すぎなみ民営化反対通信

東京・杉並発。「一人が万人のために、万人がひとりのために」をモットーに本当のことを伝え、共に歩んでいきたいと思います

子どもの命を危険にさらす新精度に屈服-衆院予算委・共産党国会質問を批判する

2011年02月26日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

シリーズ・実践編(第八回)

日本共産党・全労連・全保連の裏切り・抑圧はねのけ、幼保労働者、保護者先頭に《幼保一体・民営化に絶対反対》で立ち上がろう!

 政府の「子ども・子育て新システム」に対して、保育所・幼稚園、地域の現場はみんな反対しています。昨年11月14日日比谷野外音楽堂の全保連(全国保育運動連絡会)が軸となってよびかけた保育大集会には幼保労働者を先頭に4800名が結集し、集会は幼保現場の労働者の怒り、絶対反対の気持ちがみちあふれていました。しかし、運動の主催者である全保連全労連、主導政党である日本共産党は、この現場の《怒り》と《反対》を「よりよい保育を」「保育をもっとよくする」のスローガンでねじ曲げ、「公的責任による保育の拡充をもとめる共同」の名で幼保労働者の決起を裏切り、おさえこんで、民主党政権に対する改善要求の枠内にとじこめることに躍起になっています。

                          

 

 日本共産党と全労連にとっては、目前に迫った統一地方選挙と解散総選挙接近がすべてであり、「待機児童の解消」「子育て支援」を「選挙の集票の道具」として利用し、「建設的野党」として民主党その他政党と同じ土俵で競い合うことはしても、幼保一体化・保育民営化に反対して組合や職場から労働者が決起することに対しては、“自党の選挙戦を不利にする、余計なことはするな”と規制・抑圧し「選挙がすべて。票集めに集中しろ」と言ってまわっています。決して「反対」とはいわないこと(反対しないこと)に核心があります。「共同」の名で(「反対」に反対し)労働者の決起を抑圧しねじ曲げ、切りすてるものです。

 日本共産党が言う(労働者の団結を妨げ労働者の決起を封じ込める)「共同」とは、「統一戦線」などではまったくありません。あからさまにそう言わないまでも、内実は政府・財界との「共同」です。日本共産党の立場・路線は、民主党政権や財界と一緒になって「待機児童ゼロ作戦」を推進し、「子ども・子育て新システム」をよりよい制度として一緒になってつくるということにほかなりません。日本共産党の規制と抑圧をうちやぶることは、幼保一体・保育民営化に対する反対運動の前進と爆発のために避けて通れない重要な課題です。組合、職場、地域、選挙戦で日本共産党を批判し、絶対反対の闘いの拠点をつくりだしましょう

 今回は公開録画から、2月9日衆院予算委員会での日本共産党・高橋千鶴子議員・国会質問(菅内閣総理大臣、与謝野少子化対策担当大臣、細川厚生労働大臣が答弁)の骨子の紹介を通してこの点について明らかにします。

細川律夫厚労大臣★「しっかり取り組んでまいります」        

日本共産党・高橋千鶴子議員★「しっかりやってください」

 これは2月9日衆院予算委員会での高橋千鶴子議員の質問の締めくくりのやりとりです。レーニン率いるボルシェヴィキの国会議員の場合は常に絶対反対の抗議で質問を結んでいます。ボルシェヴィキ国会議員の例を引かなくても、野党や反対の立場で追及の質問では政府答弁のいかんにかかわらず、反対、抗議の表明で自党(自己)の態度表明で結んで質問を締めくくるものです。高橋千鶴子議員の質問の終わり方、結びの言葉に、政府「待機児童ゼロ作戦」「子ども・子育て新システム」に対する日本共産党の態度が象徴的に現されています。

 表記のやりとりは、▲「待機児童解消」の問題、▲「新システム」の問題に関する質問の最後のまとめ部分の質問項目ー乳児の死亡事故を焦点とした保育の安全問題です。それを全体20数分のうちわずか2分足らずの駆け足で端折り、以下のような質問と答弁の最後になされたものです。

 高橋議員:保育を儲けの道具にすると何がおきるのか、一番わかりやすい例として保育施設における死亡事故の問題があります。・・・・かつて、ちびっこ園で22名の乳児が死亡するという死亡事故がありました。赤ちゃんの急死を考える会の報告によれば、昨年は1年間で12名が死亡している、それだけでなくプラス2名の意識不明の事故があった、この事実を見ていただきたい。会の人々は「死亡事故は認可外でもともと多い」「しかし、認可でも一定の事故が起きている、単に事故ではなく、人手不足が原因で防ぐことができた死亡事故が起きている」と訴えています。・・・・こうした事故はその後も続いている。ひとりの悪質な園長がいてそのもとで死亡事故が起きたというようなとらえかたでは事故をなくすことはできない、最後にこの点についてお聞きします。

 細川厚労大臣:死亡事故はあってはならない。保育所において健康安全の体制づくりにつとめ、各自治体に事故防止のポイントを周知し、事故防止に努める。「子ども・子育て新システム」でも保育の職員の配置基準、安全確保に努め、保育の質の向上をはかり、死亡事故のないよう、しっかり取り組んでまいります。

 高橋議員しっかりやってください。

 細川大臣の答弁は、無内容なだけでなく、2010年までの240名の乳幼児の死亡事故、2010年の12名の死亡事故(他に2名が意識不明)という失われた(奪われた)かけがえのない命の重さにも何ら応えることのない、官僚的答弁の見本のような論外のものです。しかし、高橋議員の質問は、あまりに通りいっぺんのお座なりの質問、かけがえのない子どもの命の問題をとりあげるにしてはあまりに軽いやりとりだとは思いませんか?保育の問題を質問する以上、乳幼児の死亡事故、保育事故の問題はパスするわけにもいかないという位置づけで、仕方なく「訊くだけ訊いておく」というアリバイづくりで質問を行っているからこういうお座なりのものになるのです。これは高橋千鶴子議員個人の問題ではない、相次ぐ保育事故の問題に対する日本共産党の立場、路線、態度の問題です。

 ▲ちびっこ園をはじめ無認可保育所で保育事故が激発した、▲それだけでなく2001年の小泉規制緩和以来、認可保育所でも保育事故が急増している、▲「子ども・子育て新システム」を掲げる民主党政権のもとで一体的に民間企業の参入が増え、民営化が進む中で、2010年のわずか1年間に12名の死亡事故、2名の意識不明の事故がひきおこされた、▲ヒヤリハットの法則でいえば、この29倍の隠れた同様事故があり、その300倍の潜在リスクが実際にある・・・この事実を通して突き出し追及しなければならないことは、《新システム=幼保一体化・保育民営化は必ず子どもを命の危険にさらし、子どもの命を奪う保育事故を不可避に多発させる》という具体的結論です。

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(武田さち子著・赤ちゃんの急死を考える会〔企画・監修〕の『保育事故を繰り返さないために・・・・かけがえのない幼い命のためにすべきこと』 ※同書は「子ども・子育て新システム」がまだ公表されていない時期に執筆されていますが、日本共産党の場合とは違って保育民営化・規制緩和、保育現場で働く職員の労働条件の劣悪化に対する批判の視点と何よりも死亡事故への心底からの危機感と人間的憤りが貫かれています。) 

  日本共産党・高橋千鶴子議員は「保育を儲けの道具にしたら何が起きるか」などと口先では「保育を企業のカネ儲けの道具にすること」に「批判」のスタンスを装っています。しかし実際には子どもの命の問題で身が震えるような危機感や憤りは毛ほども感じていません。だから制度として認可制を廃止し指定制に変える「新システム」に絶対反対、絶対阻止の質問にならない、それでもかまわないというお座なりの質問になる。認可制を廃止するとは、児童福祉法の定める設置基準、最低基準その他いっさいの(子どもの命と発育の安全を保育施設において守るための)規制をすべて取り払い、こども園を運営・経営する指定事業者=株式会社等の企業の自由にできるようにするということです。

 子どもを保育施設に委ねる親(保護者)にとっては身体を張ってでも命に代えても守らずにいられないのが子どもの命です。真剣に保育事故・死亡事故の問題にとりくもうとするならば、その実践的結論は、「新システム」絶対阻止・絶対反対以外にありえません。およそ真剣でなく、絶対反対ではまったくないから、細川大臣の「しっかり取り組む」に対して「しっかりやってください」と政府におもね、政府と一緒の制度づくり・体制づくりの土俵に立てるわけです。絶対反対で政府・財界と対決するよりも、政府・財界との共同を選ぶという路線の帰結が、子どもの命を守るという保育の原点まで投げ出し、その重さから逃げてもかまわないという際限ない転向になっているのです。

与謝野少子化担当大臣 ★「待機児童の増→保育所整備の後追い的発想ではなく潜在的な保育ニーズに対し先取り的に取り組む」    

高橋議員 ★「潜在的需要を考えて先取り的にやっていくということ自体は間違いではない

 質問の締めくくりが「しっかりやってください」という高橋議員の質問のはじめはどうだったでしょうか?締めくくりがこの締めくくりなら、はじめもはじめです。政府と日本共産党の子育て支援策は「待機児童ゼロ作戦」で完全に一致しているという確認から始まっています。

 高橋議員:子育て支援策について質問します。まず深刻な待機児童対策について・・・・認可保育所の待機児童数は2万6千人、過去最悪で潜在的には100万人とも言われている。・・・入りたくても入れない、この声を総理はどう受け止めているか。ビジョン、システム、チルドレンファーストを言うのはいいが、まずこれ(待機児童対策)を真っ先に解決しなければならないのではないか。この点についてうかがいたい。

 菅総理大臣:今おっしゃった点については基本的には問題意識は同一と認識いたしております。チルドレンファーストの考え方をベースにして、「子ども・子育て新システム」を構築していく、そのために「待機児童ゼロにむけて、このシステムが成立するまでの間も私のもとに「特命チーム」をつくっている。来年度は200億円の予算を組み、自治体、色々と無認可も含めて保育施設の増設に充てていきます。最終的にはすべての希望する方に対して子どもが預かれるようにしていく、そう遠い先ではない形で進めていきます。

 高橋議員:総理から見通しについて言われたが、今考えねばならないことは、本当の対策とは何なのか、この問題です。2001年小泉政権のときに「待機児童ゼロ作戦」が出された。それで一時的には待機児童は減少したが、結局また元に戻った。与謝野少子化担当大臣は小泉政権では大臣をつとめています。待機児童を減らせなかったのはなぜですか。

 与謝野馨少子化担当大臣:これまでの待機児童対策については、菅総理のもと「待機児童ゼロ特命チーム」で待機児童解消先取りプロジェクトで検証を行っています。これまで待機児童解消に向けて取り組まれてきたものの、解消には至らなかった。原因の一つとして、待機児童がいるから保育所を整備するという後追い的発想があったと指摘されている。こうした後追い的取り組みでは保育所の定員枠を拡大しても潜在的な保育ニーズが顕在化したら定員枠の拡大が待機児童解消に直結しない状況になっています。待機児童の解消については計画的かつ潜在的なニーズを考えて先取り的に取り組むことが重要と考えています。

 高橋議員潜在的需要を考えて先取り的にやっていく、というそのこと自体は間違いだとは思いませんが、問題はこれまで本当に需要にみあった保育所づくりをやってきたのかということであります。

 (1) このやりとりは、待機児童問題も含めて今日の保育問題の根底にある重大問題を含んでいます。キーワードは、与謝野も高橋議員・日本共産党も平然と当たり前のように用いている「潜在的な保育ニーズ」と「先取り」です。

 「保育所」とは「保護者の就労等の事情から保育に欠ける児童」に対して保育を保障するものです。▲ 「保育に欠ける児童」の激増、言いかえれば、▲保護者が、これまで「専業主婦」だった母親もパート・アルバイト等で就労せざるを得ない、共働き・家族総働きしなければ暮らしていけない、日中のみならず、早朝も深夜も不規則であろうと何であろうと、パートやアルバイトを二つも三つもしなければ生計が厳しい・・・現在、労働者家庭がおしなべて叩きこまれつつある経済的現実が根本にあります。保育所に子どもを預ける以外にない、さらに延長保育や一時保育や夜間保育に拠るしかない、そうしてでも働かないと生計がままならないない労働者家庭が急増、激増しているということです。

 この労働者家庭を襲っている経済的現実の問題は、万策尽きた資本主義の破局、大恐慌が不可避にひきおこしている社会的災厄そのもの、一方的な労働者人民への犠牲の転嫁にほかなりません。「利潤(カネ儲け)がすべて」の資本家階級、企業が大恐慌時代に生き延びるために、「19世紀の工場法以前の状態に戻す」「雇用の9割をパート、アルバイト、派遣等の低賃金・不安定雇用の非正規労働による」とする新自由主義の究極の戦略(1995年日経連報告「新時代の日本的経営」)をとっていることからひきおこされています。

  与謝野が「潜在的な保育ニーズ」と言っているのは、この「9割非正規雇用化」「9割パート・アルバイト・派遣化」以外の何ものでもありません。“恐慌はおさまらない、整理解雇・大失業は当然”、“今後もどんどん労働者家庭は大量の非正規不安定雇用の供給源になる”と、働いても働いても暮らしていけない、家ではとても子どもを育てられない状況が全社会的に拡大するということを言っているわけです。「先取りする」とは何でしょう!そういう社会に必ずなる、そういう社会に必ずするから、その前提でこれまでの保育制度についても完全にひっくり返す、「公立」だ、「認可」だと甘いことを言っていられる状況ではない、全部規制を取っ払う、「民間」結構、「認可外」結構、「株式会社」大いに結構・・・、そう言っているわけです。それだけではありません。財界も政府も、彼らがつくりだす総非正規化、「保育に欠ける児童」の激増を「新たなマーケットと雇用の創出」(「子ども・子育て新システム」制度基本要綱)の好機とまで言い切って株式会社への全面的な市場開放として「新システム」を強行しようとしています。

 日本共産党が「潜在的な保育ニーズに対して先取り的に取り組むのは間違いではない」(「正しい!」と言っている)のです)と国会の場で表明したということは、この「親の就労等で保育に欠ける児童」の激増=労働者の9割非正規化(総パート・アルバイト化)をまるまる容認し受け入れ“貧困ビジネス”よろしく非正規就労家庭を食い物にして企業がカネ儲けする「新システム」に協力することを国会の場で誓約したということです。

 (2) もう一言、ここで触れておかねばならない点は、日本共産党は政府と財界の「待機児童ゼロ作戦」(保育の規制緩和・民営化)の積極的共犯者だということです。高橋議員は、「待機児童ゼロ」を掲げながらなぜ解消にいたらなかったのかという質問ををメインにすることで日本共産党が小泉政権時代から今の民主党政権にいたるまで一貫して「責任ある建設的野党」として「待機児童解消」のために働いている、今後も協力すると強調したいのです。

 私たちは、子どもを保育所に入れたいのに入れられなくて苦しんでいる労働者家庭がおびただしい数に上ること、子どもの保育所入所が死活的に切実な問題になっていることを知っています。しかし、「待機児童ゼロ作戦」の名で行われてきたこと、これから行われようとしていることは何でしょうか。保育の規制緩和であり、民営化です。小泉純一郎が言いだし、石原慎太郎都知事が掲げ、杉並区の山田宏前区長や田中良現区長はじめ全国の自治体首長が掲げ、民主党政権が掲げている「待機児童ゼロ作戦」「待機児童解消」はことごとく、認可外保育の拡大の促進、保育の規制緩和、保育所への詰め込みの天井(上限)外し、保育の民営化の看板でした。高橋議員自身が質問の中でそう言っています。後述の通り、「規制緩和、民営化では何も解決しない」とも言っています。そうでありながら政府と同じ土俵で政府に「待機児童ゼロ」を求めています。「何も解決しない」規制緩和に屈服し、民営化の攻撃と闘わないで「このままでは規制緩和、民営化はとまらない」などと言っている日本共産党の「待機児童解消」「保育の拡充」のスローガンには間違っても幻惑されてはなりません。「待機児童ゼロ」は民営化のスローガン、「新システム」推進のスローガンです。

高橋議員 ★「公有地を活用し、便宜をはかり、手を挙げるところがあれば、民間の保育所も増やすべきだ」

 ・・・・高橋議員は縷々、児童福祉法が定める設置の最低基準や定員枠の弾力化、規制緩和、民営化が進行してきた経過に触れ、保育所に詰め込みが強要されてきたことを「待機児童解消に至らなかった内実」として強調し、「民営化の流れはこのままでは止まらない」「しかしそれでは問題は解決しない」「規制緩和、民営化では解決にはならない」・・・・と、規制緩和・民営化に反対するというそれ以外にあり得ない結論から逃げ回り、自党の屈服をごまかし続ける堂々巡りの質問を続けたうえで、やっとのことで「公的責任における保育の拡充」を求めています。

 与謝野大臣:市町村自治体の関与の具体的な内容としては、必要な子どもに幼児教育、保育を優先的に利用を確保すべき利用を斡旋する責務を自治体に課することを、ワーキングチームで検討しています。公的責任については、現行制度より市町村の関与を後退させることはありません。 

 この与謝野大臣の一言で縷々長広舌の「公的責任による拡充」要求がすげなく一蹴されると、ついに高橋議員は「公立も民間も増やせ」と要求しています。

                           

 高橋議員:(公的責任という点については)財政の問題も含めて公的責任と言っています。因みに日本共産党は、国の責任で10万人受け入れの認可保育所をつくるべきだと訴えています。器を変えるだけでなく、たとえば困っている土地の問題についても、東京23区には東京ドーム130個分の国有地があります。土地の活用も含めて、便宜をはかり、手を挙げる人がいれば、公立も増やし、民間も増やすべきだと考えます。

 何をかいわんや、ここまで来れば、コメントも不要というものですが、日本共産党は、便宜をはかり公有地に株式会社を誘致し、認可保育所を運営させよと言っているのです。こうなると「公立も増やせ」は付け足しにしか聞こえません。これは、株式会社の全面的参入による幼保一体施設・民営こども園に日本共産党が賛成しているということです。それにしても「民間に対して便宜をはかる」とは何でしょう!便宜をはかって、JPホールディングスのように「手を挙げる」企業をどんどん増やせということではないですか。だからこそ、日本共産党の議員の議会質問や「しんぶん赤旗」や全労連や自治労連等の共産党系組合のビラには、「新システム」に対する「反対」や「阻止」のコトバはただの一言も出てきません。稀に「反対」とか「ストップ」とか「阻止」というコトバがあってもまったく本気ではなく、絶対反対で闘う労働者の決起があり日本共産党や全労連の屈服・裏切りが暴かれていることに対して自らの影響下の組合員や労働者に動揺が起こり、大量の離反と決起になりかねないことから口先だけそのように言っているに過ぎません。日本共産党や全労連が真実「反対」「阻止」の気があれば、国会での小池晃の後釜を任じる高橋千鶴子の国会質問で「反対」の「は」の字も出てこないなど考えられません。しかし高橋議員の20数分の国会質問にはただの一言の「反対」も表明されませんでした。そこには何の不思議もありません。日本共産党には「子ども・子育て新システム」に「反対」する気はないからです。日本共産党こそ「子ども・子育て新システム」、幼保職員クビきり、総非正規職化の最悪の先兵です。

 そういう次第ですから、質問で「新システムの内容」に関して質問しても、当然何の批判精神もなく、与謝野大臣に「検討中」の「個人的見解」として「制度説明」をさせているだけです。そして冒頭掲記の通り「しっかりやってください」と「新システム」の推進で政府と日本共産党は協力して進めていくことを確認して締めくくったということです。

幼保職場、地域、選挙で「新システム」の先兵・日本共産党の正体を暴露し、民主党政権打倒、幼保一体化・保育民営化に絶対反対の闘いをまきおこそう

 保育民営化絶対反対の署名を拡大しましょう。日本共産党は自ら法人を立てて民営化の先兵として指定管理者となっている杉並の保育園で職員と保護者に署名を呼びかける活動に「警察を呼ぶぞ」と妨害と敵対の挙に出て失敗しています。保育民営化絶対反対署名の「1筆」「1筆」は、「子ども・子育て新システム」阻止への「1筆」であり、私たち労働者の団結の「1筆」です。

 団結こそ私たちの武器です。労働者の団結こそ持たざる者の唯一の武器であり私たち自身の力で社会を変え、未来を切り開く武器です。チュニジア、エジプト、リビアをはじめとして全世界をいま揺るがしている中東の軍事独裁政権打倒を掲げた革命も持たざる労働者のストライキと反政府デモ、青年労働者の決起が切り開いています。民主党政権打倒! 戦争絶対阻止! 保育民営化に絶対反対! チュニジア、エジプトの革命に続き、皆さん、ともに闘いましょう。

 

 

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幼保職員の総パート・アルバイト化・・・(株)日本保育サービス運営の保育園、採用情報が示す実体

2011年02月24日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

《前回からの続き》 

  ・・・・シリーズ・実践編(第七回)・・・・

JPホールディングス・㈱日本保育サービスの保育園運営の核心はパート・アルバイト=低賃金・不安定雇用、シフト制勤務

 ・・・・保育で時給800円とか900円、週3日・1日6時間のシフト勤務!・・・親代わりに子どもの命、発育、成長を守る保育という大変な仕事で!・・・一所懸命頑張ってもこの低賃金で雇用も不安定。これは保育労働者にとっても保育園・幼稚園に子どもを預ける親にとっても保育を受ける子どもにとっても実に大変で大きな問題です。上記下線を付した採用情報は、ほかでもない政府の「子ども・子育て新システム」の「受け皿」モデル企業、「子育て支援事業のリーディングカンパニー」と市場から評価されている㈱JPホールディングスー㈱日本保育サービスのものです。

 前回に続き、「子ども・子育て新ビジネス」の「受け皿」モデル企業であるJPホールディングス・㈱日本保育サービスの問題に、さらに切り込みます。

 JPホールディングスー㈱日本保育サービスの「子育て支援でビッグビジネス」の発想と戦略は「カネ儲けがすべて」「機を見るに敏」の推進動機に尽きますが、いかにして儲けようとしているのか、ここに私たちがJPホールディングス批判=「新システム」批判として暴露し、えぐりだすべき問題の核心があります。JPホールディングス自身が言っていること、行っていることを、同社の公開サイトからの抜粋で明らかにします。

山口洋代表の企業理念・・・どういうことを言っているか

                           

 以下は、㈱JPホールディングスのサイトの「企業情報」の冒頭に公開されている「社長挨拶」(山口洋代表取締役社長)の抜粋。

・・・・今の保育所に疑問を持ち、変えたい、また本当に必要とされる子育て支援を当社でやりたいと真剣に思うようになり事業展開を始めました。・・・・・この事業はまず人の一生のうち最も重要な発達段階にある乳幼児をお預かりしている、ということです。そのため保育所は国家資格を持った保育士をはじめとする専門家の集団であり、常に従業員は能力と知識を向上しなければなりません。また子どもと保護者と一緒なって喜び、悲しみ、悩むといった他の仕事とは違う、きわめて人間的な仕事です。決して物づくりのように量産はできませんし、マニュアルの整備だけで拡大できる事業でもありません。この意味でも従業員の育成による「保育の質」の向上が事業の第一条件となります。創業以来楽しく働くことをモットーにしてきましたが、今後はさらに顧客満足と共に従業員満足を重点課題として取り組んでまいります」

「・・・会社にはその培ってきた理念があります。その理念から生み出された商品やサービスがあり、それの利用者というお客様が存在し、そのお客様に喜んでもらおうと一所懸命頑張っている従業員が働き、それを支えている取引先の皆様によって成り立っています。そして企業はこれらのことを通して社会貢献する公器であり、単に利益を生み出すだけの存在ではないと考えます。私はこの信念のもとに経営をしてまいります」

 従業員(保育労働者)がこの企業理念の下、一所懸命、能力と知識を高め、楽しく働くことができ《従業員満足》を感じられるような経営を行うことによって「従業員の育成による保育の質の向上」を通して企業として躍進するというものです。

同社運営の保育園の採用情報が示すもの

 ㈱日本保育サービスは、下記の通り、首都圏を中心にアスク保育園という名で85保育園、学童クラブは37所、児童館は9館を運営しています。

 ◆アスク保育園・・・【東京都】 認証保育所26園、認可保育園11園、保育室2の計39。この杉並区にも都認証保育所・アスク永福保育園があります。【神奈川県】 認可保育園25園(うち1園指定管理者)、認定保育園1、保育室3の計29。【千葉県】 認可保育園4園(指定管理者)。【埼玉県】 認可保育園6園(うち2園指定管理者)。【愛知県】 認可保育園4園(うち3園指定管理者)。【宮城県】 認可保育園1園。

 ◆児童館・・・9館(指定管理者)

 ◆学童クラブ22(指定管理者8、運営委託14)。放課後児童クラブ15(指定管理者)

 ㈱日本保育サービスの採用サイトで同社の2011年度の新卒採用情報を見てみましょう。そこでは・・・・・・

【パート・アルバイト】  

◆ 保育士  7時~22時のシフト制、時給900円~ (無資格者は800円~)※研修期間中はマイナス50円、無資格者は地域により異なる。

◆ 調理補助 8時30分~18時のシフト制、時給1000円~

◆ 看護師  7時~22時のシフト制、時給1000円~

◆ 児童館職員・学童クラブ指導員補助 

         7時~19時のシフト制、時給900円~

※ちなみに同サイトの中途採用情報では・・・

 ◆保育園 7時~22時の実働8時間でのシフト制。給与は、園長候補(保育士)が月23万円~、保育士が月18万円~

 ◆児童館・学童 7時30分~21時。給与は月18万円~ 

【杉並区のアスク永福保育園の保育スタッフ求人情報】

 杉並区にある同社運営の上記の都認証保育所の場合をみておきます。

◆「『保育士』資格がなくとも大丈夫。もちろん未経験の方、大歓迎です」

有資格者(保育士)は時給900円~。研修期間は850円(150時間)。7~8時と18時以降は100円アップ。

◆無資格者は時給830円~。18時以降は50円アップ。

◆勤務時間 朝~昼、昼~夕、夕~夜。週3日以上、1日6時間以上のシフト勤務。

(※ アスク永福保育園は、▲開所時間は月曜~土曜が7時30分~22時、日曜が8時~18時。▲職員数は10名、園児数(定員)は36名。▲保育料金は、週5日の保育基本コースの場合、0歳児で70000円、1・2歳児で63000円、3歳児以上で57000円)

“低賃金、とっかえひっかえのパート・アルバイトで企業は儲かる”ー結局そういうことではないでしょうか

 

  今では誰でも知る通り「月○○万円以上」「時給○○○円~」とは「月○○万円」「時給○○○円」ということにほかなりません。園長候補、主任格(ベテラン保育士)でも月23万円、18万円。保育スタッフは無資格・未経験でも歓迎でパート・アルバイトが基本、保育士資格があっても時給900円、無資格者は830円です。東京都の最低賃金は時給821円。つまり最低賃金そこそこの超低賃金です。

  シフト制で「週3日以上」、「1日6時間時間以上」というのも、「週3日、せいぜい4日」「1日6時間、せいぜい7時間」というのが常識。正規職員の常勤制によらず、総人件費、賃金を低コストに抑えるために行われているのが細切れ・つなぎのシフト制。単なる勤務日の組み替えや勤務時間の変更・配分ではありません。「通し」で週に多い勤務日数、1日に長い勤務時間の勤務形態では総人件費が膨らむことから、時給シフト細切れ・つなぎシフトが経営者の低コスト化・効率化優先の経営方針となっています。保育士資格があり保育園で働いた経験者(ベテラン)を園長や主任格で中途採用する場合もシフト制。パート、アルバイト=シフト制こそ「人件費縮減・抑制で稼ぐ、低賃金で儲ける」ということです。あからさまに言えば、正規・常勤職員なら職員1人にかかる人件費○○円が、3~4人のパート・アルバイトのシフト制で3~4人にかかる人件費に化け、その分利潤が稼げるという仕組みがパート・アルバイトによるシフト制です。

  「従業員満足を重点課題とする」??。時給900円(800円、830円)、週3(4)日・1日6時間勤務で計算してみてください。月6~7万円(週3日の場合)、月8~9万円(週4日の場合)という水準です。格があっても、資格がなくても、これでは保育の仕事だけではとうてい暮らしてはいけません。同様の保育園パート・アルバイト勤務を掛け持ちするとか、深夜にコンビニや居酒屋、ちらしのポスティング等でアルバイトして身をボロボロにすり減らしながら保育園で働く、そうしなければ食っていけない、生きていけないということです。

 ④ 山口洋代表が言っている「保育の質」とは何でしょうか。150時間の「研修期間」と「常に顧客に喜んでもらえる向上を求める」ことで「能力と知識」なるものを詰め込む、叩きこむというだけの話です。園長もシフト制、保育主任もシフト制、スタッフも全員パート・アルバイト。そうでなくても保育はてんてこ舞いの繁忙と精神的な集中力が求められる仕事、経験を積んだベテランを軸にチームワークがあってはじめてできる仕事・・・とっかえひっかえ、入れ替わり立ち替わりの体制で、保育に責任をとりきれるスタッフが育つとでも思っているのでしょうか。

 ⑤ ここに浮かび上がってくるのは、「子ども・子育て」を看板に子どもと親(労働者)を食い物にしてカネ儲けしようとしているだけでなく、それも、専ら保育労働者を食い物にすることによってカネ儲けしようとしているということです。介護保険制度でコムスンが訪問介護事業での中間搾取で訪問介護員を食い物にした構造と本質的にどこに違いがあるでしょうか?

 ⑥ この超低賃金、この細切れ・つなぎシフトでは、まともな保育はまったく成り立ちません。子ども・子育て新システム」が企業モデルとしているのはJPホールディングス、実施・強行でもたらされるのが保育の解体、保育のきりすてであることは明白ではないでしょうか。

 ▲たとえ職員が、どんなに知識や能力があり、子どもにたいする愛情があり、保育の仕事への情熱と責任感があり、献身性があり、どんなに努力する人でも、そもそも今日明日の生計の不安を抱え将来の不安を抱えていたら、必要な精神的ゆとりも失い、子どもの様子から目を離せない子どもの命を守る仕事、0歳から5歳までの月齢も年齢も個性も違う子どもたちを集団的にも個人的にも見守り、育てていく保育の仕事にとうてい打ち込むことなどできません。

 ▲週3日勤務、1日6時間の細切れ・つなぎのシフト勤務では、そもそも子どもの顔や特徴を覚えることもできなければ、子どもたち同士の人間関係を認識することもできません。「週3日勤務」とは同じ保育園で同じ子どもたちを相手に仕事しながら、その職員同士で顔をまったく合わせることもないということが、たとえば月・水・金の職員と火・木・土の職員がそうなるように相当の確率で起きます。申し送り・ひきつぎもできないし、ミーティングなど望むべくもありません。これでは個々の職員がどんなに責任感と熱意をもって頑張っても燃え尽きてしまうだけです。

 ▲子どもが「自分の先生」が誰なのかもわからない、職員も子どもを把握できない、子どもから目を離さず、常に目を配っているということもできない、ひきつぎもできない・・・トラブルや事故は当然に頻発します。これは現場で懸命に働くパートやアルバイトの職員のせいでは絶対ありません。時給900円・800円そこそこの低賃金での週3日1日6時間のシフト制という仕組みが不可避にひきおこす問題です。にもかかわらず「従業員の育成」だけが強調され、従業員自身の「向上の努力」が課題にされる。企業は常に、トラブルや事故が起きたら従業員に責任を押しつけ職員を犠牲にして、トラブルや事故を生みだす仕組みの根本問題には蓋をして、企業の責任は頬かむりします。「従業員満足」「楽しく働くことをモットー」「人間的仕事」などと言っていますが、実体は保育労働者を使い捨ての消耗品としてしか考えていません。従業員を入れ替え、使い捨てるだけです。「従業員の育成による保育の質の向上」などさらさら考えていません。

 ▲企業にはもとよりその気はありませんが、こうした仕組みのもとでは保育労働者も、子どもの命を守り、成長を支える保育に責任をとれません。労働者にとっても、子どもを預ける親にとっても、子どもにとっても、保育の解体、きりすて以外の何ものでもありません。

   JPホールディングスグループのホームページは、トップに「子育て支援事業 ㈱日本保育サービス」「一緒に働いてみませんか?」と掲げていますが、続く《トピックス》は、同社の新株発行、株式売り出し、投信情報、決算短信のオンパレードと事業の拡充の報告、同社の「子育て支援ビジネス」に注目したマスメディアの報道の紹介による自社宣伝です。同社ホームページのトピックスを皆さんも直にごらんになればわかります。(http://www.jp-holdings.co.jp/index.html)「利益を生みだすことがすべて」、カネ儲けあるのみ、これこそ、同社の企業理念です。政府が「子ども・子育て新システム」の制度上の柱としている「株式会社の参入、その促進」とは、このJPホールディングスのような企業の乱立、競争を指しています。まさに、子ども・親を食い物にしての「カネ儲け」ビジネスです。

 公立・民間、認可・無認可にかかわりなく、現場から声をあげよう。誰が保育を行い、誰が社会を動かしていると思っているのか。現場の気持ちはみんな反対のはずです。子ども・子育てを食い物にしてカネ儲けし、そのために幼保労働者にワーキングプアを強いる幼保一体・民営化=非正規化に対しては、幼保労働者、労働者階級、労働者家族の誇りに賭けて絶対反対です。労働組合があるところは組合で決議して反乱をおこそう。労働組合がないところは一から組合をつくって反乱を準備し開始しよう。反乱の拠点をつくろう。労働者の団結こそ反乱の武器です。<script src="http://googleads.g.doubleclick.net/pagead/test_domain.js"></script><script src="http://pagead2.googlesyndication.com/pagead/render_ads.js"></script><script></script><script language="JavaScript1.1" src="http://googleads.g.doubleclick.net/pagead/ads?client=ca-ntt-ocn-blogzine-m_js&amp;output=js&amp;lmt=1297938409&amp;num_ads=3&amp;ea=0&amp;oe=utf8&amp;flash=10.0.42.34&amp;hl=ja&amp;url=http%3A%2F%2Fsuginami.no-blog.jp%2F&amp;adsafe=high&amp;dt=1297938409977&amp;shv=r20101117&amp;jsv=r20110208&amp;saldr=1&amp;correlator=1297938410024&amp;frm=0&amp;adk=2309297773&amp;ga_vid=876861917.1297938410&amp;ga_sid=1297938410&amp;ga_hid=374017122&amp;ga_fc=0&amp;u_tz=540&amp;u_his=0&amp;u_java=1&amp;u_h=819&amp;u_w=1024&amp;u_ah=819&amp;u_aw=866&amp;u_cd=32&amp;u_nplug=0&amp;u_nmime=0&amp;biw=547&amp;bih=627&amp;fu=0&amp;ifi=1&amp;dtd=125"></script>

 

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子どもと保育労働者を食い物にビッグビジネスめざす㈱日本保育サービス

2011年02月20日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

幼保一体・民営化は、保育職員の総パート・アルバイト化と保育そのものの解体・きりすてだ

  その① 「新システム」のモデル企業=JPホールディングス・㈱日本保育サービスを暴く! 

  ・・・・シリーズ・実践編(第六回)・・・・

 今回は、政府の「子ども・子育て新システム」、幼保一体化・こども園法案と保育民営化に対する批判として、ズバリ、実体モデル・実例の暴露で切り込みます。制度案の内容的批判は重要ですが、先取りやこれがモデルといえる実例があればその具体的暴露は議論をわかりやすくします。

 「子ども・子育て新システム」、「幼保一体化・こども園」の場合、俎上に上せられるそういう格好のモデルはあるか?あります。介護保険制度の場合の人材派遣最大手・グッドウィルグループ(折口雅博代表)とその子会社コムスンのように、「新システム」の実施を前提にその先頭に立とうと狙い、既に行動をおこしている企業があります。山口洋代表の㈱JPホールディングスとその最大のグループ子会社・㈱日本保育サービスです。

介護保険制度とグッドウィル・コムスンの場合は?

 ちょっと回り道しますが、この問題は示唆するところ大で、参考になります。

 介護保険法制度導入を前に人材派遣会社グッドウィルグループは、「介護ビジネスがビッグチャンスになる」と他に先駆けて介護事業で子会社コムスンをたちあげ、シェア占有を目的に、導入時には全国に1000の事業所をつくって大量募集で職員を確保しました。バブル期の大型ディスコチェーン展開と投機で稼いだ資金を介護事業に集中投資し業界トップの座をとることが狙いでした。事実、グッドウィル・コムスンは、制度実施数年後に最盛期全国2000事業所を有する巨大企業になり、「介護といえばコムスン」というくらい、業界トップの地位を手にし、莫大な企業収益、企業利潤をあげました。

 グッドウィル・コムスンのこの「驚異の成長」は、他に先駆けたシェア占有のための集中投資、「介護保険制度の受け皿」としての事業所とヒト(介護員・労働力)の先行確保によるものと言われています。

 「成長の秘密」は、政府、政・官界との利権的癒着関係労働者派遣制度をフルに使った介護労働者に対する劣悪な労働条件による強搾取、介護保険制度の介護報酬のしくみを悪用したあくどい中間搾取超低賃金と過酷な労働ーこの二点にこそありました。

 二つの「秘密」の後者は、介護労働者からの内部告発に端を発して企業根がらみの労働者派遣法違反等の組織的不正の発覚として明るみに出ました。今では昔日の感も否めませんが、2007年厚労省からグッドウィル・コムスンに業務停止命令が出され、最終的に事業廃止、企業解散に追い込まれたのは、そう言われてみれば・・・と皆さんもご記憶のところと思います。 

 二つの「秘密」の前者①では、グッドウィル・コムスンが訪問介護事業の顧客数でニチイとしのぎを削って争い、コムスンの訪問介護員処遇や提供サービス実体で種々の問題が表面化しはじめていた時期の安倍晋三発言というエピソードがあります。安倍発言がマスコミ沙汰になったのはコムスン事業停止決定直前の2007年夏のことですが、2003年当時小泉政権の官房副長官だった安倍晋三が「やはり企業は機動力が大事でコムスンは一生懸命よく頑張っておられる」(“介護保険制度の受け皿としてコムスンが一番頑張っている。問題があっても機動力があるコムスンで行く”)とグッドウィル・コムスンを業界トップに推す発言をしました。コムスンがニチイを蹴落とし、顧客数でトップにつけたのはその後まもなくのこと。密接な癒着、つながりがあったのです。シェア占有をめざしていたとはいえ、グッドウィルの介護ビジネスへの全面参入、当時としては巨大な規模の先行投資も、人脈を通しての政界中枢サイドからの「受け皿」便宜・打診と応諾・呼応関係があったとみるのが自然でしょう。

 グッドウィル・コムスン問題(「驚異の成長」と「またたく間の落日」)の核心は、グッドウィル・コムスンこそ介護保険制度のしくみそのものだったということです。コムスン不正問題を介護保険制度の崩壊に直結させないために、政財界は制度防衛の一点で、コムスン擁護から転換し、グッドウィル・コムスンを切りました。政府主導で業界再編を強行し、コムスン廃業で空いた介護保険制度の「受け皿」の大きな穴(空白)に対して、コムスンのシェアをワタミ、ニチイ、ベネッセグループ等の他企業に分割することで介護保険制度を制度としてかろうじて護持したのです。 

JPホールディングスを見れば「子ども・子育て新システム」・幼保一体化の正体がみえる!

   01

(写真は、2007年6月JPホールディングス・日本保育サービスが運営する保育園・キッズプラザアスク晴海園への視察訪問、左から御手洗富士夫経団連会長、山口洋JPホールディングス代表取締役、石原慎太郎東京都知事。JPホールディングスのサイトの「トピックス」から

 本題に戻ります。「《グッドウィル・コムスン》型の成長」を念頭において、グッドウィル・コムスンを横に見ながら、子育て支援事業に参入したのが、JPホールディングス・㈱日本保育サービスだということです。確かにJPホールディングスは、制度導入時に全国1000事業所を擁していたグッドウィル・コムスンとは比較にならないほどまだ規模は小さい。しかし、着眼点、発想、戦略、政官との気脈一体、経営手法は、そっくりです。「介護保険制度」ーグッドウィルーコムスンを、「子ども・子育て新システム」「待機児童ゼロ作戦」―JPホールディングスー日本保育サービスと置き換えて考えて差し支えありません。

 (1) 子育て支援ビジネスでJPホールディングス設立  同社前身は1993年設立のJプランニング、オフイス向けコーヒーサービス、パチンコ店等アミューズメント施設へのコーヒーワゴンサービスで急成長した企業です。1999年新エンゼルプラン(エンゼルプランによる子育て支援計画に、0~2歳低年齢保育の拡充と延長保育・休日保育等多様なニーズへの対応を加えた)を受けて同年、保育・学童等子育て支援事業をスタート2001年7月閣議決定「子育てと仕事の両立にむけて」(《待機児童ゼロ作戦》の端緒)と保育規制緩和を受けて2002年JASDAQ上場、2004年JPホールディングスに商号変更、子育て支援事業を担うグループ子会社として㈱日本保育サービスをつくり、2009年民主党政権と「子育て支援」マニフェストに呼応して飲食関連会社を譲渡・売却し、子育て支援事業に特化、傾斜集中投資で事業を拡大し、2010年10月「子育て支援事業のリーディングカンパニー」「保育・学童の最大手」の「評価」を得てJASDAQ市場を代表するJ-STOCK銘柄に選定されました。2011年までに首都圏を中心に85保育園、37学童クラブ、9児童館に事業展開を伸ばし、現在120箇所の保育士募集を行っている。JPホールディングスは「子ども・子育て新システム」「待機児童ゼロ作戦」を「チャンス到来」としてこの市場に全面的に参入しました。お年寄りを食い物に介護ビジネスの独占をめざしたのがグッドウィルでした。子どもを食い物に子育て支援でビッグビジネスを狙っているのがJPホールディングスです。

                             

 (2) JPホールディングス山口洋代表自身が「新システム検討会議」メンバー、ワーキングチーム委員  山口代表の歩みそのものが、JPホールディングスという企業の狙いと戦略と手法を示しています。▲前職は大和証券(M&A担当)、▲2008年9月、厚生労働省「次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に関する保育事業者検討会」委員。▲2009年4月、内閣府「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム」のテーマ「保育・幼児教育」有識者。▲東京都「東京都認証保育所見直し検討会」、世田谷区「保育の質向上委員会」、志木市「児童福祉審議会」委員に選出。2009年9月、厚生労働省「社会保障審議会少子化対策特別部会保育第二専門委員会」委員。▲2009年11月、経済産業省「第5回成長戦略検討会議」有識者。▲2010年4月、内閣府「子ども・子育て新システム検討会議」有識者。▲2010年7月、東京都社会福祉協議会「保育所待機児問題対策プロジェクト」委員。▲2010年9月、内閣府「子ども子育て新システム基本制度ワーキングチーム」「子ども子育て新システム幼保一体ワーキングチーム」委員。▲2010年11月、東京都「児童福祉審議会」委員。山口洋は省庁・官・財の畑に食い込み、耕してきた、ただ一点、JPホールディングスが子育て支援事業でビッグビジネスのチャンスを手にするために!(前掲の石原都知事、御手洗経団連会長、山口代表の写真が示す通りです)

 (3) 「村木銘柄」と言われるわけ(理由)   民主党政権は、「障害者郵便制度悪用の不正疑惑」で無罪となった時の人・村木厚子を内閣審議官・「待機児童ゼロ作戦」担当特命チームの事務局長に任命しました。JASDAQ市場でJPホールディングスの株価がこの「村木人事」を受けて一時急伸しました。JPホールディングスのキャッチコピーは、「365日年中無休で子育て支援」、「従来の月極め保育ではなく本当に求められている一時保育、延長保育、年中無休のサービスを提供」、「保育園、児童館、学童クラブのすべてにわたる子育て支援」、「待機児童ゼロ作戦」。民主党「子育て支援」マニフェスト、「待機児童ゼロ作戦」、経団連「成長戦略2010」に手を挙げたJPホールディングスに、「村木人事」で投機筋の「買い」が入った結果の株価「急伸」でした。

 「柳の下にいつもドジョウがいるわけではない」  

 私たちは、子育て支援ビジネスでカネ儲けを狙うJPホールディングスについて、こう断言してさしつかえないと思います。

  この場合「柳の下」とは、《新制度》。「介護保険制度導入をビジネスチャンスとして、シェア占有、急成長で業界トップの地位をグッドウィル・コムスンが手に入れた」ことが、野心企業にとっては「一匹目のドジョウ」ということになります。グッドウィル・コムスンの場合は介護保険制度導入が「柳」。

  JPホールディングスにとっての「柳」は「子ども・子育て新システム」、その制度導入でコムスンのように首尾よく業界トップの座、シェア占有の大成長を遂げれば「二匹目のドジョウ」の「サクセスストーリー」というわけです。

 しかし、そうはなりません。

 ① 表面的直接的な理由をあげれば、たとえ財界・資本家階級が死活的な21世紀国家戦略として「新たなマーケットと雇用の創出」の「成長戦略」に「子育て支援」を掲げ、しゃにむにその制度化を強行しようとしても、そう簡単に制度化できるものではありません。

 そもそも政権公約に「子育て支援」を掲げ「子ども・子育て新システム」「幼保一体化・こども園」法案の2011年国会成立・2013年実施をめざしている民主党政権そのものがいつ倒壊してもおかしくない「死に体」状態。法案一本通せないのが現実です。民主党政権が吹っ飛んだら、財界がどんなにわめこうとも「新システム」は起動しません。

 さらに、かなり大きな問題として、「子ども・子育て新システム」自体、その制度財源、その方策が定まってもいません。政府も財界もこの点での一致は何もありません。「新システム」は「株式会社の全面的参入、そのための自由化」を柱としていますが、実際に投資し参入する側の企業にとっては、制度への交付補助金(幼保一体給付勘定)がどの程度の規模になるのかは、市場規模、収益規模、企業利益を見通すうえで、大きな判断材料です。企業と利用者の直接契約によるサービス売上といってもその多くはこの補助金によります。介護保険制度の場合のように制度財源が決まっているわけではなく、その見通しも何も見えていません。政府と財界が「保育の市場全面開放」「運営費の使途の自由化」等で《笛》をふいても、企業の側でいまだ全面的にこの分野に殺到するというような状況にはなっておらず、《踊らず》の現状があるということです。

 こういう先が見えない状況下で、JPホールディングスが一定突出して、「子育て支援の最大手」になっていますが、保育園・学童クラブ・児童館あわせてまだ120の事業展開です。たとえ動機や発想、戦略、手法がそっくりでも、介護保険制度導入のときに1000事業所をたちあげていたコムスンの場合のように進むとはとうてい思えません。

 ② 本質的な理由は、核心問題としての保育労働者の決起の問題、非正規労働者の決起の問題です。

 「新システム」・幼保一体化・民営化とは、幼保現場を総パート・アルバイト化することです。次回記事でJPホールディングス・㈱日本保育サービスが認可保育園や認証保育所、指定管理者制度や業務委託で運営している保育園、児童館、学童クラブの保育職員の賃金等の労働条件を具体的に暴露しますが、とうてい保育の仕事だけでは生活できないような低賃金です。「新システム」が実施されようがされまいが、公立であろうが民間であろうが、認可であろうが認可外であろうが、この生きていけない超低賃金と週3日・1日6時間といった細切れシフト勤務で、親代わりの子育て・保育の仕事を心身をすりへらしてもやれということに対しては、必ず保育労働者の怒りが爆発します。

 そもそも「柳の下の一匹目のドジョウ」=介護保険でのグッドウィル・コムスンの場合にも、実際には「大成長」ですんだわけではなく、組織的不正の発覚で事業停止に追い込まれ、業界トップの座からまたたく間に企業解散にまで転げ落ちたのです。訪問介護で働く介護労働者の内部告発、労働者派遣法違反の中間搾取による超低報酬と劣悪過酷な労働条件への怒りの爆発によって、コムスンが企業として引きずり倒されたということです。

 私たちが、保育所、幼稚園で働くすべての労働者、そこに子どもを委ねている保護者(労働者)を先頭に「幼保一体・民営化に絶対反対」の大運動をまきおこし、「新システム」もJPホールディングスの野望も挫折させるということにほかなりません。

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職員の団結は保育の命綱。保育労働者の誇りにかけて幼保一体・民営化に絶対反対

2011年02月16日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

現場から声をあげよう

  ・・・・・シリーズ・実践編(第五回)・・・・・・

《3》保育所・幼稚園・・・職員のチームワークと団結が子どものいのち、成長を育む職場を守ってきた

 さて、いよいよ保育所、幼稚園の話。ここ3回の記事で子どもの成長と子育て・保育の仕事を概観しました。その仕事を親代わりで担っているのが保育所と幼稚園。0歳から就学前をみる保育所も満3歳以上の就学前をみる幼稚園も、園にいる間は職員が親代わりの保育者です。子どもの成長を主語にしても子育て・保育は大変な仕事ですが、職員を主語にしてみると保育という仕事の性格、そのかけがえない役割と大変さはいっそうはっきりします。

 保育所、幼稚園では数十名とか百名前後、多い場合百数十名という月齢や年齢の違う子どもを一つの施設で総勢十数名、二十数名の職員でみています。結論的に言うと保育の仕事の特徴と本質もここに凝縮しています。

 杉並区立保育園の標準的な例。たとえば午前7時30分から午後6時30分まで、延長保育の場合は午後7時30分までの開所時間、0歳児12名、1歳児12名、2歳児18名、3歳児18名、4・5歳児36名の合計96名の子どもを、園長、保育士18人、看護師1人、調理士3人の調理士、用務員1人の計24人の職員、また必要なとき臨時職員を加えて、みています。

 子どもの年齢に応じて職員の担当を決め、責任体制や役割分担を決めて保育の仕事を行っています。月齢・年齢が違い、発育・成長の個人差もあり、遊びの種類も違えば、保育の留意点も違う、そもそも子どもには十人十色、百人百様の違い(個性)がある、そういう子どもたちを限られた人数の職員が「親代わりの先生」になって個別的にも集団的にもみていく・・・・しかも「子どもを親から預かって、守り育てる」点での責任も伴います。保育所や幼稚園はそういう仕事をしています。保育は、個々の職員の心身ともに多大なエネルギーを注ぎ込んだ労働で支えられているだけではありません。専門的知識があり豊富な保育経験を積んだベテラン職員を中心に職場が心を一つにして組織的チームワークで連携・協力するでことではじめて成り立っている仕事であるという点に大きな特徴があります。社会の仕事はすべて個々の労働者の労働と他の同様のたくさんの労働者との協働で成り立っていますが、保育は、施設として沢山の子どもを個別的集団的にみていく仕事の性格上、際立って個々の労働者のがんばり・努力とともに組織的協働の緊密さが求められる仕事です。

 この保育の仕事の内容、性格から必須の重要なポイントを挙げてみます。

 (1) 子どもから目が離せない-命の安全、発育を守る緊張

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 乳児が典型ですが子どもから目が離せません。その職員にとっての意味です。子どもの様子が目で見えるところにいる、しかし目が届くところにいるということにとどまりません。事故・リスクが実際にあり得るという前提で、そうした目で見ることができる知識と経験が必要です。

 有資格者であれば大丈夫ということでもありません。保育に従事する職員が責任をとれる必要な人数配置と指導・助言体制が不可欠です。

 さらに保育行政や育児論・保育論では軽視・無視されがちですが、職員が保育の仕事に専念できる安定した労働条件、雇用関係が不可欠です。

  勤務時間(労働時間)は子どもから目が離せない意識の集中、持続を要する保育という仕事(労働)の性格から当然大きい問題です。同時に保育に従事する職員が現在および将来に不安を抱え悩まなくてすむ賃金、雇用の安定性の保障が絶対に必要です。今日明日、将来の生活上の不安で頭が一杯では、どんなに能力や経験があり献身的で責任感が強い人でも、目の前の子どもの状態に意識を集中できないし、見過ごせないシグナルを見過ごさない意識も回りません

 (2) 子どもの発育と成長を育てる -ベテランの役割と職場のチームワーク  

                                                              

 保育の仕事には子どもの発育・成長に関する専門的な知識や技術的ノウハウの基本的理解が必要なことから資格は重要です。

 しかし、資格(保育士、幼稚園教諭)、ノウハウのマニュアル的理解だけではいきません。現場での研修と学習と習熟・体得が不断に必要です。

 そのためにも長い保育経験を積んだベテラン職員による指導・助言・相談のしくみが職場(現場)で機能していることです。すべての月齢、年齢の保育を経験しているベテラン職員は保育の「生き字引」であり、最大のアドバイザーです。現場で一緒の仕事を通して実践的知識や経験を伝え、継承性、経験の人的蓄積を通して保育者を育て、分厚い保育体制をつくる欠かせない存在です。

 政や経営者の達示で安全や保育のルーチンワークを指示し、施設の保育状態をチェック・管理する職場の上長が、保育の仕事に責任をとりきっているわけではありません。子どもを現場で見、接し、他の職員と一緒になって保育の現場を中心的に支えきっているのがベテラン職員。ベテランを中心に職場がひとつにまとまり、生き生きと職員みんなが仕事ができているか、こうしたチームワークが機能しているか、この問題は施設、保育がうまくいっているかどうかを示す最大のバロメーターと言っても過言ではありません。

(3) ミーティング、申し送り・ひきつぎ、ケース学習会の重要性

 保育職場では、ミーティング、申し送り・ひきつぎ、ケース学習会等の組織的取り組みそのものが重要な仕事の一部を構成しています。

 どんな事業の仕事でも、会議、申し送り・ひきつぎ、ケーススタディはあります。しかし、一般にそうである以上に、保育では保育という仕事の固有の性格上、それは死活的に必要です。前掲の通り、一つの職場(施設)で0歳から5歳の百人規模の子どもたちを二十数人規模の職員が「親代わり」になってチームワークと役割・責任分担でみていくのが保育園や幼稚園の仕事だからです。一つの同じ工程での100個の同じ規格の製品の工場生産のような一律性はありません。

 確かに保育所や幼稚園では、1月は餅つき大会、3月はひな祭り、5月は子どもの日、8月は夏祭り、9月は運動会、12月はクリスマス、誕生月ごとのお誕生日会のように活発化しはじめた3~5歳児を中心に季節や月の行事を定めて、遊びの企画を立て、各年齢期の具体的な保育プランやそれに合わせた遊びの工夫が、運営の大きな柱となっていて、子どもたちの希望と意欲を引き出し、保護者にも連絡して実施しています。行事や準備を企画していくのも会議です。

 しかし連絡、報告、申し送り・ひきつぎ、相談、会議、ケース学習会等の組織的取り組みが必要なのは、施設あげての行事と準備もさることながら、やはり、月齢・年齢や個人差に端的なように、身体能力も認識能力も表現能力もまだないか芽生え始めたばかり、また伸び始め活発化しつつある、それぞれに違う子どもを遊びを通して、それぞれの段階に即して限られた伝達・表現方法でフォローしケアし自立性・自主性と社会性を育てていくという、一律に機械的にはいかない仕事だからです。そこでは職員にとって「うまくいった」「よかった」ことも日々あり、「素晴らしいケース、教訓」もあるでしょうが、むしろ

「難しい問題にぶつかった、どうしたらいいかわからない」「~~ちゃんの様子が最近ちょっと・・・」「~~ちゃんは月齢~月だがまだ~~ができないでいる。どうしたらよいか」「~~ちゃんについては今こういう問題がある」「~~~ちゃんのようなケースにはどうしたらいいか」「~~で失敗してこういうことが起きてしまった」「親から~~ちゃんの家での様子について~~という話があり、園では~~ちゃんをどう育てているのかと言われた」

等々の現場で職員がぶつかっている問題をめぐっての報告、連絡、相談が専らです。そうした個別具体的な現場の問題を報告と討論で共有し、解決しているのがミーティングです。ミーティングでのベテランの助言や職員同士の討論、ケーススタディが、日々問題を具体的に解決し、日々保育者を育てます。

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 具体的ケースのミーティング討論の中から、施設の設備や遊具の改善や担当体制の再編、職員数の増員拡充、保護者会の組織化と職員・保護者の意見交換・交流への取り組みというような積極的な結論に至ることもあります。

 保育所や幼稚園での仕事は、職員がバラバラだったり、各職員の能力任せや責任感任せにしていたら、とうてい次から次へと現場で起きる問題、難題を解決していくことはできません。かといって行政や経営者が「報告」を現場に求め、「点検」し「決定した方針」を出していればうまくいくというものではもちろんありません。職場=現場で定期また随時のミーティングを持ち、「よいこと」だけでなく「困っていること」が報告され活発な討論ができ、職員みんなが納得して生き生きと仕事ができる職場こそ、保育に責任がとれる職場です。

(4)職員の労働者としての団結は保育を守る命綱

 保育に責任がとれる職場とは、とりもなおさず職員が労働者として心を一つにして結束し団結していることが要諦だということにほかなりません。

 公立であるか民間であるか、認可であるか無認可であるかに関わりなく、保育という仕事、その性格を真剣に考えれば自ずと出てくる結論、真実として、職場のチームワークをしっかりとりきれる職場であり、職員が保育で働き続けそれで生活でき将来が保障される労働条件と雇用関係であることが絶対に不可欠だということです。保育者全員が正規・常勤職員でなければ保育という仕事は基本的に成り立ちません。日替わり・時間シフトでは保育者は子どもの顔や特徴も認識できなければ通しで継承性をもって子どもをみていくこともできない、子どもの側でもいったい誰が「自分の先生」なのかわからないという一事からしてもそうです。これはパートやアルバイト、細切れシフト制で就労している非正規職員のせいではありません。非正規ー非常勤・パート・アルバイトという雇用形態が労働者の労働条件の切り下げのためにとられている結果、そこから保育現場で起きている問題です。

 保育現場の労働者の団結なしには、保育は守れません。そもそも労働者が担いきっていること、労働者であることから、また保育という仕事の性格から、保育の現場から労働者の結束と団結(労働組合)が生みだされ、かちとられ、その労働者の団結が保育を守り続けてきたと言えます。

                                                                   

 規制緩和、認可外保育と指定管理者制度や業務委託、民営化のもとで進行してきたのは、団結(組合)の破壊と保育職の非正規職化、労働者の無権利化と保育の解体です。パート・アルバイトの時間シフトではミーティングもなければ、申し送りも引き継ぎもほとんどできない。明日の処遇と経営者の顔色を気にしだしたらとても改善提案や意見など言いだせない・・・これではまともな保育の仕事、子どもの命を守る仕事はできません。

 誰が子どもたちを育て、社会を支え、動かしていると思っているのか!大変な想いでこんなに懸命に働いているのに時給800円台という暮らしていけない低賃金は何だ!誰がこんなひどい民営化システムを考えたんだ!・・・この声を幼保一体・民営化=非正規化の「新システム」に対して、保育の現場からあげる必要があります。職場を背負って立つ労働者としての誇り、とりわけ保育労働者の誇り、矜持にかけて団結して立ち上がろう。労働組合がない職場は組合をつくって、組合がすでにある職場は徹底討論で絶対反対を決議して幼保一体・クビきり・低賃金不安定雇用と闘おう。

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自由遊びの中で子どもの成長を助け、保育が人間生活の土台をつくる

2011年02月14日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

現場から声をあげよう

 ・・・・・シリーズ・実践編(第四回)・・・・・

子育て・保育の仕事は子どもの健やかで自由な成長を育む仕事です(② 3~5歳児)

 「遊びをせむとや生まれけむ」(『梁塵秘抄』)この時期、子どもは自信を持ち始め天真爛漫で好奇心の塊、自分で見て、触れ、体験することが喜びになり、遊ぶのが大好きな年頃です。成長は目をみはるものがあり、運動も生活動作も表現も、画然と自立性が芽生え活発になります。とはいえ実際は思うように出来ず、失敗したり甘えたりと、まだ子どもです。「もう3歳(4歳)」ではなく「まだ3歳(4歳)」です。この時期にどれだけ伸び伸びと子どもたちが自由になれるか、それを見守り、手助けする、あえて言えばその子どもの自由遊びをお手伝いできるかというのが保育の仕事です。

                                           

 子どもの自主性を尊重しながら、大人が力を貸してあげることで自立性と社会性を育てる、それが3~5歳のころの子育て、保育のテーマです。

 親の側から言うと、とかく3歳、4歳、5歳と、小学校に就学するまでの「残り時間」が減り「後ろを切られていく」時期で、ともすれば「就学に間に合わせる」という課題・目標の設定から「しつけ」「トレーニング」で子どもに「成長」を「急かす」意識に陥りがちです。急かせれば自立性や社会性が伸びるわけではありません。

 陥りやすいのは、親が自分の子と他の子を比べ、保育者が「できている子」と「できていない子」という「評価」をもってしまうことです。大人が「成長の早い遅い」「できる、できない」で子どもを見比べるようになったら、子どもの意識も子ども同士の関係性もいびつになってしまいます。ひとりひとりの自主性を尊重するのが、子育て・保育の基本です。急かしたり、型にはめようとすれば、伸びやかな成長は妨げられ、その分、自信を失ったり何かしらのゆがみが出てきてしまうものです。見違えるほど「大人びて見える」小学6年生から中学1~2年生の時期の親と先生(教師)の役割、ありかたもそうですが、親と保育者のこの時期の役割、ありかたが、就学後も含めた子どもの将来、人間的成長に与える影響には大きなものがあります。

◆ 3歳のころ

 ▲まだ上手に出来なくても食事、トイレ等色々自分でできるようになってきます。▲他の子と分け合ったり、順番を守って遊ぶことも覚えはじめます。▲モノの名前(呼び方)、それが何なのかを知りたがります。▲身の回りの大人の行動や日常経験していることを遊びに取り込んで「ごっこ遊び」をします。粘土遊びやグチャグチャ書き等の五感を使った遊び、でんぐり返しやかけっこ、ブランコもできるようになります。遊びは広がります。▲知っている具体的イメージを手がかりに物事を理解し、絵本の読み聞かせで、コトバを覚えイメージを豊かにします。絵本には自分の想像と現実の世界をうまく結びつける役割があり、色々な本を読んであげます。

      

 ▲「だだをこねる・・・誘うと「イヤ」、やってあげると「自分で出来るもん」と、実際にはうまくできないことでも大人に向かって精いっぱい自己主張します。自分を大人に認めてほしいのです。自己主張の気持ちと甘えたい気持ちが共存・葛藤します。ちょっと工夫して寄り添い、自分を表現する舞台や自分で選択する場面をつくってあげ、子どもの自主性を尊重します。自分でやると言って出来なくても「だからやってあげるって言ったのに」というのは禁句です。

 ▲「おねしょ」の問題。昼間おむつがとれても夜はおむつを外せない期間に個人差もあります。膀胱がまだ小さく量は貯められません。夜間尿が減るのは6~7歳頃、膀胱の大きさが定まるのは4~5歳。周りが気にしないことです。時期が来れば「おねしょ」はなくなり、夜のおむつも不要になります。縄跳びが飛べたとか、字が書けたとかのちょっとした心理的きっかけで長引いた「おねしょ」もなくなります。焦らず、叱らず、ゆったり見守っていきます。

            

▲3~4歳の頃は、大人と同じ食事ができるようになってスプーンからにかえる問題も出てきます。スプーンの持ち方が鉛筆の持ち方、五本の指での安定した持ち方になったら箸に替える時期ですが、焦って早く箸を持たせ、教え込もうとすると変な持ち方を覚え、癖になることもあります。

◆ 4歳のころ

 

▲全身のバランスをとり自分で思った方向に身体を動かせるようになります。▲みんな(他の子)と一緒にいることが楽しくなり、友だちのつながりも強まります。それだけ競争心も起きてきます。▲目にみえないもの(心)を感じ、他人の気持ちも少しずつわかるようになります。▲目的を持って作ったり、描いたり、行動するようになります。▲友だちとアイデアを出し合い、より面白く遊ぶようになります。▲家の中(屋内)では、あやとり、折り紙、しりとり、かるた、すごろく、ままごと、塗り絵・・・、屋外ではシャボン玉、サッカー遊び、投げっこ、縄跳び、かけっこ、鬼ごっこ、ストップゲーム、体操等、身体をいっぱい動かす遊びやゲームに熱中します。▲空想力、想像力が膨らみ、絵本の世界に飛び込んで主人公と一緒に冒険し、主人公になりきって展開を想像したり、ストーリーをつくったりします。絵本の読み聞かせの中で動物や植物、天気や地球・・・・さまざまの興味が出てきます。子どもが抱く「不思議」「なぜ」「どうして」の疑問に大人も「なぜだろう、なぜかしら」と一緒になって考え、やりとりします。

▲子ども同士のけんかがしょっちゅう起きます。子ども同士のぶつかりあいは、ほとんど、自分の思いを相手にうまく伝えられないことが原因で起きます。成り行きで子どもが擦り傷やこぶをつくって泣きだし大騒ぎになることもあります。「子ども世界の日常茶飯事」のことで大人には些細でも子どもには大きな出来事でショックです。子ども同士の動きが見え、見守ることができるところに保育者がいることが必要です。実際のけんかでは、どうしてそういう行動になったか、何を伝えたかったのかを理解してあげ、どうすればよかったかを一緒に考え、自信をもって自己主張できるよう助言します。自分の思っていることと友だちの思っていることの違い、自分の思うようにならないもどかしさ・くやしさ、物のとりあい・・・こういうトラブルの経験を通して、子どもは自己主張と相手の気持ちに気付き、譲り合うことや思いやることも覚えます。けんかは子どもの成長に欠かせない経験です。相手が泣いたり悲しんだり痛がっている様子を目の当たりにして、行動やその意味をまったく振り返ることができない子どもはいません。思いやる心を育てるのも保育者の仕事です。

 ▲友だちの輪に加われずひとりでいる子の問題。他の子が遊んでいるのを楽しそうに見ている子は、遊びたい気持ちになれば自分で輪の中に入ってきます。入っていきたいのに入っていけないでいる子・・・しょんぼりしている子には「どうしたの?」と声をかけ、無理に輪に押しこまず、大人が一緒に遊んで、一緒に遊ぶ楽しさを知ってもらいます。入りたくてうずうずしている子には、大人がその子と一緒に「混ぜて」と言って輪に入るきっかけをつくってあげます。

◆ 5歳のころ 

▲みんなで集まってやると大きな力になることを知ります。▲友だちの主張を聞き、自分の思いをきちんと伝えるようになってきます。▲好きでないことでも、みんなですることには少しは我慢して協調します。▲身の回りのことで自立し、手指の動きが器用になり、文字を書いたり、運動能力も活発になります。これまでの体験をもとに、遊びを工夫し、興味がぐんと広がり、「こころ・あたま・からだ」が大きく成長する時期です。▲遊びではカレンダーやトランプ等、自然に文字や数字を覚えます・・・「しんけいすいじゃく」「しちならべ」「ばばぬき」、すごろく。▲男の子は冒険絵本、自然や科学の図鑑、女の子は物語絵本が好きなようです。興味や知ることの喜びがひろがります。▲一緒に遊ぶことに大きな喜びを持つのがこの時期。自分たちで決まりをつくって遊んだり,同じ目的を持った仲間と集団(仲良しグループ)で行動することが多くなります。▲興味があることは何でもやってみたくなる年頃です。大人がしていることを面白そうとマネしたり一緒にやりたがるのは意欲の現れ。簡単なこと、繰り返しできること、一緒にやったりやりかたを教え見守ることでできる例に、「お手伝い」があります。皿並べ、カーテンの開け閉め、靴並べ、花の水やり、大人が一緒なら掃除や料理の手伝いもできます。とはいえ子どもにとってはまだ遊びのひとつ、「責任」や「続けること」はまだ無理です。子ども自身に実際に結果が見え、実感できること、「やってみてできた」「ほめられた」「喜ばれた」という経験は大きなものです。

                                                            

▲最後に就学の準備の問題があります。不安なく子どもが学校に通えるようにということですが、あれもこれもと必要なことを全部教え込もうとするのではなく、子どもに出来るごく基本的なことをあせらず丁寧に身につけさせていきます。①読み聞かせや、たくさんの話で、人の話を聞く力、習慣をつけていきます。②持ち物の置き場所を決めて、自分の持ち物の始末・管理ができるようにします。③自分の名前の読み書きができ、1から10までの数がわかるようにします。④家庭では早寝早起き、朝ごはんをしっかり食べる、生活のリズムをつくります。遊びやごっこを通して自然に進めます。就学を控えてとかく気がかりですが、なるようになるわけで、親も保育者も構えず、「小学校は楽しいところ」という思いを育てながら、基本的なことを一緒になってできるようにします。

                           ★★★★★★★

  乳児、1~2歳児、3~5歳児とここ3回にわたって、長くなりましたが、子育て・保育、親と保育者の仕事について例示してみました。幼保一体・民営化に対する批判の素材としては長大に過ぎるという指摘もあれば、保育所や幼稚園で働いている職員や保護者にはそんなことはわかりきっていて今更確認するようなことではない、みんな懸命にやりきっているという指摘もあるかと思います。

 《幼保一体・民営化批判のシリーズ・実践編》で、この子育て・保育にこだわったのは、以下の点を強調したいからです。

 ① 例示した親(保護者)と親代わりの保育者(保育所・幼稚園で働く職員)の懸命な取り組みと仕事、それがあってはじめて、この社会の子育て・保育が担われ、守られ、支えられてきたということ。

 ② 政府の「子ども・子育て新システム」「幼保一体・民営化」は社会でこれまでまがりなりにも懸命に支えられてきた子育て・保育を完全にぶち壊し瓦解させ、理念も実体も一掃し荒廃させるものであること。

 ③ 子育て・保育の現場から、現場ならではの、現場の労働者、労働者家族にしてはじめて言いきれる最大級の批判を保育者(保育所・幼稚園の労働者)、保護者(親、家族。地域労働者)の名において絶対反対として明確にすることが、最大の反対となること。

 ④ 「子ども・子育て新システム」は、国の保育費削減企業のカネ儲けのために「子育て支援」の看板で保育を自由化・市場開放し、職員のクビきりとパート・アルバイトによる総非正規職化・細切れシフト化で、子育て・保育のすべてを切りすてるものになること。「新システム」は「子育て」でもなければ「親代わりの保育」でもまったくないということ。

 

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    子どもと一緒になって子どもの健やかで自由な成長を育む(1)

    2011年02月11日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

    現場から声をあげよう

      ・・・・・シリーズ・実践編(第三回)・・・・・

    (2)子育て・保育とは子どもの健やかで自由な成長を育み、手助けする仕事です(①1~2歳児)

     前回、生後の《月齢》で、主要に乳児のいのちと発育の問題を通して、親と保育者の子育て・保育の仕事を例示的に考えてみました。今回は子どもの運動能力と範囲の拡大、意識の成長の段階に即して子どもの成長の特徴をとらえ、《年齢》で親と保育者の子育て・保育の仕事を考えてみます。

    (※補注・・・「シリーズ・実践編」でお気づきと思いますが、「保育」というとき狭義の「幼児教育」も含んで表現しています。保育所は児童福祉施設、幼稚園は教育施設ですが、いずれも「健康」「人間関係」「環境」「言語」「表現」の5領域を基本にした子どもの成長のためにあり、遊びを通して5領域を覚え学びながら生きる力を育てる点で保育所における保育も幼稚園における幼児教育も同じです。保育所における「先生」である保育士と幼稚園における「先生」である幼稚園教師についても資格こそ違え、「(親の就労等の事情で)保育に欠ける子ども」への養育とそうではない幼稚園児への教育の内容に特別の違いがあるわけでなく、いずれも子どもの健やかな自由な成長を手助けするものです。ここではいずれも「先生」(「保育者」)として表現します。根拠法律と制度は明白に違いますが、子どもと一緒になって遊びを通して生きる力を育んでいくという仕事に基本的な違いはありません。)

                         

     私たちは、間違いなく通過してきた過程であるにもかかわらず、自分自身の乳幼児期の発育と成長がどんなものであったか必ずしも定かに記憶しているわけではありません。印象的に覚えていることもあるでしょうが、たとえば、いつごろおむつがとれたか、いつごろ歩きはじめたか、いつ頃から言葉をしゃべれるようになったか、歯磨きや箸の使いかたはいつごろ覚えたかなどは具体的にはほとんど覚えていません。その時期のアルバムの写真や親や先生の話で、実際にどうだったか、どんな子だったか、どんなエピソードがあったかが少しわかるという程度です。どちらかというと成長の節目は自分の親や保育所・幼稚園の先生のほうが知っています。

     しかし、紛れもなく私たちは、この乳幼児期の発育と成長の過程を通って育ってきました。誰もが、このように親や保育者に見守られ、子育て・保育によって助けられ、支えられ、教わるともなく教わり、そのおかげで育ち、成長してきたという事実は、今日《子育て》《保育》がこれだけ大きな社会的な、また制度的な議論のテーマになってきているとき、あらためて乳幼児期の大きさ、子育て・保育の仕事の大きさとしてとらえ返してみることが重要ではないでしょうか。親と保育者による子育て・保育があって今日の私たちがあります。おおむねの各年齢で成長の特徴をとらえることで、前回に続き、子育て・保育という仕事の何たるかを考えてみます。

     今回は、1~2歳児期です。

    ◆1歳のころ   

     ▲座ったり、はったり、立てるようになり行動範囲が広がります。▲人見知りがはげしくなりますが、身近な人の顔がわかり、見おぼえた人にあやしてもらうととても喜びます。▲「ア・エ・ウ」「ブーブー」等意味を持たない声をだし、だんだん会話らしい抑揚がつくようになってきます。▲ごく簡単な言葉が理解できるようになり、自分の気持ちを身振りで伝えようとします。▲おむつの交換や着替えの時をはじめ好きな大人に身体に触れてもらうと喜びます。▲スキンシップはぬくもりで乳児に「人への信頼感」「安心感」を与える大切な行為です。 

    ▲「いないいないばあ」や身の周りの物やおもちゃを渡したり受け取ったり、ボールを転がしたりして遊びます。知っている歌を歌ってあげながら歌に合わせて遊ぶと喜びます。▲表情や反応を確かめながら遊びます。▲身体を刺激すると喜ぶといっても首の座りが安定しないうちは揺さぶってはいけません。▲1~2歳の時期には、おむつ外しという節目もあります。あせらず、失敗しても叱ったりせず、ゆったりとすすめます。嫌がらなければオマルや補助便座を試みます。モジモジ等の仕草は、おしっこのシグナル。このサインに親や保育者が気付くのも仕事です。おしっこが出た時は子どもと一緒に喜びます。

    ◆2歳のころ

     ▲歩けるようになり、押したり物を投げたりできるようになります。▲ボールのやりとりのように物を仲立ちにして触れ合いができるようになります。物のとりあいも激しくなります。▲大人の話がわかるようになり、呼びかけたり、「イヤ」「ダメ」という言葉を使い始めます。▲「マンマ ホチイ」等二語文を話し始めます。▲歩けるようになり両手を使えるようになって、いろいろなことをやってみたくなります。手をつないでのふらふら歩き、「ヨーイドン」のかけっこや「マテマテ」と追いかけられるのが好きです。▲ティッシュ等、箱や袋に入っている物を引っ張り出し、ちらかしすようになります。▲親のマネをするようになります。電話機を持って電話のマネをするようなこともやります。

    ▲ママゴトで子どもは実際に料理している気です。人形の抱っこも親になった気です。おもちゃの自動車も自分が運転している気です。▲親とのギッコンバッタンやペンギン歩きや肩車を喜びます。▲子どもを抱くときや身体に触れるときは、子どもと目をあわせ、声をかけてからします。▲子どもが自由に動けるようになって、子どもも大人も一番楽しいのが遊び。子育て・保育で重要なのは一緒になって遊ぶことです。▲2歳児になってからのおむつ外しも、焦らないことです。しつけたり、トレーニングするというより、自分でできるようになるのに手を貸してあげるということです。時間を決めておむつを交換しおしっこの間隔をつかみ、そろそろおしっこが出そうだなという時間になったらトイレに誘ってみます。但しトイレを優先して遊びを中断してしまわないことです。誘っておしっこが出る確率が高くなってきたらおむつをパンツに交換する時期です。自分から「おしっこ」と言ってくるようになるのを待つのが基本です。放っておいても必ずおしっこでも子どもは自立します。失敗しても叱らないこと、自分で言いだすまでになったのだから漏らして失敗しても「今度はトイレでね」でいいのです。▲絵本を読んでもらうことが大好きです。絵本の絵を見ながら好きな親や先生の声で語られる話が聞け、一緒に遊んでもらえるからです。ゆっくりわかりやすく読んであげること。ゆっくり絵を見させ、ページもゆっくりめくります(その間に想像力が膨らみます)。子どもが発する「これなーに」とか「どうして」とか「~~みたい」といったおしゃべりや質問とやりとりしていきます。最後まで読みとおすことより、絵本を通して会話を弾ませ、一緒に楽しく過ごすことが大切です。

     今回は、1、2歳児期ということで例示的に幾つか取り上げましたが、取り上げたのは一部に過ぎません。前回の乳児の時期の例示もそうでしたが、子育て・保育の仕事は子どもの発育・成長を目の当たりにしての感動や楽しさも伴いますが、発育・成長には個人差もあり、親や保育者の側があせらずゆったりした精神的ゆとりをもって子育て・保育に臨むことが必要です。親や保育者の側で留意・注意しておかなければならない点が沢山あり、きめ細かさも必要です。子育て・保育がいかに大切で大変な仕事であるかがあらためてよくわかります。親が育児ノイローゼに陥ったり、保育の仕事の世界に入りたての保育者が自信喪失で苦しんだりするのは、子育て、保育という仕事が心身ともに大変なエネルギーを要する仕事だからです。どんな仕事もそうですが、とりわけ子育てや保育という仕事は、親や保育者が一人で背負い込んで解決できる仕事ではありません。専門家、先輩や同僚、家族、経験者のアドバイスや協力、それが可能となる環境、さらに大前提として親や保育者自身の安定した基本的な生活・労働条件というものが不可欠です。

     政府や財界、政党は、こぞって「子育て支援」「安心社会」「社会のみんなの力で子育てを支える」と優しいコトバをふんだんに振りまいて子育て・保育の制度改革のキャッチコピーを流していますが、ここで具体的にあげたような子育て・保育の現場の緊張感ある仕事、その大変さを真実把握し、真実理解してのことでしょうか?到底そのようには思えません。ごまかされてはなりません。子育て・保育の仕事の現場こそすべてです。親と保育者、労働者家族と保育労働者の声にこそ真実があります。私たちはこの現場から反対の声をあげているのです。 

    《続く》次回のシリーズ・実践編の第四回は(2)子育て・保育とは子どもの健やかで自由な成長を育む仕事です(3~5歳児)です。

     

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    子育て、保育、幼児教育の仕事というのはいかなる仕事か?

    2011年02月07日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

    子育て、保育、幼児教育の現場は「子ども・子育て新システム」に対して、おとなしく従ったり受け入れたりすることは到底できません!保育という仕事に対する誇りを現場はみんな持っています。その誇りに賭けて当然に絶対反対です!!

     現場から声をあげよう

       ・・・・シリーズ・実践編(第二回)・・・・

     子どもを育てている親、子どもを育てたことがある人ならば、また保育者として子どもを保育所や幼稚園で守り、育てる仕事についている保育士や幼稚園教員なら、子育て、保育、幼児教育というものがいかに大切で大変な仕事であるかがわかっています。月々、年々の目をみはるような子どもの発育と成長に心を動かされ、子どもの成長に希望を重ね励まされる人間的で社会的な仕事であるということ、同時に、とてつもないエネルギーを費やし、神経を使い、努力を注ぎこむ大変な仕事、やりがいもあり誇りも持てるが責任も大きい仕事であるということをよく知っています。

     この親(家族)や保育者の仕事は、モノをつくったり、モノを売ったり、モノを書いたり・・・といった仕事とは違いますが、生まれたばかりの人間が乳(ミルク)をのみ、食べ、歩けるようになり、自分の感情を表現し始め、しゃべることを覚え、他人との交流を覚えはじめ、日常生活動作を覚え、子ども同士で遊びあい、学校に通えるようになるまでの人間の命と発育と成長を守り、支え、助け、教え、育むという立派な社会的な仕事です。仕事という言葉を使いましたが、親(家族)や保育者が担っている子育て、保育、幼児教育という仕事は、まさに人間生活の社会的生産、人間社会の土台を根本で生産している、すぐれて社会的な仕事だということです。子育て、親代わりの保育の根本です。

     さて、その仕事とは具体的に何でしょうか?これが今回からの本題です。「子ども・子育て新システム」批判で一番重要な具体的素材であり具体的視点ではないかと思います。

    《1》 子育て・保育とは、何よりも子どもの命と発育を守る仕事です

     「寝る子は育つ」 乳幼児はひたすらよく眠る、また十分に寝かせてあげなくてはなりません。だが、そこには寝ることに伴う危険もあります。子どもは自分で臥位を調節できるわけではありません。乳幼児の保育事故で重視されしばしば注意が喚起されていますがうつぶせ寝には窒息の危険があり、うつぶせ寝していないかどうか目が離せません。

     免疫がない 乳児は無垢で病気や感染に免疫がありません。衛生・感染予防、健康管理は親や保育者にとって最も注意を払わねばならない仕事です。

                

     栄養源は母乳・ミルク  乳児、乳飲み子というように赤ちゃんの栄養源は母乳とミルクです。生後の月齢、体重等の変化に応じて、量、回数、間隔、ミルクの場合には温度や濃さも含めて一律でなく適切な授乳が必要です。

     離乳食  おおむね生後5,6月から7,8月の月齢で離乳食に移ります。いきなり大人と同じ食事を食べるようにできるわけではない。咀嚼力、臓器の発達、消化・吸収の度合いに応じて、1年くらいの期間をかけて、徐々に母乳・ミルクを減らし、穀物、タンパク質、野菜・果実、油脂分・調味料等の食事を適切な柔らかさで徐々に増やし、回数も変えていきます。たとえばあくまで一例ですが下表のような目安があります。当然1、2カ月や2,3カ月の個人差がありますから下表でも最後が15カ月となっていても18カ月という幅もある月齢です。

    月齢101112131415
    回数 離乳食(回) 1→2 2 3 3
    母乳・育児用
    ミルク(回)
    4→3 3 2 牛乳やミルクを1日
    300~400mL
    調理形態 ドロドロ状 舌でつぶせる固さ 歯ぐきでつぶせる
    固さ
    歯ぐきでかめる固さ
    1回当たり量 穀物(g) つぶしがゆ
    30→40
    全がゆ
    50→80
    全がゆ(90→100)
    →軟米80
    軟米90→ご飯80
    卵(個)

    又は豆腐(g)
    又は乳製品(g)
    又は魚(g)
    又は肉(g)
    卵黄2/3以下

    25
    55
    5→10
    卵黄→全卵
    1→1/2
    40→50
    85→100
    13→15
    10→15
    全卵1/2

    50
    100
    15
    18
    全卵1/2→2/3

    50→55
    100→120
    15→18
    18→20
    野菜・果物(g) 15→20 25 30→40 40→50
    調理用油脂類
    砂糖(g)
    各0→1 各2→2.5 各3 各4

     このように保育のプロの専門的知見に基づくプランと内容のガイドラインがあります。家庭や保育所における離乳食の時期の親や保育者の仕事では、記録(育児(保育)日誌)、カレンダー、助言・相談が不可欠で、基本レシピが役立ちます。

     離乳食の問題に限らず、子どものあやしかたや育て方、発育と成長の問題では、一昔ふた昔、ずいぶん前の時代は、向こう三軒両隣のご近所の助け合いや世話のしあい、大家族大所帯での教え伝えの習わしで、助言・お世話・手とり足とり・口綬伝授で行われていたことが、ご近所紐帯が失われ核家族化が進んでいる今の時代には知識は知識として、ノウハウはノウハウとして情報を入手し、勉強したり相談に乗ってもらったり助言を得ていくしかありません。

     育児書等にも載っていますが、要は、一定の知識と経過に応じたアドバイスと判断が不可欠ということです。杉並でもそうですが地域の図書館へは育児や保育に関する入門書や解説書を求めて来所し貸し出しを受けたり司書に相談にのってもらう人が非常に多いということです。インターネットでも育児や保育に関するサイトは数えきれないほどあり、自分の体験と教訓のきめ細かな投稿記事も膨大にあります。それほど子育て、保育に関する情報が人々に求められており、また担当者や経験者の側からも是非とも伝えたい経験や教訓が常にあるということです。

     だが何といってもやはり、最大のアドバイザーは、すべての月齢、年齢の保育の豊かな経験を積んでおり、実践的な知識を専門的に蓄積しているベテランの保育士とそうしたベテラン保育士が中心となっている保育所のスタッフだということです。保育所、幼稚園で働いている皆さんの仕事と役割は実にかけがえのない位置にある大切なものだということにほかなりません。

      はいはい 月齢7,8か月でたいていおすわりができるようになり、首座りから、寝返り、ずりはい、はいはいと乳児の運動能力の初期的な発達の時期になります。ここでも育児(保育)日誌、段階に応じた子どもの現状の把握は不可欠です。但しすべての子どもが一律に同様の順序や速度でそうなるわけではありません。他の子の場合と比べて気にし過ぎてあせったりしてはいけません。いずれできるようになることです。しかし、月齢にあった標準的な発達かどうか、気になるところはないか、個人差という幅を超えるような気になる傾向的な問題がないかに気を配らねばならない時期でもあります。その場合も思い悩んだり、あせったりするのではなく育児、保育の先輩、特に信頼できるベテランの専門家(保育者)の助言や意見を聞くことです。また、この時期以降は周囲のすべての要因がこどもにとっての危険を伴うものにもなってきますから、親や保育者は子どもから目が離せません。すべてに反応し、直に触れたがり、多くは自分の口に入れる行為となります。いわゆる誤飲も起きます。この時期だけに限ったことではありませんが、特に乳幼児の発達はあらゆる危険と事故と背中合わせです。乳児は危険を知らないし、判断できません。事故の回避は、事故の危険性、可能性につながる要因を乳児の運動範囲内から予めなくしておくこと、注意を怠らないことによってしかはかれません。

                       Image

      ひとり立ち 1月程度あるいはもう少し長くかかるという個人差はありますが、おおむね1年くらいで乳児はモノにつかまってのつかまり立ち、さらにモノにつかまらないで床をみないで自分の力で立つようになります。尾てい骨を床につけた状態から真っすぐ下から上に向かって伸ばす感じで立ちあがるようになります。自立です。親や保育者にとってその子どもに関する感動的な場面です。乳児の身体自身もいつまでも立たないままの状態を続けていられなくなるのです。自立は早いにこしたことはありませんが教えて仕向けることでできるということでもありません。健康な乳児の自然体として、バランスをとりながらひとり立ちできるようになるのです。

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     泣く 乳児は表情や身振り手振りや泣くことによってしか表現できません。泣く子をしかり飛ばしても泣きやむわけではありません。「泣く子と地頭には勝てない」とまったく聞きわけがない例のように言われることもありますが、乳児はそうではありません。笑ったり身振り手振りで喜んだりする表現同様に、泣くのは、元気な発育の証拠、欲求・意思・感情の表現、芽生えです。しかし、同時に、痛さやむず痒さ、苦しさや嫌気や病気の訴えである場合もあります。おむつを替えてくれという合図は典型です。乳児は「~~してほしい」「~~はいやだ」「苦しい」と気持ちや欲求や苦痛を表現するすべは表情、身振り手振り、そして泣くしかないのです。言葉によるコミュニケーションができないわけで、乳児のシグナル、欲求を判断し、対応し解決したり、スキンシップで緩和したり刺激し促進したりするのは親や保育者の仕事です。

     育児・保育に欠かせないのが「子どもへの愛情」です。言語外の乳児の表情、身振り手振り、泣く等の表現とのコミュニケーションから親や保育者と子どもの人間関係が形成されます。「親の就労等の事情で保育に欠ける子ども」に対する保育者の「親代わり」の保育の仕事の根幹も「子どもへの愛情」であることに基本的に変わりはありません。

      歩行 ここでも早い遅いはあり、標準的な時期にまだそうできていないからといって焦る必要はありませんが、、おおむね月齢15カ月くらいで子どもは、よちよち歩き、一人歩きができるようになります。子どもの運動能力と運動範囲はそれまでのはいはいの時とは比較にならないほど広がってきます。

     さて、ここまで生後の《月齢》という節目で子どもの発育と子育て・保育の仕事の具体的テーマについて幾つか例示的にみてきました。次に、子どもの運動の能力と範囲の拡大、子どもの意識の発達の特徴をおおむねの《年齢》という節目でとらえながら、子どもと一緒になって自由遊びや生活動作を子どもができるようになることを通して子どもの成長を育む意識的で積極的な仕事として、子育て・保育の仕事について、例示的具体的にみてみます。

     

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    「子ども・子育て新システム」に絶対反対!現場から怒りの批判を

    2011年02月03日 | 保育民営化(幼保一体化)に絶対反対

    子育て・保育・幼児教育の現場から怒りの批判を

      ・・・・シリーズ・実践編(第一回) 

     今国会に幼保一体化=民営化の法案上程

     1月24日に政府は、昨年6月発表の「子ども・子育て新システムの制度案基本要綱」に基づく幼保一体化・こども園法案の通常国会上程を明らかにしました。現行の幼稚園・保育所の廃止とこども園への移行の期限は定めないものの、移行した施設には運営費補助金を手厚く上積みし財政支援で優遇するというものです。「バスに乗り遅れたら後でカネで泣くことになるぞ」とおどして、補助金問題で自治体と施設(幼稚園、保育所)を揺さぶり、自治体にこども園・幼稚園・保育所の整備を促し、こども園への転換に誘導しようとしています。

     「子ども・子育て新システム=幼保一体化・こども園」法案の骨子

     上程される法案では、 これまで文部科学省・厚生労働省の別々の所管だった補助金を幼保一体給付勘定に、内閣府所管で一本化し、2013年度には同法に基づく子ども家庭省に一元化する、 自治体が実施義務として行う現物給付と保護者の収入に応じた負担というこれまでのありかたを廃止し、利用者と事業者との直接契約によるサービス給付(売買)と利用券制度による利用者補助方式に切り替え、 新システムの運営の要の位置を担う株式会社(企業)の参入を促進するために、開所時間・施設定員・職員定数・資格を有する正規常勤職員の比率・施設面積・調理設備・園庭等の種々の設置基準を伴う認可制を廃止し、指定制に変え、事業者による運営費の使途の自由化等の全面的な規制緩和をはかる、④2013年度から実施する、というのが、基本的な骨子となっています。

     新システムは、「新成長戦略との連携」「新たなマーケットと雇用の創出」として打ち出されたことに明らかなように、保育や幼児教育とはまったく関係のない次元から企図されています。国の保育・幼児教育分野での財政支出の全面的削減、この分野での自治体の公的責任の廃止と民間企業への全面的市場開放による保育・幼児教育の民営化・産業化の動機・打算、その一点で強引に組み立てられています。新システムは保育・幼児教育・子育て支援の新たな社会的仕組みと呼べるようなシロモノではまったくありません。子ども・子育てを食い物にして企業をこの分野にピラニアのように群がらせ、企業にカネ儲けのマーケットを開くと言うこんな「新システム」を私たちは絶対に認めることはできません。

    親代わりで子どもを守り育てている保育・幼児教育の現場の反対の声にこそすべての真実がある

     子育て、保育、幼児教育の現場を知る者なら絶対にこの新システムのような発想や制度設計はできません。現場、現実を一顧だにせず、よくもまあ、こんな「新システム」を思いついたものです。

     日本の現在の人口は1億2000万。この現在生きている1億2000万人には1億2000万通りの人生があるが、はっきりしているのは、この1億2000万人が例外なく、当然のことながら乳幼児期を経て今日に至っていること。生をこの世に得てから小学校就学までのこの乳幼児期に人がいかなる育児・保育・教育を受けるかは人生にとって非常に大きな意味を持っています。

          

     子どもは、家庭・保育所・幼稚園で家族・親(特に母親)や親代わりの先生(保育士、幼稚園教員等の職員)から見守られ、助けられ、支えられ、育てられ教えられて、育つのです。保育所や幼稚園に子どもを預ける親にとっては、「先生」は《親代わり》、保育所・幼稚園は《乳幼児期の育ちと遊びと学びの家庭代わりの拠り所》です。

     「新システム」の考案者・設計者は自分たちの乳幼児期に家庭や保育所・幼稚園で一体どのように大切にされ誰に育てられてきたのか?自分の子どもをどういう思いで家庭で育て幼稚園や保育所に委ねてきたのか?そういうことに何の想いもひっかかりもなく本当によくぞこんな「制度」を考え付いたものだ、そうは思いませんか?この「新システム」を《子育て》《親代わり》とは到底認めがたい、絶対に承服できない、受け入れることができないという違和感、異物感は、本能的な生体反応というべき当然の反発であり、本質的なものです。

     私たちは、この直感こそ、「子ども・子育て新システム=幼保一体化・こども園」に対する根底的批判の《一の矢》、最大の批判と考えます。の新システムは絶対に制度として導入させてはならない!心底からの批判を現場から当事者(子ども、親、保育所・幼稚園職員)の批判として「新システム」に叩きつける必要があります。

     子どもは当事者、その中心でありながら、しかし自身では批判の声をあげられません。当事者としてそれを行う権利は当然に子どもを保育所や幼稚園に委ねている親(保護者)にありますが、最も的確な正鵠を射た批判を行えるのは保育・幼児教育の何たるかという現場のすべてを知っている保育所・幼稚園で働く職員(労働者)です。これは制度設計の理屈や理論・施策の是非をめぐるあれこれの議論以前の問題です。現実に基づくストレートな憤りであり批判です。この批判の前には「新システム」などひとたまりもありません。

     新システムの正体》 新システムは民間企業がこども園を経営・運営することを制度の中心・根幹に据えています。しかし新システムが参入を予定する民間企業に、新たな事業モデルがあるわけではありません。既に保育事業に指定管理者制度や業務委託や認可外保育で参入している企業(株式会社)こそ先行モデルです。その最大の特徴は、何か民間ならではの斬新で社会的に有益なサービスを提供しているというようなものではまったくありません。その最大の特徴は、いまどの業界でも企業が行っている経営戦略そのもの、ズバリ言って時間給のパート・アルバイト等の非正規雇用で人件費を削り込むことで利潤をあげること、要するにとっかえひっかえの細切れシフト制勤務で保育・幼児教育・子育て支援を賄うというものです。それが新システムのすべて、株式会社参入のすべてであると言ってもよいと思います。

     単刀直入に言って、保育、幼児教育、子育ては、新システムの考案者や財界、企業が考えているような、パート・アルバイトのシフト勤務で担えるような仕事ではまったくありません。もちろん、ここでは実際にパート、アルバイト等の形態で生きんがために懸命に働いている非正規労働者の皆さんを非難しているのではありません。パート・アルバイトのシフト勤務で保育・幼児教育・子育てを賄えると考えている新システムの考え方そのものがとんでもない、許せないということです。保育・幼児教育・子育てという仕事の課題、性格、現実、実体を抜きにした荒唐無稽の暴論であり、万が一にも、このような新システムが導入されるということにでもなれば、子育ても子どもの未来もメチャクチャにされてしまうということです。

     次回=シリーズ・実践編の第二回では、子育て・保育・幼児教育の現場の仕事を具体的に例示することで、現場からの新システム批判に入っていきます。

     

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