生活保護や労働者の賃金、年金給付額などを行政サイドが算定或いは査定するときの基礎データの一つとして「最低賃金」が利用されると聞くが、これはどんなものなのでしょう。
最低賃金は、大きくは「地域別最低賃金」と「産業別最低賃金」に別け、定められています。
基本は「地域別最低賃金」で、都道府県毎に定められており、これが“生活保護”など行政が行う保障のベースとなります。
近畿二府五県の『平成21年度地域別最低賃金』は、以下の通りです。(三重県は目的に依り近畿地方であったり東海地方、中部地方であったりしますが、ここでは近畿地方として抜粋。)
どんな統計データや分析方法による結果であるかは分かりません。
因みに、一日当り7.5時間、一ヵ月当り22日(一ヵ月165時間)の労働を前提として兵庫県での一か月当り最低賃金を計算すると、118,965円となります。
ここから所得税、地方税、社会保険料(健康保険料、介護保険料、年金保険料)、雇用保険料などが控除されるので、大雑把には可処分所得は9万円程度になります。
あなたは、この収入で4人家族が一ヵ月を乗り切ることができると思いますか?私の答えは「No」です。
私の感覚では、今の世の中での一般的な生活のありようを基準にして考えれば、一世帯(4人家族)の一ヵ月当り必要な可処分所得は、25万円前後であろうと思われることから、最低賃金の設定が大幅に低いと言わざるを得ないのではないでしょうか。
民主党政権になり、事業仕分けが行われましたが、省庁がその外郭団体に業務委託する時の費用の中の、人件費の時間単価が5800円以上であることが判明しました。外郭団体の間接費も含まれるのでしょうが、それにしても庶民への最低賃金とあまりにも乖離していることへの驚きも然ることながら、それ以上に、省庁の自らへの処遇基準と庶民への処遇基準の大きな乖離を放置し、なんとも思っていない感覚に腹立ちを覚えます。
この最低賃金を基に、『国民生活の最低水準の保障』をいくら論じても、現実を見ていない行政サイドの机上の空論でしかありえず、そこには『健康で文化的な最低限度の生活。国はこれを保障する。』という憲法の思想は存在していないのではないかと思ってしまいます。
行政が考え、保障しようとしている“最低限の生活”とはどんなものなのでしょうか。
「テレビや冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどを所有せず、一日一食あるか無しかの食事、それで生きていければいいではないか。」と考えているとしか思えないのが、「最低賃金」の現状ではないでしょうか。
【参考資料】
最低賃金法(昭和34年法律第137号)
〔最低賃金法の一部を改正する法律(平成19年法律第129号)による改正後の条文〕
最低賃金法施行規則(昭和34年労働省令第16号)
〔最低賃金法施行規則等の一部を改正する省令(厚生労働省第百一号)による改正後の条文〕
平成19年一部改正のパンフレット