【今日のニュース】 6月26日に衆院で可決され現在、参院審議中の《子ども子育て新システム・総合子ども園法案》政府原案の民自公3党合意修正による『子ども子育て支援法案・幼保連携型認定子ども園充実法案・(前二法案施行に伴う)関連法整備法案)』のその看板とその無責任でデタラメな正体、その核心はどこにあるか?!
野田政権の「子ども子育て新システム関連3法案」(原案)の極悪の中身が自公の修正要求とそれに基づく民自公3党合意に基づく修正法案の議員立法で「修正・改善」され、政府の極悪の狙いに歯止めがかかって後退したなどというものではまったくない!
その一端が、修正3関連法案の成立した場合の施行の財源に関する安住財務大臣の国会答弁で明らかになった。
政府法案原案に対する自公修正をのんだ民自公3党合意で、新制度法案は議員立法の形で衆院で可決され参院に送付され審議中である。
※前掲の衆院通過・参院審議中の「修正3法案」の正式名称は以下の通り。
★就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案
★子ども子育て支援法案
★子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案
(※修正案が成立すれば、この3本目の法律名は、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」に変わる)
【1】 7月19日の国会でのアリバイ的な質疑で安住財務大臣が松あきら(公明党)の質問に「今回の修正法案では1兆円の財源が必要だが、政府のもともとの法案で財源として確保している7000億円を超える3000億円については、現時点では『足りない』『ねん出するとしかお答えできない』『どうやって足りない3000億円を確保するかは私にもまったくわからない』と答弁した。
野田政権が「社会保障と税の一体改革」一連法案で提出予定だった「子ども子育て新システム関連3法案」を当サイトとして暴露・批判した際にも、触れておいたが、その政府原案でも、「7000億円」しか確保できていなかった。法案の目玉看板・シンボルの「待機児童解消」「子育て支援」にはまったく程遠い実体でもともと「新制度」は組み立てられていたということに過ぎない。
「新制度」のために必要な財源での3000億円の不足とは、とりもなおさず、政府民主党が、保育に欠ける子どもを抱えて悩み苦しんでいる共働きやダブルジョブ・トリプルジョブなしには生活・生計を維持できない非正規世帯の「待機児童の解消」も「子育て支援」もさらさら念頭にはなかったということ、これを頭から切り捨てて恥じないということを自己暴露するものだ。これは「子ども子育て制度改革」にかかわる最大の根本問題だ。なぜなら保育所に入れない「待機児童」のほとんどは3歳未満・乳幼児であり、その世帯はほとんどが若い非正規世帯だからだ。
つまり「待機児童解消」「子育て支援」を看板に、実際には子どもの保育を食い物にして保育を企業のカネ儲けビジネスの市場にしようとしていたということだ。「新成長戦略との連携」「新たなマーケットと雇用の創出」と「新システム」はもともとうたっていた。保育の株式会社への解禁・自由化こそが狙い。消費税を増税して、そのカネを参入する株式会社に濡れ手で粟の儲けのシステムを提供しようという魂胆だったのだ。
政府民主党が甘かったのは、保育所の幼稚園との制度的一元化、施設の統合一体化、子ども園への一本化が簡単にいくと考えていたこと。簡単にそのシステムを企業に提供できるとタカをくくって、何らの成算もなしに、「子ども子育て新システム」という安直な制度設計を唐突に持ち出したところにこそある。この新制度設計の着想も、せいぜい、「待機児童」を抱える保育所と定員割れしている幼稚園を合体すれば「待機児童解消」もできるというパソコン上の員数合わせ、国も幼保に注ぎ込むカネ(保育所への運営費補助金、幼稚園への就学助成金)でこれまでのように悩まないで済むという大ざっぱな皮算用、新制度眼目たる株式会社・民間企業への自由化によって、企業も幼保市場化で活性化し、全面的に参入してくる、かくて万事うまくいくという程度の着想だ。
とんでもない無責任な話だ。だからこそ、幼保現場の抵抗が噴出し、反対にあうや、「新システム」は「幼保一体化=子ども園」の単一類型を設計原図としていたものが、ガタガタと崩れた。つまり経過が示す通り、一体化・一元化は現場で拒否され、①幼稚園に子ども園移行を義務付けず、②3歳未満も就学前も網羅した総合子ども園はつくるとしても、③現行保育所に子ども園への移行を義務付けず、④3歳未満児の乳幼児保育所として保育所の存続を残さざるを得ず、⑤乳幼児保育が重荷となっている保育所の3歳以上就学前児童の保育所も保育所として存続させるという、モザイク的で、どこが新システムなのかもさっぱりわからない複雑な制度類型に行き着いた。「総合子ども園」とはそのモザイク的なデタラメさをごまかす「総合」仮装に過ぎない。
しかし、これでは元の黙阿弥、それどころか行き詰った現行制度以上に大混乱を招いてしまうだけでなく、現行制度の骨組みをさまざまに残していることによって財政的重荷はひきずったままだ。このままでは、やはり幼保は「金食い虫」で何のための「新システム」なのかというところから、政府原案がそのようなモザイク型に固まった後で、国会提出の政府原案としては、それとは何らの整合性もなく全く別の「公私連携型総合子ども園」の概念・規定を急きょ強引に盛り込んだ。
要は、国や自治体のコストカットと幼保の自由化・市場開放という新システムの原点への回帰だ。つまり、財政難にあえぐ自治体の公立保育所を「公私連携型適合法人」と指定した株式会社・民間企業に無償譲渡または時価より安い価格で貸し出し、文字通りの民営化ないし指定管理者制度的運営という本音をむき出しにした。総合子ども園や保育所や幼稚園に補助・助成のカネを国や自治体がこれまでのように出し続けるより、財政的に補助金負担が重荷になっている自治体にその施設を身売りさせて、企業に施設や事業そのものを委ねさせるという一刀両断に、法案の政府原案で原点回帰し「純化」した。
前掲の安住財務相答弁は、経過から見ると一見、確かに財政難、財源的展望を欠いた政府のどうしようもない危機的惨状をさらけだしたものではあった。
(※もともとの「子ども子育て新システム制度案要綱」の時点ではこれまで保育所への運営費補助金と幼稚園への就学助成金等の整理・再編・圧縮と労使折半拠出または社会保険か消費増税によって1兆1000億円)の財源確保を当て込んでいた! しかし、どうあがいても7000億円にしかならないことがハッキリした。4000億円もの財源不足だ。そこから、民自公3党合意に基づく修正法案に対応した必要財源総額を1000億円下げて、1兆円にしたがそれでも3000億円足らないということなのだ)。
しかし、それは起きている問題の半面に過ぎない。安住国会答弁の本音・本質は、「新システム」を国や自治体にとっての「金食い虫」の幼保を民間企業(資本)に投げ与える、自由化してしまえば、カネなどかからないというとんでもない発想、新制度着想があって、何の財源的裏打ち策もとってこなかったというのが実際だ。財源が裏打ちされているかどうかなど、実は政府にとってはどうでもいいことで、新制度に移行してしまうことが先決だというのが政府の考えていることの根底にある。
いずれにしても、この乱暴このうえなく、国は「新制度」で幼保コストを削り、企業には「新制度」でぼろ儲けさせるという「カネがすべて」のギラギラした「子ども子育て新システム」のそのあまりの現状破壊性と保育・幼児教育という社会にあって非常に根底的な大きな問題が、現行の幼保現場から激しい反発と抵抗にあって、その原色のままではいっさい法律化も法案化もままならない事態に政府は追い込まれた。これが核心の第一である。
別に、この「カネがすべて」のギラギラした民主党政府原案に対して、自民党と公明党が「児童福祉」の党として民主党に抵抗し、揺さぶりをかけ、「待った」をかけて修正に追い込んだからではまったくない。もともと自公はついこの間まで「カネがすべて」の政治を財界から委ねられ、幼保領域でもその先頭にたってきたのだ。
【2】 逆に、自公は、国として財界として「新システム」の狙いの貫徹のためには、あまりにも大きな反発と混乱を生みだした民主党的なやりかたではなく、自公的な「認定子ども園」の推進で目的を達することができると、国と財界の階級的な「新制度」目的を救いにかかった、その意味では民主党政権を「批判」する形で、政府に助け船を出したのである。これが核心の第二だ。
その証拠に自公の修正を受け入れた「幼保連携型認定子ども園」「子ども子育て支援」法案は、もともとの「子ども子育て新システム法案」を、一見そぎ落としたかのような「福祉」の装いを押し出し、「NPO法人や民間企業の参入を認めてはない」「指定ではなく認定・認可」などと強調しているが、よくみれば、まったくそうではない。むしろ、自公=別働隊的な「子ども子育て新システム」が3党合意法案の核心である。
【3】 はっきりさせておこう。これは政府法案原案への真向からの廃案として出てきたものではもちろんなく、政府法案原案の修正法案として出てきたものだ。 自公は財界の意向である「子ども子育て新システム」の極悪の階級的制度目的をかなえるために「通りやすくする」修正を提起し、それで民自公が一致したのだ。
【4】 私たちが絶対に見逃してはならないのは次の点だ。自公の修正要求→民自公3党合意→議員立法としての修正法案の提出と衆院可決成立・参院審議で誰も真向からの抗議・批判を集中も指摘すらもしていないが、政府民主党の「新システム関連3法案」原案と審議中の「修正3関連法案」では、もっともゆるしがたいところで、明記されている共通の極悪内容が絞り込んでいえば二つある。
①政府原案がもともとの政府の成案にはなく、急きょ加えた前述の「公私連携型適合法人」による「公私連携型総合子ども園」は、修正法案でも「公私連携幼保連携型認定子ども園」として明記されている( 「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案」にハッキリ明記されている)。この点は絶対に曖昧にはできない。「公私連携型」とは株式会社・民間企業への幼保市場解禁のための規定だからだ。「公私連携幼保連携型認定子ども園の認可申請者」の審査における修正法案の「認可」の適合基準の定義も政府原案とまったく同じだ。「政府原案のように、誰でもなれる指定制では悪徳悪質業者の参入を防げない」などと言って「指定制に反対」するふりをしながらその実は嘘八百、修正法案で自公は「指定」を「認定」と言い換えただけで、そっくりそのまま政府「総合子ども園法案」の「公私連携」規定を活かしたのだ。民自公は、現行の公立幼保の一掃、施設・事業の民間企業への身売り(譲渡・市価より廉価な貸与)、いまの幼保職員の解雇、職員の総非正規化という点で完全に一致している。
②さらに「小規模保育、地域型保育」と称して、一企業のチェーンで20数人の子どもを死なせた「ちびっこ園」のような、あるいはまた「保育ママ・預かり保育」と言う形で、誰の目も届かない密室保育へ、子どもの命を危険にさらす「制度改革」を「子ども子育て支援」のもう一つの柱に据える点では、政府原案も修正法案もまったく同じだ。
政府民主党の「新システム」法案原案と3党合意によって衆院で可決成立している修正法案は、この骨格、極悪の核心においてまったく変わらない。民自公は、財界の意を体現して、よってたかって、公立の保育所と幼稚園を焼け野原にし、民間企業に身売り、払い下げし、職員のクビをきり、子どもを命の危険にさらそうとしている。「子ども子育て支援・認定子ども園新制度」法案に絶対反対だ。怒れ!