すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

指定管理現場・図書館からみる公務員制度解体・「道州制」・民営化

2010年09月25日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回記事(9月22日)からの続きです。

現場から見える「公務員制度改革」と「新しい公共」の正体

地域図書館12館全館指定管理で何がどうなるか?

 既に6館が今年4月から実施されている杉並区の地域図書館12館全館指定管理者制度導入がそのまま区の決定通り全館で実施されると結局どうなるのでしょうか?杉並区の図書館事業はどうなるのでしょうか。山田宏前区長に変わって新たに区長となった田中良区長は、開会中の区議会本会議で「慎重に実施する」と答弁していますが、あらためて、この地域図書館全館指定管理で何がどうなるのかという問題の結論と意味についてはっきりさせる必要があります。これだけ取り出してみれば、杉並区という自治体、その図書館という一事業で起きている問題ですが、杉並区全体という単位、東京都という単位であるいは国という単位に置き換えてみて同様のことが行われたらどうなるかという発想で考えてみてください。実にとてつもなく構造的な大攻撃であることが一目瞭然です。とはいえ、ここではまず杉並区に即して整理して、そこから論を進めましょう。

(1)図書館の仕事をことごとく外注・民営に

  杉並区立の中央図書館を含む13館による図書館事業は、地域図書館12館全館が指定管理者制度による民間企業の運営に変わることで、図書館事業の行政的中枢機能を除いて全部、民営化される。

 中央図書館は既に窓口業務は業務委託している。つまり、杉並区は、区立図書館のうち中央図書館の一部の中央機能を除く図書館としての図書館の仕事(業務)はことごとく外注し、民営にするということです。

(2)民間各社による業務・運営と「公立」の有名無実化

 中央図書館の窓口業務と今年4月1日実施の6館の運営が、株式会社図書館流通センター(TRC)、丸善株式会社、株式会社ヴィアックス、大新東ヒューマンサービス株式会社という民間企業によって現在担われているように、全館指定管理では、各館ごとに図書館業務・図書館運営が別々の民間各社によって行われる

 それでも「TRC図書館」「丸善図書館」「ヴィアックス図書館」・・・というわけにはいかず、あくまで杉並区立図書館だからそれぞれに異なる業務主体・運営主体たる各社を指導監督する位置と役割は中央図書館が担うということで中央的機能だけが残る。ここで重要な点は、仕事としての図書館業務における指揮命令権は各館ごとに民間各社に専属するということ。中央図書館といえども業務上の直接の指揮命令権を各館で行われる業務に対して持っていないということ。

 中央図書館の「指導監督」は名ばかりで、図書・資料等の共通データーベースの中央的管理機能と標準的ノウハウの政策的な助言機能、館長会議の定期的開催の主宰機能があるだけ。たとえば館長会議でも、各館で起きている現場の問題を区(自治体)=中央図書館はほとんどつかめない。そもそも図書館の生の仕事(業務)は管理職がデスクワークだけでつかむことのできない、現場で首を突っ込まなければ決して理解も解決もできない。おまけに館長会議に出てくる各館館長は互いに競い合っている民間各社。各社が自分が管理・運営する図書館で起きたネガティヴな問題を隠ぺいし、「うまくいっていること」「いかに問題が起きていないか」しか報告しないのは目に見えている。区の中央図書館長を通しての行政上の「指導監督」も、せいぜい、事務的レベルの連絡や(個人情報漏出等の)事故があった場合に注意することができる程度の「名ばかり指導監督」に過ぎない。

 指定管理者制度実施によって、「区立図書館」という名称は残っても、その「区立」とは区が区の財政で建て、これまで区の財政で整備してきた図書・資料を保管している施設(イレモノ)で区が指定管理費を出しているという以上の意味はない。

(3)ボトムラインの超低賃金で激務を担う典型的な非正規職場

   全館指定管理で起きる最大の激変は、図書館で業務に従事する労働者の賃金等の労働条件の問題です。中央図書館で前記した中央的機能に携わる職員だけが常勤の公務員各地域図書館館長と業務主任の計2、3名が民間(指定管理者企業)の契約社員でしかも基本的に非常勤、スタッフはすべてパート、アルバイト。中央図書館も前記公務員職員を除いて、パート・アルバイト。

 各社が出している求人情報によれば、館長や業務主任でも月額10数万円~20数万円パート、アルバイトの一般スタッフは時給800円台、高い場合でも900円台。図書館の仕事で重要な専門性の意味を持っていた司書資格と司書としての図書館実務経験も、時給でプラス10円~20円程度の加算に過ぎない。

 指定管理者制度の実施によって、図書館は典型的な非正規職場となる。図書館の仕事に携わる従事者の90%程度が低賃金で、年金も医療保険もない、雇用契約期間が数年~1年の明日なき不安定雇用の状態強いられる。時給800円台~900円台のパート、アルバイトも細切れシフト制、週勤日数上限があり、給与月額は4、5万円~10万円以下だ。これで生きていけるというのでしょうか?文字通りのワーキングプア職場です。

  しかも何か問題が発生し、運営能力が不適格と評価されたり、企業が図書館ビジネスとは別のビジネス等で経営破たんした場合には、指定が解除、契約打ち切りによって、企業が切られ、その瞬間、労働者は職を失う。

(4)これまでの図書館の職員(公務員)はどうなる?

  これまで地域図書館で働いていた職員はどうなるのか?区は全館指定管理者制度導入の際に、「解雇ではなく異動」とし、実際に本庁や他施設・部署へ「異動」しました。組合との労使交渉や議会答弁でも「非常勤は雇い止めにはしない」と確認しました。今度区長になった田中良も区職全般にわたることですが「クビにはしない。解雇はしない」と言っているようです。では地域図書館全館指定管理に伴う職員(常勤・非常勤)の「異動」は、これまでも普通に行っている区役所内の何年かおきの異動とかわりがないものなのでしょうか?そうではありません。

 まず田中区長の「クビはきらない、解雇はしない」から。ハッキリさせるべきですが、2011年には国家公務員法改正が行われ2012年度には実施されます。地方公務員法改正も同時に連動して強行してきます。そこでは、「協約締結権」を付与する代わりに公務員の賃金等の労働条件も解雇も自由にできる仕組みに変わります。田中区長が「地域図書館全館指定管理者制度の実施は慎重に進める」と答弁し「少なくとも(既に今年4月実施の6館の)一年程度の運営期間を確保して評価・検証して進めていく」と答弁したことにはウラがあり、そのウラとは、この解雇自由化の公務員制度改革を前提にしているということです。導入を既に決定済みの残る6館の実施に際しては、《公務員の身分保障》付きの「異動」ではなく職員のいったん全員解雇が計算されているということではないでしょうか。田中区長は法律の改正、公務員制度改革を楯に「クビにはしない、解雇はしない」の確認を必ず反古にしてきます。

 そもそも区は「コストダウン(経費縮減)効果」を目的として図書館全館指定管理を決定しました。田中良も「最小経費」を第一に掲げています。図書館事業で指定管理者制度実施でコストダウンしても、「異動」では他事業他部署でその「異動」職員分の人件費がかかり、区のトータルコストでは節減とはならない。私たちの批判の論点は「経費節減にはならないではないか」ではなく、「『異動』は全館指定管理のための当座のペテン。これは全員解雇攻撃の始まりだ、絶対反対」ということでなくてはなりません。

 さらに「異動」させられる現場の職員の実際の想いと鬱々とした不安の問題があります。「解雇だ」「クビだ」と言わなくても辞めたくなるように仕向ける「異動」は事実上の「クビ」ということにほかなりません。

  図書館の仕事に苦労に耐えて使命感と意欲をもって長年専念してきた司書の職員にとってはその仕事を奪われる、辞めさせられるということです。「異動」部署は民間で言う「異業種」のようなものです。パッと頭や気持ちの切り替えが簡単にいくわけではない。

 ② 区の本庁等の他の部署で「不向き」と一方的に評価され、さらに図書館での仕事の大変さに対するまったくの無理解と過小評価から「図書館なら勤まるだろう」と図書館に「異動」で配置されてきた職員にとって、目が回るような忙しさと利用者接遇の大変さに何とか慣れてきたところでの「異動」は図書館激務からの「解放」になるか。自分を「不向き」と言って図書館に異動させた本庁等のどこかの部署に戻されて果たしてそこにその人の「居場所」「仕事場」があるか。これは職員が自分から嫌になって辞めるように仕向けているということではないのか。辞めざるを得ないように追い込むこと、仕向けることもほとんどクビきりと同じではないか。

 つまり全館指定管理とは、現職員の全員クビきり、全員解雇だということです。それでも図書館で働きたい職員は、指定管理者(民間企業)に契約社員やパート・アルバイトで採用されるしか道がないということです。

(5)図書館の労働組合は一分会まるごと消えてなくなる

 これまで杉並区役所には杉並区職員労働組合(杉並区職労)があり、中央図書館と地域図書館には杉並区職労の組合員で構成する図書館分会がありました。12地域図書館の指定管理・民営化でこの図書館分会がなくなってしまいます。正確にいえば中央図書館に数名の組合員からなる分会が残るか、それもなくなるかということですが、要するに杉並区立図書館という中央図書館も含めて13の職場から、労働組合が一瞬で消えるということです。図書館職場から憲法28条に基づく団結権の保障がなくなるということです。

 全館指定管理のもとでは、労使関係はすべて各館ごとの指定管理者企業=民間各社と杉並のその図書館に派遣・配置される労働者の関係となります。これらの企業=使用者は図書館ビジネスを看板にしていますが実体は図書館サービススタッフの人材派遣会社です。契約社員にもパート、アルバイトにも自ら労働組合をつくらない限り、労働条件等の交渉を行うすべもありません。しかも組合の結成等を採用時にあらかじめ禁圧しています。指定管理者制度、民営化=非正規化とは労働者を団結させない、労働者の団結権を認めないということにほかなりません。

(6)地域コミュニティ支える図書館の役割の解体

 公立無料の図書館が、地域社会で果たしている役割はとてつもなく大きいし、今日ますます重要になっています。図書館に行けば、読んでみたい本や新聞全紙があり、知りたい情報とその材料・資料があり、問題解決の手掛かりを得ることができ、それを手助けしてくれる職員がいる、だから地域コミュニティの大切な拠り所となり、人々の集う場所となっている・・・・。この図書館のかけがえのない役割は、ひとえに図書館の仕事に公務として従事してきた司書をはじめとする職員の連綿たる仕事の組織的な蓄積と継承、その努力によって築き上げられ、培われ、守り抜かれてきた財産です。指定管理者制度の実施、図書館民営化はこの図書館の社会的役割を根こそぎ解体するもの。《図書館がなくなる》、域住民は《図書館を失う、奪われる》ということです。

 社会経済情勢の激変と生活状態の変化、情報の死活性の中で図書館に対する人々の要求はますます大きくなり、図書館を支える職員の仕事はますます質的な変化、量的な拡大、献身的な多忙化に直面しています。この時代と社会、地域の要請に図書館が応えるためには、職員を増員し、図書館事業の質量充実のための財政を強化する以外に道はないはずです。

 「最小経費で最大効果、多様な質の高いサービス」という指定管理者制度・民営化は、根本的に図書館の社会的役割と時代の要請に逆行しており、公立・無料という図書館の制度原則に敵対し阻害する反対物です。核心は、図書館を支える労働者に、生きていけないような労働条件を強い、図書館の仕事に責任をとれない職場環境と勤務体系を強いることで、図書館を土台から解体していくところにあります。区が言うように「多様な質の高い」図書館事業は、指定管理者制度・民営化では絶対にもたらすことはできません。これまで図書館職員の献身的努力によってギリギリに維持されてきた図書館の水準から後退し、それどころか図書館が図書館ではなくなってしまいます。公務員が優秀で民間が駄目だということではまったくありません。労働者のせいではなく、民営化のせいです。

(7)外部評価制度(第三者機関)は指定管理がひきおこす何事も解決しない

 縷々上記した指定管理者制度実施がもたらす幾多の大問題を外部評価制度や第三者機関が解決できるはずがありません。当サイトの前々回9月21日付の記事で詳細にあきらかにしている通りです。

  外部評価制度や第三者機関は、指定管理者制度の実施・継続を前提にして、当該指定管理者企業の運営が「コスト面」や「サービス面」で適切かどうか、改善すべき点があるかどうか、評価・検証し、不適切な点があれば改善を、その企業には運営をゆだね続けることができないとすれば指定解除を区に対して報告し、別の指定管理者に切り替えるように勧告するだけです。図書館を図書館たらしめている労働者の労働条件等についてはまったく関与しないし、予め切り捨てています。

政財界が言ってきた「新時代の日本的経営」、「この国のかたち」、菅民主党政権の「新しい公共」「公務員制度改革」

 図書館全館指定管理とは、こうしてみると、そのものズバリでこの国の政財界がそこに向かおうとしている国家経営戦略であることがわかります。

 ◆公務員は全員いったん解雇するということ。

 ◆これまで「公務」「住民の福祉」として行ってきた役所の仕事は全部民間企業が行うということ。

 ◆労働者の9割は超低賃金で不安定雇用、年金も医療保険もない、労働基本権が奪われている非正規職にすること

 ◆労働組合はなくする、つくらせない、つぶすということ

 ◆これまで住民の福祉とされてきたものがことごとくきりすてられ、焼け野原状態になるということ

 「地域主権改革」と呼ぼうが「道州制」と言おうが、「新しい公共」と言おうが、政財界が突き進んでいる道の行き着く先は、こうした社会です。

 企業がこの大恐慌時代に国際競争に打ち勝って利潤をあげ、日本が資本主義として生き残るためには、今までの制度を全部破壊しリセットしてそういう社会システムに切り替える。公務員制度とか地方自治とか住民の福祉とか労働基本権といったものは邪魔になった。公務員の身分保障を取っ払い全員解雇で公務員制度をいったん廃止しないかぎり労働者の9割非正規化という企業の「生き残り戦略」は成り立たない。

 これが政財界や新自由主義者が「地域主権改革」「この国のかたち」「道州制」「新しい公共」「公務員制度改革」等と言っている攻撃の同じ核心です。その考え方があからさまに政策化されたのが、杉並区の地域図書館全館指定管理だということです。

正規・非正規の垣根を超える労働者の団結、分断を超える労働者と住民の団結で公務員制度解体・民営化・地域図書館全館指定管理を打ち破ろう

 参院選惨敗以来、零落はなはだしく見る影もないのが山田宏氏。山田宏のホームページは参院選以来まったく更新されず放置されたままです。ところでこの杉並区立図書館の地域図書館12館全館指定管理者制度導入はこの山田前区政によって決定されたものです。

  特徴的だったのは、ほとんどの主要施策をセンセーショナルに大量の事前宣伝で周知して、その物量で施策を強行してきた山田前区長は、この図書館指定管理については黙っていきなり決定し、一方的に強行し、区議会で6館指定管理者の指定が議決承認されるまでは一言も触れてこなかったことです。そのためには、職員の雇用、身分に直接関係するものでありながら、それまでの諸施策の場合とは違って、労働組合への事前のいかなる通知もなしに一方的に強行してきたことです。

 ◆ 思い当たる伏線は山田区長の「これまでの一部署、一職場といったものではなく、(民営化については)ワープ(時空超越)といった制度まるごと、事業まるごとの単位で実施を考える必要がある」という趣旨の答弁にありました。その具体化がいきなりの地域図書館12館全館の指定管理者制度導入でした。いきなり決定、そして事業者募集、選定、区議会議決にいたるまで区長としては図書館問題に言及することもありませんでした。山田区長が初めて図書館全館指定管理について言及したのは、区議会議決後の広報すぎなみでした。明らかに「黙って強行し、指定管理者制度を導入してしまうこと」を山田区長はねらって、そうしてきたとしか考えられません。

 田中区長は、「慎重に進める」「第三者機関では少なくとも一年程度の運営期間を確保して評価・検証していただきたい」と全館指定管理者制度実施を「慎重に進める」ことを議会答弁で強調しています。これは田中区政が山田区政の暴走としての地域図書館全館指定管理にブレーキをかけたものではありません。実施のスピードを少し遅くしアクセルを緩めて推進するものであることは、9月18日付の記事でお伝えしています。

 私たちは、山田前区長の手法と田中区長の手法には違いがあるが、地域図書館全館指定管理者制度実施の攻撃の大きさ、激しさ、それゆえに大反対運動が必至であるという同じ認識に立ったうえでの推進・強行の手法の問題としてこの問題を考えます。山田前区長の「ワープ(時空超越)」に端的に表現されている問題とは、まさにこの記事の前半(1)~(7)の全館指定管理で何がどうなるのかのすさまじさの問題です。

 

 総反撃、大反対運動の展望、それをこじあけるヒントは、この山田認識、田中認識の中にもあります。これだけのとてつもない大きさ、激しさの攻撃が、大反対を呼び起こさないなどということは絶対にあり得ないという認識であり確信です。「おかしい!」の声、「理不尽だ!」の怒り、「こんな低賃金でやってられるか!生きさせろ」の叫び、「私たち司書の仕事を何と思っているのか!」「図書館を守れ!の声はすべて正義の叫びであり、すべて大反対闘争の原点です。カギは、違いは留保し、絶対反対の一点で一致団結すること。正規・非正規の分断、労働者と住民(地域の労働者住民)の分断を打ち破り、のりこえる声をあげ、絶対反対の一点で一致し運動をおこすことです。

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正規・非正規の分断こえて図書館民営化と闘おう

2010年09月22日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回(9月21日)記事からの続きです。

  ・・・・ということで、指定管理者制度とその導入としての杉並区立地域図書館全館指定管理とは、そのもとで生きるために働かざるを得ない派遣・非正規労働者にとって、突き詰めて考えれば考えるほど、この世の中をひっくり返さない限り、人間として生かされない=明日が見えない、持って行き場のない苦しさのみが増していく現実だということです。

 そもそも杉並区の12地域図書館全館指定管理の攻撃のもとで、指定管理下の図書館で働いている労働者はパート・アルバイトがスタッフの8~9割であり、その時給は、日本社会の標準時給である1400円~1500円台の6割そこそこであり、東京都の場合の今年の最低賃金である時給821円(30円アップしても821円)そこそこです。

 それは指定管理者企業が使いまわし・使い捨てで雇用する非正規職に限りません。いま正規職・常勤職である公務員労働者も、いま公務員・非常勤職もそこに突き落とすのが、民営化であり指定管理者制度だということです。

図書館まるごと民営化=全館指定管理に絶対反対!非正規職撤廃、指定管理者制度廃止の声をあげよう

 

 ところで、図書館全館指定管理をめぐる区長答弁を受けて、杉並区職労執行委員会では、「(「10月をめどに検討委員会をつくり検証を開始する」と6月24日の組合大会で出した方針を変更し)半年先に延びた。図書館分会を中心に指定管理者制度導入に反撃しよう」という方針を確認したようです。

 6月24日の杉並区職労組合大会では「指定管理者制度導入に反対するなら、10月では遅すぎる、間に合わないのではないか」という批判が代議員から出された経過があります。組合としての検討委員会の発足を区長答弁に合わせて先延ばしするようでは、「執行部は第三者機関任せで本気で阻止・反対する気などないのではないか」と批判の声が上がって来るのは当然です。

 指定管理者制度=まるごと民営化とは労働者と家族にとってその賃金では食っていけない総非正規職化です。しかし労働者(人間)である私たちは生きていかねばならない、家族を養わなくてはならない。そこから出てくるのは「やられてたまるか」ということでしょう。絶対反対ということでしょう。これは一歩も譲れない。「上(組合ダラ幹)」から起きない以上、《下=現場》からの反乱あるのみではないでしょうか?職場末端から声をあげ討論を開始し、現場からの闘いで反対闘争をつくりだす必要があります。今から直ちに絶対反対で闘いを開始し、「半年間」を図書館全職場、区職労一丸となった絶対反対の総決起のためにフルに活用することこそが求められていることではないでしょうか。

 私たちは次のように考えます。そもそも田中区長答弁で、先行6図書館の指定管理の実施以来一年間の運営期間を「第三者機関の設置」で「評価・検証」するとして、今秋事業者募集を先送りせざるを得なかったのも、昨年夏以来の反対闘争があり、図書館現場の労働者、地域の労働者住民が声をあげたからにほかなりません。闘いはやむにやまれぬ想いで現場の職員と地域の労働者住民が反対の声をあげたところから始まったのです。「第三者機関」は図書館全館指定管理の強行のために設置されるということだけははっきりしています。「第三者機関による評価・検証」に幻惑されることなく、昨年を上回る絶対反対の声を図書館職場、区全職場、区の図書館利用者から一層大きく上げていくことこそが、残る6館導入を阻み、12館全館指定管理と指定管理者制度そのものを打ち破っていく総反撃の道です。

図書館職員の全員「異動」、これは全員解雇・不安定雇用化の攻撃だ

 カギは図書館職場から指定管理者制度絶対反対の声をあげることにあります。先行6図書館から職員が全員「異動」させられています。「異動」に際して区は組合に対して非常勤等は雇い止めはしないと言っていましたが、前山田区政下の一方的な「異動」と前区政から田中区政への「転換」で今後の不安定雇用に対する先行き不安は本当に大きい。その想いが非常勤職場にも常勤職場にも渦巻いています。

 「最小経費・最大効果」という田中区政の経営刷新の指針から言えば、指定管理者制度実施で図書館行政のコスト削減ができてもそれまで図書館で働いていた職員を本庁や出先の他部署に「異動」するだけでは区にとってはトータルコストで圧縮に資するということにはなりません。ここから身分保障つきの「異動」ではなく、経営方針の変更を理由とした解雇に切りかえ、再任用の場合には常勤は非常勤に、非常勤の場合には指定管理者企業への採用に転換してくる可能性、あるいはもっと言えば常勤・非常勤まとめて一気に非正規職に突き落とすという可能性はきわめて高いと言わざるを得ません。非正規職か失業かという攻撃が職員には加えられてくるのは時間の問題と思われます。いま声をあげることこそ重要です。

 ですから、この闘いで、まだ指定管理に移行していない6館、とりわけ西荻、高円寺、柿木の常勤・非常勤館の決起が重要なことは言を待ちません。

超低賃金・不安定雇用の非正規職の職場決起は指定管理者制度の根幹揺るがす反乱

 同時に声を大にして訴え呼びかけたい点があります。既に指定管理が実施されている先行6館非正規職の労働者の皆さん、未実施の現在直営・業務委託中の下井草、今川、南荻窪の3館非正規職の労働者の皆さんの苦闘と連帯し、ともに闘いに立ち上がろうということです。正規職も常勤職も非常勤職も「いかなる身分保障」もない民間並みの非正規職におかれる。このとき重要な点は、「非正規職になりたくない」「非正規職はゴメンだ」ということではなく、非正規職になっても非正規職と団結して非正規職撤廃、全員正規雇用にしろと要求して闘うぞ、ということではないでしょうか。同じ労働者なのだから。

 この点こそが重要です。《資本主義》はそうやって、労働者が食っても生きてもいけない「工場法以前に戻す」ことによって「《墓掘り人》を生みだしている」(マルクス「共産党宣言」)のです。

 そのように考えると非正規職の決起が持っている根源的な社会転覆的な力は大きいし、「非正規職が明日は我が身」の正規職が学ぶべき点ではないでしょうか。正規・非正規、常勤・非常勤、官・民という支配階級がつくった分断の「垣根」を打ち破りましょう。ともにスクラムを組みましょう。 

 

★集会案内 

◆11月7日、日比谷野外音楽堂に結集を

  -国鉄1047名不当解雇撤回、民営化・非正規化をゆるすな-

 全国全世界から民営化・非正規化と闘っている労働者がこの集会に集います。仔細は下記チラシで。

http://www.doro-chiba.org/pdf/1107bira.pdf

◆10月3日 首都圏青年労働者集

 たたかう労組青年部をつくろう。非正規雇用‐派遣法撤廃へ‐

 10月3日(日)午後1時~ 千葉商工会議所第1ホール(JR千葉駅から10分、京成千葉中央駅から8分)仔細は集会実行委員会事務局080-4154-5604にお問い合わせを。「労働組合運動に関心、意欲のある人なら誰でも参加できる青年労働者のための青年労働者の手による集会」です(集会案内のちらしより引用・掲載、紹介させていただきました)

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図書館全館指定管理と「第三者機関」はワンセットの攻撃だ

2010年09月21日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 前回記事(9月18日)からの続きです。

 前回記事でお伝えした通り、田中区長は「教育委員会においては今後、第三者機関による評価・検証を行うということですが、十分な運営期間、少なくとも一年程度の運営期間を確保したうえで、評価、検証を行い、進めていただきたい」と答弁しています。今回は、この第三者機関について述べます。

絶対反対!民営化で図書館業務は全員非正規職に。官製ワーキングプア生みだす指定管理者制度を撤廃せよ

 

 図書館指定管理者制度実施との関係で区・教育委員会が設置しようとしている「第三者機関」が、田中区長所信表明で明らかにされた「最小経費で最大効果、多様な質の高いサービス」の観点・基準・ポイントで「評価・検証」を行う機関となることは明らかです。

「第三者機関」(外部評価制度)の役割と正体

 (1) 図書館指定管理の場合、「第三者機関」が「評価・検証」の第一のポイントとする「最小経費」とは、指定管理者企業に区が払う指定管理費をいかに安くできるかということです。

 (2) 「第三者機関」が「評価・検証」の第二のポイントとする「最大効果、多様な質の高いサービス」とは中央図書館長答弁で触れられているような時代ニーズ、区民ニーズ、地域ニーズに応えるサービス提供をいかに行い得ているかということです。田中区長が前区政を評価し継承すべき点とした「五つ星のサービス」になっているかどうかという点です。

    区内の図書館全館には「めざせ五つ星区役所」のポスターがずっと貼られています。図書館に即して具体的に挙げれば、区民(利用者)の問題解決に役立つ資料・情報の収集と提供、レファレンス能力、IT時代に即応したデーターベースから区民(利用者)に対する接遇満足度にまでわたる質の高度化、利用者からの苦情が寄せられるようなことがない、利用者に喜ばれる満足感のある「魅力的な図書館」ということになります。

 (3) しかし、ここには、図書館でこれらの仕事に従事するのは労働者である、その労働者に支払われる賃金は指定管理者企業が区から受け取る指定管理費から企業の儲け(利潤)を差し引いて支払う、企業が自由に決められる額だという賃金の問題があります。労働条件という根本的な問題があるのです。

 区長や政策経営部、行革担当部が「最小経費(低コスト)最大効果(多様な質の高いサービス)」というとき、そこで都合よく無視・抹殺されているのは、このコストで生計を左右されるのは労働者であり、この「サービス」を「提供」するためにどんなに努力を払おうとも不可能に近い課題を求められるのも労働者だということです。

   とうてい暮らしていけないような低賃金。バラバラの細切れシフトで責任ある仕事を行うこと自体が難しい職場。そういう職場で押し寄せる「ニーズ」にきりきり舞いになり、それでも「笑顔」で「接客」対応・解決し、そこにちょっとしたミスや利用者が不満をおぼえるようなことでもあればクレームが寄せられる・・・、それが指定管理の図書館で働く労働者の状態です。

    まず最初に賃金の問題

 当サイトで繰り返しお伝えしたように、時給800円台、まれに高くても900円台の超低賃金、司書の場合でも加算は時給でプラス10円~20円に過ぎないという賃金の問題です。

 区は区が雇用している図書館職員の給与等にかける総人件費より指定管理の方が低コストになるから指定管理者制度を導入する。しかも「最小経費・最大効果」で企業選定を行う以上、応募事業者の間で競争原理が働いて、指定管理費は区にとって安値買い叩きとなる。

  安値で指定管理者に選定された企業は、そこから儲けを出すために、企業は企業で低コストを追求し、時給を安くし、シフト制、ローテーション制、勤務日数も勤務時間も細切れの労働力配置をとることで常勤を最小にしほとんどをパート、アルバイトとして雇用する。指定管理者制度のもとでの労働条件とは、時給800円そこそこの超低賃金、年金も医療保険もない、雇用契約も短期間で明日の保証のない不安定雇用の非正規職の使いまわし・使い捨てにほかなりません。

 この構造が指定管理者制度や業務委託、民営化・民間委託化には不可避です。企業は、「図書館ビジネス」と呼んで全国3000図書館、1館で10人の従事者としても、《3万人労働力市場》になる」という位置づけで参入しています。《3万人労働力市場》とはどういうことか?指定管理費として自治体から企業に支払われるカネのうち、図書館業務に現場で従事する労働者への給与を差し引いた額が企業の儲けです。図書館指定管理に手をあげる企業は、早い話、専らマージン(中間搾取)による「儲け」をねらっているのです。

 どうやって指定管理者企業は儲けを大きくするのか。

  ▲ 自治体は指定管理者企業に支払う指定管理費を積算する際に、施設の保守に関わる維持費、従事者に対する指揮・命令・指導・監督、人事管理に対する企業への対価とともに幹部と従事者に企業から払われる給与の標準的算定を積算します。普通は自治体の積算するスタッフ一人当たりの給与は時給換算で1200円から1400円くらいになっています。

 ▲ ここからが最大の問題です。企業はスタッフ採用に際して時給800円台、高い場合でも9百数十円で求人情報を流し、その賃金で採用します。つまり時給換算でスタッフ一人当たり平均500円前後の「企業の儲け」となる。単純計算ですが、10人スタッフの場合1時間で5000円。シフト・ローテーションで実際にはもっと多くのスタッフが雇い入れられて働いていますが、実稼働人数は10人以上にはしませんから、図書館開館時間分(今は基本的に朝8時台始業から夜21時、遅い場合22時台終業の勤務)で1日1館で6万円の「企業の儲け」、月額にすれば休館日を月4、5日としても150万円以上の「儲け」になります。自治体が想定し積算している企業への企業利潤を含む対価としての利益以外に、これだけの「儲け」になります。

 ▲ 単純計算で10館の指定管理者になれば月1500万円、年1億8千万円もの搾取でその分大きな「儲け」を生みます。これは「すごい儲け」です。50館で年9億円、100館で年18億円にもなる。つまり図書館ビジネスとは、図書館の仕事自体からではなく、何館の指定管理がとれ、何人の従事者を得るかが目的となり、派遣館数、派遣人数で儲ける。人材派遣会社以外の何ものでもありません。だから「3万人労働力市場のシェア占有」というスローガンが出てくるのです。

② 次に図書館での仕事の問題

 図書館の仕事は、窓口対応や事務処理にとどまりません。専門職である司書をはじめとして全員が、学習・研修・習熟とチームプレー(職場の労働者同士の組織的有機的連携)、経験を通しての組織的な蓄積と継承性が、職場環境としても職場運営としても求められます。それなしにこれまで図書館が担い培ってきている社会的役割に応える図書館業務は実務的にも不可能です。実に大変な仕事です。そうした図書館の労働者の連綿と積み重ねられひきつがれてきた努力のおかげで私たちは知り、学び、問題解決の手掛かりを得る拠り所を身近な地域に図書館として持ち得ているわけです。

 区長や政策経営部や行革担当部の管理職・幹部は、図書館を図書館たらしめている人的組織的財産である図書館職員のこのような仕事について理解しているのでしょうか。本や資料の出し入れと記録のチェック、窓口受付程度、「サービスの向上」と言ってもせいぜい接遇の向上程度にしか考えていないのではないでしょうか。

 実際には、指定管理者制度のもとでは、図書館職場で仕事に就く労働者は、ひきつぎも申し送りもスタッフ会議もチームプレーも予めほとんど不可能な労働条件で細切れでバラバラに配置されて、前記したような仕事に従事し尽力しています。

 杉並区は最近とみに「司書配置率が高い」と「質の高さ」を強調していますが、指定管理者制度のもとでは司書もまた非正規職として仕事に継承性も組織性も有機性も保障されず、専門的資格職としての意欲も力も発揮しようにも発揮できない劣悪な労働条件のもとにおかれています。

③ 「最小経費、最大効果、多様で質の高いサービス」の核心

 結局、圧倒的に酷薄な労働条件で労働者に献身的な犠牲を強い、使いまわし使い捨てするものでしかありません。「図書館は指定管理者制度になじまない」とよく言われます。この指定管理者制度・民営化が、労働者の賃金等の労働条件の無視・蹂躙の極限的な犠牲のうえに、労働者に対して「時代ニーズ、地域ニーズ、住民ニーズに応えるサービス」を求めるというところに無理があるということです。

 図書館に対する「時代ニーズ」「社会ニーズ」は確かに大きくなっていjます。しかし、それは、医療・介護・保育・福祉もそうですが、公的責任において、自治体が正規職員を増員・拡充することによってしか解決できない問題です。

 指定管理者制度・民営化は逆に、図書館で働く労働者に劣悪な労働条件を強い、本来の図書館の仕事すらもとうてい担いきれないような過酷な困難を強いることで、図書館を支える土台をこわし、図書館を図書館ではなくしてしまうものです。「時代ニーズ、住民ニーズに応えるため」にと「民間のサービス提供のノウハウと力の積極的活用」をうたいながら、実際には社会的ニーズに応えることができない図書館へと変貌・変質、後退・解体させるものと言わねばなりません。

   ④ 「第三者機関」と指定管理は《まるごと民営化》推進の両輪だ

 「第三者機関」はこの根本問題を隠ぺいし、図書館で働く労働者の労働条件、労働基本権の問題を企業に丸投げすることによって、区がいかなる責任もとらないための仕組み、指定管理者制度の維持・継続・強行のための仕組みです。

 区が外部評価制度として「公正」さを装って設置する「第三者機関」が行うことは、「最小経費・最大効果、多様な質の高いサービス」の基準で指定管理者による運営を「評価・検証」し、不適切ならば改善を勧告し、必要なら指定を解除し、別企業を審査・選定するだけです。

 この基準に直接かつ根本的に関係してくる図書館で働く労働者の労働条件は、当該指定管理者企業と企業に雇用された労働者の労使関係の問題として、区=自治体から切り捨てられ、そこに区が関知・関与することは「法律上できない」ということを楯にとって、区は絶対に責任はとりません。

 この点は何度となく区の高政策経営部長や大藤行革担当部長が議会答弁(強弁)してきました。区は昨年夏の高円寺地域区民センターでの指定管理者・東宝クリーンサービスの給与未払い事件発覚した際もいっさいの責任を経営破たんした同社のせいにして「区は同社に適切に指導監督してきた」とシラを切りとおし、前掲の当該労使関係の問題として区の責任を否認し続けました。

 「第三者機関」を設置したところで、指定管理者制度が指定管理者制度であるかぎり、区がその制度を導入・実施する限り、前記したような指定管理者制度のもとでの労働条件の問題が改善されることは金輪際あり得ません。

 

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図書館全館指定管理に絶対反対!「第三者機関」はウソ!来年度6館実施阻止へ闘いを

2010年05月03日 | 杉並図書館指定管理をめぐって
杉並図書館全館指定管理・・・このままでいいのか?

 地域図書館全館指定管理にあくまで反対して私たちの仲間が地域図書館にビラを配布し職員に届けました。区は一度の広報すぎなみでの報道ですませていますが、ほとんどの住民、図書館利用者が、指定管理者制度実施について知らされていません。職員の方々も決して納得しているわけではありません。あらためて闘いはこれからだと認識しています。

4月1日から、高井戸、永福、阿佐谷、成田、方南、和泉の地域図書館6館で指定管理者制度が実施され、ヴィアックス、大新東ヒューマンサービス、丸善グループという株式会社または共同事業体を指定管理者として図書館の管理・運営が開始されています。このままでいいのか?このままでは残る西荻、柿木、高円寺、南荻窪、下井草、今川の地域図書館も同様に指定管理が来年4月から実施されます。いま私たちは何をなすべきか?

 問題と課題を明確につかむためにも昨年の経過をみておくことが重要です。



≪昨年6館指定管理者の決定の経過≫

6月 4日   区が地域図書館全館への指定管理者制度の実施を決定

9月 4日   高井戸、永福、阿佐谷、成田、方南、和泉の6館の指定管理者を募集

10月21日   第一次選定結果通知

11月 4日   第二次選定結果通知

11月21日   指定管理者を指定



≪このままだと残る地域図書館6館も指定管理に移行≫

 現在、高円寺、西荻は区の直営で常勤職員が、柿木は区の直営で非常勤職員が管理・運営、日常業務に従事しています。

 下井草と南荻窪は図書館流通センターに、今川は丸善グループの共同事業体に業務委託され、各社のスタッフが業務に従事しています。

 区は既に昨年6月に全館の指定管理者制度実施を決定済みで手続き面で指定管理者の選定=企業選定が残されているだけであるという認識です。手をこまねいていれば、昨年同様に9月企業公募、10月第一次選定、11月第二次選定と確定=指定にこれら6館についても行われることははっきりしています。


≪反対せず全館指定管理を認めてしまっていいのか≫

 ◆昨年6月の区の地域図書館全館指定管理者制度導入の決定は、労働組合への事前の一言の通知・打診すらなく文字通り一方的に決定し、その決定した区の既定方針をめぐって、区職労として労使交渉に入り、他方、事態を知った私たち地域の労働者住民が「指定管理者制度導入の見直しを求める」陳情を含む反対運動が急速に広がり、区議会でも反対の質問が相次ぎました。その結果、区と区職労の労使交渉は、後述の通り大きな問題点を抱えながらも、区職労執行委員会でも反対闘争をめぐって激論が交わされ、10月22日の「労使交渉妥結」にいたるまで6回の交渉が行われました。

 ◆現在、区職労執行委員会では来年度の6館指定管理をめぐっての方針の提起はいまだまったくなされていません。昨年の今年度指定管理移行をめぐっては、区職労図書館分会主催で「第一回地方自治研究集会」が9月15日阿佐谷の杉並産業商工会館に職員と住民、計150名が参加して、図書館協会の常世田氏を講師に招いての事実上の反対集会が持たれ、この9・15集会を起点として労使交渉と反対運動がその後闘われたという経過があります。既に4月1日から6館指定管理が始まっています。この既成事実のもとで、既に昨年同様の工程表が残る6館の指定管理者の指定についても予測できるにもかかわらず、いまだに図書館分会からも区職労執行委員会からも何らの方針の提起もその形成のための討論もなされていないということは、図書館全館指定管理者制度実施をめぐる攻防で重大な危機といわねばなりません。

 ◆昨年9・15集会は「第一回・・・」として行われています。しかし、「第二回地方自治研究集会」についてはその企画の動きも気配も見えません。このかん、この杉並の図書館指定管理をめぐってもたれた集会は3月12日の住民による「図書館を考える会」この一回だけです。その集会では図書館協会の大橋直人氏が指定管理者制度批判の講演を行っていますが、区職労図書館分会から「経過報告」を行った分会の渡部氏(中央図書館)の報告では「第三者機関の設置」で交渉を妥結したという経過説明の弁解が行われただけで、来年度の6館指定管理に対する反対はついに一言も聞くことはできませんでした。

≪区職労「図書館行革提案で妥結」のキイワード「第三者機関」≫


 私たちは、区職労図書館分会と区職労執行委員会が2010年度の6地域図書館への指定管理者制度導入をめぐる区との労使交渉を打ち切って妥結した、その判断の最大の理由としている「第三者機関の設置」について厳しく批判するものです。その全面的批判については機会を改めて行います。ここでは以下の点を厳しく指摘し批判しなければなりません。

3月12日にあんさんぶる荻窪で持たれた「図書館を考える会」で区職労図書館分会・渡部氏(中央図書館)の経過報告として語られた「第三者機関の設置による妥結」は次の点に尽きます。
 ① 今後の図書館のありかたについて区と協議する場を求める分会の要求は入れられなかった。
 ② 区からは第三者機関を設置するという提案があった。
 ③ 組合としては地域館全館を指定管理者制度導入で運営していくことについては納得できないが、区が第三者機関を設置するとしたこと、中央図書館の機能の充実と現場の意見の反映という区の考えが示されたこと、第三者機関による評価を指定管理者による運営開始後6カ月程度経過した時点で行う、次年度の実施については第三者機関の報告後柔軟に対応するという点が確認できたので、組合として妥結した
というものです。昨年2009年10月29日(木)第10号の『杉並区職労』(ニュース)に『図書館行革提案について妥結する』と公表されている区職労見解に沿ったものです。

 昨秋の区職労執行委員会での「白紙撤回・絶対反対」意見を軸にした白熱した議論、いつ区によって一方的に打ち切られるやもしれぬギリギリした緊張下の9月17日以来の6回の労使交渉、住民の署名運動の拡大といった当時の経過をつぶさには知らない人には、組合が労使交渉を粘り腰で闘った結果、不本意で納得できるものではないが、区に「第三者機関の設置」を認めさせた、「第三者機関の評価と報告を受けてその後の指定管理者制度実施についても柔軟に対応する」という言質をとったかのような印象を与える報告です。
 そのように思わせる、騙して反対闘争をうちきらせることに狙いがありました。


≪10月「第三者機関」を設置してもそのころには来年度の指定は終えている≫


 いま現在、そこで言われていること、「確認できた」とされていることを冷静に正確に考えてみれば、この騙しの毒まんじゅうの意味はすぐわかるはずです。

■区の2011年度図書館指定管理者制度6館実施の工程表

2010年9月公募 → 10月第一次選定 → 11月第二次選定・指定

■区職労見解(説明)

6ヶ月後=2010年10月第三者機関が評価 → 第三者機関の報告 →2011年度実施の見直し


 区職労が説明する「第三者機関による評価」の始まる時期には既に2011年度の応募企業の第一次選定は終えています。その報告が出されるころには既に第二次選定は終わっています。つまり「第三者機関」は区職労が説明しているような図書館全館指定管理の見直しにつながるような検証機関にはなりえず、ましてやストッパーなどには到底なりえません。

 区も、「第三者機関」について誤解する余地のない形で、その後、議会答弁をはじめ再三再四「第三者機関は区が設置を決めることであって、労使間で合意して決めるようなものではまったくない」と言明しています。

 私たちは、10・22交渉での「妥結」の核心は、区職労の指定管理者制度全館導入への全面屈服にあると断じます。「第三者機関設置」はその裏切り=労使交渉打ち切りをごまかすための材料に使われたのです。
 
 もし、区職労執行委員会や図書館分会がそうではないというのであれば、第三者機関の設置について、ただちに労使交渉を開始すべきです。その議論すらありません。


≪絶対反対の声をあげ、図書館職場と地域から反対闘争を再構築しよう≫

 地域図書館全館の指定管理実施を認めてしまうことは組合が組合を一分会まるごと解散し職場を明け渡すにひとしいものです。区の職員が区の言いなりに明け渡した職場に指定管理者企業から派遣される職員に労働者としての権利や労働条件が保証されるはずもありません。現に時給850円、司書資格者でもプラス10円といった低賃金であり、雇用契約も1年かぎりで明日の保証もない不安定雇用です。

 図書館業務は、単なる接客業務や図書の出し入れ業務ではありません。レファレンスはじめ継承性・蓄積、職場でのチームワーク、習熟が求められる図書館の仕事は、どんなに派遣された職員がスキルアップの熱意をもち、努力を重ねても、一年刻みの雇用では到底担いきれるものではありません。指定管理者制度のもとでは、「住民への資料と情報の提供」という図書館の社会的使命もこうやって崩され壊されてしまいます。それは職員の能力や努力が足りないからではありません。指定管理・民営化するから図書館が図書館でなくなってしまうのです。

 図書館が生計もままならない低賃金と不安定雇用のワーキングプア職場にされ、さらに図書館としてもその社会的役割を果たせないものに変貌してしまいます。行き着く先も入館料をとる、有料貸し出しに移行するということになりかねません。
 
 労働者として団結して声をあげよう。図書館を守ろう。このことを今こそはっきりさせなくてはなりません。現場=図書館職場の職員の決起と地域の労働者住民の反対運動が鍵です。

【 私たちは、この「第三者機関の設置」について、組合に全館指定管理を丸のみで認めさせ、反対運動を鎮静化し、波風立てずに指定管理者選定・指定に持ち込むために仕掛けられた攻撃であると暴露し、密室の交渉で反対闘争を打ち切らせてはならないと警鐘を乱打し、あくまで白紙撤回・絶対反対で闘おうと訴えて闘いました。リニューアル前の「すぎなみ民営化反対通信」http://blog.zaq.ne.jp/suginami/で「第三者機関の設置」による労使交渉打ち切り・反対闘争収拾に対する絶対反対の見解と経過をお伝えしています。カテゴリーで「すぎなみ民営化に反対!図書館職員120名クビきりゆるすな」をクリックして、以下の記事をごらんになれます。


★10月11日 杉並図書館指定管理者制度導入で「第三者機関設置」?あらためて白紙撤回あるのみ

★10月17日 「第三者機関設置」による図書館指定管理者制度導入に絶対反対

★10月24日 図書館指定管理者制度導入は必ず破たんする!団結拡大で闘おう

★11月12日 杉並区と区職労の「第三者機関設置」の図書館交渉妥結について

★11月17日 何もしないことが「第三者機関設置」の図書館労使合意の真実ではないのか・・・

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現場の職員の決起と住民の反対で図書館指定管理と闘おう

2010年04月05日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

図書館全館指定管理・民営化に絶対反対

皆さん、ご存知ですか? この4月から区の12館ある地域図書館のうち阿佐谷・成田・宮前・高井戸・方南・永福の6館が指定管理者制度で株式会社の管理・運営に切り替えられました。区は残る高円寺・西荻・柿木・下井草・南荻窪・今川の6館を直営および業務委託から指定管理に移行することを昨年決定しており、地域図書館のみならず中央図書館(現在窓口業務等一部業務委託)も指定管理にしようと狙っています。

★株式会社に図書館業務のノウハウなどない

区は「図書館経費の節減効果と民間のノウハウ活用によるサービス向上」と説明していますが、そもそも図書館事業ジャンル専門の民間企業はありません。まったく経験も蓄積もないはじめての参入。「ノウハウ」などゼロの人材派遣会社です。

★図書館で働く職員を低賃金・不安定雇用で使い捨て

「経費節減」とは、指定管理者として選定されるための企業の競争で低コストの指定管理を提案させ選定することで、職員には生計もままならない低賃金(館長はじめ幹部でさえ月給30万円以下、契約社員は15万円程度、パート・アルバイトのスタッフは時給850円程度で月額10万円以下)と一年後の雇用の保証もない不安定雇用、社会保険もない非正規格差を強い、図書館を官製ワーキングプア職場に変えるものです。

     ★図書館の社会的役割をぶちこわし、図書館が図書館でなくなる

図書館の仕事は、窓口業務から書籍・資料の収集・整理、レファレンス業務にいたるまで職員に習熟と蓄積・継承、連携(チームワーク)、専門性が求められる仕事です。区は「司書率を高めればレファレンスも向上」としていますが、指定管理の契約期間は3年間、職員の企業との雇用契約は1年間!!指定管理者(企業)も職員もコロコロ変わります。職員(労働者)に「スキルアップ」の熱意があって努力しても図書館が社会的に果たしている役割を全うすることは無理で不可能なことを強いるものです。

指定管理でひきおこされるのは図書館の社会的役割の崩壊です。もとより図書館で働く職員の能力や意識のせいではありません。まず経費削減・民間開放ありきの民営化政策によって、図書館が図書館ではなくなるということにほかなりません。

     ★行きつく先は入館料、図書の有料貸し出し

 図書館ビジネス参入の企業からは「全国に3000の図書館、1館の職員10名で計算しても3万人市場」という営業スローガンが掲げられています。自治体から人材派遣会社に支払われる指定管理費中の職員人件費と企業が契約社員に支払う賃金の差額が会社にマージンとして転がり込み、その額が巨大なカネ儲けになることから「3万人市場」という言い方が出て来ます。

 企業にとって目的は利潤(カネもうけ)です。株式会社への開放は、必ず図書館入館料、図書の有料貸し出しに行き着きます。

 

 図書館を利用している方々が全員反対の声をあげる必要があります。そして何よりも図書館で働く職員の皆さんが、正規職員の方も、非正規職員の方も労働者として絶対反対の声をあげる必要があります。職員も住民もあくまで団結して図書館を守ろう!

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杉並・図書館  指定管理者制度、最大の対決点は

2010年03月03日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

   杉並区が区立の地域図書館12館の全館民営化を本年2010年度から来年2011年度にかけての指定管理者制度実施の一方的決定と執行で強行しようとしていることから私たちは昨年夏以来、反対の声をあげ、絶対反対・白紙撤回を訴えてきました。その取り組みの中で実感したのは反対運動での四つの面でした。

 (1)一つは、指定管理者制度導入の動きを知った利用者(地域の労働者住民)の図書館民営化に対する反対意思と危機感が非常に大きいこと。

 (2)二つは、指定管理者制度実施で職場を追われ図書館での仕事を奪われる常勤・非常勤の職員が現場で不安と危機感と怒りを感じながらも、こういうときにこそ寄る辺とし結集軸となるべき労働組合(杉並区職労)が反対闘争に正面から取り組むことを放棄し、逆に反対運動が区との一歩も譲れない攻防に発展することを予防し闘争収拾をはかるブレーキの役割を果たしたこと。その中で職員の皆さんが非常にくやしい、厳しい状況に立たされていること。

 (3)三つは、図書館の専門性・社会的意義に立脚した綿々たる長い歴史のある図書館運動が存在し、「よりよい図書館」は指定管理者制度の中にはないことを明らかにして「図書館をもっとよくする」一つの社会的運動をめざして実践していること

 (4)四つは、すでに進行している民営化政策のもとで業務委託や先行的な指定管理者制度実施で図書館で働いている民間から派遣されている労働者(契約社員、パート、アルバイト)が社会的にみて著しい低賃金と1年刻みの雇用契約をはじめ大変な労働条件を強いられていること。

 図書館の管理・運営への指定管理者制度導入に対する反論で必ずあげあられる論拠として、国=文科省見解でも「図書館は民営化、指定管理者制度になじまない」ということが強調されています。導入しないと明示に確認している自治体も相当の多数に上ることが図書館協議会や図書館協会の報告でも明らかにされています。しかし、ここ杉並区や知事評価で導入に舵をきろうとしている北海道をはじめ「経費削減(コストダウン)」「サービス向上」を掲げて導入する動きは依然激しいものがあります。

 杉並区の場合、四月から6館が指定管理者制度のもとにおかれる中で、あらためて図書館指定管理者制度実施、さらに指定管理者制度そのものについて対決点を整理し明確にして図書館で働く仲間と地域の住民(労働者住民)がひとつの闘いとして取り組むことの大切さについて痛感しています。

 このかん、当サイトでは業務委託または指定管理者制度のもとでの図書館で働く労働者の賃金と勤務時間、雇用契約の具体的問題を実際の企業A社からD社までの4社の求人情報を手がかりに、図書館で働く労働者の労働条件を重視してきました。指定管理者制度を考える場合に、そこに特別の基軸的な意味があるからにほかなりません。なぜなら指定管理者制度とは、

 ①公の施設の利用時間延長など施設運営面でのサービスの向上による施設利用者の利便性の向上

 ②管理運営費の削減、施設を所有する地方公共団体の財政節減

の二点を直接の具体的立法趣旨として地方自治法改正(2003年)で定められたシステムだからであり、管理運営費と職員数の削減、職員人件費の削減を真の狙いとしてスタートした行革制度だからです。

  「低コスト良質サービス」という綺麗ごとを掲げ、実態はもっと生々しく、いかに安上がり(低賃金)で、利便性の向上をうたっていかに労働力配置システムを変えるかが眼目だったわけです。指定管理者制度との闘いの軸足には、この労働者に対する賃金、労働時間等の労働条件の切り下げ、労働者の団結権の破壊に対する労働者の反撃が据えられる必要があります。公立直営と指定管理者制度のいずれが「利用者によりよいサービスを提供できるか」に指定管理者制度をめぐる真の争点、最大の対立点があるわけではないのです。

 高度情報社会化と労働者住民には労働・生活・福祉・環境・医療・法律等の複雑な生きづらさの中で地域の身近な図書館が「情報と資料・ツールの集積と提供」の施設として切実な意義を持ってきているのは確かです。しかし、「図書館をもっとよくするにはどうしたらいいか」という問題にしてしまうと指定管理者制度の攻撃の核心点を欠落させ、図書館を担い、支える労働者に労働強化を求めるという落とし穴に落ちることになります。私たちは現場の図書館労働者の闘いを中心にすえて区の全職場、全地域から指定管理者制度反対の声をあげていくことが最大の反撃になると考えています。次回は指定管理者制度推進論者がどんなことを言っているか、この点を通して指定管理者制度の狙いについてさらにみていきます。  

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指定管理者制度‐賃金はどうなる? D社の場合  《杉並・図書館民営化》

2010年03月01日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

資料・・・(株)D社の場合

 D社は、杉並区内公共図書館フルタイムスタッフ募集として以下の求人情報を出していました。

【雇用形態】 アルバイト

【業務種別】 司書・図書館関係業務

【仕事内容】 公共図書館における図書館業務全般

【勤務時間】 8.30~21.15の間でシフト制  

募集シフト  下記の週5日、実働40時間/週

        火:12.15~21.15(実働8時間)

        水:12.15~21.15(実働8時間)

        木:8.30~17.30(実働8時間)

        金:10.00~19.00(実働8時間)

        土:8.30~17.30(実働8時間)

【給与】 時給900円/平日 土日祝20円UP

【契約期間】 入社後2カ月は試用期間、年度更新制

【応募資格】 司書資格、図書館勤務経験者、パソコン操作可能な方

コメント

 

 D社は杉並区の図書館事業に民間企業として参入している企業の中では最も有名でブランド力が大きい企業であり、図書館アウトソーシングサービス(指定管理・業務委託・派遣)を事業のメインとしています。

 ①図書館アウトソーシングサービスの大手トップが週40時間のフルタイムスタッフを時給900円一年契約のアルバイトで雇用し派遣するということ、その意味について注目することが重要です。杉並区はこのD社と一番早い時期に契約しています。区との契約金額、従って企業から図書館に配置される労働者の給与水準は、このD社のコストラインがベースにならざるを得ないということです。

 ②他社はD社と同等ないしそれ以下のコスト提示で選定をとる(「落札」する)よう競争します。見逃せないことはどんな低コスト競争をしようと、企業は企業で利潤を得なければ参入する意味がないこと。つまり、現場の労働者の賃金は、企業が中間マージンをとることが不可避なことから、どんどん押し下げられ切り下げられる構造にあるということです。

 ③自治体=杉並区がこうやって「業務委託」や「指定管理」を買いたたき、低コスト競争に仕向け、労働者の非正規化・低賃金化・雇用不安定化=貧困化を推し進めているということです。雇用ダンピング、官製ワーキングプアといわれるゆえんです。自治体自身が、自治体事業の民営化によるコストダウン効果を自己目的的に追求し、利益としているということです。

 ④区が言うように「コストダウン効果とサービスの向上」がもたらされるのかといえば断じて否であることは明白です。民営JRがいま検査・修繕部門の外注化を強行しようとして労働者の渾身の反対の闘いがまきおこっています(2月1~2日に続いて今日3月1日~2日も動労千葉がストライキに立ちあがっています)。鉄道の安全(労働者人民のいのちの安全)に関わる根幹業務を全面的に外注にすることで利益をあげる?国鉄分割・民営化のもとでひきおこされている安全崩壊・事故激発に極限的に拍車をかけるもの以外の何ものでもありません。図書館による「資料の収集と提供によって住民の権利自由を守り支えてきた」図書館職員を自治体のコストダウンと参入企業の利潤のために削減し、民営化=外注化することが「住民の図書館に関わる権利自由」を根本から踏みにじりそこなうことになることは必定です。職員のクビきり削減と図書館労働者の低賃金・使い捨て・不安定雇用化の犠牲のうえに「図書館利用者(住民)の自由」が向上するはずがありません。

 図書館への指定管理者制度導入の動きが北海道でも道知事の道立図書館への指定管理者制度導入を示唆する知事評価で起きているようです。図書館民営化問題は全国的な労働者住民の課題になってきています。杉並でもさらに声を大にして反対の火の手をあげる必要があります。図書館民営化=低賃金非正規化に絶対反対でたちあがりましょう。

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指定管理者制度で賃金はどうなる? B社、C社の場合  《杉並・図書館民営化》

2010年02月28日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

休日(日曜)議会開会強行弾劾!「減税基金条例案」を廃案に!!

  今日2月28日は杉並区議会が区議会始まって以来の日曜日区議会を開会・強行し、そこでは予算特別委員会の集中審議が「減税基金条例案」をめぐって行われます。休日議会強行といい、類例なき悪法である減税基金条例案の審議といい、私たち労働者住民にとってとうてい認めることができないものです。

 山田区長の残る任期は1年。この一年に「条例」制定を新たな前提として山田区長はいっそうの行革・民営化、すなわち新たな1000名削減に向かって職員クビきり、低賃金使い捨ての非正規化と福祉きりすてへ突き進んでくることは明白。この行革・まるごと民営化・非正規化との大きな焦点に図書館全館民営化との闘いがあります。図書館民営化反対闘争には図書館職場にとどまらず、学校給食、保育、児童館はじめ区の全職場の今後もかかっています。

  前回に引き続き、図書館民営化のもとでの労働者の低賃金非正規化=官製ワーキングプア化について実態の一端をみていきます。

 (株)B社の場合

  東京都23区内図書館で50名のスタッフを募集しています。以下はB社の求人情報の骨子。

 【雇用形態】 契約社員

 【応募資格】 PC操作・接客できる方。司書資格、図書館実務経験あればなお可。資格がなくても応募可。

 【年齢】 55歳くらいまで

 【仕事内容】 図書館業務全般

 【勤務日数】 土日祝含む週3~5日

 【勤務時間】 8.30~22.15のうち実働4.5~7.5時間 *遅番できる方歓迎

 【休日】 週2日以上

 【契約期間】 採用日~2010年12月31日、当初2カ月の短期契約、以後1月~12月の1年契約で更新有

 【給料】 時給 司書資格有950円、司書資格なし930円(但し当初の2ヶ月間は司書資格有900円、無資格880円)

(株)C社の場合 

 C社も東京都23区で図書館スタッフ(責任者クラス)を契約社員で募集しています。

 【雇用形態】 契約社員

 【応募資格】 図書館業務経験者のみ。図書館司書資格者

 【仕事内容】 カウンター業務・書架整理・スタッフマネジメントなど

 【勤務時間】 8.15~20.15(実働8時間)昼間と夕方~夜 *就業先による

 【休日】 4週8休 *ローテーション制

 【給与】 月給18万円~25万円 *業務・経験による

コメント

 前回A社と合わせて、区が図書館の業務委託・指定管理者制度で行っている民営化政策が、まさしく官製ワーキングプア化であることがよくわかります。

 おりもおり、3月1日に「図書館からワーキングプアをなくすために」という講演会が日本図書館協会研修室で行われるというインフォメーションがネットでも流れています。公共セクターの民営化の焦点にいま図書館指定管理者制度がなっていること、その最大の問題点が低賃金使い捨ての非正規化にあること・・・その中で「官製ワーキングプア」に対する批判がテーマになっているわけです。注目していきましょう。

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《杉並・図書館民営化》  賃金はどうなる? A社の場合

2010年02月26日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 当サイトの2月22日記事の資料・一覧表で示した通り、この4月1日には、中央図書館を含む全13館のうち指定管理者制度実施が6館、業務委託が3館、一部業務委託が1館(中央)となります。

 指定管理者および受託企業でみると、丸善グループが成田・阿佐谷(指定管理者)今川(業務委託)の3館、図書館流通センターが中央(一部業務委託)南荻窪・下井草(業務委託)の3館、大新東ヒューマンサービスが宮前・高井戸(指定管理者)の2館、ヴィアックスが方南・永福(指定管理者制度)の2館です。

 区は業務委託実施館と指定管理者制度実施館で働く労働者の賃金等の労働条件については企業が労働者との間の契約によるもので「関知しない」、「法令順守を指導・監督する」だけだという立場で、具体的実態を明らかにせず、また明らかにする必要もないとしています。

 私たちは民間委託化・民営化が低賃金・不安定雇用化であり無権利化であると反対し批判してきました。業務委託を受託した企業、指定管理者となった企業が行っている求人、募集の要項は、その低賃金・非正規化の具体的実態の一端を示しています。ネット上で現時点で知り得る求人情報・募集要項は限られていますが、順次資料として報道します。

資料  (株)A社の場合

 杉並区・文京区・新宿区・大田区の図書館で幹部候補(契約社員)および一般スタッフ(パート)で募集しています。

◆一般スタッフ(パート・アルバイト)

[業務内容] 図書館業務

[必要な能力] PCの操作ができる方。有資格者・経験者優遇

[勤務時間] 業務時間8.00~22.15。勤務時間は上記時間のうち5~6時間、シフトによる。土日含む週3日以上。

[給与] 時給制:平日850円~ 土日祝900円~(司書資格手当有)

◆幹部候補(契約社員)

[必要な資格、能力] 司書資格、能力、マネジメント経験等

[勤務時間] 8.00~22.15 所定労働時間8時間(シフト制)

[給与] 月給制:15万5000円~28万円。(* スタッフから始まってリーダー、サブチーフ、チーフ、館長とキャリアステップアップも可能と記しています)

・・・・・・・となっています。

コメント

  給与をみて賃金が不当に低いという点は一様に感じるところと思います。世の中おしなべて低賃金・賃金破壊、大失業と就職難ですから、「まだマシ」という方もおられるかとは思いますが、国や都道府県が「最低生活費」として定める金額に照らしても、これでは最低限度の生計も維持できません。最高の館長職でも28万円、幹部でも15万5千円です。パートのスタッフの場合には週4日1日6時間勤務としても月9万円に満たない給与です。ほかにもパート労働に就かないととうていやっていけません。

 「司書資格者優遇」「司書資格手当有」としていますが、このA社の昨秋の求人情報では時給でわずか10円加算というものです。

 雇用は1年契約であり、区とA社との契約に規定される以上、本人の努力や能力にかかわりなく、将来の保証はまったくない不安定雇用です。

(B社、C社、D社についても機会をあらためて「求人情報」に基づいて明らかにしていきます)

 

 

 

 

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資料―全館民営化への杉並区の図書館政策の経過

2010年02月22日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

◆一覧表

山田区政による杉並区立図書館の全館民営化の経過

図書館名 経過

方南   200511月運営業務委託 

20104月指定管理者(株)ヴィアックス

中央   20064月一部業務委託(株)図書館流通センター

 20114月指定管理者制度 実施予定

成田   20074月指定管理者(株)丸善グループ

阿佐谷  20074月指定管理者(株)丸善グループ

南荻窪  20074月運営業務委託(株)図書館流通センター

 20114月指定管理者制度 実施予定

今川   200712月運営業務委託(株)丸善グループ

 20114月指定管理者制度 実施予定

永福   20084月非常勤化  

20104月指定管理者(株)ヴィアックス

宮前   20084月非常勤化  

20104月指定管理者(株)大新東ヒューマンサービス

下井草  20094月運営業務委託(株)図書館流通センター

 20114月指定管理者制度 実施予定

柿木   20094月非常勤化

 20114月指定管理者制度 実施予定

高井戸  20104月指定管理者(株)大新東ヒューマンサービス

高円寺  20114月指定管理者制度 実施予定

西荻   20114月指定管理者制度 実施予定

◆コメント

   杉並区の図書館政策の経過を整理し前回報道を補完するために作成したのが上記一覧表です。

   

   ①区が図書館の行政コスト削減優先で委託化、非常勤化(直営)、指定管理者制度(民営化)をすすめてきたこと 

   ②常勤配置よりは民間委託の委託費、非常勤化による人件費の方が低コストで済む、直営よりは指定管理者制度による民営の方が低コストで済む・・・区が「コストダウン効果とサービス向上」というときウエイトは明白に図書館人件費の低コスト化に置かれています。 

   ③この図書館コストの低コスト化政策を区の常勤職員と非常勤職員、区の職員と委託(派遣)労働者の分断と競争、労働組合つぶし、労働者の団結破壊・無力化の労務政策として行っていることも見過せません。 

    ④区の強行してきた一連の図書館政策との対決争点が行革・民営化、図書館職場で働く労働者の団結破壊、労働条件切り下げ、労働者の無権利化との対決にあることは明白です。全館まるごと民営化=指定管理者制度全館実施との対決軸には図書館で働く仲間の団結こそがおかれるべきこと、言うまでもありません。

 ⑤6月の区の全館民営化の一方的決定に対して、「反対」と言い切ることができず、絶対反対派の白紙撤回・反対の組合としての再三再四の決議要求に「組合としては指定管理者制度導入に反対」を確認したにもかかわらず、「第三者機関設置の確認」で「図書館行革提案について労使交渉妥結」で反対闘争収拾をはかった杉並区職労執行部は、右の「妥結」を報じる「杉並区職労ニュース」2009年10月27日で区の一連の図書館政策に関連して次のように述べています。

「この間図書館については、業務委託、指定管理者制度、職員による運営という、執行方法の多様化という方向で行ってきた。今回の地域図書館の指定管理者制度の導入の提案は一方的な方針変更であり、まずは十分な討議を保障すべきである」

    杉並区職労執行部は、業務委託、指定管理者制度、非常勤化という区の図書館行革・民営化政策に屈服し、「多様な執行方法」と認めてきました。行革・民営化、労働条件の切り下げ、労働者の団結破壊・分断・無権利化の土俵に一緒に上がって、組合の了承=労使合意のもとにこれをともにすすめてきたということです。だから“合意”に反する「一方的な方針変更」は納得できないとは言っても、「絶対反対」を貫けなかったのです。

 ⑥図書館行革・民営化をめぐっては労働者は一歩も譲れません。指定管理者制度移行の白紙撤回、民営化に絶対反対、図書館の民営化、低賃金・使い捨ての非正規雇用化に労働者は仲間として団結して声をあげて闘おう。

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杉並・図書館民営化に反対  4月指定管理者6館体制を前に

2010年02月22日 | 杉並図書館指定管理をめぐって

 昨年6月の区の地域図書館12館全館への指定管理者制度導入の一方的決定に基づき、区は昨年11月、2007年4月にすでに指定管理者制度を導入している成田・阿佐谷の2館と新たに指定管理者制度に移行する方南・永福・宮前・高井戸の4館、計6館の指定管理者(株式会社)を決定し今春4月から6指定館が稼働しようとしています。

 区の直営・常勤体制だった高井戸図書館は区の常勤職員が異動、区の直営・常勤‐非常勤体制だった宮前・永福図書館は区の常勤・非常勤職員が異動、区の直営・業務委託体制だった方南図書館は同じ企業が委託から指定管理者に衣替えします。直営・常勤体制の西荻・高円寺および直営・非常勤体制の柿木の3館以外は、中央図書館がすでに一部業務委託、南荻窪・今川・下井草がすでに運営業務委託となっています。区はあくまで中央図書館まで含めて全図書館の民営化を狙っています。

   原点に立ち返り図書館職場と地域から反対を

 

  昨年秋、組合(杉並区職員労働組合)の「第三者機関設置の確認による労使交渉妥結」によっていったん封印されてはいますが、この図書館民営化・指定管理者制度導入への絶対反対・白紙撤回を求める現場の労働者と地域住民の反対闘争は終わったわけではありません。区は「指定管理者制度実施の見直しはまったく考えていない」と議会でも答弁しています。声をあげなければ区は全館民営化を強行してきます。

 しかし指定管理者制度移行によって図書館の仕事を担う労働者の労働条件・雇用関係は著しく切り下げられ、また図書館を利用する住民の権利・自由が著しく損なわれることは明らかです。4月からの新たな指定管理者制度移行と2011年度指定管理者制度移行の企業募集・選定が行われる8~10月に昨年燃え上がった反対闘争をこえる闘いがまきおこることは疑いをいれません。

 区の図書館政策の経過を振り返ると、問題点と課題は明確です。 

 杉並区(山田宏区長)は、2005年4月から図書館の運営業務委託を開始(2005年方南、2006年中央(一部)、2007年南荻窪・今川、2009年下井草)、2007年4月には図書館の指定管理者制度導入(成田・阿佐谷)に踏み込むとともに、2008年4月から非常勤体制化(2008年永福・宮前、2009年柿木)を「図書館事業コストの削減」「低コスト・良質サービス」を掲げて強行してきました。

 「いかなる運営が低コスト・良質サービスをもたらすか」の試行的比較検証と称して「直営・委託館」「直営・非常勤館」「民営・指定館」の三態様を競わせるように仕向け、「直営・常勤館」の「高コスト・非効率」を強調しながら、区は図書館全館の「民営・指定館」化をめざしてきました。

  この区の図書館政策は、図書館を職場とする労働者の間に、常勤と非常勤、区職員と委託(派遣)労働者の分断の垣根と競争を押し付け、労働者の仲間意識・組合的団結をバラバラにし、職場環境を息苦しくし、労働条件を過酷で劣悪なものにしてきました。

  「区民(利用者)へのサービスの向上」で常勤・非常勤、委託(派遣)を競わせ、「利用者は顧客」「低コストでよりよい図書館サービス」というもっともらしい理由で労働者としての団結・反対・抵抗・要求の声をあげさせないことにねらいがありました。しかし図書館で働く労働者の労働条件が際限なく切り下げられ無権利を強いられていくのに、図書館を利用する住民の権利・自由が「向上」するはずがあり得ません。ここにこそ区の一連の図書館政策、そして今回の全館指定館化=まるごと民営化の根本問題があります。

 反対闘争が区全体を揺るがす大運動になる前に闘争収拾をはかるために昨秋組合が「交渉妥結」を演出した「第三者機関による指定管理者制度実施の見直し」はもはやあり得ないことがハッキリしました。区の「見直しはまったく考えていない」という既定方針を前に、4月からの6館指定館体制、2011年度指定を前に組合は「第三者機関による見直し」についてどんな申し開きをするというのでしょうか?図書館職場と地域の現場から声をあげていくことが昨秋を超える情勢を切り開きます。

★カテゴリー「図書館指定管理者制度」の次回では

《図書館民営化、現場労働者の労働条件とはどんなものか?》

というテーマで一定の資料紹介を行う予定です。

★杉並区立図書館指定管理者制度をめぐる昨年の闘いについては、リニューアル前の「すぎなみ民営化反対通信」で報道しています。詳しく経過を知りたい方は、以下でリンクし、カテゴリー《すぎなみ民営化に反対!図書館職員120名クビきり許すな》をクリックしてください。

http://blog.zaq.ne.jp/suginami/ 

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