ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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進化の考え方:ラマルクとダーウィン

2023年09月26日 | 健康法

 御先祖様から伝来の生活様式は、過去の経験の積み重ねで成り立っている。かつて経験した事象に対しては、何らかの自動的な制御法が身についている(例えば、植物毒への対応。ユーカリの葉には毒性があるが、それを主食にするコアラは解毒できる)か、あるいは制御できない類のものならそのような事象に至らないよう極力回避するだろう(例えば、毒のあるものは味覚や本能で回避する)。生活様式には、生きるための知恵が詰まっている。
 運動して体を鍛えるという生活習慣は、スポーツするアスリート級の人なら当然のことだろう。しかし、現役を引退しても同じレベル(同世代のトップ級)で体を鍛え続ける人はそれほど多くないのではないか(コーチや監督になって太るのはよくみかける)。他方、音楽の場合は、かなり上手い人ならもともと素養があって好きで始めたものだろうから、趣味として生涯にわたり長く訓練を続けることが多いだろう。
 体を鍛えることと音を楽しむこととでは、継続性に大きな違いが生じることから、次の世代への伝わり方も違いが生じると思われる。


 一例を引っ張り出すと、当時8歳の女の子(また特殊な例ですまぬ・・・)。南米の日系5世らしく、祖父(3世)が楽器の演奏を教えていたらしい。当時は日本語はできなかったようだが、親がなじみの日系人のサークルではカラオケが流行っていたらしく練習して上達したらしい。動画サイト youtube から:

瀬戸の花嫁を唄うブラジル人女の子
   https://www.youtube.com/watch?v=1cCSLGIPiPg
 (興味があるなら、この子を日本のTV番組が取材した動画もどうぞ。"MELISSA KUNIYOSHI Imagens do programa Sekai Marumie"というタイトルで検索を)

 


 脱線はほどほどにして、本題に戻り、ラマルク的な進化の考え方とダーウィン的な進化の考え方を簡単にまとめておこう。

 ラマルク的な進化の考え方においては、生物の進化は、
・下等で単純なものから高等で複雑なものへという方向の中で、生物はその時の生存環境に対応したある種の意図・目的を選び出す(前進的な進化、目的選択により変化の方向性が存在すると仮定)、
・それらによく適した生活様式を通じて、よく使うものは発達し、使わないものは衰える方向へ向かう(用不用説)
という感じだろう。

 他方、ダーウィン的な進化の考え方においては、生物の進化は、
・意図も目的もなくただただ変化していく(変化はすれど方向性がないと仮定)
・たまたま変化した形質形態のうち、その時の環境における生存闘争で有利な方が優越種として生き延びる(適者生存説、自然淘汰説。偶然の結果を通じた進化。注1)
となるのだろうか。

(注1)ダーウィンの有名な著作「種の起源」の原文題名は "The Origin of Specied by Means of Natural Selection, or the Preservasion of Favoured Races in the Struggle for Life" である。自然選択と生存闘争における優越種の保存とが等価ということらしい。

 
 動物をみる限りは、もどちらの考え方もあり得ると思われる。ある時はラマルク的に進み、ある時はダーウィン的に進むのであろう。
 ラマルク的な進化の例は、エピゲノム遺伝論をみればいろいろあるだろう。大規模な変化を伴うもの(例えば、サメ(軟骨魚類)のひれがカエル(両生類)の足に変化など)は、こちらで説明した方が分かり易いだろう。
 ただ、獲得形質の遺伝を初めから終わりまで観察するには、時間幅が最低でも10万年から100万年あたりは必要のような気がするので、明解に実証しようとするとなかなか困難と思われる(注2)。
 ダーウィン的な進化の例は、蛾の工業暗化の話が有力なのだろう(注3)。生物の体表の色などの小規模の変化を説明するのに便利なのではないかと思われる。

(注2)ダーウィン派によれば、獲得形質の遺伝を否定した実証としてヴァイスマン(「ワイスマン」とも書かれる)の実験がある(ラマルク派からみると実験自体が突っ込みどころ満載で、一般向け記事だとダーウィン派でも最近言及・紹介する人が減っているような・・・)。サイト「人物小史」から:

7.[オーガスト・ヴァイスマン] 1834-1914 [生殖細胞連続説]
 http://ymorita.la.coocan.jp/hist1.htm#2-7
> 卵の細胞質の中に、生殖細胞質(生殖質)と体細胞質(体質)が区別されると考えた。そして、生殖細胞質を配分された細胞が生殖細胞となって次の代に伝えられ、体細胞質を配分された細胞は体細胞となって、その個体を構成し、生殖細胞に栄養を与える役目をするとともに、その個体の生命を維持する。したがって、個体の死は体細胞の死を意味し、生殖細胞には死はなくて、あたかも原生動物に死がないのと同じように、世代から世代へ送られて行くと考えた。
<エピソード> ・・・
・この説によると決定子に変化が起きない限り種は不変である。彼の説によると獲得形質の遺伝は不可能である。彼はそれを証明するために21代にわたってハツカネズミの尻尾を切断し続けても生まれる子供に変化がないことを示した
・ダーウィンの説の中で自然選択だけを強調したのでネオ・ダーウィニズムと呼ばれる。<


(注3)蛾(オオシモフリエダシャク)の例については、サイト「FNの高校物理」の記事から:
オオシモフリエダシャクの工業暗化
   http://fnorio.com/0080evolution_theory1/peppered_moth1/peppered_moth1.htm
(種名を読むときにどこで間を置くか心配なヒトは、シャク蛾の一種で幼虫期はエダに擬態し羽がシモフリ模様のオオきなもの、という理解で対応するとよいかも)


 ラマルク的な進化の考え方とダーウィン的な進化の考え方は本来、共存可能なはずだろう。しかし、19-20世紀にかけて弱肉強食主義を信奉する人々がダーウィン説を社会思想へ援用し始めたことから、おかしくなってしまったようだ(注4)。ラマルク説は間違っていて、ダーウィン説が正しいという排他的な関係になってしまった時期が長くつづいていたように思われる。

(注4)社会思想における自然権論(「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という天賦人権説の考え方に同じ)の下では、20世紀前半に隆盛した人種差別主義や植民地主義は高尚な考えとは言えずこれらを正当化するのは難しい。このため、生物の基本法則にあたる進化でのダーウィン説に白羽の矢が立てられ、同説以外を認めない態度をとった感じだろうか。


 ダーウィン的な進化の考え方だけが正しいとすると、矛盾点はいろいろあるので列挙しておこう。何故だか毛色が違いそうな路線も扱うファッション雑誌のサイト「Oggi.jp」の記事を要約すると:

ダーウィンの進化説には重大な矛盾点がある…?【知らなくても困らない。でも知ってるとちょっと楽しい宇宙の話】
 https://oggi.jp/98661


要約すると>ダーウィン進化説6つの矛盾点
 (1)カンブリア爆発が説明できない
 (2)コピー・ミスで進化するのか?
 (3)不利な形質も残っている
 (4)中間段階の化石が未発見
 (5)長期間進化してない生物がいる
 (6)突然変異の仕組みが説明不足<

 

 ラマルク的に考えれば、(1)については、生物の大絶滅後の回復期にあたり未開の生息環境が豊富にあり様々な生活様式が成立し得たから、(2)や(6)については、ラマルク的なものとそもそも関係がないから、(3)については、生存環境に依存して形質形態の有利不利が生じ得るものの、多少不利でも残ることもあるから、(5)については、よく使うものだけからなる形質形態(収斂進化)の場合は生活様式が変化しなければ進化もしないから、ということになり、特に問題にならなくなるであろう。
 (4)については、ダーウィン的ほどではないが、ラマルク的に考えても問題になり得るかもしれない。このため、生物の進化には停滞期(現在はこの期)と非停滞期(躍進期)とがあると考えを取り入れる必要があるか(注5)、あるいは、もっと別の考え方(注6)がよいのかもしれない。

(注5)生物が逆境に置かれると、細菌レベルでは突然変異が増大することが知られており、多発突然変異、あるいは進化の躍進期にあたるのかもしれない。その内容をブログ「生命進化の真実を求めて-植野 満」の記事から引用すると:

2.突然変異説の誤り
 https://blog.goo.ne.jp/um1123/e/32bc8396cb23111255c9814368cface7
>なお、突然変異がランダムに引き起こされるということに関しては、それに反する実験がすでに1989年にハーバード大学のジョン・ケアンズらによってなされている。それは、大腸菌の実験であるが、大腸菌は生命の危機に晒された場合、合目的的な突然変異の出現が普段に比べて一兆倍も出現したそうなのである。これらの事実からも突然変異のランダム性は失われるのである。<
(なお、同ブログでの一つ前の記事「1.ダーウィン進化論の問題点」 https://blog.goo.ne.jp/um1123/e/ce483d16b7a84a313603a60bac697f4c も興味深い)


(注6)例えば、ウイルス感染が生物を進化させたとする、ウイルス進化説がある。これについては、再度ファッション雑誌のサイト「Oggi.jp」の次の記事が詳しい:
ウイルスが生物を進化させたのか? ウイルス進化論ふわっとまとめ 1-2【知らなくても困らない。でも知ってるとちょっと楽しい宇宙の話】 
 https://oggi.jp/99894 及び
 https://oggi.jp/99895
後者の記事から>・・・ここで、ウイルス進化論の要点をまとめていきましょう。要点は以下の通りです。
【1】遺伝子の突然変異が単なるコピー・ミスだけではなく、ウイルスが生物に感染した時にその生物の遺伝子を組み替えたりして起こる。
【2】ウイルス自身の遺伝子をその生物の遺伝子に挿入したりすることによって変異が起こり、それが次世代に引き継がれて、生物が進化する。<

 
 最後に備忘録的に、それぞれの進化の考え方の特徴をまとめておこう:

〔ラマルク的な進化の考え方〕

- 先メンデル遺伝論の時代に、豊富な博物学の知識から導かれたものだが(ラマルクは当時の博物学から生物学を新たに分離させた立役者)、動物のみを対象としたものである。
- 動物自身の意図・目的が進化に関与するので、人智を越えたものが生物を選ぶという思想(選物思想)とは異なる考え方である。
- 動物の具体的な習慣的動作が進化に関与するとしてかなり自力本願的で、偶然性を排している(将来の予測もできるかもしれない)。
- 生物種間による生活様式の工夫の競争(ニッチ獲得の争い。注7)はあるだろうが、同一種の中での生存闘争の形では前面に出てこない。


(注7)ニッチの意義については、例えば、環境イノベーション情報機構のサイトから:

ニッチ   【英】niche  / ecological niche
 https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2923

>生物学用語で、生態的地位のこと。
 動物であれば、餌となる植物や他の動物、隠れ家など、また、植物であれば、光合成に必要な太陽光や根を張るための土壌など、生物が自然の生態系内で生きていくために不可欠なもの(環境)がある。生物種が生態系内でこれらを巡る種間の争奪競争に勝つか、耐え抜いて、得た地位が生態的地位(ニッチ)である。ニッチを獲得できた生物種だけが生態系内で安定した生存が可能となる
 一般に、生物種は様々な生物の相互関係の中で適応して、ニッチを獲得しやすい特有の形態や習性を持つようになる(進化する)ので、生態系内には多様な生物種が複雑な相互関係の中で存在する。安定した生態系は、ニッチを持った多くの種で成り立っており、通常、空いているニッチはない。また、一般的には、ひとつのニッチを異なる種が占める(獲得する)ことはできないので、安定した生態系に新たな生物が侵入する余地はほとんどない。しかし、希には餌の食い分けや棲み分けが起こり(ニッチが分化され)、両種の共存が可能になることもある。<

 

〔ダーウィン的な進化の考え方〕

- メンデルの遺伝論と同時期の考え方であり、品種改良のための栽培植物や飼育動物(家畜、犬、鳩など)の観察が考え方の基礎にある(植物も対象化。動植物の品種改良の場合は、大規模な変化は起こりにくいし、選択は人為的選択によっている)。
- 自然が選択するという選物思想の一種であり、創造説(生物は神により選ばれ創造されたとの考え方。この場合、個体差はあれど生物は不変と考えることが多い)との距離は近い。
- 偶然性が支配すると考えるためかなり他力本願的で、結果の分析しかできない。
- 同一種内でのよく似たもの同士(普通の子と親とは少し違う形質形態の子)による生存闘争の存在を仮定している。
- 進化は個々に関連のない事象が偶然の積み重ねで起こるので、時間的にみれば一定の時間を必要とし、徐々にしか進まない。

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