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景気悪化でも株高 信用不安、足元は後退

2020-05-10 08:39:04 | 日記




緩和マネー流入 感染第2波に懸念
2020/5/9 23:18日本経済新聞 電子版

世界で経済指標と株価指数の乖離(かいり)が広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、過去最悪の経済指標も相次ぐなか、主要国では株価が回復基調にある。経済再開を見据える国が増え、市場は景気の底が4~6月と期待する。中央銀行の異例の金融政策や、企業の信用不安が遠のいていることも投資マネーの株買いを支えるが、感染の第2波が起きれば、再び不安心理が高まりかねない。

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8日に4月の米国失業率が80年ぶりの水準に悪化したにもかかわらず、ダウ工業株30種平均が前日比455ドル(1.9%)高となったのは象徴的だ。ダウは3月、2月の高値から37%下落したが、そこから3割回復した。8日には節目となる2万円台を回復した日経平均株価も31%下落してから、22%上昇している。



顕著なのがハイテク株で構成する米ナスダック総合指数だ。すでに昨年末の水準を回復し、新型コロナによる市場混乱前の高値まであと7%に迫る。欧州株のストックス600指数も3月の安値から22%上昇、世界の株価の動きを示すMSCI全世界株指数も28%上昇している。

経済指標は悪化が際立つ。JPモルガンと英調査会社のIHSマークイットが公表した、景況感を表すグローバル総合購買担当者景気指数(PMI)は4月に26.5となり、金融危機後の08年11月(36.8)を下回り過去最低となった。特にサービス業の落ち込みが大きい。国際通貨基金(IMF)は20年の世界経済を3%のマイナス成長と4月に公表したが今月、さらに下振れする可能性を示唆した。

今後1年で稼ぐ企業の利益を表す1株当たり利益(EPS)と株価も逆行する。米S&P500種株価指数は3月の安値から約3割回復したが、構成銘柄のEPSは下がり続けている。ドイツでも独株式指数が3割回復したが、EPSは2月から2割下落。香港のハンセン指数も株価とEPSが逆の動きをしている。

株価は半年先を織り込むといわれる。「株式市場は常に実体経済の先を見に行く傾向があり、経済活動の急激な落ち込みは外部要因によるもので、短期間で解消されるとの期待がある」(ハーバード大学ケネディスクール上席研究員のポール・シェアード氏)

米国では8日にカリフォルニア州が一部の小売店の営業再開に踏み切り、全体の6割強にあたる31州まで経済活動の再開が広がった。フランスは11日から行動制限を緩和、ドイツは6日に全商店の営業を認めるなど緩和の大幅拡大を決めた。「重要なのは雇用統計より米国経済の再開状況だ」(米プルデンシャル・フィナンシャルのクインシー・クロスビー氏)と考える資金が株式市場に流入している。

それを支えるのが、政府や金融当局による財政出動や利下げなどの金融緩和政策だ。

各国の財政出動規模も総額8兆ドル(850兆円)にのぼる。米連邦準備理事会(FRB)欧州中央銀行(ECB)、日銀も異例の金融緩和策で市場に資金を供給する。FRBが格付けが低くなった企業の社債の買い取りまで踏み込んだことで、企業の信用不安は遠のき、マネーは株や債券など幅広い資産に流入している。

足元の株価について「(ナスダックを)けん引しているのは少数の銘柄」(米ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との指摘もでる。マリー氏は「米国は消費主導の経済で、失業者数は政策効果で減っても年初に比べたら多く、消費を下押しする」と懸念する。

株価がEPSの何倍まで買われているかを示すPER(株価収益率)は、1~2月の高値時を大幅に上回る水準で推移しており、「利益の回復無き株価の回復」は割高感にもつながっている。

開発中の治療薬とワクチンが完成しないまま、経済再開することで感染の第2波が訪れると、経済回復はさらに遅れる。

市場は新型コロナについて、2月まで影響は中国国内にとどまり、限定的だと見込んでいた。流入したマネーが株価を押し上げて高値を付けていたことが、3月の急落の下地にもなった。市場の期待通りに進まないこともある。株価の二番底懸念が払拭されたわけではない。(二瓶悟、山下晃、ニューヨーク=宮本岳則)

■クラウドや半導体がけん引 社会変化踏まえ選別進む

株式市場は新型コロナによる社会の変容を踏まえ、勝ち組の選別を進めている。在宅勤務の定着、家庭内消費の増加などを受け、クラウドサービスやその基盤を支える半導体の需要は高まっている。米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コムの株価は、すでに3月の急落前の水準を回復し、史上最高値圏で推移している。



マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はコロナウイルスの感染拡大をきっかけに、デジタルトランスフォーメーション(DX)など「2年分の変化が2カ月間で起きた」と話す。変化を先取りする株式市場では過熱気味にコロナ後の社会の必需品となる企業にマネーが集中している。

「多くの従業員が在宅勤務をしている未来が見える」。米大手金融モルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOは移動制限が解かれた後もリモートワークが定着すると米メディアに語った。そうした社会変化を支えるにはIT(情報技術)インフラの充実が不可欠だ。

移動制限で自宅での滞在時間も増えている。巣ごもり需要を捉えた動画配信サービスの米ネットフリックスは2020年1~3月期に最高益を更新。年初から株価は3割以上上昇し、史上最高値圏での推移が続く。日本では任天堂の株価が急落前を回復した。

クラウドやオンラインサービスを支えるのはデータセンターだ。装置に不可欠な半導体需要も膨らむ。巨大IT企業が不在の日本市場では、東京エレクトロンの株価が2月の高値まであと1割強となるなど、半導体関連銘柄の回復は早い。

一方で、新型コロナによる需要蒸発に直面する米航空機のボーイングや米石油大手エクソンモービルの株価は低迷したままだ。

世界の中央銀行が潤沢な資金供給をしたことで、金融市場は安定している。FRBの社債買い取りの拡大や、各国政府の財政を使った支援もあり大型破綻への警戒は現時点では後退している。

ボーイングやエクソンの株価も底打ち感はあるが回復は鈍く、急落前の高値から3~7割安い水準のままだ。日本でも日本製鉄が急落前の4割安で推移する。

失業率が高まるなか、旺盛だった消費がすぐに戻るとは考えにくい。市場はヒトの移動も制限や警戒が続くとみて航空会社や自動車株の戻りは鈍い。株価指数の回復は日米とも特定銘柄への一極集中が演出している。その裏側では回復が見えない「底ばい株」も増えている。