ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

はじめに・・・

 外国語テーマも長く続かずなので、従来の健康ブログに戻してみようかと思いまして・・・ 備忘録的に残しておくと旧タイトルは「タイ語、漢字を使って覚えるの?」でした。(2023.8月記)

 従来の健康ブログ時に記事を書いていて、何故か、そろそろ外国語でも勉強した方がより良いかなーと思いつきまして、以来ちょこちょこと続けてきましたが、なんとなく、ある事を覚えると別の事を忘れてしまうモードに入ってしまったようで、知識量が停滞しつつあるような感じになりました。

 そこで、本ブログを外国語学習ブログに変更して、自分の備忘録的にまとめておこうかなと思いまして・・・。

 しかしながら、少し飽きたのか内容を増やしすぎたのか、書くのに手間がかかるようになり、時間がとれない時は、別ブログ「単語帳の素材?」にてライトな記事を書くことにしました。(この別ブログも徐々にライトでなくなり、記事を500本ほど書いたところで滞り中・・・)

 なお、健康ブログ時代の記事は、コチラの 入り口 からどうぞ。(2015.4月記)
 最近の健康系記事はカテゴリー「タイ語以外(健康2019)」からどうぞ。

福島の健康調査 (4) 甲状腺検査

2012年06月21日 |  今日のメモ

 前回に引き続き、福島県の「県民健康管理調査」についてみていこう。今回は、詳細調査のうち、甲状腺検査。

 5本立て調査についておさらいしておくと、前回紹介した福島県のサイトのほか(県民健康管理調査について http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24287)、福島県立医大のサイト「放射線医学県民健康管理センター」もあるようなので、そこから引用すると、

県民健康管理調査とは?
http://fukushima-mimamori.jp/overview/ (リンクはココ

「県民健康管理調査」の内容は、次の5項目です。

   1. 基本調査(問診票による被ばく線量の把握)
   2. 甲状腺検査
   3. 健康診査
   4. こころの健康度・生活習慣に関する調査
   5. 妊産婦に関する調査

これらの関係を図的にみておくと、福島県の上記サイトの資料から(「県民健康管理ファイル」の記録編・資料編 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/fairu.pdf リンクはココ)、


                図 福島県の県民健康管理調査の概要
                    (出典:上記資料、11頁)

図の一番上に「長寿健康県日本一を目指して」と、この資料集のタイトルが読み取れる。本気なのだろうか、いったいどういう根拠でそうなるのか、といった疑問がいろいろわいてきてしまう(疫学調査の対象となった原爆被爆者が長生きした点を念頭に置いているのだと想像するが、それはかなり偶発的な出来事なのではないだろうか)。まあ、pdfファイルを開かないと資料集のタイトルがわからないようになっているので、多少の配慮がなされているのかもしれない。


 本題に戻り、先ずは、甲状腺検査の概要についてみておこう。福島県の冒頭サイトの資料から(第6回「県民健康管理調査」検討委員会の資料 2012/4/26公表 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240426shiryou.pdf リンクはココ)、

県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況について (資料3)

1 調査目的
 今回の東日本大震災による東京電力㈱福島第一原子力発電所事故による健康の影響については、現時点での放射線量等の状況から考えて極めて少ないと考えられているが、チェルノブイリ原発事故後に明らかになった健康被害として、放射性ヨウ素の内部被ばくによる小児の甲状腺がんが認められたところ。
 そのため、子どもたちの健康を長期的に見守り、現時点での甲状腺の状況を把握するとともに、生涯にわたる健康を見守り、本人や保護者の皆様に安心していただくため、平成23年10月より甲状腺検査を実施している。

2 対象者
平成23年3月11日(震災時)に0歳から18歳までの全県民(県外避難者も含む。)約36万人
具体的には平成4年4月2日から平成23年4月1日までに生まれた県内居住者(県外避難者を含む。)

3 実施計画等
(1) 検査方法
 甲状腺の超音波検査を実施し、しこり(結節性病変)等が認められた場合は、福島県立医科大学(以下「福島医大」という。)附属病院等において二次検査(詳細な超音波検査、採血、尿検査、必要に応じて細胞診等)を実施する。
(2) 実施スケジュール
 平成23年10月から平成26年3月までに、先行検査(現状確認のための検査)として対象となっている全県民に検査を実施する。
 また、平成26年4月以降は、本格検査として20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに検査を行い、生涯にわたり県民の健康を見守る予定。
 なお、対象者を平成24年4月1日までに生まれた者に拡大して行う。
 [後略] (同資料の9頁)

対象者は、3.11時点で0歳から18歳だった県内の子供たち、約36万人。検査(1次検査)は、超音波検査のみ。事故後3年間で一巡し、その後は2年毎に(20歳以降は5年毎)。

 今年1月の「県民健康管理調査」検討委員会(8名構成で座長は山下俊一氏)の第5回会合において、超音波検査結果の判定基準がきまったようで、次のように公表されている(第5回「県民健康管理調査」検討委員会の資料 2012/1/25公表 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240125shiryou.pdf リンクはココ。なお、この基準をもとに3,765人分の判定結果の概要も公表)




 その後、4月の同委員会の第6回会合後に、38,114人分の判定結果の概要が公表されている(第6回「県民健康管理調査」検討委員会の資料 2012/4/26公表 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240426shiryou.pdf リンクはココ)。



この4月公表のデータに関しては、チェルノブイリ事故時より東電福一による健康被害の方が早く出てきているのではないかという観点から、このブログでも以前にも記事にしたところ(詳細はココ)。また、嚢胞については、20mm以下がひとくくりになっており、情報開示として適切でないとの指摘もなされていた。

 最新のものでは、今月12日の同委員会の第7回会合後に、次のような38,114人分の検査結果の分析が公表されている(第7回「県民健康管理調査」検討委員会の資料 2012/6/12公表 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240612shiryou.pdf リンクはココ)。3月末の検査結果を一挙に出さずに、小出しにしているようだ。




この6月公表での最大のポイントは、結節・嚢胞の大きさ別の度数分布がわかったことだろう。とりあえず、表にまとめておくと、

表 超音波検査による結節・嚢胞の大きさの分布
 大きさ              結節        嚢胞
 合計             38,114人    38,114人
 なし              37,729      24,730
 あり
 5mm以下            201 *     12,414 *
 5mm超10mm以下         126            949 *
 10mm超15mm以下        26            18 *
 15mm超20mm以下        18              2 *
 20mm超25mm以下          9               1
 25mm超30mm以下          4                0 **
 30mm超35mm以下          1                -
 35mm超               0        -
注)「*」はA2判定に該当するものの印。「**」は25mm超のもの全部を含む。
出典)上記資料、14-15頁。

嚢胞ありで5mm超20mm以下の被調査者が969人(全体の2.5%)もいることが判明し、批判を浴びているようだ。「木下黄太のブログ」から

世田谷区、小学生1年生が「大人なら過去に心筋梗塞か?」という心電図の異常。母親は甲状腺にしこり。
2012-06-14 00:00:03
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/b89fdd00689fa4027967c4adc47bfe7a (リンクはココ。記事の後半を参照)

5mm以上甲状腺のう胞「チェルノブイリよりはるかに高い発生率です」驚愕するヘレン・カルディコット女医。
2012-06-14 17:05:04
http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/202fd21c72ab7b33120b23bae42704c5 (リンクはココ


 この甲状腺検査に対する批判は、これまでいろいろ出てきている。主なものは、次のような感じだろうか。

(1) 1次検査に、血液検査がない。(超音波のみ)
(2) 検査頻度が少なすぎる。(当初3年に1回、その後2年毎。20歳以上だと5年毎)
(3) 検査結果の判定は、そもそも正しいのか。(判定基準の正当性)
(4) 検査結果の詳細を被調査者側に明らかにしない(個別の説明なし、エコー写真もなし)。
(5) 追加検査が困難になっている。(山下俊一氏による日本甲状腺学会会員宛の追加検査不要説明依頼の文書)
(6) 2次検査で何故か細胞診をしない。

 上記(1)については、例えば、次のような指摘がある。

福島の子供たち 甲状腺エコー検査OKでも腫瘍出るのは4年後
2011.11.02 07:00
http://www.news-postseven.com/archives/20111102_68134.html (リンクはココ

[鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)の談話] チェルノブイリでは、甲状腺がんや機能低下症が多発した経緯があり、多項目の検査をしたほうがよいと考えた。腫瘍を見つけるだけのエコー検査だけでよいのだろうか。血液に異常がある子を見つけ、厳重に管理することで腫瘍の早期発見も可能になってくる。
 腫瘍が出来るのは、4~10年後の可能性が高い。

鎌田氏が指摘するように、放射性ヨウ素の被ばくについては、甲状腺がんにならずとも、甲状腺の機能異常がみられる可能性がある。群馬の専門医の調査によれば、次の点が明らかになっている。

原発事故の後に甲状腺機能低下1175人のうち939人(80%) 群馬の院長調査
2011.11.23
http://savechild.net/archives/12626.html (リンクはココ

 宮下[和也・宮下クリニック院長(同県高崎市)]は、同クリニックの患者のうち、甲状腺機能が正常な状態で安定し、薬の中断や変更がなく、ヨウ素の過剰摂取や妊娠・出産、花粉症など甲状腺機能に影響する他の要員もない1175人について、事故前と事故3か月以内の甲状腺ホルモン「フリーT4」と甲状腺刺激ホルモン「TSH」の変化を調べた。

 その結果、939人(80%)で、フリーT4が低下し、低下を補うために分泌されるTSHは上昇した。・・・

健康な人に対しこの高い割合で影響があるとは思われないが、もともと甲状腺が弱い体質の人なら問題が生じる可能性があるだろう。


 上記(2)~(5)については、例えば、次のような指摘がある。

J-CASTニュースから、
郡山の4歳児と7歳児に甲状腺がんの疑い!?チェルノブイリと同じ健康被害か
2012/2/23 18:38
http://www.j-cast.com/tv/2012/02/23123195.html?p=all (リンクはココ

 福島県の健康管理調査検討委員会座長「自覚症状なければ追加検査必要なし」

 福島県で行っている甲状腺検診は3年かけて一巡するが、甲状腺学会の関係者はこう疑問を呈している。
「動物実験ではたしかに被曝しても一年で発がんすることはないという結果が出ているが、チェルノブイリでは事故直後のデータをフォローしていないので、放射能に対して感受性の強い一歳や二歳の子どもが、事故後一~二年後まで受診しなくても大丈夫だといいきれるのか」

 しかも、福島ではエコー写真を見せてもらうこともできないし、県内でセカンドオピニオンを仰ぐことも困難なのだ。それは「検討委員会」の座長・山下俊一福島県立医大副学長が、全国の日本甲状腺学会員あてに「次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がない」というメールを送っているからだ。・・・

 

中日新聞からは、
福島の子 3割以上“良性”のう胞 甲状腺検査で不安は消えず
2012年5月18日
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120518160011991 (リンクはココ。引用するとキリがないのでリンクを参照してほしい)

 上記(6)については、今年2月の週刊文春の記事(おしどりマコ氏・「週刊文春」編集部によるもの)の指摘がある。同記事の概要は、J-CASTニュースの上述の記事から引用すると、

 「『今までにこんな例は見たことがありません』 超音波の画像を診た医師はそうつぶやいたという。七歳女児(検査当時・以下同)の小さな喉にある甲状腺に、八ミリの結節(しこり)が、微細な石灰化を伴ってみられたのだ」
 「週刊文春」の巻頭特集「衝撃スクープ 郡山4歳児と7歳児に『甲状腺がん』の疑い!」は、こうした書き出しで始まっている。

原発事故のあと3か月以上福島暮らし

 北海道へ自主避難している親子309名(子供139名、大人170名)を対象に、昨年末から地元の内科医がボランティアで甲状腺の超音波検査を行っている。郡山から夫と離婚して避難してきた母親の7歳の姉に結節が見つかり、2歳の妹にも2ミリのものが見つかったのだが、妹のほうはがんの疑いはないという。

この文春記事のポイントと個人的に理解しているのは、togetterから引用すると、

2012年2月25日(土) IWJCh4 自由報道協会主催 おしどりマコ氏・「週刊文春」編集部緊急記者会見 @KW36_wavさんのつだり単独まとめ
2012/02/25 20:52:01
http://togetter.com/li/263517 (リンクはココ

おしどりマコ「甲状腺がんの被曝由来は乳頭癌が多い、95%。うち細胞診が甲状腺がんの乳頭癌で一般的な診断方法。細胞診は短時間で、苦痛も少なく最も一般的な方法の一つだと。今回疑われる乳頭癌の細胞診未実施について疑問を」 KW36_wav 2012/02/25 19:33:48

おしどりマコ「やはり、疑いながらも細胞診がされてないことについてインタビューをしたお母様が不安だと」 KW36_wav 2012/02/25 19:34:16

週刊文春「二名の方は細胞診を受けてない。ガンではないと厳密には確定してないというのが編集部の理解」 KW36_wav 2012/02/25 19:34:47

おしどりマコ「見出しについては口を挟めないが、良性であると言うより、良性の可能性ながら経過観察というのが今回では最も正確ではないかと」 KW36_wav 2012/02/25 19:35:18

おしどりマコ・週刊文春編集部側のこの認識は、かつての山下俊一氏の談話から考えると、かなり正しいのではないだろうか。山下氏は、「チェルノブイリ原発事故と甲状腺がん」と題した講演の中で、次のように語っていたようだ(ブログ「院長の独り言」の記事「福島-子どもの甲状腺にしこり(追加検査なし)」 2012年01月31日 http://onodekita.sblo.jp/article/53386380.html から。リンクはココ)。

 放射線誘発による甲状腺がんは組織学的に大半が乳頭癌です。その為、予後が良いのが特徴ですが、小児の場合には触診では進行がんしか見つからず、超音波診断による結節異常に対する穿刺吸引針生検と細胞診が重要です。特に小児甲状腺がんの場合には典型的な乳頭癌よりも、硬化がんタイプで線維化や石灰化の強い例が多く存在します。
 また、1cm以下の結節でも早期に頚部リンパ節への移転や肺移転の頻度が高いのが特徴です。・・・

 いろいろと活躍されている山下氏。前にも紹介した独シュピーゲル誌とインタビュー際の関係の談話をみておくと、ブログ「EX-SKF-JP」から、

放射線研究で世界に冠たろうとする山下俊一教授、独シュピーゲル誌とインタビュー
Saturday, August 20, 2011
http://ex-skf-jp.blogspot.jp/2011/08/blog-post_9917.html (リンクはココ

シュ:子供についてはどうか。

山下:18歳未満の子供全員について甲状腺の超音波検査を実施したいと考えています。全部で360,000人です。被曝してから甲状腺がんを発症するまでには約5年かかります。それはチェルノブイリの経験で明らかになったことです。

ここでは、甲状腺がん、それも約5年後以降に発症するものに言及している。これは、チェルノブイリ事故に伴い疫学的に検証されているコンセンサス的な内容だ。

 ということは、コンセンサス以外はみたくないという誘引が働いているのだろうか。つまり、がん以外の甲状腺の機能異常には興味はないし、むしろ見つかるのは望ましくない、ということなのだろうか。あるいは、甲状腺がんは約5年後以降に発症するものにしか興味はないし、それより前に見つかるのは自然発生だろうけど望ましくない、ということなのだろうか。うーん、よくわからない。

 いろいろな批判があるけど、最大の問題点は、追加検査をしてもらえない、あるいはセカンド・オピニオンが得られない、といった状況にかなり近い状態が発生していることだろう。

週刊金曜日ニュースから、
異常数値が出る子どもを放置――山下氏の指示を黙認する政府に怒号
2012 年 6 月 20 日  5:56 PM
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=2135 (リンクはココ

・・・「県民健康管理調査」検討委員会の山下俊一座長が、子どもの甲状腺再検査を封じている問題で六月一日、衆院議員会館内で政府交渉が開かれた。・・・

こうした事態は、噂話のレベルだと、紹介状ありでおもむいた専門病院での取り組みにも影響を与えているのかもしれない。ツイッターから、

@GoodBye_Nuclear
お母様の承諾を得てTW。当院エコーで甲状腺に微小石灰化を伴う数ミリ不整型結節が見つかった小学女児。紹介状持参で某大学教授の診察を受けた。1分程のエコーで「なんともない」。さらに「お母様は神経質」。当院エコーは私も立会い、超音波検査士と専門医も「悪性が否定できず」の見解だったのに。
1:24am 火曜 6月 19
 

 ついでに、福島県の在住の方が14項目の検討・要望事項を福島県立医大の「放射線医学県民健康管理センター」などに送付し、その回答を入手したようなので、紹介しておこう。ブログ「人生二毛作の田舎暮らし」から、

福島医大から回答!
2012/06/07 22:31
http://49981367.at.webry.info/201206/article_5.html (リンクはココ

福島医大への要望!
2012/05/23 09:08
http://49981367.at.webry.info/201205/article_18.html


〔関連記事〕
福島の子供の甲状腺の異常  2012/5/3 (既出)
甲状腺の異常 〔YNNチェルノブイリ報告から〕  2012/5/30

コメント

〔メモ〕 認知症の増加、若年性認知症の調査

2012年06月19日 |  今日のメモ

 ちょっと手抜きで、今日の巡回でみつけた認知症関係の記事を二つメモしておこう。東京新聞から、

認知症、在宅ケア強化 専門家が家庭訪問 
2012年6月18日 20時26分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012061801002308.html (リンクはココ

 厚生労働省は18日、認知症患者の急増に対応するため、看護師らによる専門家チームが認知症と思われる高齢者宅を家庭訪問し、早期に医療支援に着手することを柱とした報告書をまとめた。認知症になっても安易に精神科や介護施設に頼らず、住み慣れた自宅で生活できるように在宅ケアを強化する。・・・(強調は引用者)

若年性認知症 患者の6割「不安」 群馬県が初調査
2012年6月19日 11時02分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012061990110209.html (リンクはココ

 六十五歳未満で発症する「若年性認知症」の初めての実態調査を群馬県がまとめた。患者の六割が「不安を感じている」と回答し、心配事の上位には「経済的なこと」「家族の健康」が並んだ。・・・

 調査は昨年四~九月、県内の医療・福祉機関千八百四十カ所に協力を依頼して実施。千百五十二カ所から回答(回答率62・6%)があり、認知症患者数は計三百二十九人だった。

 このうち七十二人が詳しいアンケートに答え、認知症の症状があったのは全体の六割強(四十六人)。症状別では不安(二十四人)、暴力・暴言(十九人)、抑うつ(十八人)が上位だった。患者の年齢は五十代(百七人)と六十代(百八十三人)を合わせると全体の九割。十歳が一人、二十代が五人と若い世代でも見られた。

 認知症については、gooヘルスケアから、

認知症性疾患
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10410400.html (リンクはココ

原因は何か
 認知症の原因にはいろいろあります。たとえば、脳血管障害、脳外傷、脳腫瘍(のうしゅよう)や脳炎などで、脳の広い部分が侵されると認知症が起こります。主に50歳以上で起こる認知症の多くは、表2[リンク先参照]に示した脳の老化と密接に関連した認知症性疾患です。

 これらのうち、アルツハイマー病、レビー小体型(しょうたいがた)認知症、血管性認知症が三大認知症と呼ばれ、頻度の高いものです。 (強調は引用者)

 血管性認知症(多発梗塞性認知症などの梗塞性認知症、出血性認知症など)と聞くと、以前に紹介したチェルノブイリでの経験についての河田昌東氏の次の談話を思い出してしまう(詳細はココ)。

「最も多いのは心臓病です。ほかに顕著なのが脳血管病、糖尿病、先天異常そして免疫力低下です。」


 おまけで別の資料も付けておくと、サイト「よなごキッズ.COM」から、

B-1:脳血管性認知症 Vascuiar Dementia
http://www.yonago-kids.com/sick-Dimentia.html#DIMEN-B1-ApoDime (リンクはココ

概念 
 脳血管性障害による大脳半球の病変に基づく認知症を脳血管性認知症と総称する.
 梗塞の多発を示すことが多く,多発梗塞認知症(multi-infarct Dementia)とも呼ばれる.
 老年期認知症の中で占める割合は,欧米では10~20%であるとされているのに対し,わが国では約50%であり,頻度が高い(強調は引用者)

ついでに、gooヘルスケアから、

脳卒中(脳血管障害)
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10810100.html (リンクはココ

脳卒中とは
 脳卒中という言葉は一般的な用語であり、医学用語ではありません。正式には脳血管障害といいます。脳卒中の卒は卒倒(そっとう)(突然倒れる)の卒で“突然に”の意味、中は中毒(毒にあたる)の中で“あたる”という意味ですから、脳卒中とは脳の病気で突然に何かにあたったようになる(倒れる)ことを意味します。 ・・・

脳血管障害の分類
 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つが代表的な脳血管障害です。


〔関係記事〕
河田昌東 著 「チェルノブイリと福島」  2012/5/10 (既出)
宮城での心不全、急性冠症候群、脳卒中の増加 2011.3-4月  2012/5/24

コメント

福島の健康調査 (3) 基本調査

2012年06月17日 |  今日のメモ

 遅ればせながら、福島県の行っている健康調査の全体像を把握しておこう。福島県のサイトから、

県民健康管理調査について
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24287 (リンクはココ

「県民健康管理調査」について
 福島県では、原子力災害による放射線の影響を踏まえ、将来にわたる県民の皆様の健康管理を目的とした「県民健康管理調査」を実施しています。
 「県民健康管理調査」の内容は、次のとおりです。

1 基本調査(問診票による被ばく線量の把握)
2 詳細調査(健康状態の把握)
 ・甲状腺検査
 ・健康診査
 ・こころの健康度・生活習慣に関する調査
 ・妊産婦に関する調査

正式名称は「県民健康管理調査」で、調査内容は5本立てのようだ。基本調査に4つの詳細調査。

 とりあえず今回の記事では、基本調査についてみてみよう。冒頭のリンク先から、

県民健康管理調査「基本調査」について

 「基本調査」は、原子力発電所の事故後、空間線量が最も高かった時期における放射線による外部被ばく線量の推計等を行うため、全県民の皆様を対象に実施しています。皆様の3月11日~25日の行動記録を中心に、問診票により調査を行います。 外部被ばく線量は、「いつ」、「どこに」、「どのくらい居たか」、「どのように移動したか」など、皆様の行動記録の情報に基づいてしか推計することができません。・・・

 外部被ばく線量の推計結果は御回答くださった方お一人お一人に必ずお知らせしますので、今しばらくお待ちくださるよう、お願いいたします。・・・

問診票形式の調査で、県民一人ひとりの行動を把握するものらしいが、外部被ばく線量しか出さないようだ。内部被曝は、どうするつもりなのだろう。特に、放射性ヨウ素の初期被ばくは甲状腺への影響が顕著であり、注目すべきものと思うのだが・・・

 これでは多分、県民の間で評判が悪いだろう、と容易に想像が付くのではないだろうか。噂話だとこんな意見もみかける。ツイッターから、

@ikarostayuu
@to_ttori そうね、通りがかりの人など殺さないで、福一の危険区域の仕事をすれば確実なのにね。ただ被曝は人それぞれなので、そのデータが欲しいから、健康調査票をしつこく要求してるんでしょう。県民の多くはモルモットになってたまるかと提出してませんがね。数値を聞けば無駄だもの。
11:07am 土曜 6月 16

住民からみると「モルモットになってたまるか」という状態らしい。仮に自分が調査対象者だとしても、回答するメリットがみえるまで出さないだろう、と感じる。

 ここまでこじれた原因の一つには、地元紙に掲載された論説が思い当たる。福島民報に今年2月1日に掲載されたらしい「菊池哲朗の世相診断」(同氏は、前毎日新聞社主筆で福島市出身)のことだ。ブログ「原発問題」(主はジョージ氏)に全文があるので、その一部を借りてくると(記事「福島民報が福島県による人権蹂躙を幇助し、国家の棄民政策を煽る狂気思想、自殺行為の喧伝を行ってしまった」 2012.02.25 Sat http://george743.blog39.fc2.com/blog-entry-1200.html リンクはココ
 
【県民の健康調査】日本、人類への貢献(2月1日)
 [中略]

 今回つくづく人々が感じたことは、放射線による健康被害がどれほど浴びるとどんなものなのか、実は全然分かってないという事実だ。国や国際原子力機関(IAEA)なる組織も、学会も、個別の学者も、各種研究機関も、医者も、電力会社も、誰も彼も結局は、それぞれ説はあっても、確定的に人々を納得させる根拠ある説明はできていない。根拠になる正確な統計や調査がないからだ。
 
 結局いまだに各人どれを信じるかであって、確かな根拠はないに等しい。実感的にまあ大丈夫かと自らを納得させているだけだ。
 
 だから、いずれどうせまた世界のどこかで起こるであろう放射能被害に備えて、健康被害の有無を含めた情報を蓄積しておくことは、人類への貢献なのだ。それはとりもなおさず日本のあるいは日本人の、人類に対する医療的な社会倫理的な責任で、つまり医療制度全体のまさに根幹だ。 (強調は引用者)

かなりの上から目線で、すごい論説だ。健康被害がどれほど出るかわかっていないから調査に応じろ、応じることは世界のどこかで起こるであろう放射能被害に備えるための人類への貢献だ。こんなの読んだら、調査対象者がその置かれた立場に気づくだろと思わなかったのだろうか。それにこの菊池氏は、「人類への貢献」を持ち出しながら、チェルノブイリの人々の貢献(経験)から学び予防原則を適用し、福島の人々の被害を最小限にとどめるということは全く念頭にないようで、恐れ入る。

 このような論説を掲載するということは、福島民報は、山下俊一氏(福島県立医大副学長)が行いたいとする「科学界に記録を打ち立てる大規模な研究」を全面的にサポートするという姿勢なのだろう。山下氏は、昨年8月の独シュピーゲル誌とインタビューで次のように語っている。同記事の全文和訳がブログ「EX-SKF-JP」の記事にあるので、その一部を借りてくると、

放射線研究で世界に冠たろうとする山下俊一教授、独シュピーゲル誌とインタビュー
Saturday, August 20, 2011
http://ex-skf-jp.blogspot.jp/2011/08/blog-post_9917.html (リンクはココ

[シュピーゲル、コーデュラ・マイヤー記者]:研究ではどういうことを調べるつもりなのか。

山下[俊一教授]:被験者を3つのグループに分けます。原発労働者、子供、それから一般住民です。労働者は高線量の放射線に被曝しています。がんをはじめとするいろいろな疾患について、放射線の影響を追跡調査することが絶対に必要です。一般住民はさらに2つのグループに分かれます。比較的低線量の被曝をした住民と、比較的高線量の被曝をした住民です。福島県の保健福祉部では、26,000人の住民を対象に先行調査を行なっており、まもなく問診票の回収を終える予定です。

シュ:でも住民自身は自分の被曝量がわからない。

山下:それは私たちが突き止めないといけません。3月11日には何時にどこにいたかをきき、以後も3月中の毎日について同じ質問をしています。それから、事故後最初の2週間に何を食べたかや、自宅やアパートが木造かどうかといったことも確認します。そうしたデータと、放射能の雲の分布状況を組み合わせて、それから被曝線量を計算するのです。

シュ:どれくらいの人が被験者になるのか。

山下:200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります。政府は原発事故の被害者に対する補償金について先ごろ決定を下しました。そうした補償プロセスを通じて、県外に避難している住民の方々にも連絡を取りたいと考えています。 (強調は引用者)


 基本調査の人気の無さをデータで確認しておこう。冒頭のリンク先にある資料「第7回『県民健康管理調査』検討委員会の資料」(平成24年6月12日公表 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240612shiryou.pdf リンクはココ)から、

県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について

1 問診票の回答状況
 平成24年 5 月31日現在、全県ベースでは対象者2,056,994人のうち、465,041人か ら回答が寄せられ、回答率は22.6%となっている。
 先行調査地区については、回答率が半数を超える55.2%に達しているのに対し、 全県民調査においては、22.1%に留まっている。・・・ (4頁目の資料1から)


約2割の回答率。他の調査をみると、5割程度はあるような印象なのだが・・・。このままでは「科学界に記録を打ち立てる大規模な研究」への道はかなり険しそう・・・

 ちなみに、上記の資料が公表された際の、基本調査についての報道振りもメモしておこう。例えば、朝日新聞から、

外部被曝、最高25ミリSv 福島県推計
2012年6月12日22時54分
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201206120722.html (リンクはココ

 福島県は12日、東京電力福島第一原発事故後4カ月間の県民の外部被曝(ひばく)線量について、新たに約1万5200人分の推計値を発表した。原発作業員らを除く一般住民の最高は25.1ミリシーベルトだった。・・・

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福島の健康調査 (2) 妊産婦

2012年06月15日 |  今日のメモ

 また、短い記事を一つ。河北新報から、

原発事故後流産増えず 福島県が妊産婦を調査
2012年06月13日水曜日
http://www.kahoku.co.jp/news/2012/06/20120613t61005.htm (リンクはココ

 少し引用すると、

 福島県の妊婦の流産や中絶による非出産率が福島第1原発事故の前後で増減していないことが12日、福島県と県立医大の実施した「妊産婦に関する調査」で分かった。
 昨年3月の原発事故当時に妊娠中で母子手帳の交付を受けた妊婦のうち、非出産率は2.4%にとどまった。同大の藤森敬也教授によると、原発事故前の2010年の非出産率は2.9%で事故前後で統計的な有意な差はないという。
 事故当時の非出産率の内訳は流産1.5%、中絶0.4%、死産0.5%だった。・・・

 調査は10年8月~11年7月に県内の市町村で母子健康手帳を交付された妊婦1万5957人を対象に実施。回収率は57%だった。

非出産率について特段の異常はないという調査結果であり、以前の記事(福島における出産異常の状況(3.11後))と同様の結果となっている。

 果たして本当だろうか。

 SPEEDIの計算結果を隠蔽した自治体による調査だから、余り信用できない気が個人的にはしている。それに噂話をみていると、ちょっと違う印象を持つのだが・・・

@hiromi_8
飯塚市の健康関連職の方の情報「自分が知るだけでも飯塚市でもこの1年で指が6本の子供が2人生まれている。」@onodekita @KinositaKouta #iizuka #tagawa
6:56pm 土曜 6月 09


@KinositaKouta
西日本の産婦人科関係者から、そこの病院で奇形が多くなっているという懸念の声。食べ物による内部被ばくの影響も考えるべきか。もちろん、わずかな放射性物質のなんらかの粒子によって広範囲にそうした現象が起きる可能性も否定はできない。慎重に検討する。
11:33am 日曜 6月 10

@Catherinemama
@KinositaKouta 東京在住で、妊娠しています。胎児の成長が悪く、おととい「染色体異常かもしれない」と言われました。
7:15pm 日曜 6月 10

@panda_tokushima
@KinositaKouta 私の友人が今年1月に滋賀の個人病院で出産しましたが、同時期に産まれた5人のうち一人は未熟児、もう一人は耳が聞こえない+心臓がよく止まる。その後の母子の集まりで知ったそうです。幸い、食に気を配っていた友人の子どもは元気です。
8:51pm 日曜 6月 10

 

7/23追記
 変な記事をみかけたので、メモ。特段新たに報道発表があったわけでもないのに、何故か古い公表内容(6/12に公表したデータ9,024件の集計結果)を約1か月遅れで記事にしたのだろうか。福島民友から、

放射線影響、妊産婦26%が不安 福島医大調査
2012年7月16日
http://www.minyu-net.com/news/news/0716/news1.html (リンクはココ

 福島医大などが・・・実施した、県内の妊婦や出産後の母親に対する調査で、「(最近1カ月で)気分が沈んだり、憂鬱(ゆううつ)な気持ちになったことがあるか」との設問(4月13日集計)に全体の26.2%が「ある」と答え、母親が大きな不安を抱えながら子育てしていることが15日、分かった。・・・


〔関連記事〕
福島における出産異常の状況(3.11後)  2012/4/17 (既出)
胎内被曝 〔YNNチェルノブイリ報告から〕  2012/4/16

=============

注)7/23 追記。

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福島の健康調査 (1) こころの健康度・生活習慣

2012年06月13日 |  今日のメモ

 短い記事を一つ。ブックマークを整理していて出てきた4月の記事。

 共同通信から、

避難住民5%に「心のケア」必要 福島県の健康調査
2012/04/26 20:17
http://www.47news.jp/CN/201204/CN2012042601001856.html (リンクはココ

・・・福島県は26日、避難区域の住民約21万人を対象とした精神的ストレスの調査結果を発表。3月末までに回答があった8万8613人のうち4602人(5・2%)が、臨床心理士などによる早急な支援が必要な状態と指摘した。


 調査回答者のうち、5.2%(4,602人)に早急な支援が必要と指摘。

 福島でストレスの調査をしているらしい。建前では、精神的ストレスだが、本音も同じだろうか?


〔関連記事〕

放射線療法の副作用との類似性 (3)  感情の変化(症状)  2012/6/9

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放射線療法の副作用との類似性 (4) 症状のまとめ

2012年06月11日 |  関連(生物学医学)

 ●の影響は、酸化ストレスによる障害が主体であるとされているが、一般にはよくわからないとされている。このため、この障害の傾向をあぶり出すため、ここ数回の記事では、酸化ストレス障害が副作用を招いている治療法、特に放射線療法に、先ず焦点をあててみてきた。

 具体例を二つみたので、今回は、放射線療法の副作用を広く浅くまとめておこう。何かを探すときに役立つと良いかな、と考え個人的にまとめるものなので、多分読み物としては面白くないだろうから、先に断っておこう。 

 先ずは国内のサイト。国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」の以前に紹介した記事から、副作用の症状だけを項目的に列挙してみると、

放射線療法総論
更新日:2006年09月14日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/radiotherapy.html#prg8_1 (リンクはココ

8.副作用
1)急性期の副作用

    (1)全身的な副作用
     ・疲れやすい
     ・食欲がなくなる
   ・貧血、白血球減少、血小板減少
   ・皮膚の変化

  (2)治療している部位におこる可能性のある副作用

・頭部 (頭痛、耳痛、めまい、脱毛、頭皮の発赤、吐き気、嘔吐などの症状)
・口腔、頸部 (口腔、咽頭、喉頭の粘膜炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛み、声がかれるといった症状。その他に口の乾燥、味覚変化)
・肺、縦隔 (食道炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛みや、放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れ)
・乳房、胸壁 (食道炎による飲み込みにくさ、飲み込む時の痛みや、放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れ)
・腹部、骨盤 (吐き気、嘔吐、腹痛、下痢といった症状。膀胱炎症状である頻尿、排尿困難)

2)晩期の副作用

(1)  頭部(難聴、顔面神経麻痺、脳障害、下垂体機能低下など。白内障、網膜症など)
(2)  口腔、頸部(皮膚に潰瘍、皮下がかたくなる。唾液腺の機能が低下して口が渇く。味覚の異常。軟骨や下顎骨に炎症。躯幹・四肢の麻痺やしびれる脊髄症。甲状腺機能低下)
(3)  肺、縦隔(肺が線維化し機能が低下。食道が細くなり、食事の通りが悪くなる。心臓の周りに液体がたまる心外膜炎。脊髄症)
(4)  乳房、胸壁(乳房がかたくなる。肺の線維化。腕がむくむ。上腕神経に障害をおこして、腕、手がしびれたり、力が入らなくなる。肋骨の骨折)
(5)  腹部、骨盤(直腸・結腸の内腔が狭くなり、潰瘍、出血。膀胱壁がかたくなり、容量が小さくなる。血尿。リンパの流れや血液の流れが悪くなり、下肢がむくむ。不妊。肝臓や腎臓の機能が低下)

3)二次がんの発生

 

 同サイト内の別の記事からも、副作用の症状を項目的に引用すると、

放射線療法を受ける方へ
更新日:2006年10月01日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/attention/radiotherapy.html (リンクはココ

2.副作用・合併症

1)皮膚炎(皮膚の乾燥やかゆみ、ヒリヒリ感、熱感、色調の変化(発赤(ほっせき)、色素沈着、色素脱失)、むくみ、表皮剥離(はくり)など)
2)脱毛
3)口内炎、口内乾燥(口の中が荒れたり、むくんだり、乾燥したりする)
4)咽頭・食道炎(粘膜炎により、食事の際に違和感や痛み)
5)嘔気・嘔吐(消化機能が低下し、吐き気や嘔吐)
 (参考)放射線宿酔(しゅくすい)(照射開始後の数日間に食欲低下や嘔気・嘔吐)
6)下痢
7)倦怠感(体がだるくなったり、疲れやすくなる)

 

 ついでに、前回の記事で触れた「国立病院機構 大阪医療センター」のサイトの関係記事のアドレスも置いておこう。

6. 放射線治療の有害事象
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/housyar.html#housyar_06 (リンクはココ

 

 項目を列挙しただけでは少し分かりにくいので、簡潔に表形式でまとめたものを探してみると、民間系のサイト「ガン患者の集い」から(「放射線療法 - 癌治療(がん治療)の三大療法について」 http://www.gan-joho.com/chiryou/chiryou03.html リンクはココ)、


                    図  放射線による副作用(放射線障害)


 ちょっと毛色は違うけど分かりやすくしようと図を掲載している、株式会社エビデンスのサイト「がんサポート情報センター」の次の記事も情報量が多くはないけど、役に立つかもしれない。

放射線治療による副作用とその対策  2005年10月号
http://www.gsic.jp/measure/me_04/23/index.html (リンクはココ


 ついでに、gooヘルスケアから、放射線関連の項目のアドレスを置いておこう。

放射線皮膚炎 http://health.goo.ne.jp/medical/search/10O50600.html (リンクはココ
放射線肺炎  http://health.goo.ne.jp/medical/search/10760300.html (リンクはココ
放射線腸炎  http://health.goo.ne.jp/medical/search/10G30200.html (リンクはココ


 次に、海外のサイト。先ずは米国の政府系からで、国立がん研究所(National Cancer Institute、NCI)の冊子

Radiation Therapy Side Effects [放射線療法とあなた]
http://www.cancer.gov/cancertopics/coping/radiation-therapy-and-you/page6/AllPages (リンクはココ

この冊子は別のサイトにて和訳が提供されている。サイト「海外癌医療情報リファレンス」から、

放射線治療とあなた
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_pamphlet/index.php/09radiation_therapy/page01.html (リンクはココ。関連するのは第6章~第9章で、章のタイトルをクリックすると該当頁へ飛べる。なお、感情の変化は、ここでは副作用とは明記せず第5章に)

ちょっとした解説が付いている項目を列挙しておくと、

第8章 放射線治療の副作用とその対処法 (リンクはココ
    * 下痢
    * 倦怠感
    * 脱毛
    * 口内の変化
    * 嘔気・嘔吐
    * 生殖能の変化
    * 皮膚の変化
    * 嚥下障害
    * 尿と膀胱の変化
第9章 放射線治療の晩期副作用 (リンクはココ
    * 脳の変化
    * 不妊症
    * 関節の変化
    * リンパ浮腫
    * 口内の変化
    * 二次癌


 米国の民間系のサイトからだと、以前にも言及したアメリカ癌協会(American Cancer Society)の作成した冊子

Understanding Radiation Therapy [放射線療法を理解するために]
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/index (英文のみ。リンクはココ

共通する副作用と照射部位別の副作用とに分類し、それぞれちょっとした解説がついている。共通する副作用は6項目あり、それらは、

疲労(fatigue。一部を以前の記事で扱った)、
皮膚の問題(skin problems)、
脱毛(hair loss)、
血球数の変化(blood count changes)、
摂食障害(eating problems)、
感情の変化(How will I feel emotionally?)

 

 ついでに、英国の政府系からだと、国民健康サービス(National Health Service、NHS)のサイトから、

Radiotherapy - Common side effects - NHS Choices
http://www.nhs.uk/Conditions/Radiotherapy/Pages/Side-effects.aspx (英文。リンクはココココ

解説が付いているので、参考までに項目のみ列挙すると、

Common side effects (共通する副作用)
    * sore skin (潰瘍のある・ただれた皮膚)
    * tiredness (倦怠感)
    * feeling sick (嘔気)
    * dry mouth (乾燥した口)
    * loss of appetite (食欲低下)
    * diarrhoea (下痢)
    * hair loss (脱毛)
    * discomfort on swallowing (飲み込み時の不快感)
    * a lack of interest in sex (性欲減退)
    * stiff joints and muscles (痛い・こわばる関節・筋肉)
Long-term side effects (長期的な副作用)
    * effects on fertility (生殖能力への影響)
    * cosmetic changes to the skin (皮膚の表面的な変化)
    * tiny cracks in your pelvic bones (pelvic insufficiency fractures) (骨盤骨の微小なひび (骨盤不全骨折))
    * an inability to control your bowel (bowel incontinence) (腸の制御の不能(腸失禁))
    * swelling in your arms or legs (lymphoedema) (腕や足の腫れ(リンパ浮腫))


 最後に英国の民間系からだと、以前の記事でも言及した「Cancer Research UK」のサイト「CancerHelp UK」から、

Radiotherapy side effects
http://cancerhelp.cancerresearchuk.org/about-cancer/treatment/radiotherapy/side-effects/ (リンクはココ

ここも、共通する副作用と照射部位別の副作用とに分類し、それぞれちょっとした解説がついている。

 とりあえずこれぐらいにしておこう。


《その他参考サイト》

英国のサイト「Macmillan Cancer Support」から
General side effects of external radiotherapy
http://www.macmillan.org.uk/Cancerinformation/Cancertreatment/Treatmenttypes/Radiotherapy/Sideeffects/General.aspx


〔関係記事〕
放射線療法の副作用との類似性 (1) 序  2102/6/5

=================

注)7/24 一部訳追加、リンク追加。

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放射線療法の副作用との類似性 (3) 感情の変化(症状)

2012年06月09日 |  関連(生物学医学)

 天気がよくなかったので、放射線療法の副作用との関係について、もう一つ具体例を挙げておこう。メンタルな症状(あるいは病的でなければ、感情の変化)をみておこう。

 その前に脱線して、余り関係がないかもしれないけど、不思議な記事なので紹介しておこう。日経新聞の記事から、


精神疾患治療、訪問で後押し 医師ら、未受診者など対象 重症化防止へ診療促す
2012/6/7付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO42290170X00C12A6NNSP01/ (リンクはココ

 精神疾患の治療を中断した人や、その疑いがあるのに受診しない人のもとを医療チームが訪問する「アウトリーチ」の取り組みが広がっている。外来治療につないで重症化を防ぎ、地域で生活できる状態にすることが狙いだ。厚生労働省は昨年度、全国でモデル事業を開始。東日本大震災で被災した人たちの心のケアにも取り入れられている。

 [中略]
 アウトリーチは東日本大震災の被災地でも取り入れられている。

 福島県では、東京電力福島第1原発事故の影響で、30キロ圏内の5病院、計900床の精神病床が閉鎖。その大半は今も使用できない状態が続いている。

 福島県立医大は震災直後から、原発以北の相双地域でボランティアとともに被災者の心のケアにあたった。同大学教授らは継続的な活動を目指して特定非営利活動法人(NPO法人)を設立。今年1月、「相双広域こころのケアセンターなごみ」を開設し、相馬市や南相馬市、新地町でアウトリーチを始めた。

 センター長の米倉一磨看護師(38)によると、これまでに、震災の影響で新たに精神症状が表れた人や、通院できなくなった患者など約20人を訪問したという。

 センターは福島県の「心のケアセンター」の委託を受け、仮設住宅の入居者や自治体職員の心のケアにも取り組む。NPO法人副理事長の大川貴子・県立医大准教授は「家は無事でも帰れる見通しが立たなかったり、仕事を失いアルコールに頼ったりするなど、今後深刻化が予想される問題は多い。長期的な対応が必要だ」と話している。 (強調は引用者)

 個人的にこの記事が不思議だと思う点は、二つある。一つは、この記事で取り上げられた「アウトリーチ(訪問支援)」は、本来は自殺・うつ病対策の側面があるのだけど(厚労省サイトの「自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて」 http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2010/07/03.html を参照。リンクはココ)、その点に全く言及がない点である。何か自殺・うつ病を前面に出したくない理由でもあるのか、とも考えてしまう。

 もう一つは、住民に対しSPEEDI情報を隠蔽した福島県の下部機関(福島県立医大)が、3.11直後から取り組みを開始し、長期的活動を見こして今年の1月にはNPO法人まで設立している点である。かなりスピーディ。何故だろうか。それに、対象地域も何故か原発の北側のみ。

 余り考えすぎるのもよくないので、本題に戻ろう。

 先ずは一般的な質問から。がんを患うことにより、患者にメンタルな症状は起こり得るのか?

 この答えは当然「Yes」である。なぜなら、がんの告知を受けたことによる精神的ショックや、がんの病状が続いていることに伴う精神的影響があり得るからである。このようなため、我が国では、かつて、患者のためを思ってがんの告知しないという考え方が主流だったこともあった。

 では、次の質問。がんを治療するための放射線療法の副作用としては、メンタルな症状はあり得るのか?

 仮にあったとしても、前回の記事を読んだ方なら、国立がん研究センターのサイトを探してもないだろう、と気づくはずだ。倦怠感を「毎日外来通院してくる疲れ」かもしれないとするなど、副作用を小さくみせるような解説がなされる雰囲気の中で、あえて言及される可能性はほとんどないだろう。なぜなら、黙っていれば、がんを患うことに伴うメンタルな症状と混同されて、区別がつかない可能性があるからだ。

 実際、メンタルな症状は放射線療法の副作用として位置付けしないとの合意でもあるかのように、日本語ウェッブを調べても、なかなか見つからない。

 では、見つからないというのは、ないということなのだろうか。

 いや、残念ながらそうではない。調べる角度を変えると、不完全ながらも、断片情報が出てくる。治療推進側の視点から書かれたものではなく、患者本人やその家族をいたわる視点で書かれたものを探す必要があるのだ。「国立病院機構 大阪医療センター」のサイト内にある、がんサポートチーム作成の患者・家族向け冊子から、


4. 精神的に不安になったり落ち着かなくなったとき
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/support/main.html#4 (リンクはココ

 がんの治療を受けておられる方に精神的な面で悩まれることもたびたびあります。

急に落ち着かなくなった、不安がっている、言っていることが変だ

 がんの治療を受けておられる方の3割から8割の方に、突然まわりの様子や時間、今いる場所が分からなくなり混乱されることがあります。夜なのに朝だといったり、誰もいないのに人が入ってきたように感じられたり、ご家族の顔が分からなくなったりします。不安も強くなり、点滴に毒が入っていると思い、点滴を抜いたり、ベットから落ちて怪我をすることもあります。このように意識や注意、知覚、思考が乱れる症状が急激に起こる状態をせん妄といいます。せん妄は炎症や感染で熱が出たり、脱水や塩分のバランスが崩れたり、肝臓、腎臓の機能が落ちたり、薬が体に合わなくなったりしたときに起こります。体が原因で起こる一時的な精神症状であり、認知症(痴呆)とは異なり、適切な治療により回復します。・・・

ゆううつになる、やる気がしない、眠れない、寝てもすぐに目が覚めてしまう、そわそわする

 がんの治療を受けておられる中で、無気力になったり、ゆううつな気分が続いたり、眠れなくなる、寝てもすぐに目が覚めてしまう、体がだるくて仕方がないことはしばしばあります。気分が落ち込むことはよくあることです。しかし、いつまでたっても気分が沈んだままで普段の生活ができなくなったり、治療が進められない場合、うつ病が原因となっているときがあります。がんの治療を受けておられる方の4人に1人がうつ病になるともいわれています。・・・ (強調は引用者)

 なるほど。せん妄のほか、無気力、ゆううつ、不眠、体のだるさ、気分の落込み、うつ病。

 但し、この文章には、ちょっと注意が必要である。治療法が、放射線療法なのか、化学療法なのか、あるいは別の他の療法なのか、明確でないからである。やはり、海外サイトの情報に頼る必要があるようだ。

 海外サイトをみてみよう。前回の記事で紹介したアメリカ癌協会(American Cancer Society)のサイトからだと、

Common side effects - How will I feel emotionally?共通する副作用 - 感情的にはどのように感じますか?
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/understanding-radiation-therapy-emotions (リンクはココ

Many patients feel tired due to the radiation therapy, and this can affect emotions. You also might feel depressed, afraid, angry, frustrated, alone, or helpless.

 多くの患者は放射線療法のために疲労を感じます。これは感情に影響を与えることができます。また、抑うつ、恐れ、怒り、不満、孤独、または無力感を覚えるかもしれません。 (訳は引用者)


いろいろ出てきた。抑うつ、恐れ、怒り、不満、孤独、無力感。また、放射線療法→副作用としての倦怠感→感情の変化という経路もありそうだ。

 もう少し詳しい内容がないかを調べてみると、英国の「Cancer Research UK」のサイト「CancerHelp UK」から、

Emotional effects of radiotherapy [放射線療法の感情への影響
http://cancerhelp.cancerresearchuk.org/about-cancer/treatment/radiotherapy/side-effects/general/emotional-effects-of-radiotherapy (リンクはココ

Feelings and emotions you may have

"During my radiotherapy I became very emotional. I'd start crying for no reason." This is how one woman reacted.

Other people say they feel low or depressed a couple of weeks after their treatment has finished. It is very common to feel anxious and depressed during treatment. Many people having radiotherapy share these feelings. You may have a whole range of feelings - from anxiety, fear, hopelessness, anger to depression. These feelings are all common during treatment for cancer. Radiotherapy can make you tired and this can make it feel even harder to cope.
 
あなたが持つかもしれない感覚と感情

 「放射線治療の間、私は非常に感情的になりました。理由もなく泣き始めました。」 これはとある女性の回答です。

 他の人々は、治療が終了した後数週間、気分の低下あるいは抑うつを感じると言っています。治療中に不安と抑うつを感じることは、非常に一般的です。放射線治療を受けた多くの人々は、これらの感情を共有しています。あなたは、次の感情を全て感じるかもしれません - 不安から、恐怖、絶望、怒り、うつ病まで。これらの感情は、がんの治療中によくみられます。放射線治療では倦怠感が起こることもあり、その場合は対処することが一層難しくなり得ます。 (訳は引用者)


以上の解説をみれば、放射線療法の副作用として、感情の変化(あるいは病的なものであればメンタル症状)があることは明らかではないだろうか。


 仮に読者の方が健康・公衆衛生関係の公務員だとして、何らかの理由により、地域の住民の間でうつ病がはやる可能性があると想定される場合、何をしなければならない、と考えるだろうか。

 自分がその立場であれば、人材を確保できるなら地域の精神科医を増やす方法がよいのかもしれない、あるいは医療関係者を院外に飛び出させ住民の中に入っていって活動をさせる方法がよいのかもしれない、とかを考えるだろう。

 いろいろ考えてみると、冒頭の記事との繋がりがみえたような気がするが、単なる思い過ごしであろうか。


〔関連記事〕
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放射線療法の副作用との類似性 (2) 倦怠感

2012年06月07日 |  関連(生物学医学)

 時間がないので少し手抜きで、放射線療法の副作用との関係について、一つ具体例を挙げておこう。

とりあえず、倦怠感との関係をみてみよう。疲労や疲れやすさ(易疲労性)とかは、同じカテゴリーとみてよいだろう。

 先ずは、我が国の国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」から引用すると、

放射線療法総論
更新日:2006年09月14日
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/radiotherapy.html#prg8_1 (リンクはココ

8.副作用
 1)急性期の副作用
 (1)全身的な副作用
  ・疲れやすい

 個人差がかなりあり、全く感じない人もいれば、非常に疲れを感じる人もいます。放射線治療中の疲れは、放射線による直接の影響ばかりでなく、身体の中にがんがあることによりエネルギーをたくさん消費していることや、毎日外来通院してくる疲れなどが加わっておこるものです。疲れを感じたら休息するのが一番で、治療中は過度な運動は避け、体調に合わせた生活を心がけることが大事です。治療中に感じた疲れは、治療が終了して数週のうちには感じなくなります。

かなり軽く触れられいる。果たして本当だろうか。

 こんな時は、海外ソースにあててみると何か分かるかもしれない。特に、訴訟が頻繁に起こされる国だと、余り隠し事をするのは危険だろう。ということで、American Cancer Society(アメリカ癌協会)のサイトの資料「Understanding Radiation Therapy: A Guide for Patients and Families」(放射線療法を理解する - 患者及びその家族のためのガイド)から、

Preventing and managing side effects - Fatigue
http://www.cancer.org/Treatment/TreatmentsandSideEffects/TreatmentTypes/Radiation/UnderstandingRadiationTherapyAGuideforPatientsandFamilies/understanding-radiation-therapy-fatigue (リンクはココ

Fatigue is the feeling of being tired physically, mentally, and emotionally. It is very common with cancer and its treatment, and often happens with radiation therapy. Managing fatigue is an important part of care for you and your loved ones.

Fatigue means having less energy to do the things you normally do or want to do. It can last a long time and can get in the way of your usual activities. It is different from the fatigue of everyday life, which is usually short term and relieved by rest. Cancer-related fatigue is worse, and it’s more distressing. It may not get better with rest. Cancer-related fatigue can:

    * Differ from one day to the next in how bad it is and how much it bothers you
    * Be overwhelming and make it hard for you to feel good
    * Make it hard to be with your friends and family
    * Make you less able to keep up your normal activities, including going to work
    * Make it hard to follow your cancer treatment plan
    * Last different lengths of time, which makes it hard to guess how long you will have it

Only you know if you have fatigue and how bad it is. No lab tests or x-rays can diagnose or describe your level of fatigue. ...

けっこう重そうで、なんか少し違う気がしてくる。ちなみに、その和訳は、面倒なので機械翻訳をベースにすると、

 疲労は、精神的、物理的又は感情的に疲れていることの感覚です。それは、がんとその治療において非常に一般的であり、しばしば放射線療法で起こります。疲労を管理するには、あなたとあなたの愛する人のためのケアの重要な部分です。

 疲労は、普段している事ややりたい事をするためにより少ないエネルギーを有することを意味します。それは長い時間続くことができ、あなたの通常の活動の邪魔になることができます。それは日常生活の疲労とは異なり、これは通常短期的であり、休息で取り除かれます。癌に伴う倦怠感はより悪質で、より苦しいものです。それは休息により回復しないかもしれません。癌に伴う倦怠感は、

・それがどのように悪いか、どれだけあなたを悩ますかは、一日一日が異なります。
・圧倒的なもので、あなたが快適に感じることを困難にします。
・友達やご家族と一緒にいることを困難にします。
・仕事に行くなど、通常の活動を維持することを困難にします。
・あなたのがんの治療計画に従うことを困難にします。
・ 時間の長さが異なって継続するので、あなたがどのくらい続くかを推測することを困難にします。

あなたが知りうることは、あなたが疲労を持っているかどうか、それがいかに悪いか、ということのみです。どんな臨床試験やX線検査でも疲労の水準を診断したり記述することができません。・・・


 この病態は、誰かが語っていたアレに似ているような・・・


〔関連記事〕
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放射線療法の副作用との類似性 (1) 序

2012年06月05日 |  関連(生物学医学)

 酸化ストレスによる障害について生体のバランス論の観点から眺めるという、免疫学に関する安保説の話は、前回の記事で一旦終わりにして、ちょっと別の観点から、●の健康影響を眺めてみよう。

 以前の記事で、放射線被曝は、電離による直接損傷と酸化ストレスによる障害を招き、その影響は主として後者のものであるということをみた(詳細は、電離の直接障害と酸化ストレス障害)。酸化ストレスは、主に活性酸素によるものであった。一般に、●の健康影響はよく分からないとされているので、このブログの目的の一つは、ある症例が何故起きているのかということを眺めることにあるのだけど、この観点からすると、この酸化ストレス障害の話をキーワードにして、何か理解を広げていけないだろうか、ということが思いつく。

 このような考え方に基づく見解を、某掲示板の緊急自然災害板から発掘すると、

933 : 914(東京都) : 2011/11/23(水) 00:57:12.14 ID:oF70UWLN [1/2回発言]
  [中略]

  怪しい症状が出てきた際、それが放射線の被爆の影響かどうかを判断する際に参考にする情報は、
  自分の場合、まず、
  (1) 過去の経験から学ぶ、次に、
  (2) 栄養分の欠乏症を探してみる、あとは

  (3) 放射線治療の副作用をあたる、暇なら
  (4) がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる、という感じだろうか。

  (1)は当然の話で、原爆被爆者、スリーマイル、チェルノブリとある訳だし。
  チェルノブイリ関係では、やはりヤコブロフ・ネステレンコ報告が充実しているだろう。
  ただ、同報告も、人の生き死に繋がりにくいものについては情報が少ない(例えば、鼻血)、また、
  皮膚症状については、余り病名が出てこないので具体的によくわからんというものもある。

  (2)については、対策が簡単かもしれないので、押さえておいた方がよいだろうという趣旨。
  栄養分の不足がおきる理由は、>>815参照。不足しやすいのは、ビタミン類、ミネラル類あたりだろうか。

   ビタミンが足りないと大変!     ttp://www.health.ne.jp/library/5000/w5000123.html
   もっと知りたい!ミネラルの役割  ttp://www.health.ne.jp/library/3000/w3000809.html

  (3)については、医療行為とはいえ、放射線被爆な訳だから、関係があるかもしれない。
  かなりの高線量の場合なので注意が必要だけど、大規模集団での低線量被爆の場合(感受性の幅が広い)、
  低線量だが内部被爆ありの場合に、似たようなことが起きるかどうかは分かっていない訳で、参考にはなろう。

  (4)については、酸化ストレス繋がりによるもので、関係があるかもしれない。
  抗がん剤の副作用については、抗がん剤やそれが生体内で分解される際にできる物質(代謝生産物)が
  活性酸素を産生し、生体内で酸化ストレスが増大することが原因の1つといわれている。

   がん治療時の副作用緩和に健康食品が役立つメカニズム 2006年2月 4日
   ttp://www.de-pain.net/?p=417 [リンクはココ。小松靖弘氏(医学博士)の公式サイトの記事から]
   >「抗がん剤を投与したり放射線を照射したりすると、患者さんの体の中には大量の活性酸素が発生します。
   >この活性酸素が体内のさまざまな場所で悪さをすることが、副作用の一因にもなっているのでは
   >と考えられます」

   >「特に、抗がん剤が体内で代謝されるときには大量の活性酸素が発生すると考えられますし、
   >放射線治療などによる細胞破壊で炎症反応が起こった部位でも、活性酸素が大量に発生します。
   >また、抗がん剤治療によってがん細胞が壊れると、細胞の中の酵素が外に出て、まわりの正常な組織を
   >攻撃して、それを修復するために体内の白血球が集まって炎症反応が起こるので、ここでも大量の

   >活性酸素が発生します。これが、体のあちこちに障害を起こす原因の一つとなると考えられるのです。」
   (なお、放射線治療や化学療法の際に、抗酸化物質の摂取が良いか悪いかは、決着が付いてない
   ようなので、念のため)

  上記の記事で「シスプラチン」という制がん剤の例が出てくるけど、これも活性酸素を生成し、
  そのことが制がん作用の主体だろうとも考えられている。

   制癌・発癌と活性酸素 ttp://www.e-clinician.net/vol37/no388/pdf/living-body_388.pdf (pdfファイル) [エーザイ(製薬会社)のサイト内の資料から]
   >金属キレート構造を介して活性酸素を出すものにブレコマイシンやシスプラチンがあり、・・・
   >この中には制癌作用は必ずしも活性酸素と結びついていないといわれる化合物も含まれるが、
   >総じてその制癌作用の主体は、放射線の場合と同じく、ヒドロキシル・ラジカルによるDNA障害にある
   >と考えられる。(5ページ目上段)


上記の引用中、 「(1)過去の経験から学ぶ」は、今更言うまでもなく多くの人がしているだろうが、「(3)放射線治療の副作用をあたる」と「(4)がん化学療法(抗がん剤)の副作用をあたる」の部分が上述の思いつきを具体化したものにあたると思われる。(なお、「(2)栄養分の欠乏症を探してみる」は、ちょっと今回の記事とは関係がないだろう。)

 以上の話を更に一般化すれば、

(A)生体内の酸化ストレスを増加させ障害を招き得るもので、かつ、
(B)多くの科学的知見が蓄積されているもの

があれば、●の影響を理解する上で役立つかもしれない、ということが考えつくだろう。

 結局、このような二つの条件に合致するものとしては、上述の医療上の副作用(放射線療法のもの、化学療法のもの)、酸化ストレス障害が主体の疾患、あるいは酸化ストレス障害が主体の化学物質(何らかの毒物など)などが思いあたる。

 以上の一般論の枠組みを踏まえ、先ずは放射線療法の副作用との関係について、次回以降ちょっと眺めてみよう。

(つづく)


〔関係記事〕
電離の直接障害と酸化ストレス障害  2012/5/9 (既出)
酸化ストレス(活性酸素)による生体の障害  2012/5/11

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交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病)

2012年06月03日 |  関連(生物学医学)

 酸化ストレスによる障害について生体のバランス論の観点から眺めるということで、免疫学に関する安保 徹氏(新潟大教授)の説を解説するとしていたはずなので(直前の記事は「交感神経の緊張と発がん」、ココ)、今回は、交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病)との関係をみておこう。

 前回の記事では甲状腺の異常をみたけど(リンクはココ)、甲状腺の異常といえば「橋本病」だろう(理由は特にないけど日本人の名前が付いてるし・・・)。この疾患は、自己免疫疾患とか、膠原病とかの一種であり、最近は耳にする機会も多いのではないだろうか。

 とはいえ、自己免疫疾患といっても馴染みがない方もいると思うので、先ずは橋本病のおさらい。伊藤病院(東京渋谷区の甲状腺疾患専門)のサイトから、

橋本病とは
http://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_5_1about_hashimoto.html (リンクはココ

・・・橋本病は「慢性甲状腺炎」ともいいますが、この名はこの病気の成り立ちに由来するものであり、甲状腺に慢性の炎症が起きている病気という意味で、このように呼ばれることもあります。
甲状腺の病気は、どれも女性の方がかかりやすいのですが、橋本病は甲状腺の病気のなかでもとくに女性に多く、男女比は約1対20~30近くにもなります。また年齢では20歳代後半以降、とくに30、40歳代が多く、幼児や学童は大変まれです。

 橋本病は、甲状腺に炎症が起きている病気ですが、細菌が入り込んで化膿するといった炎症ではなく、「自己免疫」の異常が原因で起きる炎症です。自己免疫で起こる病気はいくつかありますが、何がきっかけでこのようなことが起こるのか、いまだにはっきりしていません。橋本病はある種のリンパ球が甲状腺組織を攻撃して起こるらしいといわれています。

いつも甲状腺が腫れているという病気で、特に女性に多いらしい。その原因は、自己免疫の異常とされている。次に、症状もみておくと、明確な甲状腺機能の低下症を示す人は、橋本病患者の約3割とされているようだ(逆に言えば約7割は機能は正常)。

橋本病-症状
http://www.ito-hospital.jp/02_thyroid_disease/02_5_2symptom_hashimoto.html (リンクはココ

□甲状腺機能低下による症状
 甲状腺機能低下症とは、血液中の甲状腺ホルモンが不足した状態をいいます。
 明らかな甲状腺機能低下症がある人は橋本病の約10%ほどで、さらに20%ほどの患者様では、血液検査をして初めて甲状腺ホルモンの不足があることがわかります。つまり、橋本病の人の約30%には、多かれ少なかれ機能低下があることになります。残りの70%は、甲状腺機能が正常です。


 本題に戻ると、安保氏によれば、発がんと同様に、自己免疫疾患も免疫抑制でおこるとされている。ここでいう「免疫」は、獲得免疫(あるいは後天性免疫)の趣旨である。これを模式的に書くと、
  
  過剰なストレス
     ↓
  交感神経の緊張
     ↓
  顆粒球増多 ───→ 獲得免疫の一部の抑制(進化したリンパ球)
     │            ↓
     │           易感染性
     ↓            ↓
  粘膜・組織破壊    感染(又は再活性化)による組織破壊
     └─────┬──────┘
             ↓
  獲得免疫の別の一部の活性化(古いリンパ球)→ 破壊組織の修復・感染防御
                                      ↓
                             炎症などの自己免疫疾患の症状


似たような図が何度か出てきているので、詳しい説明は省略しよう。ここでのポイントは、一部のリンパ球(進化したリンパ球)が抑制され、代わりに別の種類のリンパ球(古いリンパ球。後述する自己免疫応答性リンパ球のこと)が活性化し、何とか生体を防衛しようとするという点であろう。発がんの構図(詳細はココ。既出)との違いでいえば、発がんはこの古いリンパ球も抑制されてしまう免疫状態で起こるということだろう。

 関係部分を安保氏の著作「免疫革命」(講談社、2003.7月)から引用すると、

 難病といわれる膠原病でさえ、[交感神経の緊張が顆粒球増多をもたらして、組織破壊を行うとの説]で説明ができます。膠原病は、たいへんに症状に種類が多い病気です。五十を軽く越える種類があります。たとえば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、橋本氏病、甲状腺機能亢進症、シェーグレン病、ベーチェット病、紫斑病、自己免疫性肝炎など、いろいろな名前がついていますが、これらの病気がどうして起こっているかというと、ストレスで免疫が低下し、内在性のウイルスが活性化して、組織破壊が起こっているのです。組織破壊が起こるから修復しようとして血流がおしかけて炎症が起きているからぐあいが悪くなるのです。じっさい、膠原病の患者さんとじっくり話してみると、必ずストレスが聞きだせます。それに、発病のきっかけが風邪の症状、つまり発熱である場合が多いのです。つまり、ストレスによる極端な免疫力低下の事態が発病のきっかけになっといるのです。 (同書66頁。強調は引用者)

ここでは、自己免疫疾患の症状は、破壊されあるいは異常となった細胞を排除し、組織を修復するために起こっていると考えられているようだ。


 ここで、白血球の役割、種類とその進化について、簡単にまとめておこう。白血球は、安保氏によれば、進化によって4階層に機能分化してきたとされており、以下その解説をしていこう。内容を表でまとめておくと(予備知識のない方は、先に白血球のwikiでも眺めてからどうぞ)、

表 白血球の役割、種類とその進化(4つの階層)
    役   割      免疫系の区分       白血球の種類
 4 外来の小さい異物を処理  獲得免疫(液性)  進化したリンパ球(胸腺由来T細胞、B細胞) 
 3 自己の異常な細胞を処理  獲得免疫(細胞性) 古いリンパ球(NK細胞、胸腺外分化T細胞) 
 2 外来の細菌を処理      自然免疫      顆粒球(このうち好中球が9割以上) 
 1 基礎的な防衛・司令塔    自然免疫      単球/マクロファージ(単細胞時代の名残り)
出典)安保 徹「免疫革命」(主に第5章)。

 白血球は、大きくわけると単球/マクロファージ、顆粒球、リンパ球の3種類がある。進化上もっとも古いとされるのは、単球/マクロファージであり、ここから顆粒球、リンパ球が進化してきた。

 単球/マクロファージは、骨髄で生まれ、血管中を単球の状態で各組織へ移動し、血管外に出てマクロファージに分化する。マクロファージは、単細胞生物であるアメーバのように、生体に侵入してきた異物をのみ込み、除去する役割を担っている。

 マクロファージは、存在する組織によって形を変えるため、グリア細胞(脳)、肺胞マクロファージ、クッパー細胞(肝臓)などさまざまな名前で呼ばれている。また、赤血球などの血球細胞や血管を形成する血管内皮細胞も、マクロファージから進化したものである。

 白血球の機能において、マクロファージの貪食能(異物をのみ込み処理する機能)に特化して進化した白血球のサブ集団が、顆粒球であり、マクロファージの貪食能を退化させて獲得免疫(後天性免疫)をつかさどるようにした白血球のサブ集団がリンパ球である。血液中の白血球の割合を調べると、体質による個人差や採血時の体調などで変動しうるが、目安としては単球/マクロファージが約5%、顆粒球が約60%、リンパ球が約35%の比率となっている。

 顆粒球は、進化上マクロファージの次に現れたようだ。水中で単細胞から多細胞へと進化した後に細菌の侵入に悩まされたことから、外来の細菌侵入に対抗する防御体制として、マクロファージの貪食能をさらに高めた形で進化してきたのだろう。

 顆粒球は、マクロファージより一回り小さく(12~15μm。ちなみにマクロファージは20~30μm)、異物を丸ごとのみ込んで消化酵素と活性酸素を使って分解する形で処理している。細菌のような粒子の大きい異物(1~5μm程度。ちなみに大腸菌で2μm)を処理するのに適している(小さい異物は、例えばインフルエンザ・ウイルスは100nmと顆粒球の約100の1以下の大きさなので、効率的には処理が難しい)。

 顆粒球が細菌を処理している場所は、化膿性の炎症として現れる。膿は、顆粒球が侵入してきた細菌などを処理をした残骸である。白血球のうち顆粒球が最も多いということは、それだけ細菌の侵入の機会が多いことを示している。病的なものかどうかはさておき、顆粒球が炎症の6割を処理していると考えることもできる。

 顆粒球の働きの特徴は、進化上の古い形態なので、攻撃相手(抗原)を識別する仕組みが未発達という点である。主にDNAに記載された遺伝情報(記憶)に基づいて活動するのだろうが、細かいことは気にしない性格なのである。つまり、何らかの理由で顆粒球が過剰に集まった場合には、その場所に攻撃相手である細菌がいなければ、自己の組織の細胞であっても攻撃してしまい、破壊を引き起こしうることとなる。

 顆粒球に識別機能がない点を別の角度からみれば、顆粒球由来の病気は何度でも起こり得るということである。この点については、例えば、食中毒をみてみればわかるだろう。何らかの菌に汚染された食物を食べれば、食中毒を起こす。何度でも。

 リンパ球は、進化上マクロファージ・顆粒球の次に現れたようだ。リンパ球の働きの特徴は、マクロファージの貪食能を退化させて、接着分子(抗体)で異物(抗原)を捕らえるという新たな機能を発達させた点にある。

 古いリンパ球が先ず現れたようだ。その役割は、外来の侵入物への対処というより、多細胞生物として生体の内部での異常を監視することに主眼か置かれている点である。つまり、がん細胞などの異常な細胞への対策である。多細胞生物として複雑化していくと、全体の制御の下でそれぞれの機能に応じ各臓器が効率的に分散処理をしているので、統制されない異常な細胞は足手まといになるし、場合によっては生命の危険をもたらしかねないことになる。

 異常細胞の除去を顆粒球で対処すると、顆粒球は攻撃相手を識別しないので異常細胞と正常細胞の両方を攻撃・処理する形態となってしまい、これがはなはだ効率が悪かったのだろう。このため、別の仕組みでの対応が進化上必要とされ、それを発達させることに成功した種が最終的に繁栄したのであろう。

 古いリンパ球は、自己の異常細胞を効率的に処理・排除する目的のため、攻撃相手を識別する仕組みを持っている。この場合は、それ程複雑な仕組みではなく、攻撃相手が自己かどうかの識別のみである(自己応答性。自己に該当しなければ、非自己)。古いリンパ球は、非自己と認識された内部の細胞を処理・除去していくこととなる(このため「自己免疫応答性リンパ球」とも呼ばれる)。がん細胞や何らかの理由(老朽化、感染など)で正常に機能しなくなった細胞などを非自己と認識する仕組みになっているのだろう。つまり、身体の中で起こった異常を察知し、自己抗体を産生・活性化して、異常な部分を除去していくわけだ。

 最後に現れたのが、進化したリンパ球である。生物が水中で生活していた間は、マクロファージ、顆粒球、古いリンパ球で生体内部の防衛体制を構築していたらしい。しかし、生物が陸に上がると、水中と違い空気中だとやたらとウイルスの類い(小さい異物)が多くなったため、より効率的な防衛体制をとる必要に迫られたようだ。

 生物の進化をみると、生物が水棲から陸棲になり、T細胞やB細胞といった進化したリンパ球を育てる胸腺や骨髄という器官ができたとされている。進化したリンパ球を育てる胸腺ができて、攻撃相手を識別する複雑な仕組みができるとともに、感染した経験を免疫情報として記憶する仕組みも次第にできあがっていったのである。

 進化したリンパ球の働きの特徴は、小さな異物を処理するという役割を果たすため、接着分子で異物を捕らえるという新たな仕組みにある。つまり、進化したリンパ球(B細胞)は体液中に接着分子(抗体)を放出し、抗体が体液中を流れて異物(抗原)に接着し反応することとなる。これは、古いリンパ球による細胞ごと反応する細胞性免疫と区別して、液性免疫と呼ばれている。

 以上が、白血球の役割、種類とその進化について、安保説に関し自分が理解したところの簡単なまとめなのだけど、詳しく知りたい方は、参考とした安保氏の「免疫革命」を各自で読んでみてほしい。


 進化したリンパ球を育てる胸腺は、その機能を縮退させることがあるといわれている。身近なものでは、(1)老化したとき(加齢)、(2)ストレスを受けたとき、(3)妊娠したときであ。進化したリンパ球の活動が弱まると、代わりに古いリンパ球の出番となり、生体の防衛機構を維持しているようだ。
 
 老化による胸腺の縮退については、分かり易いだろう。加齢とともに活動力が落ち、生傷ができて細菌感染する機会も減る一方で、劣化した細胞も増え老廃物がたまりやすくなり、若いときと比較し細胞分裂の異常も起きやすくなるのだろう。従って、加齢とともに胸腺が縮退し、新しいリンパ球から古いリンパ球へ免疫の主役が移ることは、はなはだ合理的にできている仕組みといえるだろう。

 ストレスによる胸腺の縮退ついては、「免疫革命」から引用すると、

 新しい免疫系から古い免疫系へ、免疫の主役がうつるという状況は、ストレスがかかった緊急事態でも起こります。私たちはストレスがかかると顆粒球が増えて、組織が破壊されたり、組織の細胞の異常が起こったり、あるいは老廃物の分泌が抑制されたりします。ストレスがかかった状態がずっと続くと私たちはやつれてきます。これは、組織破壊、組織異常、老廃物の分泌の抑制が全身で起こっているからです。そういう状態では、問題は外来抗原ではなく体内の異常ですから、異常細胞、老廃物を古い免疫系で処理しなくてはいけないのです。

 また、ストレスが続いた果てには、ウイルス感染が起こります。ウイルスというのは、体の外から入ってくるだけではなくて、身体の中に潜伏しているものがたくさんあります。よく知られている例に、ヘルペスがあります。ヘルペスは、ヘルペスウイルスが体内に潜伏してていて、ストレスが続いて新しい免疫系の力がおちたとき、ふだんは活動できなかった内在性のウイルスが暴れだし、組織を破壊し、炎症を起こすのです。そういうときにできる異常細胞に対して戦うのも、古い免疫系です。 (同書256頁)

 ここまでくると、本題の最初で模式的に示した、交感神経の緊張と自己免疫疾患との関わりがみえてきたのではないだろうか。そう言えば、●の影響下にあると、何とかストレスというのが増加するとあったような・・・

 ついでに、妊娠による胸腺の縮退については、女性が妊娠すると、胎児に栄養補給するため母体のエネルギー消費が激しくなることから交感神経の緊張状態に傾き、胸腺が縮退するようである。もう長くなったので詳しく書かないけど、この交感神経の緊張状態では、胎児の細胞が胎盤を通じて母体にやってきて悪さをすることがないよう、古いリンパ球が主役となって胎盤で活動し、これを防いでいるようだ。女性は妊娠機能に付随したこのような免疫系のスイッチを持っているため、多分自己免疫疾患になりやすい傾向があるのだと思われる。
 

〔関連記事〕
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はじめに at site ε

2012年06月02日 | はじめに(健康2012-15)

 都合により、当面こちらに変更することといたしました。サイト変更につきお手数をおかけします。

 以前のサイト(アメブロの方。「●の影響 (site δ)」と命名)の記事は、当面あちらで見てください(分散保管の趣旨もあるし移動が面倒で・・・)。寒くなってきたら、また考えます。

 ブログを読み進められる方は、次の前提でお願いします。ブログ冒頭に掲示したいのですが、字数制限があるようで全部かけないので、こちらに記載しておきます。

 仮に身体に異変があるのなら、このブログを読むより、医師の診察を受けた方がよいでしょう。受けてみたけどわけが分からない、となれば少しは意味が出てくるのかもしれません。

 なお、読み進められる方は「このブログに書いてあることの多くは間違っているだろう」との前提でお願いします。

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