ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

はじめに・・・

 外国語テーマも長く続かずなので、従来の健康ブログに戻してみようかと思いまして・・・ 備忘録的に残しておくと旧タイトルは「タイ語、漢字を使って覚えるの?」でした。(2023.8月記)

 従来の健康ブログ時に記事を書いていて、何故か、そろそろ外国語でも勉強した方がより良いかなーと思いつきまして、以来ちょこちょこと続けてきましたが、なんとなく、ある事を覚えると別の事を忘れてしまうモードに入ってしまったようで、知識量が停滞しつつあるような感じになりました。

 そこで、本ブログを外国語学習ブログに変更して、自分の備忘録的にまとめておこうかなと思いまして・・・。

 しかしながら、少し飽きたのか内容を増やしすぎたのか、書くのに手間がかかるようになり、時間がとれない時は、別ブログ「単語帳の素材?」にてライトな記事を書くことにしました。(この別ブログも徐々にライトでなくなり、記事を500本ほど書いたところで滞り中・・・)

 なお、健康ブログ時代の記事は、コチラの 入り口 からどうぞ。(2015.4月記)
 最近の健康系記事はカテゴリー「タイ語以外(健康2019)」からどうぞ。

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (7-3)

2012年08月29日 |  症例(報道ベース)

 今回も前回記事の続き。ただ始めに断っておくと、今回はとりあえず記録しておこうという意味合いの記事であり、特に目新しいことはないので、退屈かもしれない。

(7) 易感染性 (つづき)

(C) 風疹

 次は、最近よく報道でみかける風疹について。風疹の場合、妊婦が感染すると先天性障害児が生まれる可能性があるので、注意喚起される機会が多いように感じている。最近の報道だと、例えば、日経新聞及び「47News」から、

風疹、夏でも流行続く 感染者は過去5年で最悪
2012/8/23 12:25
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG21055_T20C12A8CC0000/ (リンクはココ

 春先から初夏にかけて流行する風疹が真夏になっても収まらない。今年の風疹の感染者数はすでに1100人を突破。全患者数の調査を始めた2008年以降で最大の流行となり・・・


【大型Q&A 風疹の流行】患者千人超、8割が男性 妊婦は胎児に影響も
2012/08/24 14:57 
http://www.47news.jp/47topics/e/233852.php (リンクはココ

Q なぜこれほど流行しているのですか。
A 流行の理由はよく分かりませんが、患者の8割弱が男性で、その大半は20歳以上です。男性の多くは免疫がないことが一つの要因とみられています。

Q 成人男性が風疹にかかりやすいのはどうしてですか。
A 現在は原則として男女とも1歳と小学校入学前1年間の2度、定期予防接種を受けることになっていますが、1994年度までは女子中学生に限られていたため、予防接種を受けたことがない成人男性が多いのです。男女が定期接種の対象になった後も05年度までは1回だけでした。

   [中略]

Q 妊婦が感染するとおなかの赤ちゃんに影響するそうですね。
A はい。特に妊娠12週ごろまでの女性が風疹になると、胎児にも感染し、難聴や白内障、心身の発達の遅れなどの障害がある赤ちゃんが生まれる可能性があります。
 
 
 風疹も、結核と同様、感染症法に基づく全数報告対象の感染症であり(2008年から。その前は定点報告対象)、週間報告件数の推移をみてみると、国立感染症研究所のサイトから(風しん速報グラフ第33週 http://www.nih.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/2012pdf/rube12-33.pdf。リンクはココ。pdfファイル)、


         図1 風疹の累積週間報告数の推移(2008年~2012年33週(8/22)まで)


 最近の動向のまとめについては、少し古いけど、同研究所のサイトから、

IDWR[感染症発生動向調査週報] 2012年第31号<注目すべき感染症> 風しん
(2012年8月8日現在)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-idwrc/2516-idwrc-1231.html (リンクはココ

 現在、風しんの報告は、人口密度の高い都市圏(関東地方、関西地方)や沖縄県などで多く、今後愛知県を中心とした東海地方での発生 動向も注意すべきである。どの地域においても、報告例の性別・年齢の傾向は同様であり発生の中心は成人男性である。一方で、女性の症例 の年別年齢群別割合の推移をみると(図)、出産年齢とされる年代が2012年は72%を占めており、先天性風しん症候群 (congenital rubella syndrome:CRS)が発生するリスクが非常に危惧される状況である。

 かつては定点報告対象だったわけで報告件数も多かったはずで、千件超えたからといって驚くことはないと思うけど、最近5年の動向からすれば、やはり何かが起きているとみてよいだろう。

 最後に、風疹と先天性風疹症候群に関する一般的な解説については、同研究所のサイトから、

風疹とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella/392-encyclopedia/430-rubella-intro.html (リンクはココ
先天性風疹症候群とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ha/rubella/392-encyclopedia/429-crs-intro.html (リンクはココ

 ついでに、gooヘルスケアから、

風疹(三日ばしか) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10PA0100.html (リンクはココ
先天性風疹症候群 http://health.goo.ne.jp/medical/search/101C0200.html (リンクはココ


 全数報告対象の感染症で全国ベースで最近増えているのは、以上の2つ(結核、風疹)と思われる。次に、定量ベースで把握可能な定点報告対象のものをみていこう。


(D) インフルエンザ

 全国ベースで増えているかと問われると、ちょっと微妙なところだけれど、とりあえずインフルエンザを押さえておこう。週間報告件数の推移については、国立感染症研究所のサイト「感染症発生動向調査週報(IDWR)」から(2012年32週、8/12の報告まで。http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html。リンクはココ)、


          図2 インフルエンザの定点当たり報告数の推移(2002~2012年)


 今年の2月あたりは多かったけど、その後収まる傾向となり、現状は例年並みの水準といえるであろう。ただ、地域によっては流行がみられるようだ。沖縄について、朝日新聞から、

沖縄、夏でも季節性インフル流行 高齢者の割合高め
2012年8月11日10時10分
http://www.asahi.com/national/update/0810/TKY201208100514.html (リンクはココ

 最近の動向のまとめについては、少し古いけど、同研究所のサイトから、

IDWR 2012年第29号<注目すべき感染症> インフルエンザ
[2012年7月22日現在]
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-idwrc/2488-idwrc-1229.html (リンクはココ

・・・2012年第5週に定点当たり報告数は42.62(報告数209,974)と流行のピークとなり、その後は減少傾向が続いていたが、ここへきて増加がみられている。

・・・一方、沖縄県では第26週以降にAH3亜型の検出割合の増加と共に患者報告数も急増してきており・・・第29週の同県からの患者報告数1,224は、全国の患者報告数のうちの90.3%を占めている。

 第29週の患者報告数の年齢群別割合をみると、60歳以上 18.1%、30代15.3%、20代12.3%、5~9歳12.2%、0~4歳12.1%の順となっている。60歳以上が最多を占め、また20歳以上の成人の割合が60%を超えているのは例年の季節性インフルエンザの報告数の年齢分布とは大きく異なっている(図)。


 年齢群別データでは「例年の季節性インフルエンザの報告数の年齢分布とは大きく異なっている」とされており、やはり何かが起きているのかもしれない。

 最後に、インフルエンザの一般的な解説については、国立感染症研究所のサイトから、

インフルエンザとは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu/392-encyclopedia/219-about-flu.html (リンクはココ


(E) 感染性胃腸炎

 感染性胃腸炎については、少し前口上から始めよう。先ず一般的な解説については、国立感染症研究所のサイトから、

感染性胃腸炎とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ka/intestinal/392-encyclopedia/383-intestinal-intro.html (リンクはココ

疫 学
 感染性胃腸炎という概念は、欧米でのInfectious diarrhea という概念に当てはまるが、この概念は基本的に鑑別診断をすすめる上での出発地点であり、起因病原体別に、あるいは、散発、アウトブレイク、食品媒介感染 といったその発生状況などから分類される。本疾患は、サーベイランスのための疾患概念であるが、多種多様な病原体の関与が想定され、一定の疫学パターンを とらないことが予想される。しかしながら、過去のデータからすると、例年初冬から増加し始め12月頃に一度ピークができた後、春にもう一つなだらかな山が でき、その後初夏までだらだらと続き、年によってはもう一度小さなピークができた後、減少していくという流行パターンをとっている。ウイルス性、特に SRSV [small round -structured virus、小型球形ウイルス]による流行が12 月のピークを形成し、その後春のピークはロタウイルスによって形成され、腸炎ビブリオなど細菌性のものやいわゆる食中毒によるものが夏期の原因になっている。
 すなわち、地域での散発、流行疾患として、あるいは食品媒介感染症の一部を捉えているものと考えられる。報告数から考えるとウイルス性の報告が多いため、罹患年齢は幼児及び学童期が中心となっている。 (強調は引用者)

 「感染性胃腸炎」はサーベイランスのための疾患概念なので、多種多様な病原体の関与が想定されるけど、過去の経験によれば一定のパターンを形成しているらしい。

 基本に戻って考えると、生体における消化器系の感染防御は、異物の侵入を阻止するためのバリアーと侵入した異物を排除するための免疫系から構成されている。この点については、例えば、サイト「柳田友道の小部屋」から、

微生物感染症の話 II  ヒトと菌との苦闘─感染症
http://www.geocities.jp/tyan91/bunc2.html (リンクはココ

【ヒト防御戦略の全体像】
  ヒトの生体防御システムの全体像をまとめると次のようになる。

     (1)バリアー
     (2)自然免疫(自然抵抗性)
           a. 体液性因子による免疫
           b. 細胞性因子による免疫
     (3)獲得免疫
           a. 体液性因子による免疫
           b. 細胞性因子による免疫

 病原菌が宿主体内に侵入しようとすると、皮膚その他のバリアーがある。菌がそのバリアーを突破して体内に侵入してきた場合には、自然に備わっていて常時働いている自然免疫性(自然抵抗性)と呼ばれるシステムが即座に対応する。それには血液などに存在する抗菌性の物質である体液性因子および貪食機能(菌を自己細胞内に包み込んで分解する作用)をもつ細胞性因子が対応している。そして自然免疫性が活動している間に、異物(外来の病原菌など)が体内に侵入してきたという情報を直ちにキャッチして、その対策(防御機能の獲得)を講ずるのが獲得免疫のシステムである。その方法としては自然免疫の場合と同様、体液性免疫と細胞性免疫とがある。

 コルチゾールの過剰によってリンパ球などの白血球の活動が低下すると、消化器内の免疫系も影響を受けることとなる。特に、腸管免疫系は、体内の最大の免疫系とされているので、影響が大きいと考えられる。この点については、例えば、全国発酵乳乳酸菌飲料協会・はっ酵乳、乳酸菌飲料公正取引協議会のサイトの上野川 修一氏(東京大学大学院農学生命科学研究所教授)の記事から、

食生活と腸管免疫・アレルギー
2003/06/15
http://www.nyusankin.or.jp/scientific/kaminogawa1.html (リンクはココ

腸管免疫系は病原細菌のみを排除する
 腸管免疫系は最も大きな免疫系である。すなわち、免疫系全体の60%の細胞や抗体から構成されている。この腸管免疫系には大きな特徴がある。すでに触れたように、食品のように安全なものと、病原細菌のように病原性のあるものを識別していることである。われわれは、生命を維持するため必要なものを受諾して分解し、体内に取り込んでいかなければならない。病原細菌も体内に入ると生命を危険にさらされる。しかしこの病原細菌も、食品と同様にたんぱく質、炭水化物、脂質からつくられているのである。これを食品などと判別し、排除している。

 さて、感染性胃腸炎の週間報告件数の推移については、国立感染症研究所のサイト「感染症発生動向調査週報(IDWR)」(2012年32週、8/12の報告まで。http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html)から、


          図3 感染性胃腸炎の定点当たり報告数の推移(2002~2012年)


 16週あたりから2週間、20週あたりから現在までは、だいたい過去10年で最大であるとみてよさそうだ。この状況を反映して、地域の報道でも感染性胃腸炎の増加を扱った記事を一時期よくみかけたと記憶している。例えば、長野日報から、

季節外れの感染性胃腸炎 諏訪地方でも流行
2012-6-1 6:00
http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=25155 (リンクはココ

あるいは以前記事でも紹介した千葉の例:

〔メモ〕千葉での感染性胃腸炎の増加  2012/5/15


(つづく)

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (7-2)

2012年08月26日 |  症例(その他)

〔更新履歴:9/2追記、9/23追記〕


(7) 易感染性 (つづき)

 前回記事の続きで、ウイルス性感染の代表例とされたヒト・ヘルペスウイルスについてみていこう。

 ヘルペスウイルスは100種類以上あるといわれていて、人に病原性を示すものとして次の8種類のヒト・ヘルペスウイルス(human herpesvirus、HHV)が知られている。

(a) HHV-1:単純ヘルペスウイルス1型(herpes simplex virus-1、HSV-1)
(b) HHV-2:単純ヘルペスウイルス2型(herpes simplex virus-2、HSV-2)
(c) HHV-3:水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus、VZV)
(d) HHV-4:エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)

(e) HHV-5:サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)
(f) HHV-6:ヒト・ヘルペスウイルス6型
(g) HHV-7:ヒト・ヘルペスウイルス7型
(h) HHV-8:ヒト・ヘルペスウイルス8型(あるいはカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus、KSHV))

 前回記事のラジオNIKKEIのサイトの記事で言及されていた「サイトメガロウイルス」はHHV-5であり、「ヘルペスウイルス」はHSV-1及びHSV-2のことであろう。

 ヒト・ヘルペスウイルスによる感染症の解説については、例えば、博多インフェクションコントロールフォーラム(HICA)内のサイト「感染症講義室」から、

ヘルペスウイルス感染症
http://hica.jp/kono/kogiroku/herpes/soron.html (リンクはココ

・ヘルペスherpes (ラテン)とは小水疱・小膿疱の集簇した状態である疱疹(ホウシン)のことである。
・ヘルペスウイルスは、DNA ウイルスである。・・・
   [中略]

・ヘルペスウイルス科のウイルスのほとんどは、人体(宿主)に初感染の後、潜伏感染する。これは、いわば冬眠状態みたいなものである。やがて、潜伏感染したヘルペスウイルスは、宿主が免疫不全に陥ることで、再び目覚め(再活性化)病的状態を来す。これを回帰発症recurrenceという。(重要事項)・・・

 具体例として、「水痘」と「帯状疱疹」の関係が挙げられる。この二つは、共にヘルペスウイルス科に属する水痘帯状疱疹ウイルスvaricella zoster virusによって生じる発疹性の疾患だが、同じウイルスによる違う時期に現れる病気の呼び名である。つまり、初感染で全身に水疱が出現するのが「水痘」(いわゆる水ぼうそう。好発時期は幼児・学童期)。そのウイルスの中で、神経節に潜伏して生体の老化・免疫低下によって回帰発症し、知覚神経に沿っての移動の後に知覚神経支配領域(皮膚デルマトームに相当)に多くの場合、片側性の有痛性水疱を形成したのが「帯状疱疹」

   [中略]

・回帰発症を引き起こす「再活性化への刺激」には日光(とくに紫外線)、外傷、ストレス、疲労、月経、発熱、神経に対する外科的侵襲、免疫抑制剤(ステロイド・シクロスポリンなど)がある。 

 

 コルチゾールの作用による免疫抑制は、前回記事でみたとおり、リンパ球を減少させるので、ウイルスなどの小さな異物に対する防御が特に手薄になることを意味している(顆粒球の直径は好中球で12~15μm程度であり、百分の1程度の大きさのヘルペスウイルス(0.1~0.2μm程度)を効率的に処理するのには難がある)。

 ヒト・ヘルペスウイルスによる感染症をまとめた一覧表については、上記リンク先でもみられるけど、潜伏部位などの情報が載ったものをサイト「医学用語集めでぃっく」から引用すると(ヒトヘルペスウイルス
http://meddic.jp/%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9。リンクはココ


                     表 ヒト・ヘルペスウイルスによる感染症


 上記表中の「主な疾患」欄に関し代表的なものについて、gooヘルスケアからのリンクを置いておくと、

HHV-1 & 2
単純疱疹(ヘルペス) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10P80300.html (リンクはココ
性器ヘルペス症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10341100.html (リンクはココ
HHV-3
水痘(みずぼうそう) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10PA0800.html (リンクはココ
帯状疱疹 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10P80200.html (リンクはココ
HHV-4
伝染性単核(球)症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10PA0500.html (リンクはココ
HHV-5
サイトメガロウイルス感染症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10PA0600.html (リンクはココ
HHV-6 & 7
突発性発疹(小児バラ疹) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10PA0300.html (リンクはココ


 ついでに、発がんとの関連することがかなり明確になっているのは、4種類ある(上記の表には載っていないものもあるけど、HHV-2の子宮頸がん、HHV-4のバーキットリンパ腫・胃がん・上咽頭がん、HHV-5の前立腺がん、HHV-8のカポジ肉腫)。

 また、HHV-6については、上記の表では触れられていないが、慢性疲労との関連性が指摘されている。この点については、書き始めると長くなりそうので別の機会に扱うことにして、関連記事のリンクを一つだけ紹介するに留めておこう。サイト「Co-Cure-Japan」(慢性疲労症候群とその関連疾患に関する情報提供のサイト)の記事から、

ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)と慢性疲労症候群
http://co-cure.org/jp/CFS/mm66.htm (リンクはココ

 最後におまけで、ヒト・ヘルペスウイルスに関し病理像に興味があれば、国立感染症研究所の感染病理部のサイトから、

感染症の病理 http://www0.nih.go.jp/niid/pathology/kansensho-byouri.html (リンクはココ。リンク先からウイルスの種類を選択可能)


 易感染性とコルチゾールとの関係の話はこれくらいにして、次に、易感染性に関連する疑わしい症例をみていこう。

(A) 一般論

 一般的な話で噂話のレベルだと、例えば、某掲示板の緊急自然災害板から、

112 名前:地震雷火事名無し(中国地方) 投稿日:2012/08/13(月) 07:23:04.22 ID:MeJWKHmL0
  色んな感染症やインフルエンザが夏にでも流行るのって、免疫がなくなって
  身体が相当弱ってる人が多いってことだよね。
  去年からずっと色んな感染症がウナギのぼりだなと。
  性感染症も調査したら激しく増えてそう。
  肝炎は感染力が強くて感染しやすいから、凄く増えてそうな気がする。

113 名前:地震雷火事名無し(やわらか銀行) 投稿日:2012/08/13(月) 07:47:56.89 ID:b8mHaGt40
  そのうちエイズ感染して無くても、カリニ肺炎とか起こすレベルになるんだろうね。
  少しずつ、気づかない程度に進行する白血病のようなイメージか・・・

116 名前:地震雷火事名無し(新潟県) 投稿日:2012/08/13(月) 09:08:18.09 ID:HTHqx1YS0
  インフルエンザくらいならいいけど
  結核が蔓延したらと思うとgkbr.
  昨年家族が高熱続いて入院して、結核の疑いがあるって言われたんだけど
  生きた心地がしなかった。
  結局、結核ではなくて原因は不明のままだったんだけど。

120 名前:地震雷火事名無し(中国地方) 投稿日:2012/08/13(月) 09:56:30.13 ID:MeJWKHmL0
  >>116
  結核は薬が全く効かない、多剤耐性結核が増えてるのも怖い。
  超多剤耐性結核なんてものあるらしい。
  元々身体が弱ってるから結核に感染するんだろうけど、多剤耐性結核になったら自分の免疫力で
  勝負するしかなくなるわけで、その免疫力がないのに治るわけがないという…

 少し確かなソースでの一般的な話だと、例えば、みんなのカルテ保管庫から、

509 私:生理不順 家族:免疫力弱く
http://sos311karte.blogspot.jp/2012/07/509.html (リンクはココ
(インフルエンザ、風邪、帯状疱疹、胃腸炎、溶連菌感染を指摘)


 次に、もう少し定量的にみることとして、公的な発表ベース(主に厚労省系)、あるいはそれらに基づく報道ベースでみていこう。ここでは、全国ベースの数値でみることにするけど、地域的な動向については、興味があるなら、都道府県ベースの数値もある筈なので各自でチェックしてほしい(例えば、北海道だと道のサイト「北海道感染症情報センター」 http://www.iph.pref.hokkaido.jp/kansen/index.html)。


(B) 結核

 厚労省により全数把握感染症に指定されている。年別の数値みておくと、2011年から増加傾向にあることがわかる。

表 結核の年別報告数(全国)
  西 暦  2007 *1  2008   2009   2010   2011  2012 *2
  報告数 21,946  28,459  26,996  26,866  30,810  17,836
注)*1. 2007.4.1からの集計のみ。 *2. 32週(8/12日分)までの集計。
出典)国立感染症研究所のサイト「感染症発生動向調査週報(IDWR)」 http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr.html。

 最近の傾向だと、全国ベースで拡大しているのか、長くみられなかった地域で集団感染がみられる点であろうか。最初の香川の例は毎日新聞から、次の沖縄の例はサイト「QLife Pro」から、

結核:小豆郡の病院で集団感染 入院患者ら31人 /香川
2012年07月25日
http://mainichi.jp/area/kagawa/news/20120725ddlk37040641000c.html (リンクはココ

 県内での結核集団感染は99年以来13年ぶり。・・・


沖縄で結核集団感染で妊婦が死亡 広がる不安
2012年08月03日
http://www.qlifepro.com/news/20120803/unrest-maternal-mortality-in-tuberculosis-outbreaks-in-okinawa.html  (リンクはココ

 11年ぶりの集団感染


 忘れていたので結核の一般的な解説を貼っておくと、gooヘルスケアから、

肺結核 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10730100.html (リンクはココ

 ついでに取り上げておくと、一度肺結核に罹った人では、3.11後では呼吸器系の感染抵抗力に問題が生じているとの指摘もある。木下黄太のブログから、

肺結核既往歴の死亡例増加。橋本病の悪化、都内在住で好転しない人と移住で好転した人という違い。
2012-04-17
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/65e8e54b6729953132ef0b8a6ab339ce (リンクはココ

 

(つづく)

 

・9/2追記: 上記の「木下黄太のブログ」記事に記載されていた状況と類似していると思われる、結核感染で肺炎を合併する例をみかけたので記録しておこう。某掲示板の緊急自然災害板から、

318 名前:地震雷火事名無し(東日本) 投稿日:2012/08/29(水) 23:23:27.21 ID:P7OE/rUE0
  医療関係者の中の人から情報。

  首都圏の高線量地帯で、今夏の初め、肺結核患者が複数出た。
  いずれも成人で、未成年者ではない。
  それも、「何とか肺炎」という、珍しい肺炎を併発しているケースが多かった。
  そのため、ある患者などは
  「この人エイズじゃないか?」と医者に疑われ、エイズ検査まで受けさせられた。
  患者側にも、思い当たる節があったのだろうか…?
  しかし、幸いにしてエイズではなかったようだ。

  エイズ患者と疑われるほどに、免疫力が低下している人が多くいるようだ。

 ここでいう肺炎は、エイズとの関連が疑われているので、多分ニューモシスチス肺炎(かつてのカリニ肺炎)であろう。これについては、gooヘルスケアから、

ニューモシスチス肺炎
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10721200.html (リンクはココ

 

・9/23追記:
 東京のホットスポット周辺での集団感染の事例。報道振り及び当局の公表をそれぞれ産経新聞及び東京都のサイトから、

都内で結核集団感染 足立の男性ら63人
2012.9.20 21:24
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120920/tky12092021240011-n1.htm

結核集団感染の発生について
平成24年9月20日
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/09/20m9k800.htm

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (7-1)

2012年08月22日 |  関連(生物学医学)

 今回も前回記事の続きだけど、その前に、このシリーズのタイトルの変更についてお知らせ。

 従来「コルチゾール過剰症」としていたけど、いろいろ症状があるようなので、「コルチゾール過剰症候群」に変更した。これは、なんとなく気分の問題といえる。

 あと、タイトルの付番の仕方を変更した。これは、夏バテもあり(節電バテ?)、まとめて長い記事を書くのが億劫になってきたので(涼しくならないと書く気が起きない、ではいかんし)、1つの項目を分割して記事をかいても後で検索しやすいようにという趣旨のもの(簡潔に書けばよいのに「ついでに」とか言って長々と趣味の領域を書くからだという意見もあろうが・・・)。

 お知らせは以上で、ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾールの関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

(7) 易感染性

 易感染性へのコルチゾールの関与については、以前の記事(ココ)で触れたように、コルチゾールの基本的な作用には免疫抑制作用があり、このためコルチゾールの過剰は過度の免疫力の低下を招くことが関係している。この点を少し詳しくみると、ラジオNIKKEIの番組サイト「アボット感染症アワー」から、

ステロイド薬長期投与における重症感染症
2010年7月9日放送
http://radio848.rsjp.net/abbott/html/20100709.html (リンクはココ

ステロイド薬の免疫抑制作用
 ステロイド投与により感染症を起こす機序として重要なのは白血球に対する作用です。白血球分画は顆粒球と単核球に大きく分かれ,顆粒球には好中球・好酸球・好塩基球が,単核球には単球とリンパ球があり,リンパ球のなかには,液性免疫に関与するBリンパ球,細胞性免疫に関与するTリンパ球があります。通常は好中球がおおよそ6~7割を占め,リンパ球は2~3割です。

 ステロイド投与によりリンパ球の絶対数が低下します。特にCD4陽性のTリンパ球が減少することが問題となります。その結果、Tリンパ球由来のサイトカイン産生が低下します。例えばIL-1,IL-2,IL-3,IL-6,IL-8など,さらに腫瘍壊死因子(TNF)やインターフェロン-γなども低下します。
 また,これらにより,Bリンパ球の産生低下も来しますので,免疫グロブリンなど抗体の産生が低下します。

 実際にはステロイド投与により,末梢血中の白血球数、特に好中球数が著しく増加します。この作用機序として,好中球が骨髄貯蔵プールから末梢血へ動員されることが要因といわれています。一見するとこれは感染防御に働くように思われます。好中球が感染の炎症部位において働いていれば,問題はないのですが,炎症部位への好中球の遊走能はむしろ抑制されることが指摘されていますので,感染症の遷延化を招くことになります。また単球やマクロファージの機能も抑制されます。

 採血結果を見た時に免疫力の指標として,好中球が増加しているから免疫力が保たれていると思われがちですが,油断してはいけません。白血球分画においてリンパ球の占める割合が減少していることに注意すべきです。

 この内容を簡単に表にまとめると、

表1 白血球に対するコルチゾールの作用
 白血球の種類        コルチゾールの作用
  リンパ球            絶対数の減少(特にCD4陽性のTリンパ球)
  顆粒球             好中球の数の増加、好中球の遊走能の抑制
  単球・マクロファージ     機能の抑制
出典)上記記事。


 また、以前の記事(ココ)で使った表を再掲しておくと、

表2 白血球の役割、種類とその進化(4つの階層)
    役   割      免疫系の区分       白血球の種類
 4 外来の小さい異物を処理  獲得免疫(液性)  進化したリンパ球(胸腺由来T細胞、B細胞) 
 3 自己の異常な細胞を処理  獲得免疫(細胞性) 古いリンパ球(NK細胞、胸腺外分化T細胞) 
 2 外来の細菌を処理      自然免疫      顆粒球(このうち好中球が9割以上) 
 1 基礎的な防衛・司令塔    自然免疫      単球/マクロファージ(単細胞時代の名残り)
出典)安保 徹「免疫革命」(主に第5章)。


 リンパ球については、コルチゾールの作用によりリンパ球数が減少するとされ、液性免疫と細胞性免疫の両方の機能が低下することとなる。細胞性免疫の機能が低下するということは、この記事では触れられていないが、易発がん性も意味することとなる。

 単球・マクロファージについては、その機能が抑制されるとされるが、マクロファージは司令塔の役割を持っており、指令される方のリンパ球数が減るので、ある意味、整合性がとれていると言えるだろう。

 顆粒球については、その大部分を占める好中球は機能の抑制を受けるものの、代わりにその数が増加するとされている(なお、この記事では触れられていないが、好酸球及び好塩基球については、ともにその数が減少するとされている)。好中球全体として機能がどうなるかは定量的に議論しないとわからないが、横ばいか、あるいは増強と推測できるのではないだろうか。

 なぜなら、縄文人が実際に闘争・逃避反応を実行に移す状況では、擦り傷や切り傷が絶えないはずで(逃避にしても、舗装道路上を移動するはずもなく、獣道のようなところを走るわけだろうし)、そうすると傷口から侵入する外来の細菌への防御は、低下させたくないという事情があるからだ。


 ついでに、冒頭リンク先の記事には感染症の内容を説明したくだりがあるので、同記事からその部分を引用しておくと、
 
ステロイド投与中にみられる感染症
 ステロイド投与中に発症または重症化する感染症として代表的なものは,呼吸器感染症と尿路感染症です。代表的な細菌は黄色ブドウ球菌や大腸菌,緑膿菌などが挙げられます。

 細菌以外で注意しなければならない病原微生物は,ニューモシスチス・イロベチです。これは以前はニューモシスチス・カリニといわれ原虫に分類されていましたが、近年は名前が変わり、分類も真菌の一種とされています。カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカスなどの真菌や,サイトメガロウイルスやヘルペスウイルスなども重要です。ウイルスに関しては,潜伏感染していたものが免疫力低下により再活性化して感染症を引き起こすと言われています。 

 ステロイドによる易感染宿主における肺炎は特に重要で,ニューモシスチスやウイルス,真菌による日和見感染由来の肺炎は急速に重症化しやすいことから, 早期発見・早期治療が望まれます。たとえば,患者がかぜをひいたと思って,近隣のクリニックを受診した場合,実はステロイドを服用中である事を把握できなかったことで,予後不良の転帰をとることがあります。初診患者などで感染症が考えられる場合は,問診において既往歴、ステロイド服用の有無,用量,服用期間などを聞くことが重要です。

 また,プライマリケアで遭遇することが多い帯状疱疹にも注意しなければいけません。ステロイド投与によるウイルスの再活性化を常に念頭に置き、水泡が悪化する前に治療を開始すべきです。

 この内容を簡単にまとめておくと、

(A) 代表的な感染症は、呼吸器感染症、尿路感染症。
(B) 代表的な細菌は、黄色ブドウ球菌大腸菌緑膿菌など。
(C) 代表的な真菌は、ニューモシスチス・イロベチカンジダアスペルギルスクリプトコッカスなど。
(D) 代表的なウイルスは、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスなど。

 (A)の「呼吸器感染症」については、普通の風邪、インフルエンザあるいは結核などが関連し、ここで解説されている肺炎のほか、喉の痛み、咳、気管支炎、喘息なども出やすくなるのであろう。また、「尿路感染症」については、病原菌との接触のし易さを考えれば、やはり膀胱炎であろうか。

 (B)の3つの細菌、(C)の4つの真菌については関連しそうなwikiのリンクを貼っておいたので、興味があればどうぞ。後者については、いわゆる日和見感染の原因として多くみられるものである。

 (D)については、挙げられているのは要はヒトヘルペス・ウイルスのことだけど、この点については、書き始めると長くなるので、次回へ。


(つづく)

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (6)

2012年08月17日 |  過去症例(チェルノブイリ)

 今回も前回記事の続き。ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾールの関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

(6) 骨頭無菌性壊死

 先ずはちょっと脱線。個人的にいろいろ謎を抱えているのだけど、その一つが「藤波心の謎」。

 「藤波心」というのは、B級アイドルの中学生(高校生?)のことで、最近は何故か反原発運動のマスコット的存在に収まりつつあると感じるのは気のせいだろうか。なお、彼女を映像でみたい方は、朝日ニューススターの番組「ニュースの深層」から、

2012.2.28(火) ニュースの深層「私たちの未来と脱原発を考える」 2/3
http://www.youtube.com/watch?v=gr36NeIC_RY&t=4m25s

(リンクはココ時間指定あり。part 3/3にも続く筈だけど、見ていないないので貼るのは省略。おしどりマコ氏の部分はpart 1/3から全部みたけど・・・)

 また、ここで「謎」というのは、ある出来事があった際にその出来事の意味を個人的に考えることが多いのだけれど、その背景、前後の文脈などから読み取ってみてもその出来事の意味を個人的に上手く納得できないという趣旨であって、そういった際は「○○○の謎」という腑に落ちなかったラベルを貼って頭の中を整理しているのである。

 なので「藤波心の謎」というのは、より正確に言うと、藤波心さんが3.11後に無名のB級アイドルから反原発運動のマスコット的存在にたどり着いたのは何故か、ということである。自然発生的なものかもしれないし、そうではないかもしれない。

 一般人に混じれば十分カワイイだろうが、正統派美人でもないし、個性的な顔立ちでもないし、有名になったきっかけとされるブログ記事は当時リアルタイムで眺めた気がするけど印象に残ってないし。いかにも普通のB級アイドルという雰囲気しか感じとれないのだが・・・。 

 最近どうも、巷では彼女の評判が悪いように感じられる(個人的には余り興味がないので中立的)。例えば、つぶやきまとめサイト「Togetter」から、

藤波心 http://togetter.com/li/347286 (リンクはココ

 だからナンナンだという声が聞こえるような気がするけど、要は、批判はかまわないけど、一応未成年なので彼女本人と彼女を取り巻く大人達とを区別して、彼女本人へは暖かい目で対応すべきかなと。なぜなら、彼女自身は本物かもしれないので・・・


 さて、どうでもよさそうな話から離れて、本題に入ると、骨頭無菌性壊死の概要については、サイト「無駄口薬理学」から、

ステロイド剤の新しい事実 http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/1999.5.15.htm (リンクはココ

骨頭無菌性壊死

原因薬剤:ステロイド剤

<症状>
 大腿骨壊死の場合、初期症状の大半は歩行時や起立時の股関節付近の疼痛ですが、必ずしも股関節が初発というわけでなく、腰痛、膝痛、臀部痛、大腿部前面部痛などを初期症状とすることも多く、腰椎椎間板ヘルニア等の腰椎に関連する疾患と誤診されることも少なくないと報告されています。
 大腿骨以外の部位に骨壊死の合併症をみる例が10~20%あり、その部位は、大腿骨遠位端、上腕骨頭、脛骨近位端、手舟状骨、上腕骨小頭、距骨などがあります。

 患者用:歩くときや立ち上がる時の股関節付近の痛み、腰の痛み、膝の痛み、臀部の痛み、太もも前面の痛み (頁中の3番目あたりの項目)

 要は、骨の壊死のことらしい。ちなみに、無菌性というのは、細菌、真菌などによるものでないという趣旨であろう(例えば、ウイルス性、薬剤性など)。特に発症例が多いとされる大腿骨頭部については、gooヘルスケアから、

大腿骨頭壊死 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10980700.html (リンクはココ

大腿骨頭壊死とはどんな病気か
 股関節内の大腿骨頭(大腿骨の骨盤側、球形の形のため骨頭と呼ばれる)の軟骨直下の骨が、血行障害により栄養分がとれずに壊死状態になって脆弱化(ぜいじゃくか)し、つぶれて破壊される病変です。
 小児に発生するペルテス病は、ほぼ同様の部位に発生しますが、修復能力が高いことが特徴です。大腿骨頭壊死は大人の血行障害のため、小児のような修復は望めず、治りにくく、厚生労働省の難病に指定されています。

 これは成人の場合だが、子供の場合についても似たような病態があるようで、上記引用の解説のとおり、別の病名が付いている:

ペルテス病 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10980300.html (リンクはココ

 ついでに、成人の場合は難病に指定されているらしいので、公益財団法人 難病医学研究財団のサイト「難病情報センター」から、

特発性大腿骨頭壊死症(医療従事者向け) http://www.nanbyou.or.jp/entry/306 (リンクはココ
特発性大腿骨頭壊死症(一般利用者向け) http://www.nanbyou.or.jp/entry/160 (リンクはココ

 似たような内容だけど、前者の方から一部引用しておくと、

・概念
 大腿骨頭壊死症は大腿骨頭が阻血性壊死に陥って破壊され、股関節機能が失われる難治性疾患である。大腿骨頭壊死症のうち、 明らかな基礎疾患がないものが特発性大腿骨頭壊死症とされ、ステロイド性、アルコール性および狭義の特発性にさらに分類される。本邦では全身性ステロイド大量投与に伴う大腿骨頭壊死症は、ステロイドと壊死の因果関係がまだ明確でないことから特発性に分類されている。特発性大腿骨頭壊死症の治療は長期間に及ぶこともあり、医療経済学的に問題が大きい。また、青・壮年期に好発して労働能力を著しく低下させることから労働経済学的にも大きな損失を生じる。患者の QOL に大きな影響を与えるため、早期に適切な診断を行い、適切な治療へと結びつけていく必要がある。

・症状
 骨壊死が発生しただけの時点では自覚症状はない。自覚症状は大腿骨頭に圧潰が生じたときに出現し、この時点が大腿骨頭壊死症の発症である。大腿骨頭壊死症の発生と発症の間には数ヵ月から数年の時間差があることを十分に認識すべきである。
自覚症状としては、急に生じる股関節部痛が特徴的であるが、股関節周辺には自覚症状がなく、腰痛、膝部痛、殿部痛などで初発する場合もあるので注意が必要である。また、初期の疼痛は安静により2~3週で消退することが多いことや、再び増強したときにはすでに大腿骨頭の圧潰が進行していることも知っておくべきである。アルコール愛飲歴やステロイド大量投与歴のある患者がこれらの症状を訴えた場合は、まず本症を念頭に置いてMRIを撮像することが望ましい。


 次に、骨頭無菌性壊死へのコルチゾールの関与の仕方は、サイト「無駄口薬理学」の前掲リンクの記事から(「ステロイド剤の新しい事実」 http://www.sam.hi-ho.ne.jp/tootake/1999.5.15.htm)、

骨頭無菌性壊死
  [中略]

<機序>
 本症の発症機序は未だに十分に解明されていません。特発性では荷重との関連も考えられていますが、ステロイド性では多発性であり、骨髄内栄養血管の終末部位に一致する傾向があることから、むしろ脈管系の障害が考えられています。
 大腿骨頭部は栄養血管に乏しく、なんらかの血行障害により容易に血流が低下します。成因として骨髄内の脂肪細胞増加、脂肪栓塞による循環障害や骨髄内圧上昇など、ステロイド剤による脂肪代謝障害の関与が考えられてきましたが、明確でないと報告されていまする。

 残念ながら、この病気の原因は未だに十分に解明されていないので、コルチゾールの関与の仕方も明確にはわからないが、血行障害が主因のようであり、血管病の一種の可能性があるのではなかろうか。

 また、難病情報センターの前掲リンクの記事によれば(特発性大腿骨頭壊死症(医療従事者向け) http://www.nanbyou.or.jp/entry/306)、

・病因
 病因として、酸化ストレスや血管内皮機能障害、血液凝固能亢進、脂質代謝異常、脂肪塞栓、骨細胞のアポトーシスなどの関与が指摘されている。これらのなかで、最新の研究成果として血管内皮細胞の機能障害が注目されており、ステロイドが血管内皮細胞のアポトーシスを誘導することや、 eNOS発現を抑制してNO bioavailabilityを低下させ、その結果血管内皮機能が低下することが報告されている。しかし、本疾患発生に至る一義的原因としての十分な科学的根拠までは得られていないのが現状であり、動物モデルを用いた基礎的研究や臓器移植症例を対象とした臨床的病態解析が続けられている。

 ここで紹介されている最新の研究成果から推測すると、

酸化ストレス →コルチゾールの過剰 →血管内皮機能障害といった経路

が関与しいてる可能性もあるだろう。


 更に次へ進むと、骨頭無菌性壊死に関連する疑わしい症例については、残念ながらはっきりわかるものは未だみかけたことがない。

 この点については、「骨壊死が発生しただけの時点では自覚症状はない」、「大腿骨頭壊死症の発生と発症の間には数ヵ月から数年の時間差があることを十分に認識すべきである」との難病情報センターの記事による指摘もあるので、未だ発生例がわずかしかないからとも考えられる。

 従って、やむを得ずチェルノブイリに関連した疑わしい例をあげておこう。ブログ「院長の独り言」のとある記事に対するイタリア在住の方からコメントから、

子どものタンパク尿検査を-バンダジェフスキー氏の講演会から
2012年03月20日
http://onodekita.sblo.jp/article/54551127.html (リンクはココ

この記事へのコメント

院長先生 とてもお世話になっております。ありがとうございます。バンダジェフスキー氏に関する、マイナーな解説をいろいろ目にしました。わたしは医学の知識は有りませんが、大腿骨の骨頭壊死を患って以来、医学というのは、実は意外に何もわかってはいないのではないか? というような感覚を持っています。放射能の影響も、バンダジェフスキー氏の経験を価値のないものだ といえる 何かが解っているのか、とても疑問に思いました。
わたしはチエルノブイリの2年後から、北イタリアの低度?汚染地に住んでいます。4年目(35歳)で骨折、処置から1年後に壊死が進んでいることが判明しました。日本では、ステロイドの治療でもしない限りかなり珍しい病気だと言われましたが、こちらでは時々聞く病名です。まあこんなハナシは何の役にもたたないと思いつつ、骨折のtweetが気になったので報告しておきます。
Posted by 加藤千恵 at 2012年03月21日 07:03 (強調は引用者)

 このコメントによれば、時系列はだいたい次のような感じで、汚染に触れてから診断が出るまでの間に約5年が経過したと推測される。

1988年 北イタリアに移住(低汚染地域の模様)
1992年 大腿骨骨折
1993年 その後大腿骨の骨頭壊死が判明
     現在も北イタリアに在住


 さて最後に、冒頭のどうでもよさそうな話に戻ろう。

 仮に、自分の母親が原因不明の珍しい病を患っていて、子である自分にも遺伝する可能性があるとしよう。読者の方がこのような立場に置かれたら、何をするだろうか。

 情報化社会だし、最近の子供であればインターネットとか、あるいは親を通じて患者同士のネットワークなどを利用して、徹底的にその病気を調べるのではないだろうか。

 今年1月下旬の東京新聞の記事に出てくる女の子はそんな状況にあったと見受けられるけど、何らかの行動をとったのだろうか。ネットなどで調べただろうか。調べたとして、どういった情報が引っかかったのだろうか。同記事のオリジナルはみあたらないので、それらしいものを某掲示版から、

中学生アイドル・藤波心さん 一人一人が声上げて危機感語ったブログ炎上
(東京新聞 こちら特報部 1月22日)
http://www.asyura2.com/12/genpatu20/msg/436.html (リンクはココ


 「藤波心の謎」は未だ解けていないと個人的に感じるが、繰り返しになるけど、彼女自身の当初の動機は本物である可能性もなきにしもあらずなので(仮にそうでも、取り巻きの大人たちにその後操られていく可能性は残るけど・・・)、もう少し長い目で暖かくみてあげた方がよいかなと思う。急がなくとも、いずれ分かるときが来るだろうし。


〔その他の参考サイト〕

メルクマニュアル 医学百科 家庭版から、
無血管性骨壊死
http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec05/ch064/ch064a.html

 

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注) ・8/22 タイトル変更。

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (5)

2012年08月15日 |  症例(その他)

 今回も前回記事の続き。ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾールの関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

(5) 骨粗しょう症

 骨という組織も、日々の管理・修繕があってその機能を維持している。一説によけば、骨は新陳代謝(再構成(リモデリング)とも呼ばれる)のため3年程で全て作り替えられるとの話もある。脆くなったり古くなったりした部分を壊す作業(破骨。あるいは骨吸収(カルシウムが血液中に出て行く点を強調した名づけ方))と新たに骨を作る作業(骨形成)とがバランスよく行われ、骨の機能が維持されているのである。このあたりについては、例えば、武田薬品のサイト「骨粗しょう症のはなし」から、

骨の再構築(リモデリング) http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/osteoporosis/shikumi/04.html (リンクはココ

 以前の記事でも触れたけど、縄文人が野生動物に囲まれて危険を感じて身を隠しているような状況では、生命の危険というストレスを受けてコルチゾールが分泌されるフリージング(すくみ)反応が起こり、その反応は、筋肉などを分解して近く起きるであろう闘争・逃避反応の準備をしいると解されるのであった。

 さて、このような危険な状況で待機しているとして、筋肉を分解しつつエネルギーを得て、通常どおり骨の新陳代謝の水準を維持する必要があるのだろうか。多分ないだろう。コルチゾールの基本的な作用には、以前の記事で触れたように、抗炎症作用と免疫抑制作用とがあった。骨の新陳代謝よりも重要そうな分野(炎症、免疫)で活動水準を下げてまでエネルギーを節約しているわけで、骨の管理・維持もエネルギー節約のため当然に手抜きも許されるだろうと考えられる。なぜなら、2、3日間手抜きをしたところで、即座に影響はでないと推測されるからだ。

 この議論は今後も何度も出てきそうなので、この観点からコルチゾールの基本的作用を再整理すると、次のようになるだろう:

(a) 抗ストレス作用、
(b) 闘争・逃避反応に役く立ちそうな機能・作用の増強(糖新生・血糖値の上昇、脂肪分解促進など)、
(c) 闘争・逃避反応との関連性が薄い機能・作用については、エネルギー節約のために抑制(抗炎症性、免疫抑制など)。


 前置きはこれ位にして、骨粗しょう症の一般的な解説については、例えば、gooヘルスケアから、
 
骨粗鬆症 http://health.goo.ne.jp/medical/search/109A0100.html (リンクはココ

骨粗鬆症とはどんな病気か
 骨量の減少と骨組織の微細構造の異常の結果、骨に脆弱性(ぜいじゃくせい)(もろくて弱くなること)が生じ、骨折が生じやすくなる疾患です・・・

症状の現れ方
 通常、骨量の低下のみでは症状が出現することはありません。骨折に伴って疼痛や変形が出現します。
 原発性骨粗鬆症では、股関節の骨折(大腿骨頸部骨折)、手首の骨折(撓骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ))、脊椎(せきつい)圧迫骨折が多く発症します。一方、ステロイドによる二次性骨粗鬆症では脊椎椎体(ついたい)骨折が多く、関節リウマチによる二次性骨粗鬆症では、脊椎、四肢に限らずあらゆる部位に骨折がみられます。
 脊椎椎体圧迫骨折では、後弯(こうわん)の進行や潰れた椎体により脊髄が圧迫され、後になってから下肢の運動・知覚麻痺や排尿・排便障害が現れることがあるので注意が必要です。また、骨折した脊椎が癒合(ゆごう)しないため(偽関節(ぎかんせつ))、頑固な腰背部痛が残ることもあります。


 症状の現れ方については、簡単な記述しかないので少し補足しておくと、厚労省作成の資料から(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のサイトから入手可能。なお、同種のマニュアルの一覧は同サイト内 http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/juutoku_index.htmlを参照。リンクはココ)、
 
重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け) 骨粗鬆症 平成21[2009]年5月
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0905013.pdf (リンクはココ。pdfファイル)

2.副作用の概要
 ステロイド性骨粗鬆症とは、経口ステロイド薬による骨代謝系への直接または間接作用により骨粗鬆症が生じ、骨折が生じやすくなる状態である。骨折が生じる部位により関連した部位に疼痛、神経麻痺症状など多彩な症状を呈する。

(1) 自覚的症状
 原則的に骨折が生じなければ自覚症状はない。骨粗鬆症性の骨折は一般的に軽微な外傷により生じるが、骨の脆弱性が特に著しい場合には、外傷がなくとも骨折を生じる場合がある(体幹荷重や通常歩行のみによる慢性的な負荷がかかった場合や筋の強力な緊張がかかった場合など)。骨折部の疼痛は安静時よりも運動時に強い。骨粗鬆症による骨折は海綿骨が豊富な部位に生じやすいため、脊椎椎体と四肢長管骨の骨幹端部が好発部位である。また、骨折は肋骨にも好発する。骨折が治癒しても変形を残す場合には持続的な疼痛などの症状が生じることがある。

脊椎椎体骨折による症状:腰背部痛(骨折による急性の疼痛と、骨折後に残存する椎体変形に由来する脊柱変形により生じる慢性の疼痛)のほか、骨折椎体高位の神経支配域の放散痛(体側部痛)や殿部痛を伴う場合がある。脊柱管内への骨片の突出が大きければ下肢の筋力低下や知覚障害、膀胱直腸障害などの神経麻痺症状を生じる。骨折が治癒せずに偽関節を生じると、不安定性による遅発性の脊髄麻痺を生じることがある。また、椎体骨折や脊柱変形に伴い身長が低下する。50 歳以後で2cm以上、若い頃から4cm 以上身長が低下した場合には椎体骨折が生じている可能性がある6)8)。

四肢の骨折による症状:骨折部の疼痛、腫脹、変形などが生じる。下肢骨骨折の場合は歩行困難または不能となる。 (同資料9-10頁から)

 ついでに、公益財団法人 骨粗鬆症財団のサイトから、骨粗しょう症関係の用語集と、イラスト入りの症状の現れ方も紹介しておこう。

用語集 [骨粗鬆症関係]
http://www.jpof.or.jp/grossary.html (リンクはココ
骨粗鬆症ってなに? - どんな症状がでるの?
http://www.jpof.or.jp/about-sympson.html (リンクはココ


 次に、骨粗しょう症へのコルチゾール関与の仕方については、わかりやすそうな解説をみつけたので、先ずは他力本願でいくと、「六号通り診療所所長のブログ」から、

ステロイド性骨粗鬆症は何故起こるのか?
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2011-07-12 (リンクはココ

 このように有用性の高い薬であるステロイドですが、皆さんも御存知のように、多くの副作用が存在します。
その中で、これまでやや軽視されることの多かったのが、ステロイドにより骨の健康が損なわれ、骨折や骨壊死などが起こるという、骨への有害作用です。
ステロイドの使用は骨粗鬆症の原因となり、かつまた骨壊死という特殊な骨の病変の、原因ともなります。

 ステロイドによる骨の病変は、どのくらいの頻度で起こるのでしょうか?
 [長いので、中略]

 しかし、事前の骨塩量が正常でも、ステロイドによる骨折のリスクは増加し、そのし易さを、その数値で推測することは出来ないのです。
何故そうなのか、ということを考えるには、ステロイドが何故骨を脆くするのか、という原因を考える必要があります。

 骨には骨細胞があり、それ以外に骨を造る働きを持つ骨芽細胞と、骨を壊す働きを持つ破骨細胞があります。
通常の閉経後の骨粗鬆症では、破骨細胞の機能が相対的に高まるので、骨は破壊される方向に働き、骨の破壊が進行して、それにつれて骨塩量も減少します。
つまり、こうしたタイプの骨粗鬆症では、骨塩量すなわち骨量を、定期的に測定することが、骨折のリスクをある程度推測する上で、意味のあることなのです。

 一方でステロイドによる骨病変では、病変の主体は骨細胞そのものにあります。
ステロイドの影響により、骨細胞は壊死をし易くなり、その寿命が短縮するので、骨自体の栄養状態が悪化し、骨の中の細胞数が減少します。これはステロイドが骨の成長因子を、強く抑制する作用によると考えられています。
破骨細胞や骨芽細胞は、双方とも壊死し易くなり減少しますが、より骨芽細胞の減少の影響の方が大きいので、長期的には骨の破壊は進行し、骨塩量も減少に向かいます。


コルチゾールの働きによって、骨細胞も早死にするし、破骨細胞や骨芽細胞も早死にするらしい。細胞数が減るのだから、確かにエネルギーの節約にはなりそうだ。

 一般向けの解説ならこれでいいと思うけど、趣味に走ると(カルシウムの代謝に興味があると関連性が気になるよね)、より詳しく知るために先程と同じ厚労省作成の資料から、
 
2.副作用の概要
   [中略]


                  図1  ステロイド性骨粗鬆症の発症機序

(6) 発生機序
 ステロイド性骨粗鬆症の発症機序には、骨芽細胞などの骨形成系細胞への抑制を主体とする骨代謝系への直接作用と、内分泌系などを介した間接作用がある(図1)。

骨代謝系への直接作用:
 経口ステロイド薬の骨代謝系への直接作用の主因は、間葉系幹細胞から骨形成系細胞(骨芽細胞前駆細胞など)への分化を抑制し、さらに骨芽細胞と骨細胞のアポトーシスを促進することである9)10)。また、経口ステロイド薬は破骨細胞のアポトーシスを抑制し、破骨細胞の寿命を延長させる11)。結果として、骨組織において骨形成は著しく抑制されるとともに骨吸収は促進されるため、骨量は次第に減少し、骨粗鬆症を発症する。

内分泌系などを介した間接作用:
 経口ステロイド薬は性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の産生を抑制し、それに伴い黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を減少させる。その結果、性ホルモン(エストロゲンやテストステロンなど)の分泌抑制を引き起こし、骨粗鬆症を誘発する12)。また、下垂体での成長ホルモン(GH)の産生を抑制することにより全身性および局所のインスリン様成長因子(IGF-I)の産生を減少させる。さらに、腸管からのカルシウムの吸収の低下と腎尿細管からのカルシウム再吸収の抑制に起因する二次性の上皮小体機能亢進症を誘発する。 (同資料11-12頁)
 

 「六号通り診療所所長のブログ」の主が言うところの「通常の閉経後の骨粗鬆症」は、主に内分泌系などを介した間接作用が大きく寄与するとみられる一方、ステロイド性骨粗しょう症は、これとは少し異なった病態になるとの指摘があるので、骨代謝系への直接作用が主なのではないかと推測される(深く掘り下げると余計分かり難くなったのは多分気のせいだろう・・・)。

 ついでに一言付け加えると、ここで、コルチゾールには性ホルモンや成長ホルモンの分泌を抑制させる働きがある、と指摘されているに留意してほしい(この点については、それぞれ後で記事にまとめる予定なので、今回は指摘のみ)。


 さて、関連する疑わしい症例を挙げていこう。

 軽度の症状の場合、骨折あるいは骨折後の変形により腰や背中の痛みが出るとされている。腰背部痛の報告はいろいろみかけたけど、個人的な認識だと、骨粗しょう症との関連性までみえてきたと思えた事例は残念ながらなかった(様々なことが原因で腰背部痛になり得るし・・・)。ということで、骨折を中心にみていこう。

 骨折については、以前の記事でも紹介したように、噂話のベースだと、件数が増加しているのでは、との印象を受ける。

〔メモ〕 骨折がはやっている???  2012/3/22


 また、最近は、芸能人が骨折したとの報道も、個人的には以前より多いのではないかと感じている。幾つか怪しい事例をあげてみると、例えば、サイト「Techinsight Japan」の記事から、

【エンタがビタミン♪】「医者には動くなと言われている」。肋骨を骨折していた杉本彩。休まずに予定通り活動を続ける模様。
2011年10月17日 19:00
http://japan.techinsight.jp/2011/10/sugimotoaya-rokkotu20111017.html (リンクはココ

 タレントの杉本彩がテレビ番組で肋骨を骨折したことを明かした。彼女は以前、テレビ番組で社交ダンスを踊る企画に挑戦した際にも肋骨を骨折した状態で踊ったことがある。・・・

 番組で彼女は気管支炎を患い、数日間「夜中じゅう咳き込んでいたら、ある日肋骨が大変なことになっていた」と状況を語った。咳をして肋骨が折れるという話は杉本彩も聞き知っていたが、「まさか本当になるとは」と自分が経験して驚いたそうだ。

 別の例だと、j-castニュースの記事から、

川島なお美が肋骨骨折 夫は「なんも心配してくれない!」
2012/5/26 16:22
http://www.j-cast.com/tv/s/2012/05/26133439.html (リンクはココ

 タレントの川島なお美が5月25日(2012年)のブログで、肋骨を骨折していたことを明かした。

 6月中旬に始まるミュージカルのため5月5日、ポールダンスのスタジオに行った。苦手だという「ポールでの逆上がり」を何度も練習したら「ガツン」とポールに肋骨をぶつけてしまった。痛いのを我慢して翌日以降も仕事をするなどしていたが、ゴールデンウィーク開けに整形外科に行ってレントゲンを撮影したところ、肋骨にひびが入っていたという。

 最近の例だと、元はテレビ朝日の記事なのだけどみあたらないので、同記事に関連したものを某掲示板の芸能・音楽・スポーツ ニュース速報板から、

【芸能】品川庄司の品川祐、酔って走って止まって全治1ヵ月の骨折
2012/07/28(土)
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1343464291/ (リンクはココ

 品川庄司の庄司智春(36)が28日、山梨県・富士急ハイランドの新迷宮脱出アトラクション
「絶望要塞」のオープニング記念イベントで、相方・品川祐(40)が骨折していたことについて語った。 ・・・

 庄司は「(番組の)収録で会った時に、(品川から)ブログで書いていたような説明は受けましたけど。はしゃいで、走って、立ち止まったら、着地に失敗したのか、膝を骨折したって言ってました」と説明。
品川のブログでも、担当医から「走って止まって折れるなんて聞いたことないですね」と呆れられたと明かしていた・・・

 ついでに、メモ代わりに、この報道に関連した議論を某掲示板の放射能板から発掘すると(レス番819の内容は、上記の品川祐氏の骨折報道)、

822 : 名無しに影響はない(愛知県) : 2012/07/29(日) 10:22:12.11 ID:zdkFR4DW [2/3回発言]
  >>819 緊急自然災害板の方でも書いたけど、詳しい人いたら意見くださいな。

  >158 :地震雷火事名無し(関東地方):2012/07/29(日) 08:52:53.75 ID:9000qbbfO
  >イタイイタイ病きたか

  >159 :地震雷火事名無し(長野県):2012/07/29(日) 09:13:38.04 ID:BriNL3K30
  >>>157
  >長野の40代も、躓いて足を捻ったら(?)骨折したと言って入院した
  >健康でよく運動してる人だからびっくりしたが

  >これからは迂闊に転べないし躓けない

  >160 :地震雷火事名無し(愛知県):2012/07/29(日) 09:40:47.75 ID:X3Jbe1RG0
  >ガレキにはカドミウムも含まれているかもしれない、と言っていたが。
  >そんな大量に含まれてはいないよな。

  >161 :地震雷火事名無し(関東地方):2012/07/29(日) 09:46:20.25 ID:9000qbbfO
  >>>160崩壊後カドミウムになる核種があったはず

  >163 :地震雷火事名無し(愛知県):2012/07/29(日) 10:17:21.37 ID:X3Jbe1RG0
  >>>161
  >いいページがあった。放射性銀 110Ag → β崩壊 → 110Cd
  >http://trustrad.sixcore.jp/ag-110m.html

  健康被害を及ぼすほどの量を摂取するのかどうかはわからない。
  該当のページでは放射線ばかり注目して、β崩壊後のカドミウムの影響は
  考察されていない。

835 : 名無しに影響はない(東京都) : 2012/07/29(日) 14:51:54.17 ID:1AnUSChZ [1/1回発言]
  >>822 >>819
  詳しくないけど、カドミウム原因説かどかは、よくわからん。一般論だと、

  病的骨折 ttp://health.goo.ne.jp/medical/search/10510800.html

  汚染状況を踏まえると、

  骨内部に取り込まれた放射性ストロンチウム崩壊 →粗骨化 →易骨折性 
  あるいは
  放射能誘発の酸化ストレス →何かの異常? →カルシウム代謝の異常 →粗骨化 →易骨折性

  「何かの異常?」の部分は、いろいろ考えられるので、より詳しいデータが望まれる。

  山勘だと、初期被ばくで甲状腺にかなり負担がかかったようだから、
  副甲状腺機能亢進が関与しいてるのか???

  副甲状腺機能亢進症 ttp://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/03_2about_php.html


 この記事の前提であるコルチゾール過剰原因説のほか、放射性ストロンチウム原因説、カルシウム代謝異常原因説(例えば副甲状腺機能亢進原因説)あたりは、骨折の原因としてあり得るかもしれないと思われる。

 ただ、カドミウム原因説は、個人的には現状ではほとんど信じていない(疑わしい症状として、イタイ、イタイと叫ぶ症状のあるヒトが出現していないと思われるため)。


(つづく)

 

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注) ・8/22 タイトル変更。

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (4)

2012年08月13日 |  症例(その他)

 前回記事につづき、ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾール関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

 なお、この作業は、別の見方をすれば、疑わしい症状の中から「「コルチゾール過剰症候群」に該当しそうなものを、ステロイド剤の副作用の知見を活用して拾い上げ分類しているとも言えるだろう。

(4) 脂質代謝異常

 まずは用語の解説で、脂質代謝異常は、かつての「高脂血症」のことなのだけど、gooヘルスケアから、

脂質代謝異常(高脂血症) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10280300.html (リンクはココ

どのような状態か
 高脂血症はLDLコレステロール140mgdl以上、中性脂肪150mgdl以上、HDLコレステロール40mgdl未満のいずれかを満たすものと定義されます。・・・高脂血症の名称も脂質異常症と変更されましたが、本稿では高脂血症として統一します。
 さて、高脂血症の基準にあるLDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールであり、HDLコレステロールはいわゆる善玉コレステロールです。一般的にはLDLコレステロールが上がれば上がるほど、HDLコレステロールが下がれば下がるほど動脈硬化が起こりやすいと考えられています。中性脂肪に関しても動脈硬化、糖尿病、急性膵炎(すいえん)との関連が示されているので、注意が必要です。
 高脂血症そのもので自覚症状を起こすことはほとんどなく、検診により指摘され、受診するケースがほとんどだと思われます。高脂血症は動脈硬化を進行させる重要な危険因子であり、これにより脳血管障害や虚血性(きょけつせい)心疾患など動脈硬化性疾患を合併し、生命に危険をもたらすことがあります。・・・

血液中のコレステロールや中性脂肪が高くなることであり、これにより何らかの自覚症状が出るというより、動脈硬化の危険因子として注意する必要があるものである。

 脂質代謝異常へのコルチゾール関与の仕方は、以前の記事で触れたコルチゾールの基本的な作用のうち「脂肪分解促進」と関連している。この場合の脂肪分解とは主に、

中性脂肪(トリグリセリド) ─────→ 脂肪酸 + グリセロール(グリセリン)

 「トリグリセリド」というのが脂肪(酸アルカリ的に中性なので「中性脂肪」と呼ばれる)として体内に貯蔵される時の形態であり、これは栄養状態に応じて、体内で合成・貯蔵されたり、取崩し・分解されたりしているものである。分解により得られた脂肪酸は、肝臓ほかの臓器(脳以外)でエネルギー源として活用(分解)され、グリセロールは肝臓での糖新生の原材料とされることとなる。このあたりの脂肪分解の生化学反応の詳細については、例えば、サイト「脂質と血栓の医学」から、

絶食時の代謝 http://hobab.fc2web.com/sub4-zesshoku.htm (リンクはココ

1.絶食が始まった時
 [中略]
 b.脂肪組織が分解されて、脂肪酸が放出される
 脂肪組織のホルモン感受性リパーゼ(注4)が活性化されて、中性脂肪(トリグリセリド)が分解され、脂肪酸が、血液中を、アルブミンと結合した遊離脂肪酸として、運ばれます。
 ・・・なお、脂肪酸は、心筋や、骨格筋では、β-酸化によりアセチル-CoAに分解された後、さらに、TCA回路で代謝され、二酸化炭素と水にまで、分解されますが、肝臓では、β-酸化によりアセチル-CoAに分解された後、ケトン体に生成されます。それから、脂肪酸からは、グルコースは合成できません(奇数炭素の脂肪酸は、例外)。
 絶食時(飢餓時)には、グルコースの供給が不足するので、肝臓は遊離脂肪酸を分解(β-酸化)し、生成されるNADH2+を利用し、グルコースを生成(糖新生)します。・・・
 [中略]
 中性脂肪の分解に伴い生成される、グリセロール(グリセリン)は、肝臓で、グルコースに糖新生されます。

 コルチゾールによる中性脂肪の分解促進というのは、以前の記事で触れたように、もともとフリージング反応での作用であり、お腹がすいても動けるように準備するという趣旨だと考えられるのだが、そのような中で食事を十分にとったりすると、何かよくないことが起きそうな予感がするのではないだろうか。

 中性脂肪は、上述のとおり本来栄養状態に応じて、体内で合成・貯蔵されたり、取崩し・分解されたりしているものである。コルチゾールによる「脂肪分解促進」というのは、詳細にみれば、中性脂肪の分解の促進と中性脂肪の合成の抑制ということを意味している。

 食事をすると消化・吸収した糖質、脂質などの栄養素が血液中に増加するけど、コルチゾールが過剰にある環境だと、中性脂肪の合成が抑制されるため、中性脂肪となれずに余った原材料が血液中に増加し、高脂血症を引き起こすことになるようだ。このあたりの詳細については、同じくサイト「脂質と血栓の医学」から、

ステロイドホルモン http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ

・コルチゾールは、脂肪組織(や肝臓)では、中性脂肪(トリグリセリド)合成を抑制する。
 コルチゾールは、脂肪組織では、インスリンの作用を抑制し、脂肪分解作用を、亢進させる(インスリンの作用の抑制により、グルコース取り込みが抑制され、グリセロール 3-リン酸とアシル-CoAから、中性脂肪が合成されない)。インスリンは、脂肪組織のリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性を上昇させるので、コルチゾールにより、インスリンの作用(インスリン受容体との結合)が抑制されると、LPLにより分解されないカイロミクロン、VLDL、LDLが増加し、高脂血症(高中性脂肪血症、高コレステロール血症)を来たす。コルチゾールは、糖新生を促進させ、血糖値を上昇させ、インスリン分泌を促進させ、その結果、一部の脂肪組織では、脂肪動員(脂肪分解)を上廻って、脂質合成が、促進される。
 その結果、血中への脂肪酸やグルセロール放出が、増加する。グリセロールは、肝臓で、グルコースに糖新生される。

 ちょっと難しくて余りピンとこないので、少し用語の解説「カイロミクロン」、「VLDL」(超低比重リポ蛋白)、「LDL」(低比重リポ蛋白)については、いずれもリポ蛋白とよばれるものでる。血液は水が主成分であり、そのままではコレステロールや中性脂肪を運搬できないので、リポ蛋白が輸送体となりこれらの脂質を血液中で運んでいるのである。この点については、何故かタカノフーズ株式会社のサイト「納豆はコレステロール0」から、

血液とコレステロールの関係は?
http://www.takanofoods.co.jp/fun/cholesterol/cholesterol002.shtml (リンクはココ

 コレステロールは中性脂肪(=脂肪)とともに、血流にのって全身へ運ばれます。しかし、コレステロールも中性脂肪も脂質なので、そのままでは水が主成分である血液には溶けず、単独では移動できません。
そこで、水になじむよう、「アポたんぱく」という特殊なたんぱく質と結合し、「リポたんぱく」という粒子状の物質になって、血液中に存在、移動しています。
リポたんぱくは、カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLの5種類に大別され、大きさや比重、組成が異なります。

カイロミクロン
 最も大きなリポたんぱくで、小腸で合成されます。食品から吸収した脂質(おもに中性脂肪)を、筋肉などエネルギーが必要な組織へ運び、残りを肝臓へ運びます。肝臓で再合成され、VLDLとなります。

VLDL(超低比重リポたんぱく)
    肝臓で合成された脂質(半分以上が中性脂肪)を、全身の末梢組織まで運びます。その途中で中性脂肪が分解され、筋肉や脂肪細胞に送られます。残りはIDLに換わります。
 [中略]

LDL(低比重リポたんぱく)
    最も大きなリポたんぱくで、小腸で合成されます。食品から吸収した脂質(おもに中性脂肪)を、筋肉などエネルギーが必要な組織へ運び、残りを肝臓へ運びます。肝臓で再合成され、VLDLとなります。 [以下略]

 次に、「リポ蛋白リパーゼ(LPL)」については、酵素の一種であり、血液中を脂質がリポ蛋白で輸送されている際、リポ蛋白から中性脂肪を取り卸す役割を果たすものである。同じくサイト「脂質と血栓の医学」から、

リポ蛋白リパーゼ(LPL) http://hobab.fc2web.com/sub4-LPL.htm (リンクはココ

【ポイント】
 リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、脂肪組織などで合成・分泌され、毛細血管の血管内皮細胞表面(脂肪細胞外)に存在する。リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、細胞外で、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)を、遊離脂肪酸とグリセロールに分解し、細胞内(脂肪細胞内など)に、遊離脂肪酸を取り込ませる。脂肪細胞では、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解されて取り込まれた遊離脂肪酸は、アシル-CoAを経て、中性脂肪に再合成され、貯蔵される(LPLは、脂肪細胞の中性脂肪貯蔵を促進する)。
 なお、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、脂肪細胞内に存在して、トリグリセリドを、遊離脂肪酸とグリセロールとに分解し、遊離脂肪酸を、血液中に、放出させる(HSLは、脂肪細胞の中性脂肪分解を促進する)。

 リポ蛋白とリポ蛋白リパーゼとの意味がなんとなくわかると、結局、食事によって消化・吸収した脂質などが問題を起こすのだろうという点が垣間見れるのではなかろうか(書いてる本人も未だにピンときていないので、そろそろ先へ進もう)。


 脂質代謝異常に関連する疑わしい症例は、例えば、某掲示板の緊急自然災害板から、
 
862 : 名無しさん@お腹いっぱい。(関東・甲信越) : 2011/11/04(金) 14:17:11.46 ID:JrNX0Gtx [1/3回発言]
  何でこんなに荒れてんだよ…。体調不良書かれたら都合の悪い奴でもいんの?

  マイコプラズマの薬貰って飲んでたら、マジで下痢になる。
  副作用でなる、ってあったけど、咳で胸が痛い上に下痢で肛門まで痛めるって…orz

  あ。中性脂肪がかなり高くなってたけど、予防食材が今危険な玄米や雑穀…。
  皆ならどうする?中性脂肪高いままだと、直ちに健康に影響出るんだよな…。

864 : 名無しさん@お腹いっぱい。(東京都) : 2011/11/04(金) 14:41:44.61 ID:bSUHmSHi [1/1回発言]
  >>862
  揚げ物と酒をやめるだけで全然違うんでないの?
  あとは北海道か九州の胚芽米位にしといたらどーかな。
  [以下省略]

875 : 名無しさん@お腹いっぱい。(関東・甲信越) : 2011/11/04(金) 17:51:34.66 ID:JrNX0Gtx [2/3回発言]
  >>864
  酒、煙草、揚げ物無し。
  素うどんとかだと炭水化物が中性脂肪になるから、毎日野菜350g食えって医者に今さっき言われたorz
  そんな大量に無理だよ!トマトで重さ稼げって言われたんだけど、地元のしかトマト無いよ@栃木
 

 無理に少し脱線して、終わりの方で出てきた医者のアドバイスについて一言(前回記事の耐糖能障害に関連して触れようと思ったのだけど眠たくて断念したので・・・)。

 野菜を多く食えというのは、抗酸化物質を多く含んでいるのでそのとおりだと思うけど、コルチゾールの過剰の環境下だとすると、炭水化物を減らしすぎるのも問題となるのではないだろうか。なぜなら、血液中の糖分が上がらないようだと、コルチゾールの作用からすると、筋肉などのタンパク質の分解が活発になるおそれが否定できないからだ。

 特に、糖質制限食や低炭水化物ダイエットについては、先月、警鐘を鳴らす記事が某新聞社から出ていたので、ちょっと気になっているところ(額面どおり受け取っていいのか、悪いのか? 額面どおり受け取ると、これらの食事法はもともと危ない性質のもので、コルチゾールの過剰の環境下にあると、より一層危なくなりそうな予感)。

極端な炭水化物制限「生命の危険も」…学会警鐘
2012年7月27日 読売新聞
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=62329

低炭水化物ダイエットご用心…発症リスク高まる
2012年7月8日 読売新聞
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=61435


(つづく)

 

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注) ・8/22 タイトルなど変更。

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (1)~(3)

2012年08月10日 |  症例(その他)

 前回の記事で取り上げた仮説、コルチゾール過剰原因説(●による健康影響の症状の多くがコルチゾールの過剰分泌に起因するものと考える説。影響の結果出現した症状の総体が「コルチゾール過剰症候群」。なお、コルチゾールは副腎皮質ホルモンの一種(糖質コルチコイド))に関連して、様々な場で報告された症状をみていこう。

 その前に仮説の背景を一言だけ述べておくと、以下のとおり:

放射線被曝 →酸化ストレスの亢進 →抗ストレス・ホルモンの分泌亢進 →コルチゾールの過剰


 では、前回記事の図中のステロイド系抗炎症剤(ステロイド剤)の副作用の項目(17項目)別に、問題の症状へのコルチゾールの関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。


(1) 高血圧
 この症状にコルチゾールが関与するのは、コルチゾール(糖質コルチコイドの一種)が電解質コルチコイドの作用をあわせ持つためである。この点の解説は、例えば、サイト「調剤薬局日記」から、

ステロイド内服剤 の副作用
http://www.jade.dti.ne.jp/~ma-hata/20_suteroido.htm (リンクはココ

・・・このうち鉱質コルチコイドは、アルドステロンに代表され、「遠位尿細管において Naを再吸収し、Kを排泄する」という電解質代謝作用を持っています。

 一方、合成の副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)も、鉱質コルチコイドと同様の電解質代謝作用を示し、Naの再吸収やKの排泄を促進します。Na再吸収促進の結果、水分の貯留が起きやすくなり、副作用として浮腫や 高血圧が現われることがあります。 ステロイド剤の中で、リンデロンは この電解質代謝作用はほとんど無いのですが、それでも高血圧の患者に原則禁忌となっています。

 関連する疑わしい例は、以前の記事で紹介した、岩手の高血圧、栃木の高血圧の例があげられるだろう。ただ、高血圧に至る経路は他にもいろいろあるので(例えば、アルドステロン症など)、コルチゾール過剰という経路の寄与は高くはないのかもしれない。

栃木の中学生の高血圧 (2011年度調査)  2012/7/26
http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=cb0bc6d408fc69f3be5b715f3aac40a7
岩手における高血圧 2011.11月調査  2012/4/23
http://ameblo.jp/ak-47-feb11/entry-11230997303.html
 

(2) 浮腫
 この症状にコルチゾールが関与するのは、(1)の場合と同様で、電解質の代謝異常が起こるためだろう。

 関連する疑わしい例は、例えば、某掲示板の緊急自然災害板から、

262 : 地震雷火事名無し(大阪府) : 2012/05/18(金) 20:08:02.82 ID:xD/n3DhN0 [1/2回発言]
  足(スネから下)が両足むくむ。 被曝@横浜
  求む、被爆時の対処療法

  おそらく、靴下に付着した放射性物質で足が被曝か?
  この冬 急に悪貨
  とりあえず挙上して足首を大きく動かすと少し改善する

 なお、以前の記事で、放射線療法の副作用との類似性について触れたけど、長期的な副作用の一つに「リンパ浮腫」が含まれることを指摘しておこう。

放射線療法の副作用との類似性 (4) 症状のまとめ  2012/6/11
http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=6ac170b277184448c7093a5c6566a273

 ついでに、リンパ浮腫の解説は、例えば「むくみのページ」から、

リンパ浮腫の出来かた
http://www.mukumi.com/02_01_02.html (リンクはココ


(3) 耐糖能障害
 耐糖能障害とは、ブドウ糖が消費されにくくなった状態をいい、その原因は、インスリンの不足あるいはインスリン抵抗性によるとされている([医学用語辞典 MeDic」から、耐糖能障害 http://word.e-medic.net/word/%E8%80%90%E7%B3%96%E8%83%BD%E9%9A%9C%E5%AE%B3)。

 この障害にコルチゾールが関与するのは、以前の記事で触れたように、コルチゾールが「糖新生・血糖値の上昇」という作用を持つからであろう。インスリンが以前と同様の量で分泌され、インスリン抵抗性にも変化がなくとも、タンパク質を分解して糖の不足を防止する機構が働き糖の総供給が増えるので、異常がでやすくなっているのであろう。

8/13追記(コルチゾールとインスリンの関係に触れておかないと不十分なので追記):
 糖新生で高まったせっかくの血糖値をインスリンによって下げられてしまうと元の木阿弥になるので、コルチゾールは、インスリンのブドウ糖の取込みを抑制する作用を持っている。例えば、サイト「脂質と血栓の医学」から、

ステロイドホルモン
http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ

2.コルチゾールの作用
 [中略]
 生体は、ストレス(飢餓、寒冷、外傷など)の際に、脳の下垂体のACTH分泌を介して、副腎皮質からのコルチゾール分泌を急増させ、エネルギー源となるグルコースの供給を、促進させる。しかし、コルチゾールが、血中へのグルコースの供給を増加させることは、糖尿病を悪化させる恐れがある。コルチゾールは、インスリンの、インスリン受容体との結合親和性を低下させ(インスリン受容体数は減少させない)、インスリンによるグルコース取り込み促進作用を、抑制する。

 この症状に関連する疑わしい例は、以前の記事で紹介した、福島の子供の糖尿病の例であろう。

〔メモ〕福島の子供のメンタル症状と糖尿病  2012/5/17
http://ameblo.jp/ak-47-feb11/entry-11252711608.html
福島の子供の糖尿病の原因は? (1/2)  2012/5/22
http://ameblo.jp/ak-47-feb11/entry-11258132823.html


 また、以前の記事(ココ)で紹介したスイス人医師フェルネックス氏は今年5月の訪日後にインタビューを受け、その内容が7月にフランスの新聞(ラルザス紙)に掲載されたらしい。同氏は、その中で、若年性の糖尿病にも言及している。「Canard Plus ♡ Tomos und Entelchens Blog」にその記事の和訳があるので一部引用すると(なお、原文は仏文だが、リンクを探すと英訳文もあり)、

ミシェル・フェルネックス:チェルノブイリの教訓を無視する福島
lundi 6 août 2012
http://vogelgarten.blogspot.co.nz/2012/08/blog-post.html (リンクはココ

[記者]- 福島医大の医師達と意見交換された感想は?

[フェルネックス氏]- 私は同大学の教授四人に会うことが出来た。心臓科、泌尿器科、内科そして眼科の医者だ。彼らは全員放射能汚染に起因する疾患に関してまったく無知だったようだ。そして若い患者の間に心筋梗塞や糖尿病、眼科疾患が出現するのを見て大変驚いていた。・・・


 糖尿病に至る経路は他にもいろいろあるので(例えば、イットリウム原因説、セシウム原因説、内分泌異常説(バセドウ病経由説など))、コルチゾール過剰という経路の寄与は高くはないのかもしれない。


(つづく)

 

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注) ・8/13追記。

・8/22 タイトルなど変更。

コメント

コルチゾール過剰原因説

2012年08月08日 |  仮説

〔更新履歴:2012/8/22追記、2013/2/3リンク追加〕

 

 数回にわたり抗ストレス・ホルモンについてみてきたけど、多分、何が目的なのか分からなかった人も多かったのではないだろうか。ということで、やっと本題に入ろう。

 合理的な推論で話を展開できるとよいのだけど、あいにく状況証拠のたぐいしかないので、仮説を立てて、それを検証していくというアプローチをとることにしょう。で、その仮説というのは、

 ●による健康影響の症状の多くがコルチゾールの過剰分泌に起因するものと考える説(名付けて「コルチゾール過剰原因説」)。


 ここでは、疑わしい症状の全部がコルチゾール過剰分泌のせいだと言いたいところだけど、どうも全てを説明するのは困難なので(他にも幾つか基本となる病態があると感じられる)、「症状の多くが」としている(「多くが」というのも言い過ぎのような気もするけど、「幾つかが」程度に解するのが適当かも)。

 コルチゾールの過剰分泌ならば、結局クッシング症候群のことだろうという声が飛んできそうだけど、その点については、仮にクッシング症候群の診断基準を満たすのであれば、それはクッシング症候群なのだから、クッシング症候群に対する治療をすればよいわけで、これはこれで幸福な状態であろう(治療に専念できるという意味で)。

 問題となる不幸な領域は、●の影響とみられる疑わしい症状があって、それらはクッシング症候群の診断基準は満たさない(多分他の病気にも該当しない)ものの、コルチゾールの過剰分泌によって起こるとみられる心身の異常にあたる部分ということになる。とりあえず、このような領域が存在するとして、そのような病態を勝手に「コルチゾール過剰症候群」と名付けておこう。

・8/22追記: 当初「コルチゾール過剰症」と書いていたけど、症状がたくさんありそうなので、「コルチゾール過剰症候群」に変更。以下、幾つかの記事についても同様に変更。

 「コルチゾール過剰症候群」からクッシング症候群が除外されることとなると、結局その症状は、ステロイド系抗炎症剤(あるいはステロイド剤)の副作用に類似するものと予想される。そこで、分かり易いように、副作用の一覧表を大阪大学の免疫アレルギー内科のサイトから引用しておくと(記事「ステロイドについて」 http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/page4-17.html。リンクはココ)、

               図 ステロイド系抗炎症剤の副作用とその対策


 現時点では、上記仮説の設定の背景を長々と説明するより、ステロイド系抗炎症剤の副作用の各項目ごとに(計17項目)、現状起こっている症例との関連性を指摘していった方がわかり易いと思われる。

 従って、次回以降の記事では、この関連性の指摘作業を行っていくことにしよう。関連性の指摘が終わった後で、なお必要があるようであれば、仮説設定の背景について再訪することにしたい。

 

・2013/2/3追記

 関連記事のリンクをまとめておこう。

【各論の目次】

(1) 高血圧、(2) 浮腫、(3) 耐糖能障害  2012-08-10

(4) 脂質代謝異常  2012-08-13

(5) 骨粗しょう症  2012-08-15

(6) 骨頭無菌性壊死   2012-08-17

(7) 易感染性  2012-08-22

(7-A,B) 易感染性/ 一般論、結核  2012-08-26

(7-C,D,E) 易感染性/ 風疹、インフルエンザ、感染性胃腸炎  2012-08-29

(7-F,G) 易感染性/ マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎  2012-09-02

(7-H) 易感染性/ 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(劇症型溶連菌感染症)  2012-09-07

(7-I,J) 易感染性/ HIVエイズ、細菌性赤痢  2012-09-10

(7-K,L,M) 易感染性/ 手足口病、伝染性紅班、急性出血性結膜炎  2012-09-17

(7-N) 易感染性/ RSウイルス感染症  2012-09-26

(7-O) 易感染性/ 輸入感染症(チクングニヤ熱、デング熱)
   (1) 2012-10-04
   (2) 2012-10-05
   
(7-P)  易感染性/ 食中毒(死者)  2012-10-07

(7-Q)  易感染性/ 黄色ブドウ球菌の感染症  2012-10-09

(7-R)  易感染性/ 真菌症  2012-10-10

(7-S)  易感染性/ ヒト・ヘルペスウイルス感染症(総論)   2012-10-11


(7-T)  易感染性/ 単純ヘルペスウイルス感染症 (HHV-1,2感染症)
   (1) 2012-10-17
   (2) 2012-10-18
   (3) 2012-10-22
   (4) 2012-10-29
   
(7-U)  易感染性/ 水痘・帯状疱疹ウイルス感染症 (HHV-3感染症)
   (1) 2012-10-31
   (2) 2012-11-12
   (3) 2012-11-14
   
   (4) 2012-11-21
   (5) 2012-11-22
   (6) 2012-11-27
   
   (7) 2012-12-04
   (8) 2012-12-15

(7-V)  易感染性/ サイトメガロウイルス感染症 (HHV-5感染症)
   (1) 2012-12-24
    つづく

p(7-W)  易感染性/ ヘルペスウイルス6型・7型の感染症 (HHV-6,7感染症)

p(7-X)  易感染性/ エプスタイン・バー・ウイルス感染症 (HHV-4感染症)

(7-Y) 易感染性/ 日本紅斑熱  2012/10/16 

(8) 消化性潰瘍
   (8-1)
   (8-2)

(9) 筋力低下

p(10) moon face

p(11) 精神症状
p(12) 不眠
p(13) 挫そう・皮膚線条

p(14) 白内障・緑内障
p(15) 白血球増多
p(16) 低カリウム血症

p(17) 副腎不全

(18) 子供の成長障害  2012-10-15


【その他の関連記事】
〔メモ〕 被災動物でのコルチゾールの過剰  2012-10-12

〔メモ〕 精神症状の発現とコルチゾールの過剰  2013-01-22

コメント

ストレス反応と副腎機能 (3/3) ステロイド・ホルモン

2012年08月07日 |  関連(生物学医学)

 今回は、人によって言い回しか少しずつ違うので、用語関係を整理しておこう。多分、後で役立つかもしれない(最近忘れぽっいので・・・)。

 中身はそれほどないので、少し脱線。前回の記事で縄文人の話に言及しているけど、その趣旨を紹介しておこう。ブログ「武田邦彦 (中部大学)」から、

幻想の衣食住 その5 宇宙人の体
http://takedanet.com/2007/04/post_4d4e.html (リンクはココ

 DNAは親から子供に伝達されますが、一つの世代の経験はほんの僅かしかDNAの情報には入りません。長い長い人類の歴史から学び取った教訓を、たった一世代の経験で修正するのはあまり適当ではないからです。

 DNAが少しでも、環境にあわせて書き換えられるのには約一万年ほどかかると言われています。ということは、現在のわたしたちのDNAはちょうど、メソポタミアやエジプトの時代の環境の中で作られたと言えるのです。

 環境に合わせてDNAが書き換えられるのに約1万年程かかるらしい。この説が正しとすれば、現代人のDNAは、縄文人を取り巻いた環境がベースになっていると考えられる(縄文時代は12.5千年前~2千年前位)。

 ストレスを受けたときに生体としてどう反応するかはDNAに刻み込まれているわけで、我々現代人のストレス反応は、縄文人が抱えていた種類のストレスを処理するには非常に効率よくできていると考えられる。縄文人の暮らしをまねてみると、身体のキレがよくなったりするかもしれない。玉川学園・玉川大学のサイトから、

縄文人のくらし
http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/kyouken/jomon/index.html (リンクはココ)

 竪穴式住居をまねる必要は全くないだろうが、早寝早起きの生活パターンとか、食物とかは参考になるかもしれないし、ならないかもしれない。

 ただ、ここで問題となり得るのは、現代人が抱えるストレスは、縄文人の抱えていたストレスと同じ種類のものなのか、という点であろう(多分全く種類が違うのではないだろうか。だから、いろいろと現代病が出でくるのであろう。引用した武田氏の記事では、冷房病を現代病の一つと指摘している。いずれにせよ、縄文人は自然放射線しか浴びていなかったことは確かであろう)。

 さて、本題に戻ると、副腎皮質ホルモンは、以前の記事でも触れたけど、次の3種類がある:

(a) 糖質コルチコイド(あるいはグルココルチコイド。代表的なものがコルチゾール)、
(b) 電解質コルチコイド(あるいは鉱質コルチコイド。代表的なものがアルドステロン)、
(c) アンドロゲン(あるいは副腎アンドロゲン。性ホルモンの一種)。

これらは、その化学構造にステロイド骨格をもつものであり、「ステロイド・ホルモン」とも呼ばれている。ステロイド自体の定義は、日本薬学会の薬学用語解説サイトから、

ステロイド (steroid)
http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89 (リンクはココ

 ステロイドは、ステロイド骨格と呼ばれる構造をもった化合物の総称で、生体内ステロイドには種々のステロイドホルモンや、胆汁酸、細胞膜の構成に重要な脂質であるコレステロールなどがある。ステロイドホルモンは、その機能から、性ホルモン、糖質コルチコイド(グルココルチコイド)、鉱質コルチコイド(ミネラルコルチコイド)などに分類される・・・病気の治療に用いられる「ステロイド」は、ステロイドホルモンを配合した薬品(ステロイド剤)のことであり、多くの場合は糖質コルチコイドである。スポーツなどでドーピング問題として取り上げられることがある「ステロイド」は、合成されたタンパク同化ホルモンのことが多い。

 ちなみに、ステロイド・ホルモンに分類される性ホルモンには、次のようなものがある。

(A) アンドロゲン(男性ホルモンとも呼ばれる。代表的なものがテストステロン)
(B) エストロゲン(卵胞ホルモン又は女性ホルモンとも呼ばれる)
(C) プロゲステロン(黄体ホルモンとも呼ばれる)

  以上をまとめておくと、「ステロイド・ホルモン」に分類されるものには、次のようなものがあることとなる。

(1) 糖質コルチコイド
(2) 電解質コルチコイド
(3) アンドロゲン
(4) エストロゲン
(5) プロゲステロン


 ステロイド・ホルモン(あるいは単に「ステロイド」)といって最も有名なのは、上に引用の解説にもあるように、薬剤としてのステロイド系抗炎症剤(SAID。steroidal anti-inflammatory drug。あるいは単に「ステロイド剤」)であろう。これは、糖質コルチコイドを各種の病気の治療薬として利用するものである。サイト「脂質と血栓の医学」の記事から(なお、この記事のタイトルは「ステロイドホルモン」となっているけど、その趣旨は「副腎皮質ホルモン」のようだ)、

ステロイドホルモン
http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ

5.ステロイド剤
 天然のコルチゾール(ハイドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン)は、糖質コルチコイドとして、強い抗炎症作用を有するが、同時に、電解質コルチコイド活性を有している為、多量に投与すると、体内にナトリウム(Na+)貯留させてしまう。
 コルチゾール(cortisol)の電解質コルチコイド活性を減少させた、合成の糖質コルチコイドが開発され、副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド剤)として、アレルギー疾患などの治療に、使用されるようになった。

 
 ステロイド・ホルモンといてその次に有名なのが、筋肉増強剤としてのアナボリック・ステロイド(anabolic steroid)であろう。その多くは、テストステロン類似物(テストステロンはアンドロゲンの一種)のようである。例えば、日本語wikiから、

アナボリックステロイド (リンクはココ

 アナボリック・ステロイド(anabolic steroid)は、生体の化学反応によって外界より摂取した物質から蛋白質を作り出す作用―すなわち蛋白同化作用を有するステロイドホルモンの総称。
 [中略]

 アナボリックステロイドは筋肉増強剤として使用されることが主で、ドーピング薬物として知られる[2]。短期間での劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態で得ることのできる水準を遥かに超えた筋肉成長を促す作用[3]から、運動選手らの間で長年にわたり使用されてきた[4]。
 [中略]

効果と適応
 そもそも生体から分泌される男性ホルモンの代表であるテストステロンの効力を改善するために合成されたことから[8]、そのテストステロンに類似した物質であり[3]、・・・蛋白同化作用を強める働きを持つ。蛋白同化とはすなわち、摂取したタンパクを細胞内組織に変える働き(主に筋肉において)のことである。・・・

 前回の記事でコルチゾールの作用を解説したけど、コルチゾールは、糖分を作るためタンパク質を分解する作用を持つものなので、タンパク異化作用を持つステロイド・ホルモン(カタボリック・ステロイド)であり、アナボリック・ステロイドとは正反対の作用を持っていることとなる。


〔関連記事〕
ストレス反応と副腎機能 (2) 抗ストレス・ホルモン  2012/8/5
ストレス反応と副腎機能 (1) セリエ説  2012/7/31 

コメント

ストレス反応と副腎機能 (2/3) 抗ストレス・ホルモン

2012年08月05日 |  関連(生物学医学)

 先ずは、前回記事のおさらい。副腎ホルモンに関し、細かいことは忘れて要点だけ抜き出し模式的に書くと、
                               
ストレス(刺激)
  ↓        〔SAM系〕     〔闘争・逃走反応向け〕
大脳辺縁系 →視床下部 ──→交感神経節 ─→ ノルアドレナリン
        │         └─→副腎髄質 ──→ アドレナリン、ノルアドレナリン
        │
        │
        ↓                      〔フリージング(すくみ)反応向け〕
       下垂体 ───→副腎皮質 ──→ コルチゾールなど(糖質コルチコイド)
      〔HPA系〕
                                
 外界からストレスを受けると、2つの経路から副腎ホルモンが分泌される。1つは自律神経系に働きかけるもので、視床下部からの指令に基づき交感神経節及び副腎髄質からノルアドレナリン又はアドレナリンが分泌される経路(SAM系)。

 もう1つは内分泌系に働きかけるもので、視床下部からの下垂体を通じた指令に基づき副腎皮質からコルチゾールなどの糖質コルチコイドが分泌される経路(HPA系)。なお以下では、「糖質コルチコイド」については、特段の問題のない限り代表的なものであるコルチゾールと記載することにしよう。

 これらノルアドレナリン、アドレナリン、コルチゾールなどの副腎ホルモンは、ストレスにさらされると分泌されるものなので、「抗ストレス・ホルモン」とも呼ばれている。

8/7追記: ググッてみたところ、「抗ストレス・ホルモン」と呼ばれるより、「ストレス・ホルモン」(ストレスを受けたときに分泌されるとの趣旨だろう)と呼ばれることの方が多いようだが、そのままでいこう。

 

 以前の記事でも触れたけど、SAM系は闘争・逃走反応に、HPA系はフリージング(すくみ)反応に関係している。これらの点について補足しておくと、滋賀医科大学のサイト「痛みと鎮痛の基礎知識」のから(以前紹介したのとは別の頁)、

闘争・逃走反応 (fight or flight response)
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/react-emotion.html#fight-flight (リンクはココ

・「闘争−逃走反応」とは、動物が外敵に遭遇する時には、みずからの生命を守るための原始的な自己防衛本能
・身を守るために。敵が弱そうであれば闘争し、敵が強そうであれば逃走する。
 [中略]
・交感神経緊張が増加し、心拍数が増加し、血圧を上昇し、呼吸を促進し、瞳孔が散瞳する。

フリージング(すくみ)反応 (freezing behavior)
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/react-emotion.html#freezing (リンクはココ

・ストレス刺激により、じっと動かなくなり、外部に対して反応しなくなる。
・血圧も心拍も低下する。

 闘争・逃走反応は、差し迫った危険を回避するための緊急の行動であり、フリージング反応は、危険が接近しているので緊急の行動に備えての待機的な行動と言えるだろう。つまり、これらの反応の目的は、危険に際して生命を守るための防衛行動にある。かつて狩猟採集生活をしていた縄文人あたりがこのような行動を身につけ、その結果他者との生存競争を勝ち残ることができたので、それが遺伝子にしっかりと刻み込まれているのであろう。

 より具体的な場面を想定すれば、野生動物(熊、野犬など)に襲われそうな差し迫った危機的な状況にあるときは闘争・逃走反応が必要とされ、ノルアドレナリンやアドレナリンが分泌されこととなり、野生動物に囲まれた状態のため隠れており今にも危機的になり得る状況にあるときは息を潜めて危険に備える必要があり、コルチゾールなどが分泌されることになる、と考えられる。

 あるいは運動会の100m競争において、スタートめラインに並んで心臓がドキドキしているときが闘争・逃走反応が必要とされる状態に、トラックに出る前に待機している間が息を潜めて来るべき闘争・逃走反応に備えフリージング反応が必要とそれる状態にあたるだろう。

 再度、抗ストレス・ホルモンの働きを以前より詳しい資料で確認しておこう。 ノルアドレナリンやアドレナリンについては(どちらもカテコールアミンの一種であり、まとめて「カテコールアミン」と呼ばれることも多い)、サイト「人体のしくみと働き」(http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/。7. 内分泌系のしくみと働き http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/endcrinetxt.pdf)から引用すると、

                  図表1 アドレナリン・ノルアドレナリンの作用

 ノルアドレナリンやアドレナリンは、体内では通常短時間で分解されていまうので(図1の最下段にあるように体内での半減期は1~3分程度)、長期的に分泌されることで問題が大きいのは、コルチゾールの方であろう。

 続いて、コルチゾールの作用をみていこう。「内科・小児科マリヤ・クリニック」のサイトの記事を参考にすると(ホルモンの働き2・副腎皮質ホルモン http://www.mariyaclinic.jp/b_exsamination/b_r01mcn/mcn/mcn2005/b_r01news0501.htm。リンクはココ)、

   図表2 コルチゾールの作用
      (1) 糖新生・血糖値の上昇
      (2) 脂肪分解促進
      (3) 抗ストレス作用
      (4) 抗炎症作用
      (5) 免疫抑制作用

 コルチゾールの基本的な作用は、3番目の抗ストレス作用と考えられる。野生動物に囲まれ隠れているような危機的な待機状況だと、中には長時間に及ぶこともあるので、普通はお腹がすいてくる。だけれども、お腹がすいて動けないようでは生命の危機なので、お腹がすいても大丈夫なメカニズムになっている。それが、1番目と2番目の作用と解される。
 
 1番目の「糖新生・血糖値の上昇」については、上記サイトから引用すると、

① 糖新生・血糖値の上昇
 筋肉(タン白質)────────→ 肝臓でクリコーゲン合成───────→ 血液中・全身へ
          アミノ酸へ分解              ブドウ糖へ合成

 糖新生は筋肉中のタン白質をアミノ酸に分解して肝臓に運び、グリコーゲンに変えた後、ブドウ糖に合成する働きがあります。コルチゾールが分泌され続けると徐々に筋肉が分解され、筋肉が細くなり筋肉不足を引き起こします。同時に他の臓器でブドウ糖の利用を抑制するので血糖値が上昇します。

 空腹時の血糖値の維持では、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンを分解してグルコースを作る経路がよく知られているけど、グリコーゲンも無尽蔵にあるわけでもない(グリコーゲンの貯蔵量は、一説だと半日程度の活動分程度)。また、脳はエネルギー源として糖分しか利用できないので(他の臓器は脂肪からエネルギーがとれる)、脳にエネルギーを供給するためには血液中の血糖値を維持しておく必要がある。この二つが糖新生が必要とされる理由であろう。

 2番目の「脂肪分解促進」については、上記サイトから引用すると、

② 脂肪分解促進
 グリコーゲン→ブドウ糖でのエネルギーの補給が間に合わない場合、脂肪組織から脂肪を分解して(遊離脂肪酸の状態)、エネルギーに利用します。低血糖症状がおこり遊離脂肪酸値が高くなるのはこのためです。

 この趣旨は、上述のとおり、脳以外の臓器は脂肪分解によりエネルギーが利用できることにある。また、糖新生は主に肝臓でおこなわれるが、糖新生自体にも原材料(主に筋肉)ほかエネルギーが必要であって、貯蔵されたグリコーゲンによるエネルギーが足りなければ脂肪分解によりエネルギーを生産することとなる。更に、分解された脂肪の一部(グリセロール)も糖新生の原材料になり得ることとなる。

 上記の2つの経路の生化学反応については、サイト「脂質と血栓の医学」の次の記事が詳しい。ポイントだけ引用しておくと、

糖新生の経路
http://hobab.fc2web.com/sub4-gluconeogenesis.htm (リンクはココ

【ポイント】
 肝臓は、絶食時等に、糖新生により、アミノ酸等から、ブドウ糖を作り出して、血液中に供給する。絶食時には、アミノ酸(アラニン、アスパラギン酸等)、乳酸、グリセロールが、糖新生の炭素源になる。
 糖新生(細胞質内)するのに必要なエネルギー(NADH2+等)は、脂肪酸をβ-酸化(ミトコンドリア内)すること等によって、生成(供給)される。脂肪酸は、体内では、糖に変換出来ないが、脂肪酸のエネルギーは、糖新生に利用される。・・・
 糖新生の経路が肝臓に存在することにより、肝臓で、脂肪酸をβ-酸化して得られたエネルギーを、グルコースとして蓄積し、他の組織で、利用することが出来る。

 コルチゾールの作用の4番目と5番目は、野生動物に囲まれ隠れているような危機的な待機状況では、即座に生死にかかわらないような活動は、その水準を低下させてエネルギーを節約しようという趣旨だと解される。

 4番目の「抗炎症作用」については、炎症反応の目的は何らかの理由でできた傷を修復することなのだけど、傷を修復するといっても2~3日程度要するわけで、筋肉を分解しているようなエネルギー欠乏時には多少手抜きをした方が進化の過程で有利であったということを意味するものと考えられる。

 5番目の「免疫抑制作用」についても同様で、細胞分裂の異常を見逃してもがんになるのは早くて数年後なので、これも筋肉を分解しているようなエネルギー欠乏時には手抜きをして、危機が去り十分休養している時にまとめて異常分裂した細胞を処理した方が進化の過程で有利であったということを意味するものと考えられる。

 この際、免疫抑制を受けるのは、新しい免疫系(液性免疫)や古い免疫系(細胞障害性免疫)であり、細菌などの外来の異物処理担当の顆粒球(自然免疫)はあまり抑制の影響を受けないものと考えられる(明治大学のサイト「運動と免疫」の記事「ホルモンの影響」 http://www.isc.meiji.ac.jp/~suzui/immunology/hormone.htmlを参照。リンクはココ)。


 前置き(おさらい)の途中のような気もするけど、眠たいのでつづく。

 

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注) 8/7 追記。

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ミシェル・フェルネクス氏の来日講演録

2012年08月01日 |  過去症例(チェルノブイリ)

 ツイッターでの拾い物をメモしておこう。

@GoodBye_Nuclear
放射能から子供たちを護るために──ミシェル・フェルネクスさん東京講演の記録 http://nishoren.net/food_safety/radioactivity/2276 …
3:27 PM - 1 Aug 12


上記のリンクは、日本消費者連盟のサイト内の次の記事。記事によれば、本年5月、ミシェル・フェルネクス氏(スイス人医師。長年チェルノブイリ被害者を支援)が来日し、全国5ヵ所(広島、京都、さいたま、郡山、東京)で、子供たちをどう放射能から守るかをめぐる講演を行った模様。

放射能から子供たちを護るために──ミシェル・フェルネクスさん東京講演の記録
2012年05月26日
http://nishoren.net/food_safety/radioactivity/2276 (リンクはココ
 

 講演録から、気づきの点を二つあげておこう。

 一つ目は、フェルネクス氏は講演において、最近の記事でとりあげたユーリ・バンダジェフスキー氏に関し、彼の業績として次の2点を指摘している:

(1) 遺体を解剖して各臓器内の放射性物質を測定し、組織を顕微鏡で監察した結果、セシウムを多く蓄積した臓器に多くの病変があることを示した、
(2) 年齢によって臓器への放射能の蓄積の仕方が違うことを示した。

 二つ目は、チェルノブイリの汚染地で行われた遺伝的影響に関する動物実験の話。以下、質疑応答部分から抜粋すると、

Q6:遺伝的影響についてお聞きしたいと思います。野ネズミの実験では汚染地域に住んでいる野ネズミ22世代にわたって遺伝的影響があり、代を追うごとに障害がひどくなってきたとのことですが、野ネズミなり人なりが汚染地域の外に出た場合にどうなるのか、どうなっているか、実験か調査があれば教えていただきたいのですが。

A6:ここで話すのにとてもいいテーマだと思います。ベラルーシのローザ•ゴンシャローヴァは、1986年の事故直後にチェルノブイリに入り、ハタネズミの調査を始めました。それで分かったのは、最初は原発に近いほど突然変異が多いということ。しかし、320 km離れたところでも、ネズミにすでに突然変異や変化が存在していたということです。数は少なかったけれども、確かに存在していた。恐ろしいのは、このネズミの集団を何世代にも継続して調査していくと、遺伝的な異常の増加が見られたことです。放射線が弱い地域でも、その100倍も強い地域でも、あらゆる地域で遺伝系の損傷が見られ、22世代まで世代を経るごとに悪化したという事実です。その後、住民の不安の拡大を恐れた政府は、この調査を禁止したのでした。


 3.11後に、日本消費者連盟など思い出すこともなかったけど、少しは興味を引く活動をやっていたようで・・・(知らなかったので少し反省。今後は、生協と日本消費者連盟とを同じカテゴリーに入れて認識するのは止めておこう)。

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