでもない曲者でそこには死角があります。グレーゾーンがあるのです。ほとんどが密室保育の形態をとって行われるものだからです。現在でも届出をしないで、利用者との個人契約で実際には非常に広範に行われている一時保育、預かり保育、夜間保育、保育ルーム、ベビーホテル等々の呼称で「多様な主体による多様な無認可保育(大半は無資格保育)」が実際には、行政の指導・監督・掌握がない状態、実態すらわからない状態で高い料金から安い料金のものまで、広範に営まれています。そもそも現行の児童福祉法でも預かる乳幼児数が5人以下の施設には届出義務はない。新制度は、この一部を自治体への届出による認可制に移し一定の補助金も出すとしていますが、保育施設としては保育士や看護士らの資格要件は定めず、研修だけで自治体が認可するというものです。研修を受けて自治体に届け出て認可を受ける事業者もいるでしょうが、新制度が利用者と事業者の直接契約による以上、研修を受けず届出も報告もせず行政の指導監督を受けずに行われる「多様な主体による多様な保育」は不可避に横行します。
  ② ズバリ言ってしまえば、新制度の「多様な主体による多様な保育サービス」にはオモテとウラがあるということです。ここで言うウラとは行政に届出や報告をせずとも、研修を受けなくても、そういう無届・無資格事業者でも営業できるニーズがあり、それに対応して無届・無資格事業者は後を絶たないということです。
 「一時保育・預かり保育・保育ルーム・保育ママ」等の呼称の如何にかかわりなく、「多様な主体による多様な保育サービス」には、行政の指導監督が及ぶかどうかという問題以上に、①個人の事業者との直接契約であるという新制度による保育における根本的な構造転換と②子どもを預けられなければ就労できない非正規共働き世帯・ひとり親世帯(ワーキングプア)の藁にもすがる思いと生活状態から、③国や自治体が公的責任で保障してくれない保育をたとえ不安や問題があっても無届・無資格でもそこに頼らざるを得ないという現実の問題があるのです。
 子どもを預けて働くしかない親にとっては、利用料金の問題が一番です。夜間・深夜就労やダブルジョブ・トリプルジョブや期間就労や登録派遣で働かざるを得ない世帯やひとり親は、公立保育所や認可外保育所その他の施設にそうした親の不規則就労に対応した保育がない以上、「多様は保育サービス」にすがるしかありません。そしておカネがない以上、たとえ無届・無資格でも安い利用料金で預かってくれるところに預けるしかないのです。たとえ「無資格保育」や「マンション保育」でよく事故や虐待が起きる」と知っていてリスクがあるとうすうす思っていて心配でも、おカネがなければ背に腹は代えられないのです。そこから、こうした保育ニーズにつけ込んだ貧困ビジネスとして「安さ」を売り物に営業している悪質事業者も横行しています。先日発覚したベビーシッター事件(マンション預かり保育中の2歳児死亡事故)はこの密室保育の死角で起きました。密室保育で事故や事件がおきるたびに、厚労省や自治体は「預ける先がどんな場所か、どんな保育を行うのか、資格や経験がある人が行っているのか、直に面接して信頼できるかどうか注意してほしい」というのは、公的保育責任という根本責任を負わないで保育を投げ出している国や自治体の責任転嫁というほかありません。
              
 《5》低賃金非正規化の国策と保育の解体・全面的民営化で「保育を受けられない児童」「保育を切り捨てられ奪われても就労せざるを得ない非正規世帯」の激増に拍車。おカネがなくて子どもを預けられないワーキングプアには「貧困ビジネス」の無届無資格の危うい密室「保育サービス」。「子どもの保育よりカネ儲け」のアベノミクス新制度で、子どもの命が危険にさらされる事故や虐待が頻々とひきおこされる!絶対反対で一歩も譲らず声をあげよう!font>

 ① 縷々、長々としつこく書きましたが、結論は明確です。
 根本から突き出されている問題は、国が企業の利潤のために、労働力の総非正規化に突き進んでいることが、保育の解体・全面的民営化と相まって「保育に欠ける」「保育を受けられない」児童の激増を不可避に引き起こしているということです。低賃金労働力として未就労労働力を動員すればするほど、賃金は一層低く切り下げることができ、企業の利潤を引き上げることができるという算段から子育て女性の就労も位置付けられ、そのためにと称して「子ども子育て支援新制度」がうたわれているのです。
 ② だがそのイカサマ新制度看板の大ウソとだまし打ちの帰結として、「保育に欠ける」「保育を受けられない」児童がますます激増する。子育て女性を子どもからひきはがし、低賃金非正規労働・不安定雇用にひきずりこむには、子どもをどこで誰が育てるのかの問題の政策的制度的「解決」が不可欠なのはあたりまえのことです。親にとっては、かけがえのない子どもです。子どもをほうり出して、どうなってもかまわないなどという親は一人としていません。だが、そういうものとしては「子ども子育て支援」新制度は設計されていません。縷々前述したとおり国の新制度方針は公立保育所の全廃と民営化であり、民間企業による認可外保育施設の促進・支援だからです。低収入の非正規共働き世帯・ひとり親世帯には、保育料という点からも、子どもを安心して預けられるかという保育の施設水準への不安・危惧の点からも、公立認可保育所に預ける以外に就労の選択肢はないにもかかわらず、その道は新制度によって断たれるということです。 
 ③ 非正規共働き世帯を天井知らずで増やすというのが国の就労政策であり方針です。しかも、総非正規化でますます必要性が増すばかりなのに必要な公的保育(福祉)はなくす、株式会社にやらせる、国としては子ども子育ての面倒はいっさいみないというのです。国は認可外施設のもとで子どもを命の危険にさらすという選択肢しか親に与えないのです。おカネがないからいかなる保育施設にも預けられない、しかし、食っていくためには夫婦共働きでもひとり親でも就労するしかない中で、子どもを貧困ビジネスの餌食にされるか、子どもをストリートチルドレンにするという問題に行きつくものです。アベとこの国の財界・企業が言っているのはそういうことです。「子ども子育て支援」「待機児童解消加速」と言いながら、新自由主義の破たんの行く着く先は、子どもの命と未来を奪うというものです。
 ④ 誰がそんな選択肢を選ぶか?選択肢はそれとはまったく別のところにあります。子どもの命と未来を奪うような新制度は、「命よりカネ」の新自由主義の末期の姿そのものだ。子どもの命と未来などどうなろうとかまわないというようなこの国を牛耳る一握りの政府財界に「未来の絵図、展望」などあるはずもない。子どもに未来を与えない一握りの支配者たち(1パーセント勢力)はいずれ滅び去る。連中は根本的に脆弱だ。選択肢はこの新自由主義を私たち自身の手でひっくりかえすことだ。
 私たちも子どもたちも生きる権利があり、生き続ける必要がある、それなしに人間社会に未来はない。政府や財界にお願いしてどうこうしてくれという話ではない。政府財界が「よりよい保育」など行うはずがない。それに応じるような政府財界なら、こんな新制度を考えたりはしない。私たちが「国は保育に責任をとれ」「公立保育所を増設しろ」「保育を働く者の手に奪い返せ」というのは、国が保育に責任などいっさいとらない存在であること、保育に責任をとらない政府財界には私たちがとってかわるしかないこと、私たちが国と社会を運営するしかないこと、そうしなければ子どもの未来は開けないことをいささかのあいまいさもなく明らかにするために掲げているスローガンだ。 
  非正規化絶対反対、非正規職撤廃の声を上げよう。子どもが生きられる世の中にしよう。社会を実際には動かし、支えている存在でありながら食っていけない、生きていけない塗炭の苦しみに叩き込まれている労働者人民が生きられる社会にしよう。これは労働者階級としての、労働者階級自身の闘い、つまり私たち自身の闘いそのものだ。その先頭に保育労働者は立とう。政府財界にとってかわり、この国を変え、子どもが育ち、子どもが生きられる社会を作ろう。



//////////  “一握り・・・・ ” /////////////////////



 記事の結語部分で、政府財界を「一握りの・・・」と記しました。この3月に歌手の沢田研ニさんが、以下の新曲を発表しています。反原発ソングですが、この記事で訴えたテーマにも通じるものです。動画と歌詞を以下に掲載します。


一握り人の罪

http://www.youtube.com/watch?v=YfTPL9Wx790&feature=youtu.be


一握り人の罪

沢田研二

東電も信じた 受け入れ側も信じた
安全神話鵜呑みに 一握り人の罪

海が命の漁師は 海が死ぬのを怖れた
村はいびつに裂かれた 一握り人の罪
嗚呼無情

いつか原発廃炉に 除染は何年先
東電は未来型エネルギーに無関心か

国もただこまぬくだけ 被災地に 僕たちに
復興延々と進まず 国は荒むよ

僕らに還して国を
原発に乞われた町
神話を流したのは誰 一握り人の罪

原発に怯える町 原発に狂った未来
繰り返すまい明日に 一握り人の罪
嗚呼無情

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ベビーシッタ―預かり保育・児童死亡事件について

2014年03月23日 | アベノミクス版「子育て支援」批判
  【今回の記事について】 
 シリーズ再開の中での今回の記事は、《「成長戦略」が非正規共働き世帯・総働き世帯を激増・・・・ますます「待機児童」は増え続けるばかり》を予定していましたが、準備中に、表題のベビーシッター事件が起きました。安倍政権が強行しようとしている2015年度子ども子育て支援新制度の実施内容の中に盛り込まれている「マンション預かり保育」中に発生した事故・事件であり、この事件を受けた政府厚労省の対応も、あくまで既定方針通り新制度実施することを前提に、「密室保育」の積極的容認・規制緩和で起きる問題のすべてを利用者の自己責任に転嫁するきわめつきのとんでもないものなので、表題のように予定を変更し、今回の記事を作成しました
 今回の事件と政府厚労省対応をみて想起したのは、21人の乳児死亡事故を引き起こすまで放置されていたちびっこ園事件とその直後にバタバタと発表された『認可外保育施設指導監督基準』、そのペテン性と同基準による認可外保育施設の規制緩和でした。今回の事件発覚後2日後に厚労省が発表した『ベビーシッターを利用する時の留意点』と2015年実施の新制度に盛り込まれようとしているベビーシッターの一部の自治体認可制への移行は、預かり保育=密室保育の容認・規制緩和そのものです。今回の事件は、あらゆる意味で国の保育責任放棄、公立保育所の全廃による保育解体・全面的民営化の根本的問題点が覆い隠しようもなく噴きだしたものです。
  記事としては、長大になっていますので、番号を付して骨子を章建てしていますので、ざっと眺めて、時間的余裕があるときに骨子に沿って、何回かに分けてお読みいただければ幸いです。


事件・事故は政府が強行しようとしている新制度の行きつく先
非正規共働き・ひとり親世帯きりすてのアベノミクス版「子ども子育て支援新制度・待機児童解消加速化」に絶対反対
アベノミクス版「子ども子育て支援・待機児童解消加速化」批判・シリーズ第9回>

 ベビーシッター事件(マンション預かり保育・児童死亡)で走る衝撃、その波紋
 ● 3月17日、ベビーシッターが保育室としている埼玉県富士見市のマンションで預けられていた2歳の子どもが死体で発見されるという事件が発覚しました。インターネットのベビーシッター紹介のマッチングサイトを介して、3月14日に2歳児と8カ月児の兄弟二人を預けた横浜市の母親が、迎えの約束の日夕刻に預けたベビーシッターに連絡してもつながらないため、警察に相談し、警察の捜査の結果、前掲の2歳児(兄)が既に死亡している状態で見つかり、弟の8カ月児は保護、マンションに居たベビーシッターは死体遺棄容疑で逮捕されました。
 ● 捜査関係者からの取材結果としてメディアが報じるところによれば、▲逮捕されたベビーシッターは複数の名前でファーストビットが運営する「シッターズネット」に登録し、預かり保育としてベビーシッターの仕事を行っていた、▲以前にも母親はネットを通じて同じベビーシッターに子どもを預けたことがあり、良い印象を持っていなかったが、頼んだ相手が名前が違うため同じシッタ―だとは思っていなかった、シッタ―の側では以前と同じ依頼者だとわかっていたが、そう気づかれないように、母親から子どもを預かる場には、別人に代理人として行ってもらって、その別人から子どもを引き取って預かっていた、▲そのシッタ―は、1月には富士見市保育課に「マンションの部屋で子どもを預かる業務を始めたい」と相談におもむいて、必要な保育士数や立ち入り検査の説明を受けて申請書類を持ち帰っていたが、2月には既に「みずほ台家庭保育室」としてマンションの住所入りでサイト上で、そのマンションの一室を案内し、実際にそこで子どもの世話をやり始めていたということです。
 ● インターネット上の顔と実体がみえないマッチングサイトでの直接個人契約の中で起きた今回の事件で、実際には子どもができた直後に離婚したシングルマザーや飲食店や風俗店等の深夜に働く女性、複数の仕事に不規則不安定な形で就いて働いている低賃金で収入が低い非正規労働者の人々等々、1時間に1000円前後という安い預かり料金で利用できることからマッチングサイトに集まる利用者が非常に多いことから、不安と衝撃が走っています。

保育は子どもを預ける側の利用者責任=自己責任の問題なのか?
 今回のベビーシッター事件に関しては、子どもの母親に対して、顔も見ていない、信頼できるかどうかの実体もわからないシッタ―との「預かり保育」の契約を指して「子を持つ母親として信じられない」「シッタ―も問題だが責任は母親にもある」という当該母親に対するバッシングに近い批判がネット上にあふれています。
 ● 所轄省庁である厚労省は、3月19日、この今回の事件を受けて再発防止のために、▲「まず事前の情報収集を・・・市町村が出している情報、厚労省所管の公益社団法人「全国保育サービス協会」に加盟している会社のリストの活用」▲「子どもを預ける前に、ベビーシッターに事前に面接し、信頼できる人物かどうか確かめる」▲「シッタ―の氏名・住所・連絡先を確認する」▲「保育場所が自宅以外の場合には事前に見学する」▲「認定ベビーシッターの登録証の確認」▲「万一の事故の場合の保険に加入しているかどうかの確認」▲「預けている間の子どもの様子の確認」▲「緊急時の連絡体制」などの10項目の注意事項「ベビーシッターを利用するときの留意点」を発表しています。【詳しくは、下記の厚労省ホームページ・報道発表資料・3月19日を参照して下さい。⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000040712.html 】
  厚労省の再発防止のための「留意点」も、ネット上の議論の過半の意見も、いずれも保育については当然に子どもを預ける側の利用者責任=自己責任であるという立場で論じているのが特徴的です。しかし、果たしてそうなのでしょうか。
  厚労省の事件再発防止のための『ベビーシッター利用のときの留意点』は国の無施策・保育責任放棄にほかならず、以下の通り、責任転嫁の利用者自己責任論は批判されてしかるべきものです。

 ● ベビーシッターの預かり保育で子どもが死亡するという事故・事件が発覚したことから、厚労省が前掲のように『ベビーシッターを利用するときの留意点』を出していますが、ベビーシッター事業者は「全国保育サービス協会」に登録している百社をはるかにこえる事業者があり、実態はつかめておらず、利用者は膨大な数に上ります。今頃になってやっと、という話ではないでしょうか。しかもその『留意点』の内容は、やむを得ない藁にもすがる思い(※)の利用者にとってはあまりにもよそよそしい他人事風で客観主義的な「留意点」のもの言いではないでしょうか?【※これは「私も(サイトで)検索して藁にもすがる気持ちでお願いしたことがある」と自民党の野田総務会長が副会長をつとめる自民党の「児童の養護と未来を考える議員連盟」の3月19日の会合で明かして今回の事件で働く母親の窮状を訴えた(読売新聞3月20日)のことばをそのまま運用したものです。
 ● 厚労省がその『留意点』で、「まず情報収集を」と挙げている「市町村」(自治体)は、子どもの保育では保育所に受け入れず、公的責任をほうり出して、事業者のリストの紹介程度のことしかせず、「藁にもすがる思い」でベビーシッターを利用せざるを得ない人々に親身になって援助してこなかった、「事業者と利用者の直接契約」を理由に、責任ある助言や調査・紹介をやって来なかった、そういうことはやらないという実際の現実をまずはっきりさせるべきでしょう。以下は、インターネットの紹介サイトを通して行われているベビーシッター利用のしくみのフロー図です。

  べビーシッター →条件→ 紹介サイト ←希望← 親(利用者)
            ①料金・日時など
            ②当事者同士で交渉
            ③契約成立後、子どもを預ける 
 この上のフロー図の【紹介サイト】を【市町村(自治体)】に置き換えて考えて下さい。おかしな話ですがそうしても特に違和感はありませんね、ネット上のサイトと役所の窓口の違いはあるが、違いは基本的にそこだけであって、いまの実際の役所に何かを期待することはほとんどできないからです。それが「福祉(保育)は自治体の実施義務」「福祉(保育)は自治体の公的責任」という公的責任を投げ出して、事業者と利用者の直接契約に委ねている現実のあるがままの姿、実体です。紹介サイトの役割と自治体の役割には実質的にはほとんど変わりはないのです。だから前掲フロー図で「置き換え」て考えていただいたのです。おまけに自治体はそこに足を運ばなければ話は進まない。夜間や深夜の仕事や不規則な仕事について働いている実際のシッタ―利用者にとって半ば難きを強いるような話です。
 ● ネットの紹介サイトに頼らざるを得ない事情があるということです。ネットで検索するしか子どもの預け先を見つけられない。おカネがないうえに就労時間等の都合と適合する施設がなかなかみつからない厳しさの中で起きている出来事なのです。ベビーシッターによる預かり保育や一時保育、夜間保育を利用せざるを得ない利用者の切迫した保育事情に対して国はどんな保育政策を出してきたのか、何もしてこなかったではないか、このことこそまず根本責任として問われるべきではないでしょうか。
 ● 同じく厚労省の『留意点』が挙げる「全国保育サービス協会」に登録されている事業者かどうかの情報の活用という点も同様です。同協会は厚労省所管の公益社団法人です。認定ベビーシッターという協会独自の「資格制度」を持っているが、保育士や看護士、幼稚園教諭のような国の法律で定められた資格や都道府県の試験に合格して得ることができる免許に基づく制度ではありません。「認可外保育施設」として行政に届け出て報告し立ち入り検査を受け指導監督を受けることは義務付けられてはいません。つまり、資格制度という点でも、法律という点でも、従って行政の指導・監督・関与・干渉という点でも、ベビーシッター業は現状は、すべて無認可、すなわち無規制・放任そのものなのだということです。【2015年度に実施される子ども子育て支援制度ではベビーシッター業務の一部を市町村の認可制とし、所定の研修を受ければシッタ―事業者に一定の補助金を出すとしていますが、国家試験による保育士や幼稚園教諭のような資格や看護士免許の取得ではない研修受講終了という非常に緩やかな基準で、現状の無認可のベビーシッター業を市町村が「認可」するというものにすぎない。公立保育所を基準とした認可保育所の「認可」とは意味がまったく違います。だから先回りして言えば、2015年の「子ども子育て支援新制度」実施のおける「ベビーシッターの一部の認可制への移行」で現状はほとんど変わらない。国には基本的に無規制・放任を変える気もないのだ。国はベビーシッターに公的責任をとらない、いっさい責任を取ろうとしていない。だから今頃になってやっとの『留意点』提示であり、今回の事件が起きるまでろくに実態調査していない。基本的にすべて「留意点」の内容が物語るように「注意しろ」「信頼できるかどうか判断しろ」「確かめろ」「預けている間も子どもがどんな状態かチェックしろ」とすべて「利用者の自己責任」に転嫁しているのです。】
無認可保育で21人の子どもの死亡事故をちびっこ園グループがおこすまで指導監督に腰を上げなかった政府・厚生省
 ● 今回のベビーシッター事件で思い起こすのは、ちびっこ園事件です。「ちびっこ園事件」というと一つの一回の事件のように聞こえますが、全国チェーン展開をしているちびっこ園グループでは、1979年から2001年までの22年間で21人の乳幼児が次々と認可外保育施設でうつ伏せ死(窒息死)等で死亡していたのです。
 ● ちびっこ園は認可外保育施設でしたが、低料金、24時間保育、年中無休を基本に、月預かり、短時間の一時預かりから夜間保育まで、公立保育所を中心としたそれまでの保育施設ではフォロ―、カバーしきれない延長保育や夜間保育、日曜保育、一時預かり、期間保育等々の縁辺領域の保育を商機として、「便利さ」を売りにして大都市圏に系列チェーンを伸ばし、2001年度には全国で66の保育所(ベビーホテル)を有し年商25億円に達するまでになっていた民間企業です。低料金、夜間保育、24>時間保育といった実際の保育ニーズがあって「人気があった」のも事実ですが、「福祉(保育)はカネ食い虫」という歴代自民党政権の保育削減政策から国がそうした保育ニーズに必要な予算配分・施策措置をとる公的責任を拡大しないことから、保育を「カネ儲けのフィールド」としたちびっこ園が台頭・伸張したのです。国による保育責任の放棄と国が放棄し放置している領域への営利目的企業の進出の放任の問題はちびっこ園事件を捉え返す場合にあいまいにしてはならない問題です。実に22年間にわたって、21人の乳幼児の命が失われている、そのかん国は何もしなかったということです。
 ● このちびっこ園西池袋店の事件の前年の2000年1月から2月にかけて神奈川県大和市の24時間年中無休の認可外保育施設・スマイルマム大和ルームで、園長の暴行虐待によって、意識不明・硬膜下出血で1歳8ヵ月の男児、頭がい骨骨折・頭がい内損傷で2歳2ケ月の男児が相次いで死亡しています。その後の捜査の結果で開園直後の1年5ケ月の間に同園には計63人の幼児が預けられ、そのうち約半数の31人がケガをしたり精神的後遺症を受けています。保育施設の園長が暴行を園児に加えて死亡させるという看過しがたい大事件が起きていても、「園長の不適切な個人的資質の問題」として認可外(無認可)保育施設に潜む危険性とその制度上の原因にメスを入れて踏み込むことはせず、逆にそこに蓋をして、隠ぺいし、ちびっこ園で21人目の死亡事故・犠牲者がでるまで国は動かなかったのです。
 ● ここではちびっこ園事件を取り上げますが、ちびっこ園での21人目の乳幼児死亡事故(ベビーホテル・ちびっこ園西池袋店、生後4カ月男児の窒息死)が起きるに至り、はじめて国・厚生省が動き、全国の系列保育所に各自治体が立ち入り調査が行われました。
 ● ちびっこ園西池袋店の4ケ月乳児窒息死事件とは、ベビーベッドに寝ていたその乳児の顔に、横で寝ていた乳児が覆いかぶさっていたのを保育者が発見し、病院に運ばれたが翌日未明に亡くなった事件です。窒息死の疑いが死因と判断されています。死亡した乳児が寝かされていた部屋では3つのベビーベッドに2人ずつ、6つのベビーベッドに1人ずつ計12人が寝ていましたが、保育者はついていませんでした。国の定める基準では、保育所内に常勤職員が8人必要なところ、同店では当時、0歳児6人、1歳児23人を含む計63人の園児を、園長以下の正規社員4人、臨時従業者3人でみていました。そして事故がおきた時間帯には39人の乳幼児が預けられていたが、保育者は3人しかいませんでした。
 ● ちびっこ園の系列66店の保育所への各自治体の立ち入り調査で判明したのは驚くべき実態でした。事件後の家宅捜索では保育所から「収入を上げろ」と書かれた標語が押収されています。グループ経営の会社社長は徹底した経費削減を行い、乳幼児への食事やおやつも切り詰めていた。手っ取り早く利益を上げる方法として、同じ面積に最大限子どもを多く詰め込むこと、入園希望者を断らないこと、保育に関わる人件費を削減するために少ない人数でやりくりすること、24時間保育であることから実質24時間勤務が多い人では月に9回もの回数で職員に強いられていました。66か所のうち57か所で保育従事者数や施設に問題があることが発覚しました。業務上過失致死で立件されたのはわずか4件だが21件の死亡事故を起こしていました。ちびっこ園西池袋店での窒息死事故同様、2人の乳児を1つのベビーベッドに寝かせていたちびっこ園川崎での乳児死亡事故の民事裁判では提訴後もちびっこ園は全国で1つのベッドに2人の乳児を寝かせる慣行を続けていたことが明らかになりました。
 ● ちびっこ園事件(21人死亡)、スマイルマイム大和事件(2人死亡)が社会的に明るみに出て、厚生省は、重い腰を上げて、2001年10月『認可外保育施設指導監督基準』を達示するにいたりました。確かに、この『認可外保育施設指導監督基準』からは、再発の防止のために ▲ 届け出制によって認可外保育施設を把握し、>▲ 認可外保育施設に関する情報の提供で利用者が適切に施設を選択できるようにする、▲ 悪質な認可外保育施設を排除する等の保育行政上の必要性の認識がーあまりにも遅きに失するとはいえー一定程度は窺えます。
 しかし、核心は、これほどの重大事件にいたるまでの認可外保育施設の放任・放置による深刻な弊害にその発生原因までメスを入れて「規制」をかけたというよりは、公立保育所を含む認可保施設に順守・履行が課されている『児童福祉施設最低基準』よりもはるかに緩やかな「規制ならざる規制」を『認可外保育施設指導監督基準』とすることによって、認可外保育施設の当時の保育水準を追認・黙認したといわれても仕方がないものです。『児童福祉施設最低基準』に達しないまでもそれに準ずるような指導監督基準を設けて保育水準を引き上げて改善するのではなく、民間企業が保育にいっそう参入しやすいガイドラインを積極的に設けた認可外保育施設の規制緩和というのが実際のところなのです。
 ● 2001年10月の『認可外保育施設指導監督基準』のこの問題点をはっきりさせるために、現在も認可保育所に課されている『児童福祉施設最低基準』と『認可外保育施設指導監督基準』の違いについては、この際、明確にしておくことは重要と考えます。
  施設面積や園庭の設置などの義務付け(認可保育施設)と不問(認可外保育施設)の顕著な違いもありますが、その最たる違いは保育従事者の数と従事者の資格の義務的規定の有無です。認可保育所では乳児3人に対して保育士1人、1・2歳児6人に対して保育士1人、3歳児20人に対して保育士1人、4歳児以上30人に対して保育士1人と最低基準を設け義務付け、常時2人以上の保育士の配置を義務付けています。保育従事者は全員保育士資格を有するものでなければなりません。
 これに対して、認可外保育施設では、保育従事者は、全員が保育士であるという必要はまったくなく、保育士は従事者のおおむね3分の1以上であればよい というものです。
  認可外保育施設という制度の根幹に関わる問題点として、要するに、認可外保育施設では、子育ての経験や保育に関する学習がなくても資格なしでも保育という仕事にはつける仕組みに、実際にはなっているということです。さらに専門職=保育士資格者を保育従事者の要件にしないだけでなく、民間が取り組むことを前提に経営コストを考えて、常勤を保育従事者とするよりも非常勤・パート・アルバイトや派遣社員も使えるようにしているということです。つまり『認可外保育施設指導監督基準』で位置づけられた認可外保育施設とは、基本的に営利事業者、民間企業が保育へ参入してカネ儲けしやすい仕組みとして制度化だということです。

2015年度実施の新制度での「預かり保育の自治体認可」は密室保育の容認・規制緩和だ!今回のベビーシッター事件の再発防止にならず、再発・激増を招くものとなることは明らか。『認可外保育施設指導監督基準』の二の舞いはゆるされない!                       ● 前述したように、歴代政権と国は「保育はカネ食い虫」だとして一貫して保育への財政の投入やそれにつながる新たな政策支援にはネガチブで、逆に保育への税金投入を削り圧縮することばかり考えてきました。保育(福祉)の公的責任を後退させ、公的責任を縮減した領域に民間を参入させ、最終的に事業者(民間企業)と親(利用者)の直接契約、利用者の自己責任を基本原理とする制度を目指してきた。
 ● 『認可外保育施設指導監督基準』では厚生省がどんなに「事件・事故の再発防止」と説明しようと、原因にメスが入らず、制度的には何も現実の実態が変わらない以上、再発は不可避でした。現に、認可外保育施設では保育施設での乳幼児死亡事故はその後も頻発・増加し、民主党菅政権下で打ち出され野田政権時の自公民三党合意で立法化された2015年度実施の「子ども子育て支援新制度」に向かう動きの中でますます激増しています。厚労省2014年1月プレスリリースの保育施設事故報告
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000036226.pdf
によれば、2013年一年間の認可保育施設と認可外保育施設における乳児の死亡事故件数と園児10万人当たりの死亡事故発生件数にみる発生率は以下の通りです。
《認可保育施設》 施設数24038 園児数221万9681人 乳児死亡事故4
           園児10万人当たりの乳児死亡事故件数 0.1802
《認可外保育施設》施設数7739 園児数184万9592人 乳児死亡件数15
           園児10万人当たりの乳児死亡事故件数 8.109
 ごらんの通り、認可外保育施設における乳児死亡事故発生率は認可保育施設の45倍です。ちびっこ園やスマイルマム大和のような事故を2度と繰り返さないためにとして当時の厚生省が定めた『認可外保育施設指導監督基準』はほとんど意味がなかった、否、ここ数年間の経過から明らかなように、それが認可外(無認可)保育施設の規制緩和だったために、むしろ保育事故の頻発・多発を促進するものとなったということこそが確認されねばなりません。国は、認可外保育施設に対する必要な基準の策定においてもその適正な基準にのっとった施設の公立・民間での増設や拡充に国としての責任をとらなかったから、こうなった。国が保育に責任をとらずに民間参入に丸投げし、無施策・放任・放置を決め込んでいるから、こうなり、ますます死亡事故を引き起こしているということです。

 ベビーシッター事件はアベノミクス版「子ども子育て支援、待機児童解消加速」の行き着く先そのもの 
  

 ● 話を今回の事件と厚労省の『ベビーシッター利用のときの留意点』、2015年実施の子ども子育て支援新制度におけるベビーシッター等による預かり保育の自治体認可制移行の問題に戻します。安倍政権、厚労省は、ちびっこ園事件のような事故・事件の再発防止と銘打って2001年当時の自民党政権と厚生省が行った『認可外保育施設指導監督基準』と同じ二の舞を今回のベビーシッター事件(マンションでの預かり保育中の死亡事故)でやろうとしているということです。
 ● 2001年当時は認可外(無認可)保育施設の放任・規制緩和!2014年3月の厚労省『留意点』と2015年新制度実施では、認可外保育施設の中でももっとも実態がみえにくい、いかなる意味でも公的責任がいっさい介在しない個人直接契約で行われているベビーシッター預かり保育というグレーゾーンの法的規制なき追認・放任、規制緩和・自由化です。
 ● 安倍首相は、2013年4月成長戦略スピーチで「子ども子育て支援制度の前倒し実施、待機児童解消加速化」を打ち出し、その中で横浜方式の全国化として小規模保育施設の促進と多種多様な保育サービスを重視し、ビルの空き室の利用、多様な預かり保育の活用を具体的に提示している中で、このベビーシッター事件が起きたことは、恐ろしいほど、象徴的です。
  安倍首相は「あらゆる主体」「あらゆる手段」「あらゆる方法」を政策的に動員して、「子ども子育て支援制度新法の前倒し実施、待機児童解消加速化」をスピード感をもって全力で進めると明言しています。「要はやるかどうか、いっさいはやるかどうかだ」とまで言っています。安倍が言っていることは、どんな主体であろうとどんな形態であろうと、何でも「認可」する、というに等しい話です。これほど無責任で理不尽、乱暴な焼け野原路線はありません。この全面的な、無軌道な規制緩和の動きの中でベビーシッター事件は起きるべくして起きたのです。

 「子どもの命と未来より企業のカネ儲け」「福祉の最後の砦・公立保育所全廃」の保育解体・民営化ゆるすな!公立保育所を増設せよ、非正規共働き、ひとり親世帯に対する保育は国の責任だ。総非正規化と福祉きりすてのアベをたおそう
● 保育をめぐって眼前で起きていることのすべては、「命よりカネがすべて」の新自由主義とその破たんがひきおこしている事態です。大恐慌・大不況のもとでこの国の政府は、企業の利潤を生み出すものにはカネ(人民の血税)は湯水のように注ぎ込むが、また利潤を上げるためにはとことん賃金・労働時間等の労働条件を切り下げ、低賃金非正規労働力を際限なく拡大し、企業の利潤につながらないことにはビタ一文カネ(人民の血税)は使わない。
 ● 総非正規化の国策で、保育が死活的に必要な共働き世帯を激増させておきながら、その圧倒的過半をなす不安定雇用・低賃金不規則就労の若い非正規共働き世帯の保育を切り捨てているというのが待機児童の激増の核心問題だ。
 ● ひとり親が深夜や夜間、また不規則な仕事に就かざるを得ないのに、そうしたひとり親の子どもの保育の深刻な苦しみにも、国は必要な公的責任施策をとらない。だからネットの紹介サイトでのベビーシッターによる預かり保育に不安があってもすがらざるを得ない。
 ● 子ども子育て支援新制度は、認可保育施設への運営費補助の打ち切りによって自力で運営をしのがざるを得ない自治体の公立保育所を兵糧攻めにして、一定の補助金が出る幼保連携型認定こども園への移行に誘導し、公私連携型法人として株式会社に自治体施設を譲渡、開放させることで公立保育所を全廃しようとまでしている。政府財界が進めているのは、保育の解体・廃止であり、福祉としての保育の最後の砦となっている公立保育所を抵抗勢力たる労働組合もろとも全廃することです。公立保育所さえなくしてしまえば、『児童福祉施設最低基準』などという企業にとって厄介な妨げとなっている認可基準などなかった話にでき、「認可保育所への入所」希望も立ち消えし、「待機児童問題」も無視できると考えています。「保育」はサービス、カネで売り買いする商品、商品を選択するのは利用者の自己責任、すべては株式会社と利用者の直接契約で「子どもの命よりカネがすべて」の展開ができるという話だ。そのために歴代政府が児童福祉法改悪を続け、小泉が規制緩和をやり、保育施設における保育従事者中の保育士の割合も、園児数に対する保育士と保育従事者の定数配置もなしくずしで緩和してきた。そのために一つの営利企業の保育施設で相次いで乳幼児死亡事故や虐待による死亡事件が起きても、民間企業が参入しやすい認可外保育施設の促進政策を優先し、放置・放任を決めこんで推進してきた(2001年『認可外保育施設指導監督基準』なる無規制要綱)。その仕上げとして、公立保育所の全廃・民営化、認可外小規模保育の促進と拡大、密室保育まで追認・放任・促進するアベノミクス版「子ども子育て支援、待機児童解消加速」を強行しようとしているのです。

 ● だが起きていること、これから起きてくることは、公立保育所の解体・廃止をめぐる保育労働者の職場的団結と闘いへの決起の攻防であり、カネがなくて保育を受けられない非正規共働き世帯とひとり親の不安と憤激である。国とアベがどんなメチャクチャをやって、保育を解体しようとしても、子どもがいる以上、保育は必要であり実在する。どんな社会であれ、次代を担うのは子どもである。その子どもに保育を与えないような国、政府には、そもそも次代の展望などあり得ない。政府が保育の責任を取らず、子どもたちの命と未来に責任をとらないということは、政府や財界には未来への確信など何ひとつないということだ。支配階級にはもはや統治の資格もなければ、その力もないということがここにハッキリと示されている。世の中、社会、この国を変えよう。保育をめぐる攻防でハッキリさせられねばならないのはこの問題だ。
 ● まず、眼の前のアベをたおそう!そのためにも職場で声を上げよう。
  鍵をなしているのは、職場で保育の仕事に誇りと使命感をもって結束している保育労働者の闘いだ。新制度は、公立保育所に働く保育職員をいったん解雇し、株式会社が実質経営する公私連携型幼保連携型認定こども園の定める(現在の公立保育所の職場の労働条件よりはるかに劣悪な)労働条件・雇用形態に従う者を再雇用することを狙っている。国鉄分割・民営化の手法で保育民営化、低賃金非正規化をやろうというものだ。それは現在の公立保育所保育職員にとってはクビきり・労働条件切り下げ・生活破壊との死活的攻防だ。保育労働者の労働条件・雇用形態は一変するだけではない。労働条件、労働基本権がないがしろにされるとき、起きるのは園児の保育事故、安全崩壊だ。保育労働者にとっては、自分と職場の仲間と家族のためにも、園児のためにも、一歩も譲れない。
 実際には、この新制度に「決まった以上戦っても無駄」と屈して、声を上げることに反対し逆に声をあげさせないために現場の抑圧に回った組合幹部もたくさんいる。公私連携型法人の経営陣の従順な僕(いもべ)として「生き残る」保身をはかろうとしているということだ。連合自治労も日本共産党の影響下の全保連(全国保育運動連絡会)も「子ども子育て支援新制度」の法律が成立して以降は「反対」を投げ捨て、「よりよい保育」「よりよい制度に」で「子ども子育て会議」に参加し、ああだこうだと政府財界企業と話し合うという体たらくの屈服と裏切りに明け暮れている。
  それでも少数でもまっすぐに絶対反対で闘う仲間がいる限り、依然として、保育職場の現場は、福祉の最後の砦として政府財界と対峙し続けることができる。「反対」の声を上げる仲間の力で労働組合を裏切り者の御用幹部から奪い返そう。要は声を上げれば攻防は爆発し、一歩も譲れない対立は公然化・全国化するということです。
  新制度の受け皿として、東京都認証保育所や横浜保育室、大都市圏の民営保育園のシェアを握り、新制度の小規模保育に手を伸ばしているJPホールディング・株式会社日本保育サービス代表の山口洋(※)がかなめに座っているのが「子ども子育て会議」だ。そこへの参加とそこでのおしゃべりを方針としているような既成労組、既成保育運動は絶対にぶっとばせる。【※山口洋は、▲24時間保育・預かり保育・一時保育を保育参入・会社創立当時からカネ儲けビジネスでめざす保育の理念にしてきた輩であり、▲系列アスク保育園は園長も保育主任も契約社員で月給十八万円~二十二万円、パート・アルバイトは時給が最低賃金プラスわずかのアルファの900円前後であり、短期間でやめる職員がどこでも相次いでいる名うてのブラック企業だ。】 この山口洋のような連中との会議への参加と協議を「新制度」への方針とし、現場では「反対」の声をおさえこむことに躍起になり、職場の保育所を民間企業に明け渡すような既成の組合幹部や運動指導部はぶっとばせばいいのだ。
 ● 公立保育所で保育労働者が砦である職場を株式会社に明け渡さない限り、アベノミクス版「子ども子育て支援新制度」は破たん・挫折する。そのために労働組合の闘いを復権しよう。それは「新制度」がめざすデタラメ極まりない無責任・無軌道な保育きりすての諸施策を土台からひっくり返す反乱の合図となる。それはまともな保育を一番必要としている最大の当事者であるにもかかわらず子どもを保育所に入所させることができず、切りすてられている非正規共働き世帯、ひとり親の闘いを必ず爆発させる。それは非正規職撤廃、ワーキングプア化反対・貧困対策要求の広大な闘いとして広がる、その大きな水路になっていく。
 ● 国と自治体は非正規共働き世帯、ひとり親世帯の保育に責任をとれ!これは正義の当然の要求である。そしてこの要求は「命よりカネ」「ウソと騙し打ち」の政府にお願いしたり政府と一緒に話し合って事態の改善をはかるようなことではないことも明らかだ。示されている事態はどこを見回しても、国(政府・財界)と私たちが一歩も譲れない非和解の関係にあるということだ。非正規職撤廃、国は保育に責任をとれ、政府が責任を取らないというなら我々がとってかわって我々自身でやる、これは労働者階級の生きさせろの闘いだ。奪われた保育の権利を連中から取り戻す反乱だ。その先頭に保育労働者は団結して立とう。声を上げよう。


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実施まで一年!「子ども・子育て支援新制度」、実施以前に破たん

2014年03月05日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

        

 実施まで一年!「子ども・子育て支援新制度」、実施以前にもう破たんしつくしている<o:p></o:p>

 ・・・・・・・新制度の「財源不足」、そこには本質的、歴史的な意味がある

  2015年4月には、2012年の当時政権与党だった民主党と自民党・公明党の合意に基づいて成立した「社会保障と税の一体改革」法とその一環として法律化した子ども・子育て支援新制度が、いまの自公政権のもとで実施されます。だが掛け声や位置づけの前ぶれは大きいが、いまだ確たるパッとした絵図はどうも見えません。なぜか?新制度がうたうものを実現するにはあまりにも程遠いメニューがああだこうだと並べられては行き詰ることを繰り返しているからです。そして何よりも財源の問題です。

 
  2015年度実施まで一年というのに、にもかかわらず、立法当時においても既に顕在化していた新制度実施に関わる財源不足の問題は、政権が自民党(自公)政権に代わった後も何も解決のめどは立たないままです。つまり二年間もああだこうだの議論は続いているが、肝心要の制度実施の財源問題は放置されているということです。
<o:p></o:p>

 

 政府が決めた新制度は4000億円も財源不足、解消されぬまま実施 ?!


  新制度に必要な財源は最低に見積もっても1兆1千億円と見込まれているのに、消費税の増税分から新制度に充填される額はどうあがいても7千億円以上を見込めないというのです。何なのだ、これは!4千億円(必要額の36%)もの財源不足!民主党政権の場合も今の自民党政権の場合もどこをどういじっても試算結果は同じ結論に行き着いています。

 ※2012年7月19日安住財務大臣(民主党)の松あきら議員(公明党)の質問に対する答弁今回の修正法案では1兆円の財源が必要だが、政府のもともとの法案で財源として確保している7000億円を超える3000億円については、現時点では『足りない』『ねん出するとしかお答えできない』『どうやって足りない3000億円を確保するかは私にもまったくわからない

※2014年1月14日政府が公表した試算結果『2015年度から始まる子育て支援の新制度で必要な追加費用は最大で1兆1138億円、消費税の10%引き上げで年7000億円が充てられることが社会保障・税一体改革で決まっているが、4000億円を超える不足については財源のめどが立っていない

  民主党ではできなかったが、自民党(自公)にはできるといったものなどという問題ではまったくなかったということです。実施だけは決まっているが、その実施を裏付ける財源に事欠く?! これほど法律、制度として無責任なものはありません。つまりは、財源の根拠や整合性、法律の施行の行程の目算があって検討された制度ではまったくないということです。杜撰な制度設計などということではすまされない。こんなものが法律ですか?これが政府ですか?

儲けを産まない保育はきりすて―むきだしの新自由主義の帰結



 
  保育=福祉は制度として廃止し、保育へ国の財政(カネ)は注ぎ込まない、保育は民間に委ね、市場化するということを基本方針とするという一点で、ただそれだけで企画・立案されたものにすぎないからこういうことが起きた

 
  みなさんも、思い起こされていることでしょう。民主党の菅政権のときに、それまでの保育政策の経過・脈絡からは異相のものとして唐突に掲げられた政治家と官僚の机上の作文が「新たな雇用とマーケットの創出」「成長戦略と連携して」という「子ども子育て新システム」でした。民主党政権の瓦解から政権を担った自民党(自公)政権でも安倍首相は「2013年4月成長戦略スピーチ」の最大の目玉として「女性の活力の爆発」「子育て支援=女性の就労支援」と「待機児童解消加速化プラン」を掲げて、「子ども・子育て支援新制度実施の2015年を待たず前倒しで推進」と宣言していました。だが、安倍首相スピーチからまもなく1年、この1年間に「前倒し」で「実績」として進捗したものは何ひとつない。安倍首相が「待ったなしで」と言おうと「あらゆる政策手段を動員し」と叫ぼうと、「前倒し」で進んでいない。これを「加速化する」「スピード感をもって」というのだから、もう破れかぶれでメチャクチャなことをやるということ以外ではありません。<o:p></o:p>

  近々与党と政府子ども・子育て会議に提示される政府原案では、消費税の増税分から子ども子育て支援に投入するのは7千億円とあらためて明示し、この7千億円のうち4千億円は保育利用定員を40万人分増やす「量の拡充」に充て、残り3千億円を保育所・幼稚園の職員給与の2.84%アップ等に使うが「質の改善」「職員給与の社会標準並みまでの大幅の改善」は行わないと明記する模様です。ここから見通せることは、公立認可保育施設の増設や支援など毛頭考えておらず、大きな問題となっている保育職員の著しい低賃金、劣悪な労働条件や施設の面積・設備の改善など実施の気はまったくなく、ビルの空室の活用による超小規模保育、育児経験者がマンションの一室で1~2人で多数の子どもを預かる地域保育、認可外保育支援で企業の参入で東京の認証保育所や横浜市の横浜保育室のような小規模保育施設を増やすということだ。安倍政権の「保育定員40万人増」とは文字通り、「子どもを放り込む入れもの」を40万人分そろえさえすれば国の仕事は終わりだと言わんばかりのものなのです。  

 民主党政権の「新システム」にせよ、民自公合意による「新制度法」にせよ、安倍政権の「子育て支援・待機児童解消加速化」プランにせよ、そこに貫かれているのは財界・民間企業の意思、本音です。成長戦略とは企業のカネ儲けがすべての推進動機となっている新自由主義そのものです。新自由主義とは、企業(資本)は利潤を産むものにだけカネを注ぎ込み、利潤を産まないものにはカネはいっさい用いず、これまで注ぎ込んでいたカネも利潤につながらない、又はわずかの利潤しか産まない以上バッサリ切り捨てるということです。<o:p></o:p>

    「子ども子育て支援新制度」の実施財源の4000億円もの財源不足として表れている問題とは、国の財政的破たんの危機から用立てるカネがないという問題以上に、新自由主義のむきだしの姿として、(医療や年金や介護もそうですが)児童福祉、社会保障としての保育は廃止する、切りすてる、そこにはカネはかけないという問題です。<o:p></o:p>

 

政府が決断・決定すればできること―私たち自身の政府が必要です

  4000億円という財源(予算)の問題は、莫大な額と言えばそうですが、しかし、たかが4000億円という問題でもあります。実際には4千億円を用立てたとしても1兆1千億円でも解決しない問題はあります。要は保育に財政を投入するかどうか、真に必要だから投入と決めれば4千億円であろうとそれ以上であろうと、簡単にできる規模です。2020年東京オリンピックのために投入されるカネの総額を考えて下さい。安倍政権がやろうとしている企業減税、法人税減税で減らされる税収の総額を考えてみて下さい。動かせる財源(カネ)はありあまっている。だがそうしない、国民から見れば切実に、緊急に必要なのに絶対にそうはしない。新自由主義の政府にとって保育はカネ儲けにはなじまない、相いれないからです。

 
  みんなが感じている通り、国は保育を完全に放棄し投げ捨てた。だが投げ出そうと切り捨てようと厳然として保育の必要性は社会的に実在する。これは新自由主義の破たん、ブルジョア政府の統治の破たんです。どんな社会であろうと子どもは次代の社会の担い手であり、社会の未来です。国民が必要とするものを実現するのが政治であり政府です。破たんした新自由主義は根本から打ち破るしかない。国民が必要とするもののために働かない政府は取り替えるしかありません。国民のために働く政府が必要です。古くて新しい現代的テーマ「人民の、人民による、人民のための政治」を取り戻すということ、つくりだすということです。実際に社会を動かし、社会を支えている労働者階級を中心として私たちが、社会に寄生して利権と支配をむさぼっている一握りの資本家にとってかわる必要があるのです。国と社会に次代を担う若い世代とその子どもたちの保育の問題を政府・資本家の連中が投げ出した、取り組まないということは、未来は私たちが守るしかない、闘いとり、つくりだすしかないということなのです

 保育の問題とはそれほどに大きな問題です。もうハッキリしていると思いますが、これは、政府に私たちがお願いしたり、交渉して実現できることではありません。政府をひっくり返して、私たち自身の力で実現せねばならないことです。何よりも強調したいのはこのことです。<o:p></o:p>

 

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「資格者が半数でも認可、ビル空室利用の小規模保育」がメイン  

2013年09月23日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

 シリーズの間隔がだいぶ開いていますので、これまでの連載記事の骨子を以下に列記しておきます。ごらんになりたい方はカテゴリー( アベノミクス版「子ども子育て支援」批判 )で以下の記事タイトル骨子のものをお読みください。

①  安倍首相、「成長戦略」スピーチで「3年間抱っこし放題」放言
  

 株式会社の認可保育所全面参入、認可外保育所拡大と小規模保育の促進
  安倍首相「横浜方式は全国化したいモデル」株式会社日本保育サービスの進出
 

④  「横浜方式」批判 -「潜在待機児童数1764名」のどこが「成功モデル」?
⑤ 「民間活力の爆発」=保育民営化で民間も自治体も「ブラック企業」化!
⑥ 安倍「待機児童解消加速化」プランは「何でも認可」の名ばかり「保育」 
 

 

全国351自治体が国の「待機児童解消加速化」プランに参加(厚労省8月8日発表)

 厚生労働省が8月8日、「待機児童ゼロ」をめざす自治体への支援策『待機児童解消加速化プラン』に全国351市区町村が参加すると発表しています。同プランは、今春4月19日に安倍首相が行った「成長戦略スピーチ」で「2014年度までの2年間で待機児童対策で20万人分の受け皿を整える」、全国最悪最多の待機児童数から3年がかりで今年度「待機児童ゼロを達成した」横浜市をモデルケースとして打ち出した政策を具体化したものです。厚労省は、これで2014年度までに12万人分の受け皿の確保にめどが立った、今後も参加自治体は増える、「待機児童解消加速化に弾みがついた」としています。不足している保育士の確保と保育所整備のために国の支援が得られるが、厚労省は今秋以降は「小規模保育を支援メニューの柱に据えて上積みを目指す」としています。

カネと時間がかかる認可保育所支援ではなく、保育従事者の資格・職員数等の基準をひき下げて小規模保育等の認可外保育の「認可」で「待機児童解消」をはかるというのが『待機児童解消加速化プラン』の中身です

 「待機児童」を多数抱える自治体も潜在的「待機児童」に不安を感じている自治体も、こぞってこのプランに参加し、安倍政権も厚労省も政府「子ども子育て会議」もこの動きをプランの的中とばかりプラン推進を加速させようとしています。しかし、保育現場の職員をはじめとする保育関係者、保育中の児童、待機中の児童を抱える親たちには、不安と疑問、批判と怒りが、このプランをめぐる動きに対して広範に渦巻いているというのが実際のところです。

 核心は、保育士の資格・職員数、設備、保育従事者の職場環境等、子どもを安心して預けられる基準を整えている認可保育所への入所を保育児童世帯・待機児童世帯は切実に希望しているのに対して、現在進められている「待機児童解消加速化」プランは、認可保育所の新設・拡充・増設ではなく、認可外保育の量的拡充をもって「待機児童」対策に充て、そのために、保育士資格・職員数、設備等の保育にかかる基準を際限なく緩和しようとしているところにあります。

 (1)もともと「待機児童」とは、認可保育所への入所を希望しながら、入所できていない保育が必要な児童のことでした。ところが、いま国や自治体はこの「待機児童」の定義をごまかし、不足している認可保育所の増設・拡充ではなく、とにもかくにも保育を受けられない児童を認可外保育であろうとそれを不足分にあてがって、預けられていない子どもの数をゼロにしさえすればいいという考えで「待機児童の解消」を進めようとしています。

 (2)だが、安全で安心できる認可保育所への入所を求めていることに対して、基準を満たさない小規模保育等の認可外保育の量的拡充で対応しようとする政府・厚労省・自治体の「待機児童解消加速化」が、今日深刻な社会問題となっている「待機児童」を解消し得るはずがありません。これは保育を求める世帯の需要と国・自治体の供給のミスマッチとかすれ違いなどということでは済まされません。

  (3)安倍政権と厚労省の「横浜方式の全国化」の鳴り物入りでこのかん宣伝されている「3年前に1552人全国ワーストワンだった待機児童数の解消(ゼロ実現)」の横浜市の実際を見れば、この問題点は一目瞭然ではないでしょうか。
 厚労省の考え方では、横浜市は「待機児童ゼロ」ということになりますが、横浜市には2013年4月に、認可保育所入所を希望しながら入れなかった児童(①市の推奨でやむなく「横浜保育室」等の認可外保育施設に入所させざるを得なかった児童、②認可外保育施設が市の推奨で入所先として内定しているが認可保育所入所希望で内定した認可外施設に入所していない児童、③認可保育所入所の希望がかなえられず親が育児休暇期間をやむなく延長して自宅での育児を続けている児童、④現在親が求職活動中で市の定める入所要件を満たしていない児童)は4月現在1764人もいます。この1764名の待機児童を横浜市はまるまる除外し、カウントしないで、「待機児童がゼロになった」と発表しているに過ぎません。当の横浜市長さえ、「待機児童ゼロ実現」を吹聴しているものの、その同じ会見の場で「実際には保育所に入所できていない待機児童は多数いて、解消されてない」と認めています。

 (4)安倍政権・厚労省や、「待機児童解消加速化」プランに参加している多数自治体が、「横浜方式の実施」で今後も「待機児童解消」を促進するとしているということは、国と自治体は、たとえ《横浜市の場合の実際の現状》のように、認可保育所入所希望で実際には保育を保障されない(享受できない)児童(世帯)がどんなに多数残されようとも、小規模保育等の認可外保育施設で「不足分」を員数として準備しさえすれば、「待機児童解消」についての国や自治体の役目は果たしているというものです
 こんなデタラメな話、おかしな理屈があるでしょうか?にもかかわらず、国とプラン参加の自治体当局は、「これ(「横浜方式」「待機児童解消加速化」プランで行く」というのです。ここから言えることは、認可保育所に入れず、保育を受けられない児童(世帯)は、今後も延々と増え続け、言葉の真の意味で『待機児童』の問題はいっさい解消されることはないということにほかなりません。

“保育士資格にこだわって保育士比率が厳しいままなら「待機児童ゼロは無理」!小規模保育事業の促進による「待機児童解消」では保育士比率を緩めて即効性ある受け皿づくりをやる”(安倍首相・厚労省)

  この「待機児童解消加速化」プランで、強行されようとしている最大の問題は、保育士の国家資格者の割合を「半数以上」に引き下げ、無資格者が半数近くなってもかまわないとする保育の根幹を解体・変容させる規制緩和、いわゆる「保育の質の低下」もやむを得ないとするところにあります。
 前述の通り、安倍政権・厚労省は、認可保育所の増設・拡充にコストはかけられないということから認可外保育、小規模保育への支援を「待機児童解消加速化」の切札に据えています。この認可外保育施設、小規模保育の拡充・全面的促進と表裏一体で進めようとしているのが、保育資格者がたとえ半分でも認可するという保育従事者の無資格者比率の大幅拡大、規制緩和にほかなりません。

  (1)いまだ記憶に新しいところですが安倍首相は4月19日の「成長戦略スピーチ」で「待機児童解消加速化」プランと並んで「保育士不足の現状の改善」「国家資格を取得しながら保育で就労していない保育士が多数いる現状や出産・育児等の事情で保育の仕事から遠ざかった保育士がその後も復帰したがらない現状の改善」「そのための保育士の給与等の処遇の改善」を挙げていたのでした。だが、国の小規模保育等の認可外保育施設の支援に手を挙げた企業や法人は多いが、実際にはどんなに保育士の募集をかけても施設経営・事業運営者が提示する給与等処遇では保育士は集まりません。公募の際の給与額が全国的一般的な平均給与水準よりかなり給与実態が下回っているからです。たとえ保育という仕事の重要性の認識や意欲があっても仕事に打ち込む献身性・責任感・予想される苦労、生活の大変さとはかりにかけざるを得ない、そして何よりも最低賃金や最低生活賃金では食っていけないからです。
  ところが、政府は、この根本的なところで「保育士の給与等処遇改善」について本気で取り組むのではなしに、反対に、4・19安倍首相スピーチでの聞こえがいい参院選目当てだけの公約を早々と放り出し、逆に「保育士の資格や資格者の職場比率にはこだわらない」「保育士の国家資格なしでも可」と易きに流れ、「無資格保育が半分」でも「容認」「認可」という形で、保育士不足の問題と小規模保育等の認可外保育の大量促進の問題を「解決」しようと考えています。
 

   (2)それは8月29日の政府「子ども子育て会議」に事務局が提出している「小規模保育の認可基準」案にも端的に現れています。この「子ども子育て会議」では、委員から「保育士の資格、職員数に関わる基準」を下げることは「保育の質の低下につながりかねない」と懸念の意見が出され、結局「保育所同様に全員が保育士というのが望ましいが、困難である」ということから、「それ(2分の1)以上に引き上げていく」という前提で、「小規模保育の保育士割合を2分の1以上とする」という方向性が確認されています。

 【2013・8・29子ども子育て会議 事務局案】

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/kodomo_kosodate/b_4/pdf/s1.pdf

 そこでは、今後注力する小規模保育事業(0~2歳児対象、定員6~19人。ビルの一室でも開業できる規模)について、複数の認可基準を設け、
  《A》認可保育所分園に近い類型
  《C》個人で3人までみる「家庭的保育者」複数による「家庭的保育」に近い類型
  《B》それ以外:前《A》《C》の中間類型
が提示され、
 保育従事者に占める保育士資格者の比率については、
  《A》認可保育所基準。全員が保育士。
  《C》一定の研修を受けた人であればよしとする。
  《B》認可基準は保育士が2分の1以上。
と提案が出されており、9月20日の「子ども子育て会議」でも、この方向性が確認され、同日の確認をもって、「子ども子育て会議」としての「小規模保育の認可基準をめぐる検討」(討議)は終了しています。

  ここには《A》《B》《C》の3類型の案が併記されていますが、「子ども子育て会議」事務局は、メリット・デメリットのコメントで《B》類型に誘導しており、多くの認可外保育所も《B》類型への移行を志向しています。つまり、眼目は「保育士資格半数でも小規模保育事業を認可」にあるということです。最初から結論ありき、《B》類型で行くために、《A》と《C》を併記してみせただけです。《A》は10割、《C》はゼロ、中を取って「半数でも可」とでもいうようないい加減な認可基準というしかありません。

政府・厚労省と全国自治体が推進する《B》類型・小規模保育とは、東京都認証保育所、横浜市保育室より、さらに認可基準のハードルを下げるものです。

 「待機児童解消加速化」プランで大々的に進められようとしている「小規模保育事業」の「保育従事者の資格・職員数」の認可基準である「保育士比率2分の1以上」がどういうものかは、認可保育所の場合、認可外保育施設である東京都の認証保育所の場合、件の「横浜方式」の要に位置する横浜市保育室の場合と保育士比率を比べてみれば、ハッキリします。

 認可保育所:全員が保育士(全員保育士でないと認可されない)

 

 都認証保育所:6割以上(※つまり6割が保育士なら認可)

 

 横浜市保育室:3分の2以上(※つまり3分の2が保育士なら認可)

  「以上だから」いいのではないか、ということではまったくありません。 「半数(2分の1)が保育士であれば認可する」ということです。そして新制度で導入され実施される小規模保育事業の認可基準は、横浜市保育室よりも、また都の認証保育所よりも低いということです。

低賃金非正規不安定雇用・使い捨ての子育て支援最大手ーJPホールディンググループ・株式会社日本保育サービスは都認証保育所26園、横浜保育室3園(20園開設予定)。同社が「待機児童解消加速化」で都認証保育所、横浜市保育室以下の「認可基準」で小規模保育事業を大々的に手がけるのは見える話!・・・・アベノミクス版「待機児童解消加速化」の狙いは、ブラック企業への「保育」開放です。

  同社(JPホールディンググループ・株式会社日本保育サービス)は、認可保育所の開設から手堅く始めながら、そこでのシェア伸長を足がかりに、東京都(22園)・神奈川県(26園)を中心とする首都圏で認可外保育施設、東京都認証保育所(26園)横浜市保育室(3室プラス新設20室予定)をはじめアスク保育園の施設名でシェア占有をめざしています。(先行・並行して児童館にも首都圏で突出してシェアを伸ばしています。)政府・厚労省の「小規模保育事業の新認可基準」で、同社はじめ子育て支援ビジネス企業が、この「保育士比率2分の1以上」(保育士半数で認可)の小規模保育事業に群がってくるのは明々白々というべきではないでしょうか。

  都の認証保育所や横浜市保育室の保育料は認可保育所の場合の2倍内外。認可保育所入所を希望しても「両親ともフルタイム勤務でない」とか「定収が不安定」という理由で選考基準や入所基準から外されて認可保育所に入れない共働き非正規世帯には、保育料が認可保育所の場合より高いこれら認可外保育施設へ入所させることもほとんど不可能です。ほとんどが民間企業の経営・運営となる以上、小規模保育事業が拡充されるからと言って、そこに入所させることはほとんど経済的に不可能です。一体誰のための「待機児童解消」プランなのでしょうか?!

 そして「小規模保育事業」に群がる企業は、国の支援と保育士が半数いればいい認可基準のもとで、都認証保育所や横浜市保育室の場合より低賃金・非正規・不安定雇用の使い捨てパート・アルバイト多用でカネ儲けするのです。小規模保育事業へのJPホールディング・日本保育サービス等の株式会社の全面的参入は、子育て支援・保育ビジネスのブラック企業化をいっそう促進します。

 それは行き着くところ、小規模保育が、かの1年間で全国チェーン20人の乳幼児の死亡事故をひきおこしたちびっこ園グループのケースのような「名ばかり保育・密室保育が子どもを殺す」「無資格保育が命を奪う」場となることを意味します。保育従事者に労働者としての生存権、労働基本権、団結権が保障されず、クビきり自由・使い捨てが横行する保育職場に、子どもの命の安全はありません。

 これがアベノミクス版「子育て支援・待機児童解消加速化」がおしすすめようとしていることであり、行き着く先です。大ウソとだまし討ちの「待機児童解消加速化」プランに絶対反対

 「政府の子ども子育て会議」に参加し、そこで意見を闘わせ、チェックしブレーキをかけよう、とか、国会に「よりよい保育への改善」「待機児童をゼロにしろ」の声を届けようといったことでは、この国で私たちの保育を取り戻すことはできません


  いま保育と待機児童問題で起きている真実と苦しみと怒りの声を挙げられるのは現場の保育従事者(労働者)と保育を奪われている非正規共働き世帯の労働者です
。労働組合はこの非正規共働き世帯と保育労働者が矢面にさらされている問題で、絶対に職場、組合から声をあげて闘うべきです。組合がないところは組合をつくって声をあげるべきです。そして御用組合・自治労中央のもとでも自治体労働者は全国すべての職場でないまでも、また短時分ではあってもこの春にはストライキに立ち、またストライキをめざして立ち上がっています。社会を動かしているのも、子どもの未来と命に責任をとれるのも労働者であり、私たちです。ストライキに立てば、職場から反乱を起こせば、その瞬間に、このことがはっきりするのです。すべての公立保育所、認可保育所、認可外保育施設はじめすべての保育現場で働く職員(労働者)、保育園入所児童や待機児童を抱えるすべての世帯(労働者)は、職場から、地域から、怒りの声をあげましょう。


  政府財界は権利としての保育、国の義務としての保育を完全に打ち切り、株式会社のカネ儲けの道具として子育て・保育を開放したのです。国会頼み・政党頼み・御用組合任せでは、「保育より企業のカネ儲け」「子どもの命よりカネ」「保育労働者の権利よりブラック企業の成長」を打ち破ることはできません。

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安倍政権の「待機児童解消加速化」プラン-横浜方式全国化を批判する!

2013年07月30日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

安倍首相の「待機児童解消加速化」プランに関するこれまでの経緯<o:p></o:p>

 参院選での「自民圧勝」を「アベノミクス評価とねじれ解消」と慢心・誤信で総括した、有頂天・軽佻浮薄の安倍晋三首相が、参院選を前にして打ち出していた一連の「成長戦略」の最初に華々しく掲げていた「待機児童解消加速化」プランの「始動」に踏み出しました。政府・子ども子育て会議の出した方針とタイアップした「待機児童深刻10自治体」の「横浜方式」実施プラン(729日読売新聞朝刊トップ)がそれです。 

 

けれども、この待機児童問題で苦しんできた世帯は、参院選の選挙戦の実態も含めて、何なんだという思いでしょう。参院選前に一番早く打ち出した「公約」でありながら、選挙戦では、ついぞ、この「横浜方式」や「待機児童加速化」プランは自民党の候補者の街頭演説で、まるで申し合わせたように語られることはなかった。「アベノミクス効果」と「ねじれ解消」の二点にメディアの争点報道を収れんさせ、そこで「勝負」するために、意識的にそれ以外の「政策」「公約」をとりあげなかったのは、「選挙戦術」というような言いぬけはできない。「非正規雇用」・「ブラック企業」問題や「待機児童」「横浜方式」問題は、具体的実態に踏み込めば、たちどころに大ウソ・だまし打ちがバレばれになるからだ。そこで「賢明」にも明々白々な嘘と対立性が表面化するこれらの問題は「巧みに」回避したというのが事の真相でしょう。<o:p></o:p>

 

 では「自民党が圧勝」し、「国会の衆参ねじれが解消」したから、絶対多数の国会支配で、「何を持ち出しても大丈夫」とでも考えているのか?そうはならない。選挙戦では、ごまかして隠しても、「待機児童」問題は何ひとつ解消しておらず、政府の「解消プラン」やそのモデルの「横浜方式」のインチキ性は、保育現場、地域・家庭で必ず怒りの火を噴く。この際、ハッキリと、これまでの経過を確認しておくのは重要なことだ。<o:p></o:p>

 

 安倍政権が参院選目当てで言いたい放題の嘘八百の「公約」めいたものを並べ立てたのが、4月19日の安倍首相の「成長戦略」スピーチでした。当サイトとしては、間髪いれず、これを大ウソと騙し打ちと断じて、短期シリーズを組んで、暴露・批判を行いました。安倍首相スピーチは、「横浜市、2013年待機児童ゼロ」を打ち上げ花火にして、何の財源的裏付けもなく、また何ら保育士不足の解消の方策もないのに、そしてそもそも「待機児童」とは何なのかの定義も顧みることなく、行け行けどんどんとばかりに、「待機児童解消加速化」=「横浜方式の全国での実施」を打ち出したものです。それがなんぼのものか、その大うそとだまし討ち攻撃については、これまで基本的に明らかにしたとおりです。

 

政府の「横浜方式の全国化」による「待機児童解消加速化」に目新しいものは何もなし!それどころか、 「何でも認可」で「名ばかり保育」、「名ばかり待機児童解消」で「子育て・保育で命を育み守る福祉・職場」を私たちから奪い、解体するものです。「待機児童世帯の子ども」が認可保育所に入れるように認可保育所を増設するのではなしに、認可基準・認可要件をどんどん下げて、現在の無認可保育を全部「認可」してしまえばいいというのが安倍政権の魂胆です!基準・要件にあう保育園・保育施設を整えるより、いまの基準・要件を満たしていない無認可保育園・無認可保育の実態でもクリア・パスできるように基準・要件を変えてしまえば「済む」ことだというのです。この真逆、アベコベの「待機児童解消加速」プランをどうして許せるか!こんなデタラメなやりくちに黙っていられるか!今、求められているのは、政府に対して「待機児童を解消してください」「子どもたちを保育所に入所させてください」とお願いすることなどではまったくありません。かくも乱暴で人をなめきったやりくちで、▲共働き世帯から保育を奪い去り、▲子どもを安心して預けて親が働ける保育所にではなく、▲どんなところでも放り込んで働け、▲それが嫌なら家で育てろ、▲それも嫌なら勝手に苦しめ、国は労働者世帯の子どもの保育などいっさい面倒見ない!・・・この政府の態度と攻撃に対する怒りで政府を追及し、倒すということです。この国の未来を担う子どもたちの保育を政府・企業は投げ出した!子どもは未来だ。この国と子どもの未来を連中にいいようにされてたまるか。この国と子どもたちの未来を築くのは、待ったなしで私たち大人の責任、使命となった。 

安倍政権は、実にいい加減で、でたらめきわまりないことを、「待機児童解消加速化」「横浜方式の実施」と銘打って、やろうとしている。これが核心です!<o:p></o:p>

 1)財源として見込まれているのは、自公民合意の消費税増税(アップ)分からの7千億円のみ!この7千億円では「待機児童解消」には程遠いということは民主党政権下の国会審議でも自公質問と安住民主党財務相の答弁で確定している。ところが、安倍政権になって、この事情に何か変化はあったか?何もありません。そして消費税のアップについても、その第一段階も、「景気動向を慎重に見極め、今秋判断」とされている。いっさいは「アベノミクス効果」で「デフレから脱却」し、「税収も改善」されてからの話で、それだけでは足らない7千億円もこれからの話、ましてや足らない分の「7千億円から先」のことは何一つ先が見えていない話です。これは「財源があるからやれる」「財源がなければやれない」といった議論ではありません。この本質は、財界も政府も、保育・子育て、あるいは言われている「待機児童解消」にカネをかける気などさらさらないということです。ここをハッキリさせることが大事です。カネということで言えば、国=政府には、保育・子育てビジネスで企業がカネもうけする市場をつくるということだけが関心事であり、労働者世帯、非正規世帯やその子どもの保育の権利、命と未来のためにカネをつかうなどということは一カケラも考えてはいないのです。

  (2) そして、それよりも、何よりも彼によりも重大なのは、安倍政権の「横浜方式」とは、どういうものなのでしょうか?ここが問題です。

 
① 安倍首相が言う「待機児童ゼロ」とは、そもそも横浜林市長が勝手にカウントしたやりかたです。(注・実際には認可保育所入所希望なのにフルタイム勤務ならざる非正規世帯ゆえに選考基準・入所要件から外され認可保育所に入れないために、育児休業状態を延長して「待機」を選択した世帯はじめ、市のコンシェルジェの「横浜保育室」等々の斡旋を肯んじなかった世帯、保育ママ等々の選択や民間無認可保育園を選択しなかった等々の理由がある1764人(世帯)を、全部『潜在的待機児童』と称して『待機児童としてはゼロ』とカウントしていることを横浜市長自身追及されて認めています!林横浜市長や安倍首相にとっては、せっかく「入所できる施設」をあっせんしてやったのに、そこに子どもを入れないのは自己選択で、「権利放棄」だから「待機児童」とは位置付けないということなのです。)これを手本に「待機児童深刻自治体」にやらせるということです。員数分だけ、とにもかくにも保育の枠をそろえさえすれば、それで「待機児童ゼロ」政策としては満点で合格、何も、「待機児童世帯」が望む「認可保育所」の保育の枠を国の政策と財政で保障してやるようなことではない、というのです。

 ②しかも、そのような「待機児童ゼロ(解消)」に持っていくための方法がとんでもないものだということです。既に述べたとおり、現在の認可要件での認可保育所の増設ではもとよりありません!
 
 「員数上(保育の枠)」で「待機児童ゼロ」に各自治体がなるまで、無認可だろうと小規模保育だろうと何だろうと「認可保育」として「認可」要件を際限なく緩和すること!これを各自治体でやれ、というのです。つまり認可保育所の認可要件、あるいはそれに準ずるような認可要件、こういう『認可要件』『認可基準』というこれまでの考え方を自治体も子育て世帯も改めよ!と言っているのです。

 要は、無認可保育園であろうと、小規模保育であろうと、マンションやビルの賃貸空室を「保育」目的で活用した託児所同然のものであろうと、「待機児童」数が「員数上ゼロ」になるまで、四の五の言わずに「認可保育」として自治体が認可すれば済むことだ、というのです。小泉保育改革では認可保育所に「詰め込み」と「常勤保育士比率弾力化」で青天井の規制緩和をやったアベノミクス保育改革では、無認可保育でも小規模保育であろうとオール認可、まるごと認可、何でも認可で待機児童をそこに放り込めというわけです。「何でも認可」による名ばかり「保育園」、名ばかり「待機児童解消」が、アベノミクス「待機児童解消加速化」の正体です。<o:p></o:p>

  ③ 大手を振って、株式会社が、ここに参入してくるのは、見本になっている横浜方式と横浜保育室をみれば歴然としています。 

 ここには三つ、重大問題がひきおこされます。<o:p></o:p>

 ひとつは、しっかりした資本力ある株式会社はビジネスとして、その自治体・地域の保育マーケットを占有します。そこではその企業の儲けのために設定された保育単価が入所を希望する要保育世帯に転嫁されます。低収入世帯に手が届かない保育園が当然一般化します。つまり、いま待機児童というとき、もっとも深刻な若い非正規世帯は、保育の場を奪われるのです。<o:p></o:p>

 ★二つ目は、株式会社は、契約社員、非正規・非常勤、パート・アルバイトの圧倒的多用で利潤を追求します。当サイトは、株式会社日本保育サービス、JPホールディングにメスを入れ、光を当てて、ブラック企業として社会的批判をあびてしかるべき低賃金・非正規・短期雇用をその根拠として挙げてきました。使い捨ての保育労働力としてしか考えられていません。そこ行われる保育も労働者のせいではなく、企業の「儲け第一」の保育園運営によって、子どもたちの命と安全と成長はないがしろにされています。<o:p></o:p>

  ★三つ目は、名だたる株式会社にとどまらず、かつて「ちびっこ園」チェーンが引き起こしたような命にかかわる重大事故が絶えません。「何でも認可」により「名ばかり保育」「名ばかり待機児童解消」がもたらすものは、「子殺し」と言っても何ら過言ではない荒涼殺ばつたる状況に突き進むと言うことです。<o:p></o:p>

  政府に「待機児童解消」をお願いしているような場合じゃない!政府との闘いだ!カネ儲けのために「保育・子ども」を食い物にして乗り込んできている企業・資本から、保育を私たちの手に取り戻す戦いだ!

 「子どもの命と未来を守れ」「私たちの保育を取り戻せ」で保育労働者、保育を切実に必要としている非正規労働者家族先頭に、大ウソとだまし打ちの安倍政権をたおそう!

 安倍政権の「待機児童解消加速化」がかくも人を愚弄するもはなはだしいということについて怒り、猛烈な怒りを喚起し、強調したかったということです。

 

 

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「民間活力の爆発」(安倍「成長戦略)は総ブラック化!保育民営化で民間も自治体もブラックに!

2013年06月12日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

 連日の株価の乱高下と長期金利変動が私たちの給与収入と家計と無縁な世界の出来事とはいえ、多くの人々がこれから何が始まるのかという観点から注目しているところです。その渦中に発表された「成長戦略(素案または最終形)」でメディアには「民間活力の爆発」のコトバが踊りました。▲民間企業は設備投資に踏み切れず、▲円高にふれようが円安にふれようが、多大な損失の打撃を受ける広範な企業が続出し、▲次元を異にする金融の質的量的緩和で放出されるカネは金融機関にとぐろを巻いてあふれかえり、▲企業の利潤をあくなき追求に走る総資本の利害を背負った国家の財政は「世界最大の借金国」状態・・・・これでは、「民間活力の爆発」という、イメージだけは大きければ大きいほどいいとばかりの企業向け鼓舞・激励のキャッチフレースも空虚な響きが尾を引くだけです。「有頂天と無責任のアベノミクス」は、その「有頂天ぶり」「無責任さ」のひどさで「歴史に名を残す」ことはあっても、「経済再生」「デフレ脱却」政策=恐慌対策としては完全に破たん、終わったも同然です。

ゆるさない!!! 安倍「成長戦略=民間活力の爆発」とは「労働者搾取における聖域なき規制緩和」、総ブラック企業化への暴走だ!

 私たちは、安倍政権「アベノミクス」の破たん、バブル崩壊の始まりが、安倍政権「成長戦略」「民間活力の爆発」のむき出しの正体をあらわにしたものとして、私たちにおそいかかっている攻撃として怒りを持って確認する必要があります。大ウソとだまし討ちは一体です。
  「民間活力の爆発」が「企業の設備投資の爆発的開始」ではまったくないということは、労働者の賃金をいかに切り下げるか、労働者の労働時間等の労働条件をいかに切り下げ劣悪にするかで、どんなときにも常に企業の利潤を維持し拡大しようとする《労働者の命やくらしを一切顧みない》資本にとっては、労働者からの搾取において何をやってもかまわないという乱暴極まりない、理不尽極まりない、非人間的非人道的なこと無制限無軌道の聖域なき規制緩和を意味します。安倍は「成長戦略」で「失業なき労働移動」ということを掲げています。

 「失業なき労働移動」とは、クビきりや失業が「なくなる」ことを決して意味しません。「失業」(食っていけなくなる、生きていけなくなる)の恐怖で、労働者に長時間労働や短期雇用・小刻み更新やノルマ達成を強制し、そのあまりの劣悪さにボロボロにされた労働者に「やめてもかまわない、代わりはいくらでもいる」「やめて他の(労働条件の悪い)仕事が待っている」「いずれにしても死ぬまで働き続けるしかないのがお前たち労働者の運命だ」ということです。


  どういう状態になるのか?どこもかしこも
「ブラック企業」になるということです。否、「~になる」のではなく、既に始まっており、新自由主義の企業の経営原理として大手を振ってまかり通っています。短期雇用を前提にして、「代わりはいくらでもいる」とメチャクチャな違法・不当な劣悪労働条件での労働を強制し、実際にも使い捨て使いまわしの消耗品としてしか労働者を考えていない企業が「ブラック企業」です。ここに正規・非正規は関係ありません。企業にとっては「正規雇用労働者」も「非正規雇用労働者」も短期雇用前提、使い捨ての消耗品なのです。労働者派遣法の規制緩和・大改悪による26業種の全業種への拡大、派遣でゆるされる短期雇用(有期雇用)の年限の短縮という安倍政権が手をつけようとしている攻撃はその突破口です。そしてこの攻撃は既に野放図に始まっているということです。

短期間で離職が相次ぐ株式会社立認可保育所、業務委託の自治体立認可保育所、長期間在職の正規労働者も「名ばかり管理職」「タイムカードを押してから延々続く長時間無償残業」

  その企業や施設・職場が「ブラック」かどうかを見る場合に、すぐわかるデータは、▲採用された労働者の1年・2年・3年といったタームでの3割・4割にも上る離職率の高さ、▲しょっちゅう同じ園や企業の求人情報が出続けているかどうかです。この二つが揃っている保育園は、「ブラック」と断じて差し支えない企業、保育園と言ってまず間違いないでしょう。長続きしないとは、採用された労働者に問題や思い違いや保育という仕事への適・不適があってのことではもちろんないでしょう。おしなべて低い賃金水準や小刻みのシフト制やローテーション勤務体制にあることは求人情報で承知の上で募集に応じた仕事です。耐えられないような職場環境と過酷な仕事を強いられ、納得がゆく指導や助言もない指揮系統と意見を述べることも抗弁もできない無権利状態のもとで心身ともにボロボロにされて辞めていくしかないからです。保育園に保護者から「次から次へと担当の先生が変わり、これでは子どもを預けられない」というクレームが集中しているところは、ほとんどそういうところです。


  何度も記事で名前をあげている
株式会社・日本保育サービスのアスク保育園も契約社員もパート・アルバイトも短期間の離職率が高いことでネット上では有名です。子育て支援・保育ビジネスのリーディングカンパニーといわれ、園長職や主任格の社員でも月給18万円~22万円、パート・アルバイトは時給800円台~900円台という賃金ベースをつくって、首都圏で最大手となってきた株式会社・日本保育サービスのアスク保育園グループが、このかん「横浜方式」と安倍首相がモデルとしている「子育て支援・待機児童解消加速化」の企業の旗手なのですから、この「子育て支援・保育ビジネス」に群がる企業がことごとく「ブラック」であることは推して知るべしでしょう。

 株式会社立の民間保育園が「ブラック」化するのは、「子どもが第一、そのためにも子どもを預かる園の職場環境、職員の労働条件が大事」ではなく、「保育はビジネス、カネ儲けがすべて」の利潤追求が経営原理になっているからにほかなりません。ここでは職員は「保育でカネを稼ぐ企業のカネ儲けのための消耗品」でしかないのです。

 ここで劣悪、酷薄なのは保育職場で働く職員の大多数となっている非正規職だけではないということです。正社員や契約社員として採用された園長や主任格の保育士は、「名ばかり管理職」「名ばかり主任」として会社の経営方針と保育現場のテンテコマイの大変さのはざまの中で、契約労働時間をはるかに超えて長時間のサービス残業を強いられて精神的生理的限度を超えた苦悩でボロボロになっているという現状があるということです。

 そしてこうした「ブラック」化の現実は株式会社立民間保育園のみならず、民間に業務委託したり、職員の過半を非常勤化・パート、アルバイト化している自治体立保育園の職場をも覆い尽くしている現実だということです。ある意味では「保育=福祉の公務」「保育の質の向上」の名目と、「コスト削減の大義名分」ですべてを正当化して、自治体立保育園では自ら進んで「ブラック」化していると言っても過言ではない現実があります。自治体まるごと民営化、保育の民営化とはそういうことなのです。全面民営化=「ブラック」化ということです。

「政府・子ども子育て会議への参画で保育の質向上をめざす」?

 ここにおいて日本共産党と全労連が、「労働組合」や「よりよい保育」の名において、「待機児童解消」「子育て支援」に一役買ってしまっている言説と運動があることは、安倍政権のだまし討ちに一役買うものとして、厳しく批判され、のりこえなければなりません。なぜ安倍政権の「子ども子育て会議」に加わり、影響を行使することが、その何処が保育全面民営化・使い捨て非正規化・ブラック化、保育を最も必要とする非正規共働き世帯を切り捨てる「待機児童解消加速化」の安倍政権の攻撃と対決することになるというのか?

 「子ども子育て会議」には保育全面民営化の受け皿、「横浜方式」の「立役者(先兵)」であるJPホールディングー株式会社・日本保育サービスの代表・山口洋が要として座っているというのに、ブラック企業と同じ政府会議に同席・参画することが、「よりよい保育」の道だとでも共産党・全労連の人々は言うのでしょうか?

 この「子ども子育て会議への参画」による「保育の質の向上」という日本共産党・全労連の指導部の見解・路線は、歯を食いしばって保育職場で闘っている保育労働者の闘いを圧殺し、保育民営化反対の大運動を安倍政権のだまし討ちに屈服させ、妨げ、抑え込む、裏切りの道以外の何ものでもありません。そうではないでしょうか?

民営化絶対反対・非正規職撤廃で、保育職場を労働者の手に取り戻そう!保育労働者は人間としての誇りに賭けて心をひとつにし団結して、かけがえない子どもの命と育ちを守る職場を守り抜こう。労働者を使い捨ての消耗品として蹂躙するブラック企業と闘おう。職場で声をあげ、たちあがろう!

  いまの職を失わないために正規に強いられる肉体的精神的生理的限度をはるかに超えた長時間労働も、生きてはいけない超低賃金・不安定短期雇用をのむしか職に就けない非正規労働者の無権利も、同じ人間=労働者の労働の破壊と人間の破壊である点において、ゆるしがたい労働者の極限的搾取です。正規・非正規とは資本がつくった分断であって、労働者がおかれている消耗品、賃金奴隷としての社会的地位と人間破壊は同じ一つのものです。人間をカネ儲けのための使い捨てのモノ(道具)としてしかみない資本に対して、労働者が生き抜くためには、団結して立ち向かうしかありません。民営化絶対反対・非正規職撤廃で職場から反乱をおこすこと、職場で労働者の絆・結束・団結を取り戻すこと、それが「ブラック」化と対決し、職場を労働者の手に取り戻すことであり、労働組合の復権ということです。

 6・2反原発デモで、青年労働者がコールの中で掲げていた「どこもかしこもブラック企業」「クビきり自由・賃金破壊ゆるさない」「労働者は使い捨てのモノじゃない」「仕事が好きだ、仲間が好きだ、人間らしく生きたいだけだ」の叫びは、ほかでもない、この保育民営化絶対反対の闘いのスローガンと言ってもいいのではないでしょうか

 

 

 

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「潜在待機児童数1764名」「保育士不足」の横浜のどこが「成功モデル」か!

2013年05月22日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

《「横浜方式」批判の続き》

 記事の準備中に、5月20日林文子横浜市長が「待機児童ゼロ達成」記者会見をひらき、「横浜市の全区でゼロ」「横浜市の待機児童ゼロ目標達成で成功モデルをつくった。横浜市の取り組みについて全国に情報発信していく。この地平を継続して堅持していくとともに、次は保育の質と保育士不足の解消の課題だ」と報告し、抱負を述べています。また、同日、安倍首相は、示し合わせたように、横浜市の保育園を視察し「横浜市のように安倍政権が待機児童ゼロを全国で実現します」「やればできる」と言っています。

                        
【因みに、この林文子横浜市長、東レ、松下電器産業を経て、以降はホンダ、BMW、BMW代表取締役社長、ダイエー代表取締役社長兼CEO、日産自動車販売代表取締役社長を経ていまの横浜市長になった。米フォーチューン誌で「米国外のビジネス業界最強の女性経営者」「世界ビジネス最強の女性50人」ともてはやされ、本人もこの経歴と評価が気に入っている・・・そういう新自由主義の「申し子」のような人物、私たち労働者の敵そのものです。特に非正規化でぼろ儲けした自動車産業畑ということはきっちり確認しておきましょう。】

林市長自身が「ほんとうは待機児童ゼロではない」と認め、把握しているだけでも1764人の「潜在的待機児童」がいることがわかっているのに、何が「横浜市全区でゼロを実現」「横浜市で成功モデルをつくった」だ !!

 5月20日の林市長「待機児童ゼロ目標達成」記者会見で林市長は「全区でゼロ」「待機児童ゼロ目標を完全実現」「やればできることを示した成功モデル」とくり返し強調しました。しかし、記者から問われたためか、ウソはつけませんでした。「厚生労働省の定義ではゼロだが、まだ希望しているところに入所できていない多くの児童がいる」と!
  どういうことでしょうか?
  待機児童(数)とは、本来、認可保育所に入所を希望して入所できなかった児童(数)のこと、そういう意味です。横浜市の認可保育所への今年度入所の希望児童数は4万8818人、これに対して実際に認可保育所に入所できた児童数は4万7072人(3740人増)、認可保育所への入所を申込んだ児童だけに限っても、差し引き1764人の待機児童が発生しているのです。
  これを「潜在的待機児童(数)」と呼ぶらしいですが、「潜在」も「顕在」もあったものではありません。まぎれもない「待機児童」「認可保育所に入所を希望して入れなかった児童」です。1764人という人数を超重大視すべきです。「待機児童全国最多の1552人」「ワーストワンの横浜市の待機児童数」、この3年前の待機児童数より多いのです。

 【「横浜市 待機児童ゼロ」カウントのインチキ・ごまかし】
 では、どうやって「待機児童ゼロ達成」などというのか?その1764人中、
 ①横浜市が開設した認可外保育施設「横浜保育室」に横浜市の「行政努力」で入れた児童887人は、「待機児童(数)」扱いにせず除外、②(入所先は内定しているが)第一希望の認可保育所入所にこだわり続けている児童(世帯)も除外、③育児休業延長で育休を選択した児童(世帯)も除外、④インターネット等で求職活動中の世帯も除外、この①~④の除外合計で、1764名の待機児童は、「ゼロ」とされているのです。「厚労省の定義」のイカサマもさることながら、まず「ゼロ目標達成(の発表)」ありき、まさに、そのためにする「ゼロ」のための除外ではありませんか!このことを会見でも認めながら、「待機児童ゼロ目標達成」「全区でゼロ」「全国の成功モデルをつくった」と強調しているのですから、何をかいわんやで、本当にゆるせない会見です。5月20日の会見をニュースで聴いて「市民感覚とのズレを感じる」「横浜市の言っていることには違和感がある」という声が広範にまきおこっているのも当然のことです。

  NHKシリーズでも横浜市の「待機児童ゼロ」チームの職員は「保育所に入れたいというとき認可保育所に入れることとしてしかとらえない」と「入所希望世帯が保育(保育所)について思い違いしている」「ないものねだりをしている」と言わんばかりにコメントしたうえで、「(認可保育所以外でも)こういう保育サービスがあると丁寧に説明した」という「取り組み努力」を重ねたことを教訓として語っていました。ここに示されている考え方で、前記①の「横浜保育室」は「入所希望をかなえたもの」として除外し、前記②~④は、認可外保育ならかなえられたのに、認可保育所にあくまでこだわって、その選択方途を放棄して「待機」「育休」等を自分で選択したのだから、・・・と「待機児童数」から除外しているのです。

  こんなゆるせない話はありません。

  なぜ認可保育所に入れなかったのか?単に入所希望者が多過ぎてそうなっているわけではありません。
認可保育所の入所条件・選考基準をクリアできない入所希望世帯が選考で落とされたからです。なぜ認可保育所にこだわって「待機」を選び、また「育休延長」や「求職活動」を選んだのか。保育料から認可保育所にしか入所させられないから、「横浜保育室」等の利用料金が認可保育所より高い認可外保育所に入れることもできないからです

「横浜方式」では、利用料金の問題が深刻なうえにも深刻!認可保育所へは選考基準で入所できず、「横浜保育室」へは利用料金が高くて手が届かない!この若い非正規共働き世帯の苦しみを切り捨てるのか! 

  「待機児童を抱える世帯」の過半が20~30代の若い共働き非正規世帯であることを前回強調しました。認可保育所の場合には保育料は、前年度の世帯の所得税額と入所当初年度の子どもの年齢で保育料は階層的に設定されています。その保育料は前述の若い共働き世帯非正規世帯では、大変でも支払えない額では基本的にありません。ところが、認可保育所では「両親ともにフルタイム就労」という入所条件・選考基準が実際には適用されています。そのために非正規共働き世帯は、認可保育所には入れたくても、入れず、入所させようとすれば、認可保育所の利用料金(保育料)より高額の利用料金をとられる認可外保育所にたよるしかありません。

  そこで利用料金の問題を具体的に見てみます。認可外保育の「横浜保育室」であるアスク山手保育室の利用料金を例示すると以下の通りです。

【月極め保育】
▽週4日の場合(1日4~6時間:43000円、6~8時間:45000円、8~11時間:47000円)
▽週5日の場合(4~6時間:46000円、6~8時間:48000円、8~11時間:50000円)
▽週6日の場合(4~6時間:48000円、6~8時間:50000円、8~11時間:52000円)


【月極め延長保育】
▽~30分:2000円、~60分:4000円、~90分:6000円

【一時保育】 1時間:900円

 因みに、上記、アスク山手保育室の利用料金体系は、東京都認証保育所のアスク両国保育園の利用料金と概ね同じで、株式会社日本保育サービスのアスク展開の設定標準額とも言えます。

  若い共働き非正規世帯は乳幼児がいても認可保育所からははじかれ、それでは認可外保育施設・小規模保育が「助け舟」「頼みの綱」になるかといえば、認可保育所の場合の2~3倍もの保育料金が求められる・・・最も優先的に保育が保障されるべき世帯が最も険しい、厳しいところに立たされているということがわかります。

【「横浜保育室・利用料金は上限58100円」が「利用料金に公平感を持たせる」?】

 NHKシリーズでは、「横浜方式」について認可保育所との間で今度の「横浜方式」でのサービス提供で入所世帯に「公平感を持たせる」努力を横浜市が払っているとコメントしています。「公平感」というとき、施設の整備や保育士の水準等の点もあるでしょうが、共働き世帯、とりわけ非正規共働き世帯にとっての最大の点はやはり利用料金です。20~30代の非正規共働き世帯の所得年額には一定の幅があっても、基本的には、認可保育所の場合なら保育料は月2万円台かそれ以下にとどまります。「横浜保育室」の場合は上限額なら月58100円まで利用料金(横浜市こども青少年局の提出資料)を払わねばならず、前掲アスク保育室なら、月4万数千円から5万円台になります。「横浜保育室」以外は、当然「58100円」を超えるところも多々あります。これが横浜市が言う、認可保育所と認可外保育所で入所者にとって料金格差をつくらず「公平感を持たせる」ということですか?!

 前掲横浜市こども青少年局提出資料によれば、確かに「横浜保育室」に限って、10000円~50000円の減免があるようです。しかし、基準がはっきりしないし、そうした減免制度を続け得る財源見通しに裏打ちされた根拠も定かではありません。本当に「公平感を持たせる」、否、(「公平感」は「~らしさ」に過ぎませんから)「公平」にするためには、『入所世帯の前年度所得税額と入所児童の年齢から階層的に設定されている認可保育所の保育料金を超える額は全額横浜市が助成(負担)する」と具体的に横浜市は明示すべきでしょう。そうしないのは、そうはならない、「公平」でもなければ、「公平感を持たせる」ものでもないということです。

【「横浜方式」は名実ともに、福祉としての保育の解体・きりすて。保育を必要とする非正規共働き世帯のきりすて・見殺しが「待機児童ゼロ達成」宣言の核心】

  子どもを預けたくても料金が高くて預けられないで就業か保育か、どちらかをあきらめて苦しむ・・・そもそも子どもをつくれない・・・、これは決して誇張ではありません。一時保育の時間当たり料金は900円、これはパートやアルバイトの場合の時給900円という一般的水準と同じです。働いて稼いだ金は全部、保育に消えるのです。象徴的に数字を挙げ対比しましたが、これが子どもを保育所に入れたくて苦しんでいる非正規世帯が直面している現実です。

 自治体は、保育について、義務として保障しなくなった、保育をそういうものとして実施しない!子育て支援ビジネスの株式会社からカネで買うものになった、利用料金を支払うカネがあれば受けられるが、そのカネがなければ受けられないものに変わった、このことを「横浜方式」は示したのです。この一点で、「横浜方式」は住民の福祉の実施という行政努力などではまったくありません。この点にアンケート回答は反応し、「40%が不満」という結果が出ているのです。(アンケートについては、NHKシリーズ①4月30日放送分・・・前回記事で参照欄を開いて末尾をごらんください。)

 
 
 

何が「保育士の確保のために保育士の処遇改善に取り組む」だ?!・・・ 保育士資格取得者や保育職経験者が保育職場に就かないのは、国や自治体が保育をコスト削減のために民営化・非正規化し、政財界が企業のカネ儲けのために超低賃金・総非正規化を進めているからだ!

 「横浜方式」で保育を必要とするすべての人々に、それは保障されるのか、という問題についての現実の回答はかくも過酷なものでした。では、「横浜方式」のもとで行われる「子育て支援」サービスの中身、これまで「保育」といわれてきたものはどうなるのか?それは保育士の行う仕事に、従って保育士の労働者としての地位、労働条件、勤務形態、職場環境にかかっています。

 「待機児童解消加速化」のためにと、安倍首相は「保育士の確保が必要だ」と言っています。認可保育所への株式会社参入や認可外保育の拡大の促進とともに、保育士が不足し「保育士の確保」なしには「待機児童解消加速化」も絵に描いた餅になるからです。

 保育士も確保しなければなりません。保育士の資格を持つ人は、全国で113万人。しかし、実際に勤務している方は、38万人ぐらいしかいません。7割近い方々が、結婚や出産などを機に、第一線から退き、その後戻ってきていません。 保育士の処遇改善に取り組むことで、復帰を促してまいります。4・19「成長戦略スピーチ」)

 保育労働者の皆さんから言えば、「誰のせいで、何のおかげで、こういう事態になったと思っているのか」という話です。
 もともとは保育所の大半を占めていた公立保育所では、適正な面積と設備の職場で、受け入れ人数に対する職員数の適正配置が義務付けられ、労働基準法にかなう労働条件がまがりなりにも保障され、保育士が常勤・正職員として勤務し、保育の仕事に従事していたのです。しかし、歴代自民党政権が、「保育はカネがかかりすぎるから、自治体がコスト削減に励むか民間に委ねよ」とコスト削減と民間委託を迫り、自治体が人件費削減のために常勤を減らし非常勤やパートにとって替え、民間委託や業務委託を拡大してきたことによって、正規・常勤職員も含めて保育職場の労働者の賃金はどんどん、削られてきたのです。企業立の民間保育園では、自治体立保育所に先行して、保育士資格を持った契約社員・パートとアルバイトがほとんどというスタッフ構成で賃金も低賃金化の一途をたどってきたのです。

 民間では、たとえ保育士資格をとって保育園に就職しても、契約社員で月給18万円とか園長職・主任格でも月給22万円。パート・アルバイトスタッフでは時給800円~900円で細切れのシフト勤務、それも週2~3日から3~4日の日替わりローテーション勤務というのが、こうして現在標準化・一般化している保育労働者の賃金です。これは雇用の9割を非正規不安定雇用とするという財界の経営指針にそって進んできた低賃金非正規化のもとで、保育園でも当たり前のようにまかり通っている現実であり、自治体立の保育所でも広範な非常勤化、アルバイト多用、民間への業務委託で進行している現実です。

 そこへ、このかん保育園受け入れ定員の天井を外すような詰め込みが加わり、保育現場はそうでなくてもテンテコマイの職場が大変な労働強化の現場となっているのです。どんなに子どもが好きでどんなに保育に生きがいや情熱を燃やして臨んでも、これでは中途退職が出ても不思議はないし、資格を取っても求人票で賃金・時給欄、勤務形態を見て保育園就職に二の足を踏む人が出ても何の不思議もありません。

 安倍首相が言うように「結婚や出産が理由で退職した」というだけでなく、乳幼児の子育て期が過ぎても復職しないのも新卒・保育士資格取得者が就職先に保育園を選ばないのも、いったん就職しても長続きしないのも、この保育職のそれだけでは暮らしていけないような低賃金非正規構造、勤務体系に根本原因があります。

 この低賃金・総非正規化政策、保育園の非正規・不安定雇用構造をつくりだした政財界の側にいる安倍首相が、その責任を棚上げして、口先、小手先で「処遇改善」を言い出しても、誰が信用するかという話です。そもそも、保育労働者の賃金・労働時間等の労働条件、雇用形態、勤務形態、職場環境の悪化、劣悪化はいま始まったことではありません。保育労働者がこの厳しさの中で懸命に保育職場を守りとおしてきましたが、保育に情熱と使命感をもちながら身体的にも精神的にも耐えられなくなってボロボロにされどれほど多くの労働者が職場を離れざるを得なかったのか、また意欲も情熱もあって保育士資格をとりながらこの賃金では暮らしていけないとどれほど多くの保育士資格取得者が断念せざるを得なかったのか、「処遇改善」を言うならとっくの昔に施策化されているべきことです。それを行わず、株式会社の全面的参入と「待機児童解消」のために、「保育士の確保」が必要になったからと、今頃になって「保育職員の処遇改善」などと言いだしていること自体、ゆるせないことなのです。しかも「処遇改善」は口先の話に過ぎず、実際に大量に出されている企業の求人情報は、それとは真逆の生きていけない超低賃金と細切れ勤務シフト、日替わりローテーションの非正規不安定雇用、契約社員・パート・アルバイトです。

 「横浜方式」の中での逸話として、NHKシリーズでは、横浜市での60人定員の認可保育所の開園で園長として保育士16人の募集をかけたが、応募はまったく集まらなかった、それで2万円ほど給与を当初の募集要項より増額し、交通費全額支給等に変更したら、やっと職員が確保できたという話が出てきます(5月1日放送分)。その給与額さえ、正社員19万7800円、パート・アルバイトでは時給850円~950円でしかないのです。2万円増額してこの程度なのです。これは前掲のアスク保育園、株式会社日本保育サービスの各園の場合の水準と同じです。

  新聞折り込みチラシやインターネットの求人情報で給与欄をみた人はわかると思いますが、これはファミリ―レストランや宅配ピザハウスのアルバイトの時給水準と同じです。職業職種による賃金比較で保育職の賃金は安すぎると批判しているのではありません。この国日本の社会全体で、労働者の賃金は、家族が生きていけるかどうかのギリギリまで押し下げる、それ以下もあるという食べられない低賃金構造が平均化してきているのです。問われているのは、非正規職という制度をそのままにしてその「処遇改善」を行うと口先で言い、小手先だけのゴマカシの施策を行うことではなく、非正規職(制度)を撤廃することです。9割非正規化、総非正規化を国策としている政府が、それをするはずがありません。それは私たちがたちあがって、たたかって、かちとる闘いです。

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安倍首相の「全国化したい待機児童解消モデル」-「横浜方式」とは?

2013年05月20日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

今回③と次回④に《「横浜方式」批判》は、ニ回に分けることにしました。

《「横浜方式」批判その一」》

「3年間で全国ワーストワンから待機児童ゼロにこぎつけた」と注目されている「横浜方式」だが・・・

  安倍首相は4月19日の「成長戦略スピーチ」で「全国で待機児童数最多でワーストワンの横浜市がわずか3年でゼロに解消した。その気になれば全国の自治体でやってやれないはずがない。」として「横浜方式を全国に展開していきたい」と横浜市の林市政による「待機児童解消」を掲げたこのかんの取り組みを、雛形モデルとして賛美しています。

  NHKTVが、4月30日から5月2日に、「首都圏ネットワーク」で『どう減らす待機児童』というタイトルで3回のシリーズを行っています。ごらんになった方も多いと思います。このNHKのシリーズも含めて、4月中下旬から5月にかけて行われたマスメディアの「横浜方式」に関する報道は、安倍首相スピーチと歩調を合わせた「横浜方式」積極評価の大キャンペーンでした。
  報道では一様に、
「待機児童数」で「3年前には1552名、2年後の昨年4月には179名、今年4月はゼロに」と「解消」を驚きの目を持ってクローズアップ。それをもたらした「横浜方式」の特徴として、▲横浜市が推進した、認可保育所への株式会社の参入促進、認可外保育所・小規模保育への積極的支援の施策、▲入所希望世帯・待機児童世帯の声と多様な主体による多様なサービスを結びつけた全国初のコンシェルジュ制度という独自の創造的な取り組み、保育士確保のための取り組み等々の横浜市の行政努力を挙げ、▲「待機児童」問題を抱えている全国の自治体の今後の取り組みの参考になると強調しています。

 実際に行われた「横浜方式」の具体的な実態、中身はどんなものでしょうか。それを検証、批判するのが、短期シリーズの今回③での目的です。

  【検証・批判の視点】

 
 ① 「待機児童」というとき、その親たちにとっては
認可保育所に入れたいのに入れられなかったという問題です。「保育とは、『認可保育所』への入所」という働く世帯のとらえかた、発想は、「あらゆる手段を講じての待機児童解消」という「横浜方式」とキャンペーンの“勢い”の中でともすればかき消されがちですが、一番大切な視点です。

 ② 戦後の日本国憲法のもとでの福祉としての本旨に立った保育からとらえ返したとき、横浜市が行ったこのかんの取り組みはどうなのかという本質的な問題があります。憲法と児童福祉法のもとで、保育は働く世帯及び子どもの権利であり、保育の実施・保障は国と自治体の義務でした。ここで「はじかれ、取り残される世帯(子ども)」「切りすてられる世帯(子ども)」が構造的に出てくるような方式であれば、どんなに「あらゆる手段を講じた待機児童解消」であろうと「横浜方式」はまがいものです。

 ③ 現在保育を最も必要とする共働き世帯の過半をなしている非正規共働き世帯に、「横浜方式」は「保育」を保障するものなのか、という問題です。具体的には、認可保育所の入所選考基準の問題と認可外保育所の利用料金(保育料金)の問題です。

 ④ 保育は、保育に従事する職員(保育労働者)の職場環境と労働条件(雇用形態、勤務形態、賃金等の労働条件)と切り離して考えることはできません。「横浜方式」ではどうなのか、という問題です。保育は乳幼児保育にもっとも典型的ですが、百人百様に違いがある子どもを対象に、子どもから一瞬も目を離せない仕事であり、専門的知識を有し経験を積んだベテラン保育士を中心に職員(保育士)が緊密なチームとなって子どもの安全と健康、子どもの伸びやかな成長を見守る仕事です。この保育の仕事は、資格があり研修があってあとはマニュアル通りやればこなせるという仕事ではありません。職員の熱意や責任感や努力もさることながら、それ以上に、職員の労働条件や職場環境、職員が心をひとつにして仕事に専念できるミーティングや相談・助言・ひきつぎ等々のきめ細かな集団的組織的取り組みの体制があるかないか・・・といった問題が、行われる保育の内容を左右し、それが十全なものでないと、子どもの命にもかかわってくる保育事故さえ起きる - それが保育所であり保育の仕事です。保育士資格の取得者でも、実際に保育の仕事についている保育士の数ははるかに少なく、また保育の仕事を途中でやめる人は多く、再び保育の仕事に再就職する人は非常に少ない、という国も認める現実があります。保育の仕事が身体的にも精神的にも大変な仕事であるにもかかわらず、保育労働者の労働条件は著しく低い現状があり、たとえ保育という仕事に熱意や献身の気持ちがあってもそれだけでは続けられないという現実があるからです。保育労働者が十全な安定した労働条件、責任がとれる職場環境があって生き生きと仕事に臨めて、はじめて、保育所に子どもを預ける親たちにとっての安全・安心も守られるのです。林横浜市長は「待機児童ゼロのうえで、次は保育の質保育士の確保だ」と話し、安倍首相も「保育の質を高める」「処遇を改善し不足している保育士を確保する」と言っていますが、保育職場で保育に従事する労働者の労働条件、職場環境、勤務形態等こそその核心問題です。なぜ「保育の質」が大きくクローズアップされざるを得ないのか、なぜ資格取得者が現在の保育職員の3倍近くいるのに「保育士不足」に陥っているのか、この問題です。

【参照・検証の資料】

 横浜市が“こんなにも横浜市は待機児童解消で頑張っている”と言わんばかりに発信している横浜市の提出資料(2013年3月21日規制改革会議説明資料-横浜市子ども青少年局作成)とこのNHK「首都圏ネットワーク」シリーズを通して、見えるものは見えてきます。

横浜市提出資料pdf

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130321/item4.pdf<o:p></o:p>

NHK「首都圏ネットワーク」『シリーズ-どう減らす待機児童』

① 430日放送:横浜市“10分の1減”の背景<o:p></o:p>

 http://www.nhk.or.jp/shutoken/net/report/20130430.html<o:p></o:p>

 ② 51日放送:保育士確保の取り組み<o:p></o:p>

 https://www.nhk.or.jp/shutoken//net/report/20130501.html<o:p></o:p>

 ③ 5月2日放送 母親の声にきめ細かく応えて<o:p></o:p>

 https://www.nhk.or.jp/shutoken/////net/report/20130502.html<o:p></o:p>

 

「横浜方式」としてどんな取り組みが行われたのか?

 

  以下、前掲資料に基づいてみていきます。

(1) 横浜市の保育所待機児童数の推移

  中田宏市長をひきついだ林文子横浜市長が「あらゆる手段を講じて3年間で待機児童をゼロに」を掲げてチーム・ヨコハマのもとに取り組みを開始したのは2010年のことです。この2010年時点での「1552人の待機児童数」に至る経過を最初に見ておきます。前掲横浜市提出資料の1-1「保育所待機児童数の推移」のグラフと表によれば以下の経緯があります。

  ▲2001年に1000人を超えた横浜市の保育所待機児童数は、2003年には1198人に増え続け、これに対して2003年横浜市は「3年間で保育園定数を8000人増やす」とする待機児童対策を開始し2006年には保育所待機児童数363人まで減少。
  ▲しかし、その後、再び増加の一途のため、2007年には横浜市は定員数を5300人増やした。それでも今度は保育所待機児童数は減らず、増加し続け、前述の通り、2010年には1552人まで増加するに至った。
  ▲これが林横浜市政の2010年「3年間で待機児童ゼロ」宣言とチームヨコハマ発足の前提です。

 (2) 横浜市のこの10年間の認可保育所での市立と株式会社立の逆転

 「認可保育所の設置主体別内訳」 (前同・横浜市提出資料1-6参照)をみると、2003年から2013年の間に、どういう変化があったのか、何が行われたのか、その根幹が相当ハッキリ見えてきます。

  ▲2003年は認可保育所の総数は267園。その内訳でみると、市立保育所は127園、これに対して民間社会福祉法人立保育園109園。企業立保育園は株式会社立が2園のみでした。
  ▲では「待機児童数が2010年の1552人から2年間で179人にまで減った」という「横浜方式」下の2012年には、横浜市の認可保育所はどうなっているか?総数が507園。内訳で見ると、市立保育所は94園、社会福祉法人立の保育園が245園。企業立保育園は、株式会社立が106園、有限会社立が6園です。
  ▲この2013年「待機児童ゼロの年」には、認可保育所総数は579園。市立保育所90園、社会福祉法人立の保育園が276園。企業立保育園は株式会社立が142園、有限会社立が10園です。市立保育所には公設民営の指定管理者制度による園が2園含まれています。また2004年~2013年で実施予定も含めて市立保育所の37園が社会福祉法人に民間移管と記載されています。

  以上から見えることは何でしょうか?

   ① 横浜市は前中田市政のときから今日の現林市政も、「待機児童対策」としては市立保育所については「増設」「拡充」施策をとらず、詰め込み(定員増)で臨み、さらに民間移管を進め、指定管理者制度を導入して民営化するとともに、市立保育所(公設保育園)そのものの削減=減園を進めてきた。これがひとつ。

   ② このかんの際立った特徴は、この10年間での企業立保育園、とりわけ株式会社立の認可保育所の激増です。今では施設数では、認可保育所の4分の1を占め、市立保育所15%を大きく上回っており、この株式会社立の増加はますます強まるとみられています。
   株式会社立の最初の1園目株式会社ポピンズ・コーポレーション(港北区)。現在、横浜市の株式会社立の認可保育所のトップは、「子ども子育て支援」サービスをビッグチャンスととらえて早くから東京はじめ首都圏と政令指定都市での「保育」ビジネスにシフトしてきた山口洋代表のJPホールディンググループ=株式会社日本保育サービス
、「アスク保育園」名で横浜市では20園を新設しています。山口洋は現在、安倍政権の子ども子育て会議のメンバーです。

 【※当サイトでは、株式会社日本保育サービスに集中的な批判を過去に行っていますが、1999年新ゴールドプランを受けて保育・学童・子育て支援事業に取り組みを開始したのが代表山口洋氏。2001年小泉政権時の「仕事と子育ての両立に向けて」(「待機児童ゼロ作戦」端緒)を受けてJASDAQ上場、2003年小泉保育規制緩和を経て2004年JPホールディングの子会社・株式会社日本保育サービスを設立、子ども子育て支援事業に特化、2010年に「保育・子育て支援ビジネス」のリーディングカンパニーの評価を受けてJASDAQ最優良銘柄「J-STOCK」に指定。石原都政の認証保育所制度のもとで首都圏トップのシェアをアスク保育園展開で握ってきたという経過があります。この石原都政の認証保育所施策とその受け皿としての日本保育サービスのアスク保育園展開は、「3年間で待機児童解消」の横浜林市政の「横浜保育室」制度とアスク保育室新設開始のモデルになっています。】

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(2006年 東京都認証保育所キッズプラザ・アスク晴海保育園での御手洗経団連会長・山口洋代表・石原東京都知事のスリーショット写真の再録)

  この株式会社日本保育サービス代表の山口洋氏は、横浜市でも資金力や土地の確保で株式会社の強みを生かしての全面的参入、コスト面でも自信があると言い切っています(4月30日テレビ朝日「報道ステーション」)

  すべてを物語っているのが次の林文子市長のコメントです。
「株式会社・有限会社の参入がなければ、約3年間でこれだけの待機児童の解消にいたることはできなかった」。要は「株式会社の活用」(株式会社への「保育ビジネス」の全面的解禁・開放)に横浜市は舵を切ったということです。その結果としての当座の「待機児童ゼロ」なのです。

 (3) 「横浜保育室」

 
前同横浜市提出資料の1-7「横浜市の保育資源」を見ると、認可外保育施設「横浜保育室」等にみられる小規模保育が「待機児童解消」施策で占めている位置が、認可保育所への株式会社参入に次ぐものとして注目されます。

  ▲「横浜保育室」という横浜市独自の認可外保育施設の施策によって、横浜保育室は総数157か所、受け入れ児童数5277人です。
  この数は、市立保育所・株式会社立保育園を含む認可保育所の579カ所、48927人と比べても決して少なくありません。0~2歳の乳幼児専門の保育施設で小規模の面積で整備できることから横浜市は今後この「横浜保育室」をいっそう増やす方針でいることは明らかです。個人であれ企業であれ、法人格があり、横浜市が独自に定める認定要件にかなえば設置できるというものです。下記の市のPDFをごらんになればわかりますが、認可保育所の認可要件よりゆるい認定要件で、建物の空きを「待機児童解消」のために活用するものにほかなりません。なぜ「横浜保育室」(保育!)という制度呼称にしているのでしょうか?これなら設置者にとっても簡単であり、市にとっても手っ取り早い「待機児童解消策」だということです。横浜市による認定とは言っても、あくまでも認可外保育施設であるということを曖昧にはできません。横浜市は「横浜保育室」として認定したら、その法人に助成金を出して支援します。「横浜保育室」の数を増やすというのが市の方針であることは明らかです。

※横浜市こども青少年局:「横浜保育室の案内」   http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/unei/hoikuseido/file/ysitufutankeigen.pdf

※横浜市こども青少年局:「平成25年度横浜保育室 新規認定説明資料」

http://www.city.yokohama.lg.jp/kodomo/incubator/file/y-setumeikaishiryou.pdf

  ▲また、児童数はその整備の性格上大きくないが、事業所内保育が71カ所、118人と記載されています。1事業所で1人か2人の子どもということになりますから、「保育」すると言っても、いかに親がその事業所に勤めているからと言っても、はたして“どんな保育”が保障されているといえるでしょうか。事業所とは基本的に企業です。企業が1人か2人の子どものために、どれだけの設備やスタッフを配置するでしょうか。専従のスタッフを事業所が置くはずがありません。コスト面をみても自明です。結局、親が子どもを職場に連れて行き、その子どもを「置いておくスペース」があるだけというのが実際でしょう。子連れで安心して働け、子育てもできるなどと簡単に言える制度でないことだけは確かです。

  ① ここで特に留意すべき点は「横浜保育室」という曲者です。「認可外保育施設」の「小規模保育」が株式会社にとって認可要件よりゆるい要件で認定を受けられることで手っ取り早く参入しやすく、かつ横浜市から「横浜保育室」として助成金も交付され、利用料金も認可保育所の場合よりはるかに高く設定でき、ビジネスとして旨みがある(儲けを挙げやすい)という点です。認可保育所の場合には、公立に準じ同等の利用料が世帯の前年度の所得税額と子どもの年度当初の年齢に応じて所得税額階層別に利用料が定められていますが、小規模保育の「横浜保育室」では利用料金は自由なのです。

  ② この「横浜保育室」でも前掲の株式会社日本保育サービスの参入が注目されます。いまのところはまだアスク山手保育室、同あざみの保育室、同本牧保育室等ですが、東京都の場合の認可外保育所である認証保育所に株式会社日本保育サービスがアスク保育園名称で大量に参入したのと同様に、全面的に参入してくるとみてまず間違いないでしょう。「横浜保育室」としてのアスク保育室の利用料金は月極め保育の場合も一時保育の場合も東京都での認証保育所アスク保育園展開の場合の利用料金を標準として設定されています。都の認証保育所もそうですが、「小規模保育」を標榜する「横浜保育室」の場合も受け入れ数は(30名規模もあるにはありますが)認可保育所並かそれに近い60名規模、そしてそれ以上の規模のものがあります。「小規模保育」「保育室」という表現にだまされてはなりません。

  ③ 
認可保育所並かそれに近い受け入れ規模の施設を、認定要件のゆるい「小規模保育」「保育室」としてつくり、企業にとって自由度の高い利用料金で儲けるのですから、認可保育所への参入以上に企業にとっては旨みがある制度なのです。株式会社日本保育サービスは、横浜市で既に認可保育所で最多の20園を開設していますが、そのトップの位置(ネームバリュー・宣伝効果)を使って、実際には「横浜保育室」での全面的な展開をめざしているとみるべきでしょう。

 
  ④ この「横浜保育室」なる独自の制度から浮かび上がってくるのは、「待機児童ゼロ」の「横浜方式」とは文字通り、市から言えば株式会社の全面的導入、株式会社から言えば全面的参入、つまり保育の全面的市場化・民営化以外の何ものでもないということです。横浜市は、認可保育所への株式会社の参入に舵をきっただけでなく
、「認可保育所に入れない待機児童の解消」という羊頭狗肉の看板で「横浜保育室」という形態で株式会社により自由な金儲けビジネスの舞台を与えたのです。

(4) NHKシリーズのように「横浜方式」を「待機児童解消」のための横浜市による行政努力、入所希望世帯・待機児童世帯のニーズと多様な主体による子育て支援サービスの提供のコ―ディネートと美化することはできない!
   

 ここまでの「横浜方式」の検証を通して、「横浜方式」とは何かが非常に鮮明になったのではないでしょうか。「横浜方式」とは、▲入所希望世帯・待機児童世帯の保育のニーズに対して、横浜市が寄り添って就業状態・就労時間や預けたい時間帯や施設の希望を聞き取り、それに対して、認可保育所ではないが多種多様な提供サービスがあるとメニューを示して、相談に乗り、ニーズに適合したサービスの選択肢を与え、その結果、「3年間で待機児童解消」にたどり着いた、▲そこで「保育コンシェルジュ」という独自の制度が重要な役割を果たした、▲いま「待機児童問題」を抱えている自治体にとって大いに参考になる教訓に満ちている・・・というようなものではまったくありません。

 横浜市が果たした「行政努力」とは、チームヨコハマやプロジェクト、保育コンシェルジュの“思い入れ”の要素を捨象して見れば、入所希望世帯・待機児童世帯のために行われたものではないことは明らかであり、子育て支援ビジネスでカネ儲けを狙う株式会社のために、入所希望世帯・待機児童世帯をあっせんしたということ以外の何ものでもありません。

 そして重大なことは、NHKシリーズ(①4月30日放送分)の最後のところでアンケート結果で触れているように、「横浜方式」では保育から取り残される世帯、保育に苦しむ世帯が4割もいるということを、ほかでもないNHKも知っている、NHKもわかっているということです。

横浜市で子育て支援を行っているNPOが、4月、市内で子育てをしている母親を対象に行ったアンケートでは、保育所探しについて全体の45%が “満足” あるいは “ほぼ満足” と回答した一方で “不満” “やや不満” と答えた人も、全体の40%に上りました。 横浜市では取り組みを継続していくとしています。

 要は「横浜方式」では掬(すく)えない、救われない、取り残される世帯が広範にいるということです。次回は、この問題と「保育士不足」の問題についてみていくことになります。

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次回は、「横浜方式」の「利用料金」の問題と保育職員の賃金等労働条件の問題を扱います。

 

  

 

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株式会社の全面参入、認可外保育所の拡大と小規模保育奨励が安倍の「待機児童解消加速化」プラン

2013年05月13日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

シリーズ 《アベノミクス版「子ども子育て支援ー待機児童解消加速化」プラン批判 》前回①では、ー安倍首相の「3年間抱っこし放題」発言、自民党の「育児休業3年延長方針」について書きました。今回はその続き、②です。

「待機児童解消加速化」プラン掲げ、安倍政権が子ども子育て支援法の二年前倒し運用

株式会社の認可保育所参入を自治体に促迫 

・・・・5月2日規制改革会議で厚労省が方針表明

 厚労省は、この5月2日、規制改革会議において、「株式会社の認可保育所参入」を広げるように地方自治体に要請して自治体に認可の積極的緩和を促迫するという方針を表明しました。これが財界と安倍政権の意を受けたものであることは言うまでもありません

  現在の制度でも認可保育所の設置主体に制限はなく、株式会社の参入は認められています。しかし、認可するか、認可しないかは都道府県や政令指定都市などの地方自治体に裁量権があり、「保育の質に不安がある」「認可を求めている株式会社には経営上問題がある」などの理由で、株式会社を排除するケースは多々ありました。

 これに対して、「子ども子育て新システム」への反対を無視して昨年8月22日に野田政権下の自公民合意に基づいて成立した「子ども子育て支援法」によって、同法に基づいて2015年4月にスタートする新制度では、国や自治体が定める認可基準以外では、「資金・財産」「経営に必要な知識、経験」「設置者・経営者の社会的信望」の三点をクリアしさえすれば、要件を満たす株式会社として原則認可される仕組みとされたのでした。

  厚労省の子ども子育て支援法の2年の運用前倒しは、財界と一体の自民党・安倍首相の4月19日の「成長戦略スピーチ」での以下(※下記引用・抜粋参照)のツルの一声に対応したものです。

                001
              5月2日朝日新聞夕刊1面トップ

「子ども・子育て支援新制度」のスタートは、2年後を予定しておりました。しかし、そんなに時間をかけて、待ってはいられません。状況は、深刻です。

 そのため、今年度から、このプランを直ちに実施します。

 平成2526年度の二年間で、20万人分の保育の受け皿を整備します。さらに、保育ニーズのピークを迎える平成29年度までに、40万人分の保育の受け皿を確保して、「待機児童ゼロ」を目指します。 (「成長戦略スピーチ」から抜粋)

 この「待ったなし」で安倍首相が「直ちに実現」と言っている子ども子育て支援法の「子ども子育て支援法の運用二年前倒し」「五年間で待機児童ゼロ」の「待機児童解消加速化」プランの狙いは、要約すれば以下の点にあります。

  (1) 「待機児童問題」の深刻な重大社会問題化の中で、7月参議院選を前に「子ども子育て支援」で女性票目当てに、5月5日の子どもの日を前に、「待機児童解消加速化」プランを安倍首相と自民党が前面に押し出したという点にとどまりません。この短期シリーズでの①(前回)で触れたように、

  (2) 9割非正規化による「成長戦略」のカギをなすものとして30代の女性労働力の根こそぎ動員、そこでネックとなってくる待機児童問題の「解消」を掲げないわけにはいかないという政策テーマがあります。さらには、

 (3) 保育・子育てを市場として民間企業に全面的規制緩和で解禁・開放し、財界と歴代自民党の積年の目標であった福祉解体・保育民営化を一気に促進するものです。「待機児童解消の加速化」とは保育解体、「子ども子育て支援」の大ウソによる全面的民営化そのものです。

 (4) 認可保育所における株式会社立保育所による公立保育所の駆逐、乳幼児保育への株式会社立の認可外保育施設・小規模保育の全面的参入によって、政府財界からみたとき保育所が砦となってしまっている公務員労働組合運動・自治体労働運動、保育職場の団結を一掃するという狙いがあります。

「待機児童解消」目的は大ウソ、保育(福祉)の解体、株式会社への開放ゆるすな!

 (1) 「株式会社の認可保育所参入」については、文字通り保育の市場開放を求める株式会社のために行われるのであって、子どもの保育のために行われるものでもなければ、就労と子育てのはざまで苦しむ働く女性と共働き世帯をはじめとした労働者家庭のために行われるものでもありません。ここは自明ですが、あいまいにしてはならない点です。財界と企業の「保育は自治体にやらせず企業に委ね、企業のカネ儲けビジネスに開放しろ、保育から国や自治体も手を引き、保育を明け渡せ」の要求通り、そして国の「国の財政も火の車だ、減らせるものはとことん減らせ、この際、国のカネを保育には回せない」という財政緊縮・福祉きりすて・民営化政策のために、この「株式会社の認可保育所参入」の「待ったなし」「直ちに実現」が行われるのです。

  遡れば、小泉構造改革・規制緩和のもとで、保育所の設置基準は、入所枠でも入所児童数比の職員数比率でも大幅あるいは無制限に緩和・弾力化され、業務委託化・民営化が始まっています。その際に掲げられたのが「待機児童解消」でした。児童福祉法に基づく保育所の設置基準を潜脱した無認可保育所が民間企業・民間個人のカネ儲けのために乱立され、ちびっこ園・全国チェーンでの乳幼児の年間10件にものぼる保育児童の死亡事故が社会的に発覚したとき、国は規制基準として保育所設置基準を無認可保育に厳格に適用し規制を強め、公立保育所の増設・強化をはかるのではなく、逆に「監督下に置く」という名目で、無認可保育を認可外保育所として「合法化」し、届け出を受け報告を受けることで容認し、あわせて、保育所の区分を認可保育所と認可外保育所とし、「無認可保育」という表現をやめ、そういった定義もやめました。国と歴代与党政権は、公立保育所の増設によって保育ニーズに対応するのではなく、民間の導入・活用を福祉としての保育にかわるものとして制度・政策にビルトインし拡大し続けてきたのです。小泉規制緩和、石原都政や東京・杉並区山田前区政をはじめとする「待機児童ゼロ作戦」は、常に、この保育民営化、保育規制緩和の旗印とされてきました。

  民主党政権による「子ども子育て新システム」も、野田政権下の自公民合意による「子ども子育て法」も、安倍政権によるこのたびの「子ども子育て支援法」の運用前倒し-「待機児童解消加速化」プランも、この「待機児童解消」「待機児童ゼロ」を看板に、公的保育(福祉)の解体、保育の市場化、民営化・規制緩和を究極まで推し進めようとするものなのです。

 (2) 安倍首相の「待機児童解消加速化」プラン、とりわけその「柱」として標榜されている「株式会社の認可保育所参入の判断の即時緩和」については、共働き世帯の激増、さらにはダブルジョブ、トリプルジョブなしには生計を賄えない世帯の増加によって、親の就労のために保育に欠ける子どもが大量に発生し保育所に入れない子ども(待機児童)が激増している状態に対して、これを打開し保育を十全に「保育が必要なすべての母親、世帯」に保障するために出されているものではまったくありません。

  ここであらためてハッキリさせなければならない問題は、「待機児童」とは何か、という問題です。2~4万円の保育費なら子どもを預けることもギリギリ何とかできる、やはり認可要件・設置基準というものがあって子どもを安心して預けられるところがよいと思って認可保育所に入所を希望しても、入所希望者が多くて入れない、さらに入所条件、選考基準が厳しすぎて審査で落とされて入れない子どもを指すということです。ここには、重大なうえにも重大、深刻なうえにも深刻な問題があるのです。つまり単なる「空き」待ち、単なる「待機」ではないという問題があるのです。

  言い換えれば、保育を必要としている共働き世帯、すなわち世帯の収入総額から公立保育所を含む認可保育所にしか預けられない水準の世帯で、申し込んでも既に枠が一杯で入所できない、又は就業日数・就業時間、両親の定収額等々のさまざまな理由で入所が拒まれているケースの総数が待機児童数なのです。

  厳格に言えば、本来なら保育所に入れるべき子どもがありながら、公立にも民間認可保育所も入れられず、入所申込そのものもあきらめざるを得ない、現にそうなっている、「公式の入所希望者数」にはカウントされない世帯の児童数もこれに加えるべきでしょう。

 (ⅰ) 【親の就労のために保育に欠ける子どものための福祉として保育があり、保育所はその福祉の施設なのです。この「福祉」という保育の本来の本旨に立って考えることが大切です。保育所に入れることもできない、施設による保育が受けられない子どもとその世帯に対して、社会・国・自治体がどうするのか、これこそが「待機児童」問題と呼ばれている社会問題の本質です。単なる「保育所の空き待ち」「待機」の問題ではありません。つまり福祉としてあるべき保育の欠如・不足・不備・瓦解・解体の現状の問題として、「待機児童」と呼ばれている社会問題はアプローチされ解決されなければならないということです。】

 (ⅱ) 【ここでの深刻かつ重大な“余談”として言えば、これは、戦後の今も、自衛隊や日米安保や沖縄の現実とその悪化や社会保障制度の法律も含めた改廃や労基法の改悪や民営化・非正規化や原発事故や福島圧殺によって、実際には形骸化・空洞化・ないがしろにされていながらも、国家の統治規範(最高法規)たる『日本国憲法』に「改廃」の手がまだ具体的には加えられていない現行憲法の改悪・解体(安倍首相いうところの「憲法改正」 に手をつけるということです。憲法13条(幸福追求権)、14条(法の下の平等)、25条(生存権、国の社会的使命)、27条(勤労の権利)、98条(最高法規の遵守)、99条(憲法尊重擁護の義務)のすべてに反し、否定するのが、「保育に欠ける子ども」「保育に欠ける子どもを抱える世帯」を制度的実体的に排除・切り捨てるアベノミクス(新自由主義)版「子ども子育て支援」「待機児童解消加速化」だからです。】

 踏み込んではっきりさせなければならない点は次の点ではないでしょうか。このような待機児童を抱えた労働者世帯とは、実際には、20代から30代の若い非正規世帯がその圧倒的過半の実体をなしているということです。その子どもたちとは、3歳未満児が大半です。ここに「待機児童問題」といわれる問題の深刻さがあります。

  ③ 株式会社立の認可保育所は、こうした非正規世帯には子どもを入所させたくても選考基準が厳しすぎて入れられないという厳しい現実があるのです。

 

 両親が、ともに就業時間が週5日・1日7時間(休憩時間1時間は別)を満たさなければ、認可保育所の入所の選考基準では受け入れてもらえないというのが実際には今では一般的になってしまっています。認可保育所への入所とは、非正規共働きにとっては「針の穴にラクダを通す」ほどの、ほとんど無理不可能な難関なのです。さらに「非正規共働き」というだけで、ろくに相談に乗らずまともな選考審査もせず、「収入の不安定性」を理由に門前払いで断られるという現実が実際にはまかり通っているのです。

 株式会社立の認可保育所は、たとえ国や自治体が定める設置基準やガイドラインに適合した認可保育所ではあっても、子ども子育て支援法のもとでは、入所は保護者と企業との自由契約のシステムです。入所させるかさせないかは、企業の一方的裁量によって決まります。

   つまり、子ども子育て支援法で児童福祉法や「自治体の実施義務」「児童福祉の措置義務」から基本的に自由(無規制)となった株式会社立の認可保育所の増加は、もっとも保育が必要な非正規世帯、そこに累増している待機児童の問題を、解消・解決するようなものではまったくないのです。

  福祉としての保育を否定・解体し、それにかわるものとして、就業形態や経済状態によって「受けられる世帯」と「受けられない世帯」が生みだされる「子ども子育て支援サービス」の制度に切り替えられ、株式会社は専らその「受けられる世帯」を対象としてその「子ども子育て支援サービス」を提供するものだからです。政府が言う「就業と子育てに苦しむ女性に活躍してもらうために、ネックとなっている待機児童問題の解消のために、株式会社の認可保育所参入を促進し、保育の受け皿を前倒しで準備し確保する」というのが、大ウソであることは、まずもって明らかです。保育の本旨に立った「保育に欠ける子どもとその世帯」すべてに対する福祉でない限り、「待機児童」問題と言われているこの保育の問題は解決されないのです。福祉とはそういうものであり、保育とはそういうものです。「待機児童解消加速化」はそうした、すべての人々に保障されるべき福祉、すべての子どもに保障されるべき保育とは、縁もゆかりもない、その対極にある福祉切り捨て、保育解体です。

これが保育・子育てに苦しむ非正規世帯への「保育・子育て支援」だとでも安倍首相は言うつもりか?!

・・・・認可外保育所への支援と小規模保育の拡大促進とは親たちにとっては、高い利用料を苦労して無理やり工面したうえ、行われる保育への不安を抱えながら、子どもが命を落とす保育事故の危険さえ潜むところへ白紙委任するようなものだ。

 安倍政権は、この株式会社の認可保育所参入の緩和・促進とともに、「待機児童解消加速化」プランの実際のウエイトを認可外保育所への支援の強化による増設と小規模保育の奨励・促進(20人以下の小規模保育、事業所内保育、保育ルーム・保育ママによる預かり保育、保育ママの居宅訪問保育等々)に置いています。安倍首相は4月19日の「成長戦略スピーチ」では「待機児童解消加速化」プランについて、以下のように言っています。

「全国で最も待機児童が多い」という状況から、あの手この手で、わずか3年ほどで、待機児童ゼロを実現した市区町村があります。「横浜市」です。

やれば、できます。要は、やるか、やらないか。

 私は、待機児童の早期解消に向けて、このいわば「横浜方式」を全国に横展開していきたいと考えています。

 まず、これまで国の支援対象ではなかった認可外保育施設についても、将来の認可を目指すことを前提に、力強く支援します。

 これまで支援の対象としてこなかった20人未満の小規模保育や、幼稚園での長時間預かり保育も、支援の対象にします。

 さらに、賃貸ビルなども活用して、多様な主体による保育所設置・新規参入を促すとともに、事業所内保育の要件を緩和して、即効性のある保育の受け皿整備を進めてまいります。

 安倍首相がここで言っている「横浜方式」については、「待機児童解消加速化」プランの実体モデルとなっているので、このシリーズでは、次回③で見ていきます。

 ここでは予め、それに先だって次のことを指摘しておきます。

(1)認可外保育所やいわゆる小規模保育は、認可保育所に入所できない「待機児童」、前述申し上げた点からいえば、その過半をなす非正規共働き世帯の子どもたちの保育の受け皿になり得るでしょうか?

 確かに認可外保育所や小規模保育は、認可保育所のように設置基準や認可要件といったものからは自由ですから、施設数は増やせ、枠としての入所・預かり枠は大きくなるでしょう。

 認可保育所の場合のような入所条件や選考基準もほとんどありません。言いかえれば、保育料金(カネ)さえ払えれば入所させられるでしょう。

 だが、まさにその保育料金(カネ)の問題、認可外保育所や小規模保育たとえば保育ルームや保育ママの場合には、料金の問題が、今度は認可保育所入所の場合の入所倍率、選考基準にかわる《最大の難関》です。現在、実際の可外保育所の保育料金は概ね認可保育所の場合の2倍前後ですが、3倍にもなるところもあるのです。認可外保育所は認可保育所の場合よりもはるかに高いのです。おまけに入所では、認可保育所では求められることもない預かり金まで事前に高額とられます。認可外保育所や小規模保育は、保育を売っているのです。買う金(保育料)がなければ保育は受けさせることはできません。子ども子育て支援法の新制度では、認可保育所への株式会社参入以上に、この認可外保育所や小規模保育の保育料金の問題に、制度のギラギラした本質が現れていると指摘している人も少なくありません。カネがなければ子どもに保育を受けさせられない、いっさいはカネ次第だからです。

 非正規共働き世帯にとっては、両親がともに昼夜分かたずボロボロになるまで働いて稼いでもその何割かが保育料として払う金に消えるのです。認可保育所の保育料金でも厳しいのに、これでは認可保育所に子どもを入れられなかった非正規共働きの世帯にとっては、認可外保育所や保育ルーム・保育ママは、最後の「助け舟」「頼みの綱」にもならないのです。

 しかも、公立保育所や認可保育所のように基準や要綱があって設備やスタッフの水準が確保されている場合と違って、そういうものがない認可外保育所や小規模保育では、子どもを安心して預けることができるでしょうか。子どもがを預けるにも不安を抱かざるを得ないところに、共働きでやっとのことで稼いだなけなしの金をはたいてわが子を預けるしかないというのは、地獄の苦しみに等しいことです。そう思います。

 要するに、安倍首相が言っていること、やろうとしていることは、株式会社の認可保育所参入にせよ、認可外保育所支援にせよ、小規模保育の拡大にせよ、保育を必要としている非正規共働き世帯には、保育などまったく保障しない、保育で苦しんでいる非正規世帯などどうなってもかまわない、というに等しいことです。何が、どこが、「待機児童解消加速化」でしょうか!安倍首相の言っていること(「待機児童解消加速化」)とやっていること(非正規世帯の保育のきりすて)はまったく真逆です。だから大ウソとだまし討ちだというのです。

(2)安倍首相「待機児童解消加速化」プランには、本当に、あげればきりがないほど、怒りに堪えない、ゆるせない点が山ほどあります。

 ◆前掲引用の通り、安倍首相は「あの手この手で待機児童ゼロ実現」「要はやるか、やらないか」「賃貸ビルなども活用」「多様な主体」「即効性のある保育の受け皿」・・・と非常に乱暴で粗雑な手法で「待機児童解消」のためには何でもありといわんばかりです。

 ◆認可外「保育所」、小規模「保育」と「保育」とは言うけれど、肝心の保育の中身については安倍首相は触れるところがありません。これでは、公立保育所に入れられず、民間の認可保育所からもはじかれて、喉から手が出るくらい、藁にもすがる思いで、「子どもの保育」「保活」で苦しんでいる渦中の20代、30代の親であっても、「ちょっと待って」「これでは自分の子どもを安倍首相があげるあの手この手においそれと委ねるってことにはならないのではないか」「いったい子どものこと、子どもを預ける私たちのことを何だと思っているのよ」と考えるのも当然です。

 ◆「賃貸ビルの活用」とか「事業所内保育」とか「あの手この手」を並べていますが、安倍首相は、いま保育所に入れられず「保活」で苦しんでいる世帯の身になって考えたことがあるでしょうか?安倍首相が「保活」に苦しんでいる人間の立場に置かれたら、自分の子どもをさまざまの設置基準が義務付けられている公立保育所や認可保育所ではないところに、預けられるでしょうか?

 ◆まるでコインロッカーに子どもを出し入れする、とにもかくにも預け先さえあればどこでもかまわない、そういう感覚で、いま「保活」で苦しんでいる親たちがいるとでも考えているのでしょうか? 子どもの命と安全、育ちにかかわる保育の問題をこれほど軽々に扱う宰相もいないのではないでしょうか?

 ◆親代わりになって、子どもの命と安全、育ちを預かり、自分の目が子どもに届き、見守ることができる環境、条件、施設空間、複数の経験と知識がある資格を有するスタッフが十分に配置されていて、一瞬目を離したらその一瞬が子どもの死亡事故につながりかねないという緊張ある保育の仕事でスタッフが全神経を集中してチームプレーで臨んではじめて、百人百様に個性があり年齢も特徴も成長段階も異なる子ども、とりわけ乳幼児の保育に責任をとれる職場・・・それが本来の保育の現場であり、保育の仕事というものです。こういう保育のイロハと言うべき連綿たる日常の仕事に、まるで無知無理解なのが、安倍首相の「待機児童解消加速化」プランの「やるかやらないか」「あの手この手」「即効性」の発想ではないでしょうか?

 ◆保育現場では、小泉規制緩和以来、保育事故は画然と増え続け、とりわけ、「子ども子育て支援新システム」議論開始以来、社会的に明らかにされただけでも1年間に10数件の乳幼児の死亡事故が、この数年、続いています。こういう子どもの命と安全の問題、責任を伴っているのが保育だということ、そしていま保育現場が危なくなっているという問題を、一度でも安倍首相は今度の「待機児童解消加速」プランで考えたことがあるでしょうか?一瞬でも子どもの動きから目が離せない、しっかりした体制とスタッフと職場環境・保育スタッフの労働条件なしには保育重大事故が絶えないのが保育の現場です。安倍首相のスピーチからは、そうした保育の現場に対する認識の一かけらも、保育所や小規模保育に子どもを預けて働きに出る親の気持ちに対する思いも気遣いの一かけらもまったく感じ取ることはできません。安倍首相の「待機児童解消加速」プランからわかるのは、子どもを預かる「場所」、「器」、「箱」、「入れ物」さえあれば、預かる「人」さえいれば、それを揃えさえすれば、いま深刻な社会問題にもなっている「待機児童」問題に蓋ができるのではないかという安直で粗雑な発想、無責任な考え方だけです。

 ◆いや、それさえも資本のカネ儲けの道具にしようとしているということです。認可外保育所、小規模保育、事業所内保育、保育ルーム、保育ママ(預かり、居宅派遣)・・・・、すべて企業にかかればカネ儲けの道具です。企業として仕切り、コ―ディネートし、パート・アルバイトを多用し、ピンハネし、・・・・。そこでは必ず子どもの命にかかわる重大事故が起きます。事故はそこで働くスタッフ、パート、アルバイトのせいで起きるのではありません。少なくとも、これからは、「待機児童解消加速化」プラン、そうです、安倍首相あなたが引きおこすのです。

《次回に続く》 ③「横浜方式」とは何か

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