すぎなみ民営化反対通信

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田中民主党区政の杉並版・幼保一体化「子供園」施策がめざすもの 

2010年10月13日 | 杉並田中区政批判

杉並・田中民主党区政の施策の最重点として掲げられている「子育て支援」

 10月8日に閉会した杉並区議会2010年第二回定例会で冒頭に田中新区長が行った所信表明では、①今後10年にわたる新たな基本構想と総合計画策定、②「新しい公共」の発想による区政経営の刷新、最小経費・最大効果、良質で多様なサービス提供のための民間企業の導入と連携、③そのための杉並版・事業仕分けによる区の事業の検証と見直しを打ち出すとともに、④取り組みを強化する具体的な重点施策をいくつか掲げています。 ④の具体的施策については、「医療・介護・福祉」「子育て支援」「全小中学校へのエアコン設置」「地域商店街の振興」「住宅都市の価値を高めるまちづくり」が挙げられていますが、その中でも最大の具体性と制度改変を伴うものとして打ち出されているのが「子育て支援」です。

 社会全体で子育てを支える地域社会を築くため、区独自の幼保一体化施設・子供園の設置を適切に進めるとともに、家庭教育を含む就学前教育を振興するためのビジョンを策定していきます。また、保育園の待機児童解消対策に力を注ぎ、働きながら子育てができる環境整備に努めます。また、区立小学校の余裕教室等を活用した学童クラブの充実を図るとともに、今後の児童館、学童クラブの施設・サービスのありかたを検討していきます。さらに不妊に悩む夫婦の相談・治療等の支援など区内で安心して妊娠・出産ができる環境づくりに取り組みます」(広報すぎなみ2010年9月11日 NO1948 1面 田中良区長の所信表明からの関連個所全文抜粋)

菅・民主党政権の「子育て新システム」と一体、その先取りとしての田中杉並区長の「子育て支援」施策

  田中区長が策定、推進しようとしている杉並版・幼保一体化施設「子供園」を中心とした子育て支援の施策を正確につかむために、前提として田中良区長が民主党員であり、菅民主党からの「民主党のエース」としての推薦で都議会議長の地位を辞して杉並区長選に出馬し、区長の位置に就いたことは重々認識しておく必要があります。田中区長が所信表明で柱とした「新しい公共」も「事業仕分け」も、そしてこの「子育て支援」も民主党の政策綱領にほかなりません。

  民主党政権は、「子ども子育て新システム」検討委員会の報告を受けて、2011年の通常国会で「子ども子育て新システムの基本制度案要綱」(6月27日)に基づく法案を成立させ、2013年度にその施行をはかる工程表を明らかにしています。その新システムでは、新システムのための恒久財源の確保と国と地方と事業者と個人の費用負担によって、幼保一体化(子ども園)と多様な保育サービスの提供とワーク・ライフ・バランスを実現していくとしており、2013年度の制度実施を待たずできるところから前倒しで進めていくとしています。

  田中区長が最重点施策としている「子育て支援」「幼保一体化・子供園」の施策は言うまでもなく、この民主党政権の「子ども子育て新システム」を前提としており、その一環として杉並区でこの制度を先取って実施していくものです。

保育・児童福祉、保育・福祉労働者、労働者家族、地域社会に破壊的な大激変もたらす制度の大改変

 田中区政の「子育て支援」施策と菅民主党政権による「子ども子育て支援新システムの基本制度」法案(※以下「子育て支援新法」または「子育て支援制度」と当サイトでは仮称することにします)に対する全面的検討と具体的批判については、当サイトでは独立した別のカテゴリーで、わかりやすい読み解きのシリーズとして今後順次、詳細にお伝えしていくことになります。その作業の前提として、今回は、これがどれほど大きな規模の、規模が大きいだけでなく激しい制度的激変であり、どれほど深刻な事態を引き起こすものであるかについて、大づかみに提起します。

 田中区長の前掲所信表明の抜粋全文と政府が「子育て支援新制度」の制度設計で挙げている以下の対象領域(下記抜粋)をまずしっかりと凝視する必要があります。

両立支援・保育・幼児教育・・・こども園小規模保育サービス病児・病後児保育サービスなど     プラス放課後児童クラブ

地域子育て支援・・・乳児家庭全戸訪問、養育支援訪問、地域子育て支援拠点、児童館

 何をお伝えしたいかというと、要するに、子ども・子育てに関連するそれぞれに目的と役割の独自性と特殊性、制度的意義、機能的意義をもった十っぱひとからげには到底できないすべてについて、一括する制度をつくろうとしているということです。保育園、幼稚園から、一時保育、病児・病後児保育、乳児家庭訪問、そして学童クラブ、児童館、放課後空教室活用にいたるまで、すべてを一個の法律と制度のもとに包括し、それを「子ども子育て新制度」と呼ぼうとしています。言わば《子ども子育てに関連するすべてをまかなう百貨店》ともいうべき制度に切りかえようとしていると言ってよいでしょう。

 こんなことがはたして可能なのでしょうか?「社会全体で子育てを支える」(田中区長所信表明)「すべての子どもへの良質な成育環境を保障し、子どもを大切にする社会」「出産・子育て・就労の希望がかなう社会」(「新システムの基本制度案要綱」)と聞こえはいいが、本当に、この新制度はそんな「打ち出の小槌」「何でもかなう百貨店」のようなものでしょうか。厳しい困難な社会問題でのこのような一見優しさを伴った「甘い言葉」はもうたくさんです。介護保険制度のときもそうでしたが、ろくなことにならないのは目に見えています。

 しかも、新制度は、こと杉並区に限っても、保育・児童福祉、幼児教育等々での公立と私立、業務委託と指定管理者制度のなしくずしの導入、認可と認証、認定、補助金の多寡、有無等々の混在せる実体を無視して一気に、新法のもとで新しい一つの制度に投げ入れるものとなるわけです。

  たとえば保育園に関して言えば、区立44園(うち公設民営4園、区は2015年度までに11園公設民営化の計画)、私立14園2室。東京都認証保育所14所。ひととき保育11、保育室8。幼稚園に関して言えば、区立4園、私立44園1類似施設。幼保一体化施設・子供園が2園(下高井戸子供園、堀之内子供園)、認定こども園が2園(認定こども園・私立こどもの木かげ玉成幼稚園、認定こども園・聖心学園幼稚園)。

 ちなみに、児童館について言えば41館、学童クラブについては48(うち6が小学校併設、1が保育室併設、その他は児童館併設)

 ・・・・・・

  ▲ こうした諸施設・諸事業を、「子ども子育て支援サービス」で客観的基準をもって類型化し、公定価格を決めて、「サービスメニュー」化し、利用者の「選択」による事業者と利用者の公的保育契約に基づいて、区(制度の実施主体)の実情と裁量によって現物および現金給付に基づいて利用者に対して「必要なサービスの提供を行う」などということが果たして本当に可能なのでしょうか?

  ▲ 問題は、区立(公立)が廃止・解体され公的保育・公的福祉が奪われるということにもとどまりません。区立にせよ私立にせよ、その他にせよ、各施設各事業は補助金・交付金をさまざまに受けてきた、あるいは受けてこなかったところもあります。新制度という一つの「箱」の中にすべて放り込んで、ガラガラポンで、この新制度による国や都からの交付金、区の補助金、労使(事業者、個人)の拠出金、事業者への費用支払いを適正に合理的に按分する基準が算定されるというようなことが本当にできるのでしょうか?

  これは介護保険制度の実施で起きている問題・・・・要介護度・要支援度の認定、介護報酬の算定、介護料金(自己負担額)の算定を行うことにおいて、必要なさまざまな介護が実際には受けられない、あるいは介護申請そのものを抑制するという問題や介護従事者の介護事業者から受け取る賃金が不当に低すぎる、劣悪な労働条件を強いられているという問題等々・・・・、新制度は、それどころではないとんでもない破たんと混乱を引き起こす、乱暴でずさんな制度設計だと言わねばなりません。

区立の保育園・幼稚園をキリクチに考えてみましょう・・・攻撃の大きさと激しさがよくわかる!ここでの数字が示す意味は重大だ。

【区立保育園】 44園

   (うち公設民営は高井戸・高円寺北・高円寺南・荻窪北の4園)

◆定員  44園の定員総数=4017名

職員総数=1000名超(※922名プラス委託・派遣で職員数が公開されていない員数および公表されていない非常勤職員数)

 ●園長44名 ●保育士691名 ●看護士33名 ●栄養士5名 ●調理士106名プラス□□名 ●用務・事務 43名プラス□□名(※調理士、用務は民間委託および派遣の園がいくつかある)

【※参考・1・・・私立保育園】 11園4分園

◆定員総数=1059名

◆職員総数=311名

 (●園長および副園長および所長16名 ●保育士213名 ●看護士11名 ●栄養士・調理士・調理助手36名 ●事務・用務等19名 ●保育助手13名等々)

【参考・2 子供園】 2園 定員総数176名

【参考・3 区立幼稚園】 4園 在籍児童数376名

【参考・4 私立幼稚園】 44園1類似施設 在籍児童数 不公表

田中区政の杉並版・幼保一体化=子供園推進・・・子育て支援新制度とはどういう問題なのか?

 ここでは区立保育園および参考として私立保育園、子供園、区立幼稚園、私立幼稚園の定員および職員の総数を取り出してみました(在籍児童数、職員数は発表されていないものは不詳)。

 ① 区立保育園定員(基本的に在籍児童数)約4000名および私立保育園定員約1000名、区立幼稚園在籍児童数約400名弱という数字だけみてもわかるように少なく見積もっても約5千数百名の子どもたちとその家族(利用者)に重大な影響を及ぼす制度激変であること。

 ② 区立保育園で働く職員、区立幼稚園で働く職員合わせて1000名超の雇用に直接の影響をもたらす制度激変であること。

 ③ 区で働く正規・常勤約3千7百名、非正規・非常勤約4000名の計約8千名の労働者の中での1000名超の労働者に甚大な影響をもたらす制度激変であるということ。その意味の大きさ

 ④ 公務員制度改革・360万公務員労働者のいったん全員解雇、総非正規職化の攻撃の中で言えば、自治体で働く公務員・職員への解雇・非正規職化攻撃の最大の実体、1割もの大きさをもつ、大きな階級的狙いをもった超ど級の攻撃が保育園で働く職員への「子育て新制度」=保育の市場化・民営化=総非正規職化攻撃であること。

 ⑤ これは労働組合、労働運動という面からいえば、全国レベルでは自治労の戦闘的な現場実体、東京都レベルで言えば、自治労連の戦闘的な現場実体をなしている保育労働者の組合的団結の解体・壊滅・一掃の狙いをもった攻撃であること。労働運動の壊滅・一掃が狙いだ。

 ⑥ 全社会的レベルで言えば、介護保険制度の実施で始まり、子育て支援制度の強行で「最後の止め金」を取っ払う位置にある社会福祉・社会保障の一掃の新自由主義の攻撃であること。「子育て支援」は100パーセントのウソだと言いきろう。まさに「ゆりかごから墓場まで」の全面的反古・解体・完全否定です。「子育て支援新制度」とは保育のきりすて、子育てのきりすてだ。次には、義務教育の小中学校の民営化というところまで考えられている(現に財界はここ数年一貫して小中校を民間に委ねろと言っている)。まさに社会の全面的崩壊に行き着く。

 ⑦ 「子育て支援新制度」は子どもと子育てを焼け野原に放りだす、「後は野となれ山となれ」という社会の崩壊をひきおこす攻撃だ。社会的大混乱なしに進むわけがない。政府も財界もこういうことはわかりきっている。それでも、「それしかない」と踏み切ろうとしている。しかし、私たちは、この「子育て支援新制度」「杉並版・幼保一体化《子供園》」もろとも、新自由主義の地獄の道連れにされていいのか。絶対に否です。

  私たちと子どもたちの未来に賭けて絶対反対の声をあげましょう。

 田中良・民主党区政に絶対反対!田中民主党区政と全力で闘おう。田中区政は、地域図書館全館指定管理で地域図書館12館全館を、そして子育て支援=杉並版・幼保一体化で保育園44園を民営化し、今後1年間で区職の総非正規職化へ一気に突き進もうとしているということです。正規・非正規をこえる労働者の団結、労働者と住民(地域の労働者住民)の団結で田中民主党区政をたおそう。

 

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