すぎなみ民営化反対通信

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ベビーシッタ―預かり保育・児童死亡事件について

2014年03月23日 | アベノミクス版「子育て支援」批判
  【今回の記事について】 
 シリーズ再開の中での今回の記事は、《「成長戦略」が非正規共働き世帯・総働き世帯を激増・・・・ますます「待機児童」は増え続けるばかり》を予定していましたが、準備中に、表題のベビーシッター事件が起きました。安倍政権が強行しようとしている2015年度子ども子育て支援新制度の実施内容の中に盛り込まれている「マンション預かり保育」中に発生した事故・事件であり、この事件を受けた政府厚労省の対応も、あくまで既定方針通り新制度実施することを前提に、「密室保育」の積極的容認・規制緩和で起きる問題のすべてを利用者の自己責任に転嫁するきわめつきのとんでもないものなので、表題のように予定を変更し、今回の記事を作成しました
 今回の事件と政府厚労省対応をみて想起したのは、21人の乳児死亡事故を引き起こすまで放置されていたちびっこ園事件とその直後にバタバタと発表された『認可外保育施設指導監督基準』、そのペテン性と同基準による認可外保育施設の規制緩和でした。今回の事件発覚後2日後に厚労省が発表した『ベビーシッターを利用する時の留意点』と2015年実施の新制度に盛り込まれようとしているベビーシッターの一部の自治体認可制への移行は、預かり保育=密室保育の容認・規制緩和そのものです。今回の事件は、あらゆる意味で国の保育責任放棄、公立保育所の全廃による保育解体・全面的民営化の根本的問題点が覆い隠しようもなく噴きだしたものです。
  記事としては、長大になっていますので、番号を付して骨子を章建てしていますので、ざっと眺めて、時間的余裕があるときに骨子に沿って、何回かに分けてお読みいただければ幸いです。


事件・事故は政府が強行しようとしている新制度の行きつく先
非正規共働き・ひとり親世帯きりすてのアベノミクス版「子ども子育て支援新制度・待機児童解消加速化」に絶対反対
アベノミクス版「子ども子育て支援・待機児童解消加速化」批判・シリーズ第9回>

 ベビーシッター事件(マンション預かり保育・児童死亡)で走る衝撃、その波紋
 ● 3月17日、ベビーシッターが保育室としている埼玉県富士見市のマンションで預けられていた2歳の子どもが死体で発見されるという事件が発覚しました。インターネットのベビーシッター紹介のマッチングサイトを介して、3月14日に2歳児と8カ月児の兄弟二人を預けた横浜市の母親が、迎えの約束の日夕刻に預けたベビーシッターに連絡してもつながらないため、警察に相談し、警察の捜査の結果、前掲の2歳児(兄)が既に死亡している状態で見つかり、弟の8カ月児は保護、マンションに居たベビーシッターは死体遺棄容疑で逮捕されました。
 ● 捜査関係者からの取材結果としてメディアが報じるところによれば、▲逮捕されたベビーシッターは複数の名前でファーストビットが運営する「シッターズネット」に登録し、預かり保育としてベビーシッターの仕事を行っていた、▲以前にも母親はネットを通じて同じベビーシッターに子どもを預けたことがあり、良い印象を持っていなかったが、頼んだ相手が名前が違うため同じシッタ―だとは思っていなかった、シッタ―の側では以前と同じ依頼者だとわかっていたが、そう気づかれないように、母親から子どもを預かる場には、別人に代理人として行ってもらって、その別人から子どもを引き取って預かっていた、▲そのシッタ―は、1月には富士見市保育課に「マンションの部屋で子どもを預かる業務を始めたい」と相談におもむいて、必要な保育士数や立ち入り検査の説明を受けて申請書類を持ち帰っていたが、2月には既に「みずほ台家庭保育室」としてマンションの住所入りでサイト上で、そのマンションの一室を案内し、実際にそこで子どもの世話をやり始めていたということです。
 ● インターネット上の顔と実体がみえないマッチングサイトでの直接個人契約の中で起きた今回の事件で、実際には子どもができた直後に離婚したシングルマザーや飲食店や風俗店等の深夜に働く女性、複数の仕事に不規則不安定な形で就いて働いている低賃金で収入が低い非正規労働者の人々等々、1時間に1000円前後という安い預かり料金で利用できることからマッチングサイトに集まる利用者が非常に多いことから、不安と衝撃が走っています。

保育は子どもを預ける側の利用者責任=自己責任の問題なのか?
 今回のベビーシッター事件に関しては、子どもの母親に対して、顔も見ていない、信頼できるかどうかの実体もわからないシッタ―との「預かり保育」の契約を指して「子を持つ母親として信じられない」「シッタ―も問題だが責任は母親にもある」という当該母親に対するバッシングに近い批判がネット上にあふれています。
 ● 所轄省庁である厚労省は、3月19日、この今回の事件を受けて再発防止のために、▲「まず事前の情報収集を・・・市町村が出している情報、厚労省所管の公益社団法人「全国保育サービス協会」に加盟している会社のリストの活用」▲「子どもを預ける前に、ベビーシッターに事前に面接し、信頼できる人物かどうか確かめる」▲「シッタ―の氏名・住所・連絡先を確認する」▲「保育場所が自宅以外の場合には事前に見学する」▲「認定ベビーシッターの登録証の確認」▲「万一の事故の場合の保険に加入しているかどうかの確認」▲「預けている間の子どもの様子の確認」▲「緊急時の連絡体制」などの10項目の注意事項「ベビーシッターを利用するときの留意点」を発表しています。【詳しくは、下記の厚労省ホームページ・報道発表資料・3月19日を参照して下さい。⇒ http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000040712.html 】
  厚労省の再発防止のための「留意点」も、ネット上の議論の過半の意見も、いずれも保育については当然に子どもを預ける側の利用者責任=自己責任であるという立場で論じているのが特徴的です。しかし、果たしてそうなのでしょうか。
  厚労省の事件再発防止のための『ベビーシッター利用のときの留意点』は国の無施策・保育責任放棄にほかならず、以下の通り、責任転嫁の利用者自己責任論は批判されてしかるべきものです。

 ● ベビーシッターの預かり保育で子どもが死亡するという事故・事件が発覚したことから、厚労省が前掲のように『ベビーシッターを利用するときの留意点』を出していますが、ベビーシッター事業者は「全国保育サービス協会」に登録している百社をはるかにこえる事業者があり、実態はつかめておらず、利用者は膨大な数に上ります。今頃になってやっと、という話ではないでしょうか。しかもその『留意点』の内容は、やむを得ない藁にもすがる思い(※)の利用者にとってはあまりにもよそよそしい他人事風で客観主義的な「留意点」のもの言いではないでしょうか?【※これは「私も(サイトで)検索して藁にもすがる気持ちでお願いしたことがある」と自民党の野田総務会長が副会長をつとめる自民党の「児童の養護と未来を考える議員連盟」の3月19日の会合で明かして今回の事件で働く母親の窮状を訴えた(読売新聞3月20日)のことばをそのまま運用したものです。
 ● 厚労省がその『留意点』で、「まず情報収集を」と挙げている「市町村」(自治体)は、子どもの保育では保育所に受け入れず、公的責任をほうり出して、事業者のリストの紹介程度のことしかせず、「藁にもすがる思い」でベビーシッターを利用せざるを得ない人々に親身になって援助してこなかった、「事業者と利用者の直接契約」を理由に、責任ある助言や調査・紹介をやって来なかった、そういうことはやらないという実際の現実をまずはっきりさせるべきでしょう。以下は、インターネットの紹介サイトを通して行われているベビーシッター利用のしくみのフロー図です。

  べビーシッター →条件→ 紹介サイト ←希望← 親(利用者)
            ①料金・日時など
            ②当事者同士で交渉
            ③契約成立後、子どもを預ける 
 この上のフロー図の【紹介サイト】を【市町村(自治体)】に置き換えて考えて下さい。おかしな話ですがそうしても特に違和感はありませんね、ネット上のサイトと役所の窓口の違いはあるが、違いは基本的にそこだけであって、いまの実際の役所に何かを期待することはほとんどできないからです。それが「福祉(保育)は自治体の実施義務」「福祉(保育)は自治体の公的責任」という公的責任を投げ出して、事業者と利用者の直接契約に委ねている現実のあるがままの姿、実体です。紹介サイトの役割と自治体の役割には実質的にはほとんど変わりはないのです。だから前掲フロー図で「置き換え」て考えていただいたのです。おまけに自治体はそこに足を運ばなければ話は進まない。夜間や深夜の仕事や不規則な仕事について働いている実際のシッタ―利用者にとって半ば難きを強いるような話です。
 ● ネットの紹介サイトに頼らざるを得ない事情があるということです。ネットで検索するしか子どもの預け先を見つけられない。おカネがないうえに就労時間等の都合と適合する施設がなかなかみつからない厳しさの中で起きている出来事なのです。ベビーシッターによる預かり保育や一時保育、夜間保育を利用せざるを得ない利用者の切迫した保育事情に対して国はどんな保育政策を出してきたのか、何もしてこなかったではないか、このことこそまず根本責任として問われるべきではないでしょうか。
 ● 同じく厚労省の『留意点』が挙げる「全国保育サービス協会」に登録されている事業者かどうかの情報の活用という点も同様です。同協会は厚労省所管の公益社団法人です。認定ベビーシッターという協会独自の「資格制度」を持っているが、保育士や看護士、幼稚園教諭のような国の法律で定められた資格や都道府県の試験に合格して得ることができる免許に基づく制度ではありません。「認可外保育施設」として行政に届け出て報告し立ち入り検査を受け指導監督を受けることは義務付けられてはいません。つまり、資格制度という点でも、法律という点でも、従って行政の指導・監督・関与・干渉という点でも、ベビーシッター業は現状は、すべて無認可、すなわち無規制・放任そのものなのだということです。【2015年度に実施される子ども子育て支援制度ではベビーシッター業務の一部を市町村の認可制とし、所定の研修を受ければシッタ―事業者に一定の補助金を出すとしていますが、国家試験による保育士や幼稚園教諭のような資格や看護士免許の取得ではない研修受講終了という非常に緩やかな基準で、現状の無認可のベビーシッター業を市町村が「認可」するというものにすぎない。公立保育所を基準とした認可保育所の「認可」とは意味がまったく違います。だから先回りして言えば、2015年の「子ども子育て支援新制度」実施のおける「ベビーシッターの一部の認可制への移行」で現状はほとんど変わらない。国には基本的に無規制・放任を変える気もないのだ。国はベビーシッターに公的責任をとらない、いっさい責任を取ろうとしていない。だから今頃になってやっとの『留意点』提示であり、今回の事件が起きるまでろくに実態調査していない。基本的にすべて「留意点」の内容が物語るように「注意しろ」「信頼できるかどうか判断しろ」「確かめろ」「預けている間も子どもがどんな状態かチェックしろ」とすべて「利用者の自己責任」に転嫁しているのです。】
無認可保育で21人の子どもの死亡事故をちびっこ園グループがおこすまで指導監督に腰を上げなかった政府・厚生省
 ● 今回のベビーシッター事件で思い起こすのは、ちびっこ園事件です。「ちびっこ園事件」というと一つの一回の事件のように聞こえますが、全国チェーン展開をしているちびっこ園グループでは、1979年から2001年までの22年間で21人の乳幼児が次々と認可外保育施設でうつ伏せ死(窒息死)等で死亡していたのです。
 ● ちびっこ園は認可外保育施設でしたが、低料金、24時間保育、年中無休を基本に、月預かり、短時間の一時預かりから夜間保育まで、公立保育所を中心としたそれまでの保育施設ではフォロ―、カバーしきれない延長保育や夜間保育、日曜保育、一時預かり、期間保育等々の縁辺領域の保育を商機として、「便利さ」を売りにして大都市圏に系列チェーンを伸ばし、2001年度には全国で66の保育所(ベビーホテル)を有し年商25億円に達するまでになっていた民間企業です。低料金、夜間保育、24>時間保育といった実際の保育ニーズがあって「人気があった」のも事実ですが、「福祉(保育)はカネ食い虫」という歴代自民党政権の保育削減政策から国がそうした保育ニーズに必要な予算配分・施策措置をとる公的責任を拡大しないことから、保育を「カネ儲けのフィールド」としたちびっこ園が台頭・伸張したのです。国による保育責任の放棄と国が放棄し放置している領域への営利目的企業の進出の放任の問題はちびっこ園事件を捉え返す場合にあいまいにしてはならない問題です。実に22年間にわたって、21人の乳幼児の命が失われている、そのかん国は何もしなかったということです。
 ● このちびっこ園西池袋店の事件の前年の2000年1月から2月にかけて神奈川県大和市の24時間年中無休の認可外保育施設・スマイルマム大和ルームで、園長の暴行虐待によって、意識不明・硬膜下出血で1歳8ヵ月の男児、頭がい骨骨折・頭がい内損傷で2歳2ケ月の男児が相次いで死亡しています。その後の捜査の結果で開園直後の1年5ケ月の間に同園には計63人の幼児が預けられ、そのうち約半数の31人がケガをしたり精神的後遺症を受けています。保育施設の園長が暴行を園児に加えて死亡させるという看過しがたい大事件が起きていても、「園長の不適切な個人的資質の問題」として認可外(無認可)保育施設に潜む危険性とその制度上の原因にメスを入れて踏み込むことはせず、逆にそこに蓋をして、隠ぺいし、ちびっこ園で21人目の死亡事故・犠牲者がでるまで国は動かなかったのです。
 ● ここではちびっこ園事件を取り上げますが、ちびっこ園での21人目の乳幼児死亡事故(ベビーホテル・ちびっこ園西池袋店、生後4カ月男児の窒息死)が起きるに至り、はじめて国・厚生省が動き、全国の系列保育所に各自治体が立ち入り調査が行われました。
 ● ちびっこ園西池袋店の4ケ月乳児窒息死事件とは、ベビーベッドに寝ていたその乳児の顔に、横で寝ていた乳児が覆いかぶさっていたのを保育者が発見し、病院に運ばれたが翌日未明に亡くなった事件です。窒息死の疑いが死因と判断されています。死亡した乳児が寝かされていた部屋では3つのベビーベッドに2人ずつ、6つのベビーベッドに1人ずつ計12人が寝ていましたが、保育者はついていませんでした。国の定める基準では、保育所内に常勤職員が8人必要なところ、同店では当時、0歳児6人、1歳児23人を含む計63人の園児を、園長以下の正規社員4人、臨時従業者3人でみていました。そして事故がおきた時間帯には39人の乳幼児が預けられていたが、保育者は3人しかいませんでした。
 ● ちびっこ園の系列66店の保育所への各自治体の立ち入り調査で判明したのは驚くべき実態でした。事件後の家宅捜索では保育所から「収入を上げろ」と書かれた標語が押収されています。グループ経営の会社社長は徹底した経費削減を行い、乳幼児への食事やおやつも切り詰めていた。手っ取り早く利益を上げる方法として、同じ面積に最大限子どもを多く詰め込むこと、入園希望者を断らないこと、保育に関わる人件費を削減するために少ない人数でやりくりすること、24時間保育であることから実質24時間勤務が多い人では月に9回もの回数で職員に強いられていました。66か所のうち57か所で保育従事者数や施設に問題があることが発覚しました。業務上過失致死で立件されたのはわずか4件だが21件の死亡事故を起こしていました。ちびっこ園西池袋店での窒息死事故同様、2人の乳児を1つのベビーベッドに寝かせていたちびっこ園川崎での乳児死亡事故の民事裁判では提訴後もちびっこ園は全国で1つのベッドに2人の乳児を寝かせる慣行を続けていたことが明らかになりました。
 ● ちびっこ園事件(21人死亡)、スマイルマイム大和事件(2人死亡)が社会的に明るみに出て、厚生省は、重い腰を上げて、2001年10月『認可外保育施設指導監督基準』を達示するにいたりました。確かに、この『認可外保育施設指導監督基準』からは、再発の防止のために ▲ 届け出制によって認可外保育施設を把握し、>▲ 認可外保育施設に関する情報の提供で利用者が適切に施設を選択できるようにする、▲ 悪質な認可外保育施設を排除する等の保育行政上の必要性の認識がーあまりにも遅きに失するとはいえー一定程度は窺えます。
 しかし、核心は、これほどの重大事件にいたるまでの認可外保育施設の放任・放置による深刻な弊害にその発生原因までメスを入れて「規制」をかけたというよりは、公立保育所を含む認可保施設に順守・履行が課されている『児童福祉施設最低基準』よりもはるかに緩やかな「規制ならざる規制」を『認可外保育施設指導監督基準』とすることによって、認可外保育施設の当時の保育水準を追認・黙認したといわれても仕方がないものです。『児童福祉施設最低基準』に達しないまでもそれに準ずるような指導監督基準を設けて保育水準を引き上げて改善するのではなく、民間企業が保育にいっそう参入しやすいガイドラインを積極的に設けた認可外保育施設の規制緩和というのが実際のところなのです。
 ● 2001年10月の『認可外保育施設指導監督基準』のこの問題点をはっきりさせるために、現在も認可保育所に課されている『児童福祉施設最低基準』と『認可外保育施設指導監督基準』の違いについては、この際、明確にしておくことは重要と考えます。
  施設面積や園庭の設置などの義務付け(認可保育施設)と不問(認可外保育施設)の顕著な違いもありますが、その最たる違いは保育従事者の数と従事者の資格の義務的規定の有無です。認可保育所では乳児3人に対して保育士1人、1・2歳児6人に対して保育士1人、3歳児20人に対して保育士1人、4歳児以上30人に対して保育士1人と最低基準を設け義務付け、常時2人以上の保育士の配置を義務付けています。保育従事者は全員保育士資格を有するものでなければなりません。
 これに対して、認可外保育施設では、保育従事者は、全員が保育士であるという必要はまったくなく、保育士は従事者のおおむね3分の1以上であればよい というものです。
  認可外保育施設という制度の根幹に関わる問題点として、要するに、認可外保育施設では、子育ての経験や保育に関する学習がなくても資格なしでも保育という仕事にはつける仕組みに、実際にはなっているということです。さらに専門職=保育士資格者を保育従事者の要件にしないだけでなく、民間が取り組むことを前提に経営コストを考えて、常勤を保育従事者とするよりも非常勤・パート・アルバイトや派遣社員も使えるようにしているということです。つまり『認可外保育施設指導監督基準』で位置づけられた認可外保育施設とは、基本的に営利事業者、民間企業が保育へ参入してカネ儲けしやすい仕組みとして制度化だということです。

2015年度実施の新制度での「預かり保育の自治体認可」は密室保育の容認・規制緩和だ!今回のベビーシッター事件の再発防止にならず、再発・激増を招くものとなることは明らか。『認可外保育施設指導監督基準』の二の舞いはゆるされない!                       ● 前述したように、歴代政権と国は「保育はカネ食い虫」だとして一貫して保育への財政の投入やそれにつながる新たな政策支援にはネガチブで、逆に保育への税金投入を削り圧縮することばかり考えてきました。保育(福祉)の公的責任を後退させ、公的責任を縮減した領域に民間を参入させ、最終的に事業者(民間企業)と親(利用者)の直接契約、利用者の自己責任を基本原理とする制度を目指してきた。
 ● 『認可外保育施設指導監督基準』では厚生省がどんなに「事件・事故の再発防止」と説明しようと、原因にメスが入らず、制度的には何も現実の実態が変わらない以上、再発は不可避でした。現に、認可外保育施設では保育施設での乳幼児死亡事故はその後も頻発・増加し、民主党菅政権下で打ち出され野田政権時の自公民三党合意で立法化された2015年度実施の「子ども子育て支援新制度」に向かう動きの中でますます激増しています。厚労省2014年1月プレスリリースの保育施設事故報告
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000036226.pdf
によれば、2013年一年間の認可保育施設と認可外保育施設における乳児の死亡事故件数と園児10万人当たりの死亡事故発生件数にみる発生率は以下の通りです。
《認可保育施設》 施設数24038 園児数221万9681人 乳児死亡事故4
           園児10万人当たりの乳児死亡事故件数 0.1802
《認可外保育施設》施設数7739 園児数184万9592人 乳児死亡件数15
           園児10万人当たりの乳児死亡事故件数 8.109
 ごらんの通り、認可外保育施設における乳児死亡事故発生率は認可保育施設の45倍です。ちびっこ園やスマイルマム大和のような事故を2度と繰り返さないためにとして当時の厚生省が定めた『認可外保育施設指導監督基準』はほとんど意味がなかった、否、ここ数年間の経過から明らかなように、それが認可外(無認可)保育施設の規制緩和だったために、むしろ保育事故の頻発・多発を促進するものとなったということこそが確認されねばなりません。国は、認可外保育施設に対する必要な基準の策定においてもその適正な基準にのっとった施設の公立・民間での増設や拡充に国としての責任をとらなかったから、こうなった。国が保育に責任をとらずに民間参入に丸投げし、無施策・放任・放置を決め込んでいるから、こうなり、ますます死亡事故を引き起こしているということです。

 ベビーシッター事件はアベノミクス版「子ども子育て支援、待機児童解消加速」の行き着く先そのもの 
  

 ● 話を今回の事件と厚労省の『ベビーシッター利用のときの留意点』、2015年実施の子ども子育て支援新制度におけるベビーシッター等による預かり保育の自治体認可制移行の問題に戻します。安倍政権、厚労省は、ちびっこ園事件のような事故・事件の再発防止と銘打って2001年当時の自民党政権と厚生省が行った『認可外保育施設指導監督基準』と同じ二の舞を今回のベビーシッター事件(マンションでの預かり保育中の死亡事故)でやろうとしているということです。
 ● 2001年当時は認可外(無認可)保育施設の放任・規制緩和!2014年3月の厚労省『留意点』と2015年新制度実施では、認可外保育施設の中でももっとも実態がみえにくい、いかなる意味でも公的責任がいっさい介在しない個人直接契約で行われているベビーシッター預かり保育というグレーゾーンの法的規制なき追認・放任、規制緩和・自由化です。
 ● 安倍首相は、2013年4月成長戦略スピーチで「子ども子育て支援制度の前倒し実施、待機児童解消加速化」を打ち出し、その中で横浜方式の全国化として小規模保育施設の促進と多種多様な保育サービスを重視し、ビルの空き室の利用、多様な預かり保育の活用を具体的に提示している中で、このベビーシッター事件が起きたことは、恐ろしいほど、象徴的です。
  安倍首相は「あらゆる主体」「あらゆる手段」「あらゆる方法」を政策的に動員して、「子ども子育て支援制度新法の前倒し実施、待機児童解消加速化」をスピード感をもって全力で進めると明言しています。「要はやるかどうか、いっさいはやるかどうかだ」とまで言っています。安倍が言っていることは、どんな主体であろうとどんな形態であろうと、何でも「認可」する、というに等しい話です。これほど無責任で理不尽、乱暴な焼け野原路線はありません。この全面的な、無軌道な規制緩和の動きの中でベビーシッター事件は起きるべくして起きたのです。

 「子どもの命と未来より企業のカネ儲け」「福祉の最後の砦・公立保育所全廃」の保育解体・民営化ゆるすな!公立保育所を増設せよ、非正規共働き、ひとり親世帯に対する保育は国の責任だ。総非正規化と福祉きりすてのアベをたおそう
● 保育をめぐって眼前で起きていることのすべては、「命よりカネがすべて」の新自由主義とその破たんがひきおこしている事態です。大恐慌・大不況のもとでこの国の政府は、企業の利潤を生み出すものにはカネ(人民の血税)は湯水のように注ぎ込むが、また利潤を上げるためにはとことん賃金・労働時間等の労働条件を切り下げ、低賃金非正規労働力を際限なく拡大し、企業の利潤につながらないことにはビタ一文カネ(人民の血税)は使わない。
 ● 総非正規化の国策で、保育が死活的に必要な共働き世帯を激増させておきながら、その圧倒的過半をなす不安定雇用・低賃金不規則就労の若い非正規共働き世帯の保育を切り捨てているというのが待機児童の激増の核心問題だ。
 ● ひとり親が深夜や夜間、また不規則な仕事に就かざるを得ないのに、そうしたひとり親の子どもの保育の深刻な苦しみにも、国は必要な公的責任施策をとらない。だからネットの紹介サイトでのベビーシッターによる預かり保育に不安があってもすがらざるを得ない。
 ● 子ども子育て支援新制度は、認可保育施設への運営費補助の打ち切りによって自力で運営をしのがざるを得ない自治体の公立保育所を兵糧攻めにして、一定の補助金が出る幼保連携型認定こども園への移行に誘導し、公私連携型法人として株式会社に自治体施設を譲渡、開放させることで公立保育所を全廃しようとまでしている。政府財界が進めているのは、保育の解体・廃止であり、福祉としての保育の最後の砦となっている公立保育所を抵抗勢力たる労働組合もろとも全廃することです。公立保育所さえなくしてしまえば、『児童福祉施設最低基準』などという企業にとって厄介な妨げとなっている認可基準などなかった話にでき、「認可保育所への入所」希望も立ち消えし、「待機児童問題」も無視できると考えています。「保育」はサービス、カネで売り買いする商品、商品を選択するのは利用者の自己責任、すべては株式会社と利用者の直接契約で「子どもの命よりカネがすべて」の展開ができるという話だ。そのために歴代政府が児童福祉法改悪を続け、小泉が規制緩和をやり、保育施設における保育従事者中の保育士の割合も、園児数に対する保育士と保育従事者の定数配置もなしくずしで緩和してきた。そのために一つの営利企業の保育施設で相次いで乳幼児死亡事故や虐待による死亡事件が起きても、民間企業が参入しやすい認可外保育施設の促進政策を優先し、放置・放任を決めこんで推進してきた(2001年『認可外保育施設指導監督基準』なる無規制要綱)。その仕上げとして、公立保育所の全廃・民営化、認可外小規模保育の促進と拡大、密室保育まで追認・放任・促進するアベノミクス版「子ども子育て支援、待機児童解消加速」を強行しようとしているのです。

 ● だが起きていること、これから起きてくることは、公立保育所の解体・廃止をめぐる保育労働者の職場的団結と闘いへの決起の攻防であり、カネがなくて保育を受けられない非正規共働き世帯とひとり親の不安と憤激である。国とアベがどんなメチャクチャをやって、保育を解体しようとしても、子どもがいる以上、保育は必要であり実在する。どんな社会であれ、次代を担うのは子どもである。その子どもに保育を与えないような国、政府には、そもそも次代の展望などあり得ない。政府が保育の責任を取らず、子どもたちの命と未来に責任をとらないということは、政府や財界には未来への確信など何ひとつないということだ。支配階級にはもはや統治の資格もなければ、その力もないということがここにハッキリと示されている。世の中、社会、この国を変えよう。保育をめぐる攻防でハッキリさせられねばならないのはこの問題だ。
 ● まず、眼の前のアベをたおそう!そのためにも職場で声を上げよう。
  鍵をなしているのは、職場で保育の仕事に誇りと使命感をもって結束している保育労働者の闘いだ。新制度は、公立保育所に働く保育職員をいったん解雇し、株式会社が実質経営する公私連携型幼保連携型認定こども園の定める(現在の公立保育所の職場の労働条件よりはるかに劣悪な)労働条件・雇用形態に従う者を再雇用することを狙っている。国鉄分割・民営化の手法で保育民営化、低賃金非正規化をやろうというものだ。それは現在の公立保育所保育職員にとってはクビきり・労働条件切り下げ・生活破壊との死活的攻防だ。保育労働者の労働条件・雇用形態は一変するだけではない。労働条件、労働基本権がないがしろにされるとき、起きるのは園児の保育事故、安全崩壊だ。保育労働者にとっては、自分と職場の仲間と家族のためにも、園児のためにも、一歩も譲れない。
 実際には、この新制度に「決まった以上戦っても無駄」と屈して、声を上げることに反対し逆に声をあげさせないために現場の抑圧に回った組合幹部もたくさんいる。公私連携型法人の経営陣の従順な僕(いもべ)として「生き残る」保身をはかろうとしているということだ。連合自治労も日本共産党の影響下の全保連(全国保育運動連絡会)も「子ども子育て支援新制度」の法律が成立して以降は「反対」を投げ捨て、「よりよい保育」「よりよい制度に」で「子ども子育て会議」に参加し、ああだこうだと政府財界企業と話し合うという体たらくの屈服と裏切りに明け暮れている。
  それでも少数でもまっすぐに絶対反対で闘う仲間がいる限り、依然として、保育職場の現場は、福祉の最後の砦として政府財界と対峙し続けることができる。「反対」の声を上げる仲間の力で労働組合を裏切り者の御用幹部から奪い返そう。要は声を上げれば攻防は爆発し、一歩も譲れない対立は公然化・全国化するということです。
  新制度の受け皿として、東京都認証保育所や横浜保育室、大都市圏の民営保育園のシェアを握り、新制度の小規模保育に手を伸ばしているJPホールディング・株式会社日本保育サービス代表の山口洋(※)がかなめに座っているのが「子ども子育て会議」だ。そこへの参加とそこでのおしゃべりを方針としているような既成労組、既成保育運動は絶対にぶっとばせる。【※山口洋は、▲24時間保育・預かり保育・一時保育を保育参入・会社創立当時からカネ儲けビジネスでめざす保育の理念にしてきた輩であり、▲系列アスク保育園は園長も保育主任も契約社員で月給十八万円~二十二万円、パート・アルバイトは時給が最低賃金プラスわずかのアルファの900円前後であり、短期間でやめる職員がどこでも相次いでいる名うてのブラック企業だ。】 この山口洋のような連中との会議への参加と協議を「新制度」への方針とし、現場では「反対」の声をおさえこむことに躍起になり、職場の保育所を民間企業に明け渡すような既成の組合幹部や運動指導部はぶっとばせばいいのだ。
 ● 公立保育所で保育労働者が砦である職場を株式会社に明け渡さない限り、アベノミクス版「子ども子育て支援新制度」は破たん・挫折する。そのために労働組合の闘いを復権しよう。それは「新制度」がめざすデタラメ極まりない無責任・無軌道な保育きりすての諸施策を土台からひっくり返す反乱の合図となる。それはまともな保育を一番必要としている最大の当事者であるにもかかわらず子どもを保育所に入所させることができず、切りすてられている非正規共働き世帯、ひとり親の闘いを必ず爆発させる。それは非正規職撤廃、ワーキングプア化反対・貧困対策要求の広大な闘いとして広がる、その大きな水路になっていく。
 ● 国と自治体は非正規共働き世帯、ひとり親世帯の保育に責任をとれ!これは正義の当然の要求である。そしてこの要求は「命よりカネ」「ウソと騙し打ち」の政府にお願いしたり政府と一緒に話し合って事態の改善をはかるようなことではないことも明らかだ。示されている事態はどこを見回しても、国(政府・財界)と私たちが一歩も譲れない非和解の関係にあるということだ。非正規職撤廃、国は保育に責任をとれ、政府が責任を取らないというなら我々がとってかわって我々自身でやる、これは労働者階級の生きさせろの闘いだ。奪われた保育の権利を連中から取り戻す反乱だ。その先頭に保育労働者は団結して立とう。声を上げよう。


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