秋の七草
*「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 雄花葛花 撫子(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」
*秋の七草は、万葉集で山上憶良(やまのうえのおくら)が選定し、今に至っている。
☆秋の七草の覚え方(おすきなふくは)←お好きな服は
*お(おみなえし) *す(すすき) *き(ききょう) *な(なでしこ)
*ふ(ふじばかま) *く(くず) *は(はぎ)
☆秋の七草: http://www.youtube.com/watch?v=elQxts2R1GY&feature=related
(1)萩(はぎ)
ハギ・・・マメ科ハギ属の総称。落葉低木。花期は7月~10月。秋に枝の先端から複数の花枝を出し、赤紫の花房
をつける。花は豆のような蝶形花。日本各地で普通に見られ、萩といえば山萩(ヤマハギ)を指す。
葉や枝は家畜の飼料や屋根葺きの材料に、葉を落とした枝を集めて箒にしたりした。
★語源・由来
*毎年古い株から芽を出すことから、「ハエキ(生芽)」の意味。
*茎が這うように伸びることから、「ハクエキ(延茎)」の意味。
*葉が早く黄色になることから、「ハヤクキバム(早黄)」「ハキ(葉黄)」の意味。
*「秋」から転じた。
◎『万葉集』では、「芽」、「生芽」を「ハギ」と読ませていることから、「ハエキ(生芽)」の説が有力。萩は国字。
★秋の十五夜に、「薄(すすき)」「団子」と一緒に縁側にお供えする習慣がある。
★実は「おはぎ」と「ぼたもち」は同じもの。
●「我が岡に さを鹿来(き)鳴く 初萩の 花妻どいに 来鳴くさを鹿」(大伴旅人)
私の岡に牡鹿がやって来て鳴いている。萩の花に 求婚しにやって来た鹿が。
★万葉集では萩のことを「芽子」と表記し、「はぎ」と読ませることがあるが、訓読みすれば「XX]で、一部の地域で
は女性自身のことを連想させる表現である。
(2)雄花(おばな)→薄(すすき)
ススキ・・・イネ科ススキ属の多年生草本で、萱(かや)とも言う。野原に普通に見られる。
★秋のお月見には欠かせない。「中秋の名月」には収穫物と一緒に供えられるが、収穫物を悪霊から守り翌年の
豊作を祈願する意味がある。2012年の中秋は9月30日(日)。
★屋根材のほかにも炭俵、家畜の飼料などによく利用される。
★箱根の仙石原や奈良の若草山などで春先に行われる「山焼き」は、ススキを野焼きすることで樹木の侵入を
押さえ、ススキの原を維持することに不可欠。
★語源、由来
*「スス」は「ササ(笹)」に通じ、「細い」意味の「ささ(細小)」もしくは「ささ(笹)」の変形。「キ」は「木」、「茎」、「草」
など「k」の音に通じ、この場合、「茎」か「草」の意味であろう。
*「ススキ」の「スス」にはすくすく(直々)」と生い立つ意味
●「秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治の宮処(みやこ)の仮盧(かりほ)し 思ほゆ」(額田王)
秋の野に生える草を刈り、それで屋根を葺いてお泊りになった宇治の仮のお宿、あの宮どころが偲ばれます。
(3)葛花→葛(くず)
クズ・・・マメ科クズ属の蔓性多年草。
*まわりの木々をつるで覆ってしまうほどの生命力で、ひと夏で10mくらい生長する。
*花は8月から9月の秋に咲き、穂状花序が立ち上がり、濃紺紫色の芳香を放つ花が下から咲いていく。
★大和の国(奈良県)の国栖(くず)という所が葛粉の産地であったところから命名。
*つるの繊維部分は葛布の原料、静岡県掛川市の特産品。
*根には多量の澱粉が含まれていて、「葛根(かっこん):解熱漢方薬)」になり、「葛粉(くずこ)」もとれる。
*「裏見草(うらみぐさ)」の別名がある。葉が風にひるがえると、裏の白さが目立つことから、平安時代に「裏見」
を「恨み」に掛けた和歌も多く詠まれた。
●延(は)ふ葛(くず)の 絶えず偲はむ 大(おほ)君の 見(め)しし野辺(のへ)には 標(しめ)結(ゆ)ふべしも」
(大伴家持:おおとものやかもち)
長く伸びていく葛のように 末永く絶えることなくお慕いする大君がご覧になった野辺にはしめ縄を張りましょう。
(4)撫子(なでしこ)
ナデシコは、ナデシコ科ナデシコ属の総称、カワラナデシコの異名
*6月頃から8月頃にかけて開花。ピンク色のかれんな花で、縁が細かく切れ込んでいる。
*花が小さく愛すべきところから、愛児に擬した「撫でし子}が有力。『万葉集』の和歌には、撫でるようにかわいら
しい小(女性)と掛けて読んだものが見られるが、それは現在でいうカワラナデシコを指す。
*中国から平安時代に渡来した唐撫子(石竹)に対し、在来種を大和撫子(やまとなでしこ)と呼ぶ。日本女性の
美称によく使われる。
*カワラナデシコ(河原撫子)別名大和撫子は、主に日当たりの良い草原や河原に生育する。
●「なでしこが その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日もなけむ」(大伴家持)
あなたが撫子の花だったらなあ。そうしたら毎朝愛でるのに。
(5)女郎花(おみなえし)
オミナエシは合弁花類オミナエシ科オミナエシ属の多年草植物。チメグサ、敗醤(はいしょう)ともいう。
*開花期は8~10月
*黄色い清楚な5弁花、日当たりの良い草地に生える。
★語源・由来・・・「おみな」は「女」の意、「えし」は古語の「へし(圧)」で、美女を圧倒する美しさから名付けられた。
*もち米で炊くご飯「おこわ」のことを「男飯(おとこめし)」といったのに対し、「粟ご飯」のことを「女飯(おんなめ
し)」といっていたが、花が粟粒のように黄色くつぶつぶしていることから、女飯→おみなめし→「おみなえし」にな
ったという説もある。別名「粟花」。
●「をみなえし 佐紀沢(さきさわ)に生ふる はなかつみ かつても知らぬ 恋もするかも」(中臣女郎;なかとみ
いらつめ)
をみなえしが咲く佐久沢に咲いている花かつみという風に、かつてない恋に落ちているのです、私は。
(6)藤袴(ふじばかま)
フジバカマは、キク科ヒヨドリバナ属の多年草植物。
*開花期は8~10月、散房状に淡い紫紅色の小さな花をたくさんつける。
*花の色が藤色で、花の形が袴に似ていることから、この名前が付けられた。
*全体に桜餅のような香りがする。
*平安時代の女性は、これを干した茎や葉を水につけて髪を洗った。また、芳香剤、防虫剤、お茶に利用した。
*葉が深烈するのが特徴で、ほとんど別の葉に見えて、元は1つの葉
●「なに人か きてぬぎかけし藤袴 くる秋ごとに 野べをにほはす」(藤原敏行)
どんな人がやって来て着ていたのを掛けたのか。藤袴は、秋がくるたびに野辺を美しく彩り、良い香りを漂わせ
る。
(7)朝貌(あさがお)→桔梗(ききょう)
キキョウは、キキョウ科の多年生草本植物。山野の日当たりの良い場所に育つ。絶滅危惧種である。
*開花時期は6~8月。紫または白い花。蕾のときは花びら同士が風船のようにぴたりと繋がっている。
*漢方では、太い根を干して、せきやのどの薬にする。また、薬用成分のサポニンは昆虫にとって有毒なため、
自ら昆虫の食害から守っている。
●「あさがおは 朝露負いて 咲くといへど 夕影にこそ 咲きまさりけり」(詠み人しらず)
朝顔は朝露をあびて咲くといいいますが、夕方の薄暗い光の中でこそ輝いて見えるのですよ。