雇用継続の場合の可処分所得を試算する際には、①60歳の収入、②61歳~64歳の収入について試算し、61歳~64歳の可処分所得が最大となる月例給与と賞与時払いの割振りパターンを選択するようにします。
定年退職後の再雇用期間の所得は、次の三つで構成されます。
(1) 賃金〔(月例給与+通勤交通費+食事手当+その他の手当)×12+賞与時払い×2)〕
(2) 高年齢雇用継続基本給付金(雇用保険)
これらの所得に対して、(1) 社会保険料(雇用保険、健康保険、介護保険、年金保険)(2) 所得税(3) 住民税(県民税&市民税)が課金されます。
まずは61歳以降の可処分所得最大化試算の準備をしましょう。
1.年間報酬の割り振りパターン
年間報酬の受け取り方としての割り振りは、次の4パターンを考えればいいでしょう。
①月例給与として12分の1を受け取る(賞与時分は無し)
②月例給与として16分の1を受け取る
③月例給与として18分の1を受け取る
④月例給与として20分の1を受け取る
この割り振りパターン毎に高年齢雇用継続基本給付金、特別支給の老齢厚生年金(併給)、社会保険料、所得税、住民税等を算定します。
2.高年齢雇用継続給付受給資格確認通知書
60歳到達時の賃金月額と高年齢雇用継続給付限度額を確認します。退職前の60歳到 達後に会社がハローワークに手続きし、交付された通知書です。
3.年金証書・年金裁定通知書
特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の給付額を確認します。「年金請求書」提出後2カ月頃に社会保険庁から送付されます。「年金証書・年金裁定通知書」が未着の場合は、本人が所管の社会保険事務所に出向けば確認することができます。
続いて所得、社会保険料、課税額等を計算しましょう。
1.年間所得額
賃金(=月例給与×12+賞与時分×2)+高年齢雇用継続基本給付金+特別支給の老齢厚生年金 で求めます。
2.高年齢雇用継続基本給付金
60歳以後の各月に支払われる賃金が60歳到達時点の「賃金月額」の75%未満になる場合に支給されます。所得税法上、非課税です。 賃金月額は「高年齢雇用継続給付受給資格確認通知書」に記載されています。
(1) 先ず、以下の算式で月例給与の「低下率」を求めます。
低下率(%)=支給対象月に支払われた賃金額÷「賃金月額」
(2) 低下率が61%以下の場合
支給額=支給対象月に支払われた賃金額×15%
(3) 低下率が61%を超え75%未満の場合
支給額=(-183)÷280×支給対象月に支払われた賃金+137.25÷280×「賃金月額」
(4) 限度額に注意
3.社会保険料
(1) 標準報酬月額、標準賞与額
社会保険庁が発行する各年度用の「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」で求める
(2) 健康保険料、厚生年金保険料
社会保険庁が発行する各年度用の「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」記載の該当欄の「折半額」で金額を求めます。
(3) 雇用保険料
月例給与×保険料率=被保険者負担保険料
<保険料率>
平成21年3月31日施行の法改正により、平成21年度に限り、保険料率が引き下げられています。
4.所得税
所得税は、月次分と賞与時分に別けて計算します。
(1) 課税所得
課税所得=所得合計-(社会保険料+基礎控除額+配偶者控除額+扶養控除額)
(2) 税額の算定
ア) 月次の税額
国税庁が発行する「源泉徴収税額表」(所得税法別表第二)で、課税所得および扶養親族等の数によって求めます。
イ) 賞与時分の税額
国税庁が発行する「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」(所得税法別表第四)で、賞与の課税所得および扶養親族等の数によって求められる課税率を賞与時分の課税所得額に乗じて求めます。
5.住民税(県民税+市民税)
住民税は、前年(1月~12月)の所得金額を基礎にして計算します。
住民税には「所得割」と「均等割」があり、均等割は所得に関わりなく、一律額が課せられます。神戸市の場合は4,800円です。
所得割は、課税所得に県民税率および市民税率をそれぞれ乗じて求めます。
①県民税=(所得-社会保険料)×県民税率
②市民税=(所得-社会保険料)×市民税率
∴所得割の住民税額=①+②詳細は、お住まいの自治体のホームページで確認して下さい。
6.可処分所得の算出
簡単にまとめると次のようになります。
(1) 月次
給与等+高年齢者雇用継続給付+在職併給年金-社会保険料-所得税-住民税
(2) 賞与時
賞与時分-社会保険料-所得税
(3) 年間可処分所得
月次の可処分所得×12+賞与時分の可処分所得×2
<シリーズ・インデックス>
・高年齢者雇用安定法(その1):概要の確認
・高年齢者雇用安定法(その2):定年退職前60歳到達時
・高年齢者雇用安定法(その3):定年退職の直前・直後
・高年齢者雇用安定法(その4):年間報酬低下に伴う可処分所得の試算(当記事)
・高年齢者雇用安定法(最終回):再就職直後
いよいよ来月、わが国でもWindows7製品版が発売されます。既にWindows Vistaを導入した企業、Windows XPから一気にWindows 7への移行を目論んでいる企業、Windows 98からWindows XPへの移行を拒み続けたのと同様に、サポートが無くてもWindows XPを使い続けようと考えている企業とその対応は様々な状況にあると思います。
Microsoftでは、Windows 7にアップグレードする際にCPUパワーを増強するよう推奨してはいませんが、米Image QuotientのITコンサルタントは、現実にはCPUを増強した方が良さそうだと言っています。
Windows 7に移行するためのハードウェア要求は、メモリ容量、CPUパワー、HDD容量のすべてにおいて8年前のWindows XPマシンとは大きく異なります。Windows Vistaユーザーの場合も、Windows 7に移行するにはメモリとHDD容量を追加する必要がありそうです。
Windows 7の最低ハードウェア要求は、2GBのメモリ、動作速度が1GHz以上のCPU、20GBの空きHDDスペースとなっています。これに対して、Windows XPのハードウェア要求は、わずか128MBのメモリ、233MHzのプロセッサ、1.5GBの空きHDDスペースです。Windows Vistaのハードウェア要求はWindows 7に近く、最低1GHzのプロセッサ、1GBのシステムメモリ、15GBの空きHDDスペースとされています。
Windows 7の導入は新PC購入都度行うのがいいでしょう。こうすれば支出は最小限で済み、移行時期をずらしながら行うことにより、リスクも低くすることができます。ただし、既存のアプリケーションとの不具合は事前に潰しておかなければなりません。
Windows Vistaへの移行をスキップし、Windows 7に移行する場合は、PCの置き換え時に1台ずつではなく、保有PCの全てを一気に行う計画を立てるのがいいと思います。移行時期を2012年頃に設定すれば、Windows XP に対応するアプリケーションが少なくなっている他、OSのサポート期間が3年も残っていない状態だと思います。今から置き換えまでの間に既存のアプリケーションとWindows 7との不具合を潰しておくことができます。
Windows OSを使用する限り、何れ新OSに移行しなければならないことは自明の理です。どうするのが技術者にとってより簡便で、よりTCOを低減できるのか。それぞれの企業の実情に合わせて決めることが肝要かと思います。
「『100年に1度と言われている不況の中にあり、わが社も非常に厳しい経営環境にある。この苦境を乗り切るために、4月より、賃金の60%を保証して月1回の全社一斉休業を実施する。』との通達があり、現在実施中ですが、そもそも“休業”とか“60%の賃金保証”とかって何でしょう。休業日以外の日には残業もしているのですが。。。」といった質問や、この“休業手当”の算出方法に関する質問が増えています。
ご時勢ですかね。
質問者の会社は何れもサービス業、物品販売業、不動産販売業などで、所謂ホワイトカラーに属する事業分野です。これを踏まえ、話は少し長くなるかもわかりませんが、お応えできる範囲でお話したいと思います。
1.休業とは
景気が後退し、会社の業績が悪化する、若しくは悪化が見込まれそうなとき、結果として過剰となっている人員の雇用調整によって、収益の確保あるいは業績悪化回避、悪化の極小化を目的に実施される企業存続策の一つです。
雇用調整とは、企業が労働力を減らし、収益を少しでも確保しようとすることで、様々なやり方があります。最も一般的なのが労働時間の短縮で、
①残業(所定外労働)時間の抑制
②所定内労働時間の抑制
③休日の増加などです。
これはどの企業も推進しており、経費・労務費の削減に繋がります。次に行うのが新規・中途採用の削減や中止ということになると思います。
ここで言われている休業は、古い言葉では『時短』、『一時帰休』に該当する対策で、会社は雇用関係を継続し、その間、労働基準法に定められた賃金=休業手当を支払います。
今風に言えば、“ワークシェアリング”の一つの手法と考えることができます。
わが国経済が不況に陥るなど、景気変動などにより事業活動の縮小を余儀なくされ、やむを得ず雇用調整を行った事業主に対しては「雇用調整助成金」として休業手当や賃金などの一部が支給される制度があります。
みずほ総合研究所による8月5日付発行の みずほ日本経済インサイト「雇用調整助成金の失業抑制効果~助成金がなければ失業率は6%台に~」によれば、今年拡充された雇用調整助成金の申請件数は6月時点で238万件に達し、これによって抑制された(発生しなかった)失業者は45万人に上り、助成金がなければ、失業率は6.1%と過去最高(5.5%)を大きく上回っていた可能性があると試算しています。
2.休業手当と平均賃金
質問者の会社には、月給制の正社員と年俸制の契約社員の方がいらっしゃるとのことですので、このことも踏まえてお話します。
休業手当とその算定基礎となる平均賃金については、労働基準法第12条及び第26条で定められています。
** 労働基準法抜粋 ***********
(休業手当)
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によって計算した金額を下ってはならない。
(以下省略)
**********************
◎休業手当の算定
算定対象期間における休業手当は、以下により求めます。
(1) 算定対象期間
賃金締切日が設定されている場合、直前の賃金締切日から遡って3ヵ月が算定の対象期間となります。
(2) 賃金の範囲
賃金、給料、手当、賞与、その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものです。当然ながら、通勤交通費も含ま
れます。
ただし、(4)「賃金総額から除外されるもの」として列挙している賃金は除外します。
(3) 通勤交通費
公共交通機関の複数月定期券代を一括支給している場合、支給している定期券代を期間月数割したものを1ヵ月の通勤交通費とします。
(4) 賃金総額から除外されるもの
①休業手当
②賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
③結婚手当など臨時に支払われる賃金
④法令、労働協約に基づいていない現物支給
〔注意〕
年俸制適用者の総賃金では、
1.月例○万円(年12回)
2.賞与1回につき○万円(年2回)
のように、年俸の支払方法について契約(協定)している場合の『賞与』は上記②に該当しませんので、賞与時支払合計額の12分の1を月例額に加 算しなければなりません。(昭二二・九・十三発基一七号)(平一二・三・八基収第七八号)
(5) 総日数
算定対象期間の『歴日数』を「総日数」といいます。
対象期間における『会社の稼働日数』や従員個々の『実働日数』ではありません。
(6) 総日数から除外されるもの
①業務上起きたケガ、病気のために休業した期間
②産休、育児・介護休暇
③会社責任による休業期間、試用期間など
※本件の休業は、「会社責任による休業」に該当します。
【関係法令等】
1 労働基準法
2 労働基準法施行規則(厚生労働大臣の通達)
3 平12.3.8基収第78号
4 昭22.9.13発基第17号
「労働者派遣法」とは「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号)」(最終改正:平成二一年七月一五日法律第七九号)の略称です。
その目的は同法第1条で、『この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。』とされています。
しかし、小泉政権時代(在職期間:平成13年4月26日~平成18年 9月26日,第87代、第88代、第89代総理大臣)から始まった構造改革による規制緩和と長期不況における労働市場の縮小で、派遣は拡大の一途を辿っています。その結果、企業においては今や派遣社員は雇用調整材料・労務費節減材料として位置付けられ、景況が悪化すれば「派遣切り」「雇い止め」などを合法的に行うことができるようになりました。
これは労働者にとっては「失業」という形で圧し掛かる現実であり、派遣法第1条に謳う「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進」とは真逆の運用結果となっています。
また、企業は労務費を節減する目的で、恒常的に必要とされる要員数の一部しか正社員として採用せず、本来的に不足する労働者を、企業にとって使い勝手の良い派遣社員で賄うことを初めから織り込んでいます。
このため、正社員としての労働市場は縮小し、大学は卒業したものの就職できない人達を大量に生み出すところとなっています。
かつては、新卒で就職しても自分に合わないと判断すれば容易に転職ができる状況でしたが、現在は、一旦退職すると次の就職先が金輪際見つからず、失業者となります。フリーターとして日々の糧を稼ぐ生活しか待っていないようです。雇用する側の条件(多くは選り好み基準)次第では、求職者が例え20歳代であっても、フリーターの口さえ閉ざされてしまうことがあります。
1980年以前のわが国の失業率は2%以下でしたが、1990年代半ばの所謂“失われた10年”以降、失業者は増加し続け、今や5.5%を超えようとしています。
行政および企業は、「労働者派遣法」には抵触していないとの安易なコンプライアンス感覚と「内部留保」一辺倒の企業理論を排除し、今のような派遣労働者が存在しなかった時代の雇用体制に戻ってもらいたいものです。
正社員が増え、わが国全体の可処分所得が安定的に増大すれば、最終消費も増加し、不況風は一掃されるのではないでしょうか
(総務省統計局データより)