ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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「コルチゾール過剰症候群」 (7-O) 輸入感染症 (2)

2012年10月05日 |  症例(その他)

(7) 易感染性
(O) 輸入感染症(デング熱、チクングニヤ熱) (つづき)

 前回記事の内容に特に追加すべき内容はないのだが、今後も尾を引きそうな話だし、メモ代わりにまとめておこう。

 デング熱と聞くたびに天狗のたたりに違いないと思う人が自分以外にもいるかもしれないので、先ずは「デング」や「チクングニヤ」の由来について、サイト「横浜市感染症情報センター」から、

デング熱・デング出血熱について
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/dengue1.html (リンクはココ

 デング熱は英語では単に"dengue(デング)"あるいは"dengue fever"ですが、この"dengue"はスワヒリ語(東アフリカで使われている言語。ケニア・タンザニア・ウガンダで公用語となっています)での呼称"kidingapopo"(dinga)に由来するようです。

チクングニヤ熱について
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/chikunguniya1.html (リンクはココ

 チクングニヤ(chikunguniya : CHIK)というのは、モザンビークとタンザニアの国境付近のMakonde高原に住むMakonde族が話すMakonde語で、「曲がった」を意味します。強い関節痛により、患者が身体を丸めた状態を指します。


 両感染症の件数の推移については、デング熱に関しては国立感染症研究所のサイトから(感染症法に基づくデング熱患者届出数 http://www.nih.go.jp/niid/ja/dengue-report.html)、

図1 感染症法に基づくデング熱患者届出数 (1999-2012)


 なお、2012年は、最新のデータでは146件(38週、9/23まで。感染症発生動向調査週報 (IDWR) http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.htmlから)。


 チクングニヤ熱に関しては冒頭2番目の「横浜市感染症情報センター」のリンクから、

 

図2 チクングニヤ熱患者年間発生数 (2006-2011。公的機関での把握分)

 なお、2012年のデータは、4件(38週、9/23まで。感染症発生動向調査週報 (IDWR) http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.htmlから)。


 いずれの感染症も蚊が媒介するウイルスによる感染症であり、蚊の種類は両者で共通している(ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカ)。

 詳しい解説については、デング熱に関し冒頭の「横浜市感染症情報センター」のリンクから興味ある点を適宜抜き出すと、

流行は?
 ・・・
 主な媒介蚊であるAedes aegypti (ネッタイシマカ)については、日本では、南西諸島で昔生息していましたが、現在は生息が確認されていません。なお、米国や日本でも生息しているAedes albopictus (ヒトスジシマカ)については、日本で患者が発生すれば媒介する可能性があると考えられています。1942-1945年に西日本でデング熱の流行がありましたが、このときはAedes albopictus (ヒトスジシマカ)が媒介したと考えられています。・・・

 媒介蚊となる可能性がある、日本でも生息しているAedes albopictus (ヒトスジシマカ)については、近年、アジアからアフリカ・アメリカ・ヨーロッパへと生息範囲が広がりました。日本などで中古タイヤの内側に卵が産みつけられていて、国際間で取引されて、海外で雨などで戸外に置かれた中古タイヤに水がたまって卵がかえることで、国際的に生息範囲が広がっていったと考えられています。卵は水がない状態でそのまま何か月も生き延びることができ、水につかる事で孵化(ふか)します。

どんな病気?
 デング熱について、人間が感染している蚊に刺されてから発病するまでの潜伏期は3-14日(平均的には4-7日)です。症状が見られない感染も多いと考えられています。

 デング熱はインフルエンザのような発熱を起こす感染症です。発熱は2-10日続きます。赤ちゃんや小さなこどもたちでは発疹も見られます。大きなこどもたちや大人たちでは、軽い発熱だけのこともありますが、高熱に頭痛、目の後ろの痛み、筋肉痛、関節痛、悪心・嘔吐、発疹などを伴うこともあります。発疹については熱が下がってから出現することが多いです。デング熱はデング出血熱と呼ばれる重症の状態にならない限り、死因となることはまれです。

 デング出血熱は、突然の発熱で始まり、発熱は2-7日続き、41度に達することがあります。点状出血(皮膚の溢血点など)や鼻粘膜・口腔粘膜(歯茎など)からの出血が見られることがあります。消化管出血や婦人の性器出血が見られることもあります。発熱がおさまって軽快する場合もありますが、発熱がおさまるとともに循環不全・ショックとなり12-24時間で死に至る場合もあります。血管内の血漿の漏出から胸水・腹水の貯留や循環血液量の減少が起こり、ショックに至る場合もあると考えられます。
 なお、デング出血熱では、出血傾向が認められますが、出血傾向に加えショック症状が認められるデング出血熱をデングショック症候群(dengue shock syndrome : DSS)と呼ぶことがあります。

 デング熱に対する特効薬はありません。しかし、重症のデング出血熱でも、適切な医療がなされれば、救命される場合が多いです。・・・

病原体は?
 デング熱・デング出血熱の病原体はフラビウイルス科フラビウイルス属に属するデングウイルス(dengue virus : DEN)です。他には、黄熱ウイルス(yellow fever virus: YFV)、ウエストナイルウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルスなどがフラビウイルス属に属します。デングウイルス(dengue virus : DEN)には4種類の血清型(1型[DEN-1]・2型[DEN-2]・3型[DEN-3]・4型[DEN-4])があります。

 初めてデング熱に感染すると、感染した血清型のデングウイルスに対する終生の免疫を獲得します。感染した血清型以外の血清型のデングウイルスの免疫も一過性に2-3か月程度の間獲得しますが長続きしませず、消失してしまいます。こうして、今度は、終生免疫を獲得した血清型以外の血清型のデングウイルスに感染すると、重症のデング出血熱となる確率が高くなるとされています。 ・・・

 
 ついでに、国立感染症研究所のサイトの解説のアドレスも貼っておくと、

デング熱とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ta/dengue/392-encyclopedia/238-dengue-info.html (リンクはココ

 更に興味があれば、上記リンク先の右端のリンク欄から次の記事でもどうぞ。

「デング熱」日本人の誤解を解くコーナー
http://www.nih.go.jp/niid/ja/dengue-mistake.html

病原微生物検出情報 (IASR) (No.376) Vol.32 No.6 June 2011 デング熱関連特集
http://www.nih.go.jp/niid/ja/dengue-m/dengue-iasrtpc/889-iasr-376.html (チクングニア熱に関する記事を一部含む)


 次に、チクングニア熱の解説に関し、冒頭2番目のリンクから興味ある点を適宜抜き出すと、

はじめに
 ・・・
 2007年6-9月には、イタリア北東部のEmilia-Romagna地区のRavenna県とForli-Cesena県とで小さな流行がありました。第一例の患者は、インドのKeralaのチクングニヤ熱流行地域から帰国した人でした。このイタリアでの小さな流行は、ヒトスジシマカが媒介したものでした。この流行は334人の疑い例のうち284人について確定のための検査が実施され、204人でチクングニアウイルスの感染が確認されました。死亡例が1人ありました。 ・・・

 フランスでは、南東部のヒトスジシマカが生息する地域で、2010年9月に、デング熱の国内感染例2人とチクングニヤ熱の国内感染例2人とが、認められました。チクングニヤ熱の国内感染例2人は、同じ中学に通う12歳の女子です。アジアから帰国した近所に住む国外感染例の7歳の女子患者由来のウイルスに感染したものと考えられました。 ・・・

 日本におけるチクングニヤ熱の患者発生は、下のグラフのように、2011年では年間10人程度です。いずれも海外で感染しています。海外の渡航国としては、インド、スリランカ、ミャンマー、マレーシア、タイ、インドネシアです。媒介する蚊については、ネッタイシマカは日本には生息しませんが、ヒトスジシマカは沖縄地方から東北地方まで生息が確認されており、その北限は青森県にまでおよんでいます。今後、海外で感染した患者が日本でヒトスジシマカに吸血されることで、イタリアやフランスのように国内感染例が発生しないか心配されます。・・・

 チクングニヤ熱は、主としてAedes属(ヤブカ属)の蚊によって媒介されます。Aedes属(ヤブカ属)の蚊は、デング熱も媒介します。卵をつくるためにメスのみが吸血するので、メスの蚊のみが媒介します。アフリカでは、人間の存在がなくても、脊椎動物(猿など)とAedes furcifer 、Aedes vittatus 等の蚊との間で森林型(ジャングル型)感染サイクル(sylvatic cycle)が成立しています。アジア・アフリカでの人間での流行時には、人間とネッタイシマカ(Aedes aegypti )・ヒトスジシマカ(Aedes albopictus )との間で都会型感染サイクル(urban cycle)が成立するものと考えられます。アジア・アフリカでは、モンスーン後の蚊の多い時期に大きな流行が見られます。Aedes属(ヤブカ属)の蚊は、水溜りで殖えます。捨てられた空き缶・放置された古タイヤなども、水が溜まれば殖える可能性があります。蚊は日陰の涼しい所に潜んでいて、夜明けから夕暮れまでの日中に人間から吸血します。特に早朝と夕方に吸血活動が盛んです。しかし、夜間でも潜伏している場所の近くに人間が近づけば吸血する可能性があります。・・・

どんな病気
 チクングニヤ熱(chikungunya fever : CF)は、すべての年齢層の男女で見られます。潜伏期は3-7日(1-12日の範囲)です。突然の摂氏39度以上の発熱、一つ以上の強い関節痛で発症します。2006年1-9月に南インドのある病院に入院したチクングニヤ熱患者876人の症状の分析では、突然の短期間の発熱(100%)、膝、足首、手首、手や足の関節痛(98%)、出血(3%)、劇症肝炎(2%)、髄膜脳炎(1%)です。一方で、無症状の不顕性感染もあり、全感染の3-28%程度とされます。 ・・・

病原体は
 原因ウイルスはトガウイルス科アルファウイルス属のチクングニヤウイルス(chikunguniya virus : CHIKV)です。・・・エンベロープを有するため有機溶媒や界面活性剤により不活化されます。アルコール消毒が有効です。58℃以上の高温や乾燥にも弱いです。もともとはアフリカの風土病だったものが、世界各地に広がり始めたのではと思われます。アジア・アフリカの熱帯・亜熱帯を中心に存在するものの、アメリカ大陸には存在しません。しかしながら、媒介する蚊はアメリカ大陸にも存在するので、今後アメリカ大陸にも侵入するのではと心配されています。

 チクングニヤ熱(chikungunya fever : CF)は、一度罹って治ると長期に亘る免疫が成立し、再感染を防ぐと考えられています。 ・・・

予防のためには
 ・・・
 チクングニヤ熱の場合、蚊が吸血をしてから2日目から蚊は感染力を持つようになります。そこで、患者の発生が確認された場合、患者宅周辺に潜伏している感染蚊をできるだけ速やかに防除することが必要です。日本で主要な媒介蚊と成りえるヒトスジシマカの飛翔範囲は約100~200m と考えられていますが、住宅の密集度などを考慮して、周囲300m を防除対象地域として選定します(参考文献4)。

 ウイルス血症は、発病から4-7日以内までとされます。発病から7日までは、患者は蚊帳(bednets)の中で過ごすなどして蚊に刺されないよう注意が必要です。 ・・・


 ついでに、国立感染症研究所のサイトの解説のアドレスも貼っておくと、

チクングニア熱とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ta/chikungunya/392-encyclopedia/437-chikungunya-intro.html (リンクはココ

 更に興味があれば、上記リンク先の右端のリンク欄から、次の記事をどうぞ。

チクングニア熱のカンボジアからの輸入例―福岡市 2012年09月20日
http://www.nih.go.jp/niid/ja/chikungunya-m/chikungunya-iasrd/2603-pr3914.html
チクングニア熱の輸入症例―千葉市 2012年09月20日
http://www.nih.go.jp/niid/ja/chikungunya-m/chikungunya-iasrd/2597-pr3912.html
フィリピンから帰国後に発症し確認されたチクングニア熱輸入症例―千葉県 2012年09月20日
http://www.nih.go.jp/niid/ja/chikungunya-m/chikungunya-iasrd/2607-pr3917.html


 最後に、件数の増加がそれほど顕著ではない時点で今回の報道がでてきた背景の一つは、当局が両感染症の国内での感染の流行をかなり警戒しているためではないだろうか。デング熱は過去に国内で流行したことがあるようだ(当時は戦時中で、南方との往来も活発な中で、栄養不足による影響(免疫力の低下?)もあったのかもしれない)。

 ●の影響による易感染性は今後長期にわたり続くものである点を考えると、今年は蚊の季節もほぼ終わり大丈夫だったと思われるが、来年はどうなるのだろうか。

 他方、汚染地であれば、蚊の増殖場所である水溜りにも●の影響があるだろう。噂話だと、最近蚊が少なくなった、蚊がのろのろと飛んでいた、などの指摘も耳にした。媒介動物(ヤブカ)の方も影響を受けていて、前回戦時中の時と比べると、話はそれほど単純でないのかもしれない。


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