ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (7-8)

2012年09月26日 |  症例(報道ベース)

〔更新履歴:9/27追記〕

 

 のろのろ書いていると、ネタが増えてくるという嘆かわしい状況か。

(7) 易感染性 (つづき)

 今月に入って顕著な増加が判明した感染症があるので、定量把握可能な感染症で最近流行しているもの(定点把握対象)に追加しておこう。

(N) RSウイルス感染症

  RSウイルスとは、「Respiratory syncytial virus(RSV)」から来ていて、その和訳は「呼吸器合胞体ウイルス」らしい。益々意味不明になったので深く追求したいところだが、長くなるのでやめておこう。

 先ずは報道を、例えば、先週の朝日新聞から、

RSウイルスはや流行 赤ちゃんはご注意 感染研
2012年9月21日5時44分
http://www.asahi.com/science/update/0920/TKY201209200326.html (リンクはココ

 赤ちゃんの肺炎や気管支炎の原因になるRSウイルス感染症が流行し始めている。この時期の患者数としては調査を始めた2003年以降最多。例年は秋から冬にかけて流行のピークを迎えるが、すでに11月並みの流行規模で、専門家は注意を呼びかけている。・・・

 国立感染症研究所感染症情報センターによると、全国の指定医療機関から報告された患者数は最新1週間(8月27日~9月2日)に1998人。この時期では最多だった昨年の1242人を上回った。1歳以下が76%を占め、福岡、東京、大阪の都心部のほか宮崎や鹿児島などで増加が目立つ。

 流行状況をグラフでみておくと、週間報告数の推移について国立感染症研究所の「感染症発生動向調査週報(IDWR)」から(2012年36週。http://www.nih.go.jp/niid/ja/idwr-dl.html。リンクはココ)、



図1 RSウイルス感染症の週間報告数の推移
(2003-2012。2012年は36週、9/16報告分まで)


 東京でも増加していて、その前の週から警告を発していたようだ。東京都のサイトから、

RSウイルス感染症の報告数が急増しています
平成24年9月13日
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/09/20m9e200.htm (リンクはココ


 RSウイルス感染症については、昨年の今頃にも増えていた経緯がある。

RSウイルス感染、大流行のおそれ
2011年9月29日 19:01
http://www.news24.jp/articles/2011/09/29/07191663.html (リンクはココ

 国立感染症研究所が[2011年]9月18日までの1週間に全国の定点観測医療機関から報告を受けたRSウイルスの感染者数は1414人と、通常の年の2倍となった。国立感染症研究所は「今後、冬に向けて感染が拡大するので、過去最大級の流行になるおそれがある」と注意を呼びかけている。


 国立感染症研究所は昨年、37週(9/18までの集計。9/30公表)で警告を発していたようだ。これを受け、昨年10月に厚労省はRSウイルスの迅速診断キット検査について健康保険適用対象の拡大を行った(乳児(1歳未満)などのウイルス検査が保険適用に)。迅速な対応をしていたようなので、当局は、昨年かなり拡大を怖れていたのだろう。

 昨年の流行は幸い、最終的に例年並みに留まった。国立感染症研究所の「感染症発生動向調査週報(IDWR)」(2011年51週・52週。旧サイトの方 http://idsc.nih.go.jp/idwr/pdf-back26.html)から、



図2 RSウイルス感染症の週間報告数の推移(2003-2011)

 

 さて、RSウイルス感染症の解説については、

RSウイルス感染症とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/alphabet/rs-virus/392-encyclopedia/317-rs-intro.html (リンクはココ

 Respiratory syncytial virus(RSV)は年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を起こすが、特に乳幼児期において非常に重要な病原体であり、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、 生後数週から数カ月の期間にもっとも重症な症状を引き起こす。また、低出生体重児や、あるいは心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全のある場合には重症化のリスクが高く、臨床上、 公衆衛生上のインパクトは大きい。

疫 学
  RSV感染症は世界中に存在し、地理的あるいは気候的な偏りはないが、特徴的なことは、いずれの地域においても幼弱な乳幼児でもっとも大きなインパクトが あることと、毎年特に都市部において流行を繰り返すことである。流行は通常急激な立ち上がりをみせ、2~5カ月間持続するが、温帯地域においては冬季にピークがあり、初春まで続く。本邦においても、11~1月にかけての流行が報告されている。

 小児の細気管支炎や肺炎など、下気道疾患による入院数の増加のほとんどは、RSVの活動性と一致すると考えられている。もちろん、A型インフルエンザウイルスも同時期に小児におけ る気道疾患の増加する原因となるが、ピークは常に入院の増加につながるとは限らず、ほとんどの場合は、RSV感染症とインフルエンザの流行のピークは一致 しないとされる。

 RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占めると報告されており、より年長の小児においても気管支炎の10~30%に関与していると考えられている。一方、呼吸器症状のない患者から分離されることは滅多にない。通常、すべての新生児では母体からの移行抗体が母体と同レベル認められるが、徐々に減少し、7カ月以降に検出される抗体は通常、生後の自然感染によるものである。しかしながら、血中で検出される抗体は即座に感染防御を意味せず、抗体が存在している生後6カ月以内でもっとも重症化する最初の一年間で50~70%以上の新生児が罹患し、3歳までにすべての小児が抗体を獲得する。肺炎や細気管支炎などのRSVによる下気道症状は、ほとんどの場合は3歳以下で、入院事例のピークは2~5カ月齢にあるが、最初の3~4週齢では比較的少ない。また、年長児や成人における再感染は普遍的に見られるが、重症となることは少ない。

臨床症状
 RSVの初感染は常に顕性であるが、軽症の感冒様症状から重症の細気管支炎や肺炎などの下気道疾患に至るまで、様々である。しかしながら、初感染においては下気道疾患を起こす危険性は高く、69%の乳児が生後最初の一年間でRSVに罹患する。そのうちの1/3が下気道疾患を起こすと報告されている。2年目から4年目においても下気道疾患を起こす比率は20%を超え、無視できるものではないが、その重症度は年齢 を追う毎に減弱する。・・・初感染の病像として、上気道炎や気管支炎の場合でも症状は比較的強い。特に1 歳以下では、中耳炎の合併がよくみられる。生後4週未満ではRSV感染の頻度は低いが、罹患した際には呼吸器症状を 欠く非定型な症状をとることが多く、診断の遅れにつながる。この年齢では、突然死につながる無呼吸が起きやすいことも報告されており、注意が必要である。

 [中略]
 RSVの再感染は普遍的に認められ、縦断的な調査では毎年6~83%の小児が再感染を経験していると報告されている。通常は軽症の上気道炎や気管支炎であるが、幼児では20~50%以上の症例で下気道疾患がみられる。成人ではいわゆる普通感冒を起こすのみである・・・ (強調は引用者)

 そもそも軽症例だとわざわざ病原体検査をしないだろうから、RSウイルス感染症が増加しているということは、全体として下気道疾患の重症化例が増加しているのであろう。

 上記解説の冒頭に「低出生体重児や、あるいは心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全のある場合には重症化のリスクが高」いとあるけど、チェルノブイリの経験によれば、いずれも増加したとされているものにあたる(2つ目には「チェルノブイリ・ハート」が含まれ、3つ目はちまたでは「チェルノブイリ・エイズ」とか呼ばれている)。

 流行の兆しがあり、「生後数週から数カ月の期間にもっとも重症な症状を引き起こす」など理解されていたので、厚労省によって昨年乳児などに対する保険適用拡大策がとられたのであろう。


 RSウイルス感染症の最近の動向については、感染症発生動向調査週報 (IDWR)の最新号から、

IDWR 2012年第36号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症
http://www.nih.go.jp/niid/ja/rs-virus-m/rs-virus-idwrc/2662-idwrc-1236.html (リンクはココ

 RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬期にピークが見られ、夏期は報告数が少ない状態が継続していたが、2011年、2012 年と2年連続して7月頃から増加傾向がみられてる。2012年の報告数は第28週以降9週連続して増加が続いており、特に第36週の報告数は2,785例と2週連続して急激な増加(第34週1,164例、第35週1,998例)がみられている(図1)。都道府県別の報告数をみると、福岡県(479)、東京都(317)、宮崎県(285)、大阪府(174)、鹿児島県(109)、山口県(104)、広島県(103)、埼玉県(100)の順となっている。39都府県で前週の報告数よりも増加が認められており、宮崎県、大阪府、東京都で大きな増加がみられている(図2)。

 2012年第1~36週の累積報告数(36,589)の年齢群別割合をみると、0歳44.6%(0~5カ月19.8%、6~11カ月24.8%)、1歳 33.1%、2歳12.2%、3歳5.8%、4歳2.4%の順であり、0歳の報告割合が最多を占め、次いで1歳、2歳と年齢順であり、1歳以下で全報告数の約70%以上を、3歳以下で全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わりはない(図3)。一方、今夏の報告数の増加が始まった第28週以降の9週間では、累積報告数10,206例中0歳からの報告割合が38.1%(0~5カ月15.4%、6~11カ月22.7%)、1歳からの報告割合が39.4%、2歳13.7%であり、1歳の報告が最多を占めている(図4)。 (強調は引用者。図はリンク先で参照を)

 上記の分析によれば、今夏からの報告数の増加では「1歳の報告が最多を占めている」とされ、これは、2010.8月~2011.6月辺りに生まれた幼児に重症化の例が多いということかもしれない。

 さて、何故だろうか。一つには、乳児期に事故の初期被曝の影響を受けた子どもは、その後も慢性的に被曝を受けているため従来より免疫力が低下していて、感染した際に重症化し易くなっているということが考えられる。

 また、気になるのは福岡県の報告数であろうか。偶々なのか、あるいは北九州市の震災瓦礫の試験焼却の影響でも出いるのであろうか。仮に瓦礫焼却の影響なら、北九州市では9/17から本格焼却に入った模様で、今後より明確な傾向が出現してくるのかもしれない。


 最後に、RSウイルス感染症に関し、昨日の読売新聞にも掲載されていたようだ。報告数上位の都道府県の順番を変えたことには何か意味があるかもしれない、と思うのは気にしすぎだろうか。

RSウイルス患者が急増、例年より早く流行
2012年9月25日10時06分
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120925-OYT1T00291.htm (リンクはココ

 乳幼児に肺炎や脳症などを引き起こす「RSウイルス」の流行が例年より早く始まり、患者が急増していることが、国立感染症研究所のまとめで分かった。

・・・地域別では東京都や大阪府、福岡県、宮崎県で患者が多い。・・・

 

・9/27追記:
 興味深い報道があったようなので、メモしておこう。サイト「低気温のエクスタシー byはなゆー」から、

北九州市八幡西区で幼児14人以上が「RSウイルス」に感染か
2012年9月27日木曜日
http://alcyone-sapporo.blogspot.jp/2012/09/blog-post_1577.html (リンクはココ

 上記記事で引用されたNHKの報道によると、「26日に欠席した14人の園児のうち3人はRSウイルスへの感染が確認され、ほかの11人も感染の疑いが強いということです」とされいる。

 国立感染症研究所の解説(本文のリンク参照)には、RSウイルス感染症の「潜伏期は2~8日、典型的には4~6日とされている」とある。今回の集団感染は、北九州での震災瓦礫の本格焼却の開始のタイミング(9/17から)と妙に一致しているような気がするが、考えすぎだろうか。


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