以前「歌の中の職業」というエッセイで、歌に出てくる職業について書いたが、今回は植物について書いてみよう。
歌詞に植物が出てくる歌は実に多い。
桜、野ばら、野菊、すみれ、ゆり・・・枚挙にいとまがない。
♪ 水芭蕉の花が咲いている 夢見て咲いている・・・(夏の思い出)
ミズバショウは、高地の湿原に咲く花で、簡単に見れる花ではないから憧れを感じる。
この歌に憧れて尾瀬に行く人も多いと思われ、江間章子さんの功績は絶大なものがある。
あまりなじみのない植物もある。
♪ あの日は雨 雨の小径に白い ほのかな からたちからたち からたちの花・・・
島倉千代子さんが歌った「からたち日記」である。
♪ からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ・・・(からたちの花)
という北原白秋作詞の歌もある。
からたちと聞いて、どんな植物か思い浮かびますか。
鋭いとげを持ったミカン科の植物で、ピンポン玉くらいの実がなるが食べられない。
昔は生垣に植えられたが、今は見ることがほとんどない。
♪ あの雲もいつか見た雲 ああそうだよ 山査子(さんざし)の枝も垂れてる・・・(この道)
これも北原白秋作詞である。
サンザシは白い花をつけるバラ科の植物だが、私は見たことがない。実は、薬用になるそうだ。
花だけでなく実が歌われることも多い。
♪ 赤いリンゴに口びるよせて だまってみている青い空・・・(リンゴの唄)
♪ 私は真っ赤なりんごです お国は寒い北の国・・・(りんごのひとりごと)
りんごは、最も身近な果物で愛らしいから、歌に歌われやすい。
♪ 山の畑の桑の実を 小篭に摘んだはまぼろしか・・・(赤とんぼ)
昔は養蚕が盛んだったから桑畑が多く、黒紫に熟した実を食べたものだが、今、桑畑を見ることはほとんどない。
だが、野生の桑の実は今でも見ることができる。
♪ つまんでごらんよワン しゃぶってごらんよツー 甘くてしぶいよスリー 黄色いさくらんぼ・・・(黄色いさくらんぼ)
さくらんぼは、かわいらしくて、思わずつまんでしゃぶってみたくなる。
古い歌ばかり並べたが、新しくハイカラな(この言葉自体古いが)花の歌もある。
♪ 空を押し上げて 手を伸ばす君 五月のこと・・・つぼみをあげよう 庭のハナミズキ
一青窈さんが歌って大ヒットした「ハナミズキ」である。
植物にも流行り廃りがあり、からたちは島倉千代子さんが亡くなったように廃れてしまったが、ハナミズキは今や大人気で、あちこちで見かける。
我が世の春を謳歌するハナミズキは、鼻高々であろう。
タカサゴユリ(高砂百合、ユリ科)