都立高校一般入試の国語では、毎年200文字の作文が出題されます。本文を読み、筆者の主張についての自分の考えを自らの体験や見聞を交えながら書くものです。
作文がなかなか書けない、または本人は書けているつもりでも高い得点を取れない生徒には大抵共通するパターンがあります。それは「私は○○だと思います。」から書き始め、その後はずっと「○○だから、□□だからです。」と自分の考えばかりずっと書き連ねてしまうのです。書いているうちに主張に矛盾が生じたり、論点がずれてしまうなど、どんどん書きにくくなってしまうのです。
私は作文を書く際には、まずは体験から書き始めるように生徒たちには教えています。「 」を使って誰かの発言などから書き始めるのはインパクトがありますし、その後も書きやすいものです。
体験に続けて本文中の筆者の主張を1,2行程度で要約し、最後に自分の考えを「ですから、私は筆者の主張に賛成です。」などでまとめると書きやすいものです。
体験→要約→自分の意見・主張の順に展開していくように具体的な文章を示しながら説明すると、生徒たちは急にかけるようになることが多いです。
数年前に読書感想文コンクールの審査員を依頼され、相当な量の感想文を読み、得点を付けた経験があります。驚くことに90%以上の感想文が「僕は(私は)この本を読んで、○○だと感じました。」から始まっていて、途中から読むのが辛くなってしまいました。そんな中、自分の体験から書き始めている感想文を読むととても新鮮に感じましたし、よりしっかり感想文を読もうという気にさせられました。興味深く読むことができたので、高い得点をつけやすかったのを記憶しています。
入試においても、作文を採点する先生方は私と同じように感じながら得点を付けていることが多いと思います。同じ題材・同じ内容であっても、その順序を変えることで途端に書きやすくなりますし、高い評価を得られやすくなると思います。
それでも書き出しがどうしても思い浮かばない場合には、本文からの引用でも良いですから、まずは書き始めることが大切だと生徒たちには話しています。自動車などは、止まっている状態から動き始めるときに大きな力を必要としますが、一度動き出してしまえばそのあとはそれほど大きな力が無くてもそのまま動き続けることができます。作文などもこれと同様だと私は思っています。