(7) 易感染性 (つづき)
長い前置きも無事終わったので、やっと本題に入ろう。
(S) ヒト・ヘルペスウイルス感染症(総論)
ヒト・ヘルペスウイルス(HHV。human herpesvirus)については、この項目(易感染性)の冒頭でも少し触れたので、覚えている人も少しはいるだろうと期待する(記事はココ)。だが、書いた本人は忘れかけているので、今回は少しおさらいをしておこう。
最近でもヒト・ヘルペスウイルス感染症を患っている人はいるようで、例えば、ツイッターで「ヘルペス」や「帯状疱疹」に関連したリアルタイムのツイートを検索してみると、いろいろと出てくるであろう。
ツイッターで「ヘルペス」で検索
https://twitter.com/search/realtime?q=%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%9A%E3%82%B9&src=typd (リンクはココ)
ツイッター上で「帯状疱疹」で検索
https://twitter.com/search/realtime?q=%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9&src=typd (リンクはココ)
これだけでは増えているのかどうかは多分全く分からないだろうから、先ずは、某掲示板の緊急自然災害板でみかけたチェルノブイリの事例を紹介しておこう。「口唇ヘルペス」はHHV-1又はHHV-2に、「帯状疱疹」はHHV-3に関連し、サイトメガロウイルスはHHV-5のことである。
831 : 名無しに影響はない(千葉県) : 2012/07/05(木) 13:44:20.35 ID:UOpV8SNI [2/3回発言]
5月中旬に口唇ヘルペスができてなかなか治らず
やっと治ったと思ったらまた7月に入ってすぐできた。
体がだるすぎてどうにもならない。
このまま帯状疱疹とかになってくとしたらいやすぐる。。。
832 : 名無しに影響はない(栃木県) : 2012/07/05(木) 13:50:54.13 ID:0t/SohwS [4/6回発言]
>>831
1. Herpes virus activation in the heavily contaminated territories of Gomel Province resulted in increased intrauterine and infant death rates (Matveev et al, 1995).
1. ゴメル省の汚れが多い地域におけるヘルペスウイルスの活性化は、子宮内死亡率と乳児死亡率の増加をもたらした(Matveev et al, 1995)。
7. In 1993, women with gestational herpes in Gomel Province with a Cs-137 contamination higher than 15 Ci/km2 experienced 8.6-fold more infant deaths compared to less contaminated territories (Matveev et al, 1995).
7. 1993年に、15 Ci/km2よりCs - 137の汚染が高いゴメリ州内地区で妊娠ヘルペスを持つ女性は少ない汚染された地域に比べて8.6倍以上の乳児死亡を経験した。
13. Herpes viral diseases doubled in the heavily contaminated territories of Gomel and Mogilev provinces 6 to 7 years after the catastrophe compared with the rest of the country (Matveev, 1993).
13. ヘルペスウイルス性疾患は、事故後6-7年後のゴメル省とモギリョフ省の汚れが多い地域で省内他地区に比べ倍増した (Matveev, 1993)。
15. In all the heavily contaminated territories there was activation of herpes viruses (Voropaev et al, 1996).
15. すべての汚れが多い地域では、ヘルペスウイルスの活性化があった (Voropaev et al, 1996)。 [以上、ベラルーシ。報告書122-123頁]
11. Herpes and cytomegalovirus viruses were found in 20% of ejaculate samples from 116 liquidators who were examined (Evdokymov et al, 2001).
11. ヘルペスウイルス(帯状湿疹)およびサイトメガロウイルス(胎児小頭症や頭蓋内石灰化、網膜出血、免疫低下時の肺胃腸炎)は、検査された116清算人から精液サンプルの20%で発見された(Evdokymov et al, 2001)。 [ロシア。報告書124頁]
なお、上記の英文は、YNNチェルノブイリ報告書の「5.11節 感染症と寄生虫感染」(122-124頁あたり)からの引用で、その和訳(原文のママ)は訳者が断りなく補足している部分あるので少し注意が必要だろうか(なお、同報告書について以前の記事はココ)。
ついでに、上記に引用されていないヒト・ヘルペスウイルス関連の部分をYNNチェルノブイリ報告書から抜き出しまとめておくと(なお他力本願で、イタリック体部分の和訳は某掲示板の次の記事から借用:「首都圏で手足口病・マイコプラズマ肺炎が激増している背景-放射能で微生物生態系が「沸騰」し、B・C型肝炎も劇症化へ」 2011 年 10 月 24 日 http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/717.html。リンクはココ)、
5.11. Infections and Parasitic Infestations
5.11. 感染症と寄生虫感染
14. Activation of cytomegalovirus infections in pregnant women was found in the heavily contaminated districts of Gomel and Mogilevprovinces (Matveev, 1993). [ベラルーシ、同報告書123頁]
(14) 妊婦におけるサイトメガロウィルス(訳注1)感染症の活性化が、ゴメリおよびMogilev州のひどく汚染されたエリアで見られた。
(訳注1) ヒトヘルペスウイルスの5型(HHV-5)。サイトメガロウイルス感染症は、発展途上国でより多く見られ、社会・経済的に低い階層でより多く見られる。妊娠中に母親が初めてサイトメガロウイルスに感染すると、胎児も感染する危険性が増す。
11. Chernobyl’s Radioactive Impact on Microbial Biota
11章 微生物相に対するチェルノブイリの放射線の影響
2. There is evidence of increased susceptibility to Pneumocystis carinii and cytomegalovirus
in children whose immune systems were suppressed in the contaminated territories of Novozybkov District, Bryansk Province (Lysenko et al., 1996).
(2) ニューモシスティスとサイトメガロウィルスに子供に感染しやすくなることの証拠がある-そういった子供の免疫システムは、Bryansk州のNovozybkov区域で抑制されていた。
6. Herpes viruses were activated in the heavily contaminated territories of Belarus 6 to 7 years after the catastrophe (Matveev,1993; Matveev et al., 1995; Voropaev et al.,1996).
(6)破局後の6-7年でベラルーシのひどく汚染されたエリアでは、ヘルペスウイルスが活性化した。
7. Activation of cytomegalovirus was found in the heavily contaminated districts of Gomel and Mogilev provinces, Belarus (Matveev, 1993). [以上、同報告書281頁]
7. サイトメガロウイルスの活性化がベラルーシのゴメリ州及びモギィレフ州の高汚染地域でみられた。
Our contemporary knowledge is too limited to understand even the main consequences of the inevitable radioactive-induced genetic changes among the myriad of viruses, bacteria,
protozoa, and fungi that inhabit the intestines, lungs, blood, organs, and cells of human beings. The strong association between carcinogenesis and viruses (papilloma virus, hepatitis virus, Helicobacter pylori, Epstein–Barr virus, Kaposi's sarcoma, and herpes virus) provides another reason why the cancer rate increased in areas contaminated by Chernobyl irradiation (for a review, see Sreelekha et al., 2003). [同報告書283頁]
われわれの現代の知識はあまりにも限られているので、人間の腸・肺・血液・組織・細胞に害を為すウイルス・バクテリア・原生生物・菌類の内で、放射能に誘発さえた遺伝子の不可避的な変化に関する主要な結果を理解できない。発癌現象とウイルス(乳頭腫ウイルス・肝炎ウイルス・ピロリ菌・感染性単核球症を引き起こすヘルペスウイルス・カポシ肉腫ウイルス・ヘルペスウイルス)との間の強い関連は、チェルノブイリの放射線の照射によって汚染されたエリアで癌の発生率が上昇した理由を提供している。
ヒト・ヘルペスウイルスによる感染症について3.11後に直接増加したことを示すデータはないものの、間接的には増加が推定できるであろう。国立感染症研究所の病原微生物検出情報 (IASR)によれば、国内でのヘルペス群ウイルスの検出報告数が昨年に著しく増加している(HHV-5を除く。足元で感染数(又は再発数)が増加していれば検査機関でのウイルスの検出数も増加する筈との推測が成り立ち、実際に検出数の増加がみられる)。
図 ヘルペス群ウイルスの国内検出報告数(年別、2008~2012年)
(注)「NT」はNot typed (型不明)。「Varicella-zoster virus」はHHV-3に、「Cytomegalovirus」はHHV-5に、「Epstein-Barr virus」はHHV-4にあたる。
(出典)IASRの地研からの報告(ヘルペス群ウイルス&その他、年別、2008~2012年。http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr/511-surveillance/iasr/tables/1493-iasr-table-v.html)から一部抜粋 (なお合計部分は引用者による)。
(つづく)