「グレン・グールド 未来のピアニスト」は、ピアニストであり文筆家である「青柳いづみこ」さんが精魂込めて書き上げた物だ。
序章「コンサート・ドロップアウト」・第一章「彼はどのような点で天才なのか-楽譜をみたらすぐに弾ける、練習をしなくても弾ける」・第二章「彼はどのようにしてデビューしたのか-競わずにナンバーワンになる法」・第三章「踊る祈祷師のレコード・デビュー」・第四章「彼はどんなふうにしてピアノを弾いたか」・第五章「彼はどのように教育されたか-ディヌ・リパッティとの対比において」・第六章「僕は神童ではなかった-少年時代の録音から」・第七章「一九五五年という年(Ⅰ)-演奏スタイルの変遷と時代の耳」・第八章「一九五五年という年(Ⅱ)-ロマンティックからクール・スクールへの変遷」・第九章「アポロン派とワンクッション、ロマン斬り」・第十章「彼はどのようにして演奏活動を耐え忍んだか-ステージ活動をするということ」・第十一章「彼はどのようにして演奏活動から撤退したか」・第十二章「そして、ここからグールドが本当のグールドになる」・第十三章「オズの魔法使いとエメラルドの都-実演とスタジオ録音の違い」・第十四章「二倍速の共犯者」・第十五章「『ボクは作曲家になりたかった』」・第十六章「運命の動機-変わるものと変わらないもの」・第十七章「グールドの歌声」・第十八章「受肉の音楽神-結局、彼は何者だったのだろうか?」・終章「未来のピアニスト-グールド・ファンも、そうではない人も」。
彼女の文章と音楽(?)は、彼女の感性が伝わってくる。
<フレンチ・ピアニズムの本を読むと、よくよく「ジュー・ペルレ」という言葉に出くわす。直訳すれば「真珠のような奏法」。つまり、真珠の首飾りのように一粒一粒のタッチがそろっている、というような意味だ。>
<トリルもモルデントも、ひとつの指から別の指へとすばやく運動を伝えていく。運動の伝わり方がドミノ倒しに似ていることから、私はこれを「ドミノ弾き」と呼んでいる。>
・・・・・・・etc.
「映像作品『グレン・グールド 27歳の記憶』には、おもしろい場面が収録されている。バッハ《パルティータ第二番》を演奏中に突然弾くのをやめたグールドが、窓辺に行ってメロディを口ずさみながら頭の中でテキストを反芻し、ふたたび鍵盤に戻ってつづきを弾くシーンだ。」(「グレン・グールド 未来のピアニスト」青柳いづみこP.26)。
彼の声が聞こえてくる。