ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (4)

2012年08月13日 |  症例(その他)

 前回記事につづき、ステロイド剤(ステロイド系抗炎症剤)の副作用の項目別に、問題の症状へのコルチゾール関与の仕方、関連する疑わしい症例をあげていこう。

 なお、この作業は、別の見方をすれば、疑わしい症状の中から「「コルチゾール過剰症候群」に該当しそうなものを、ステロイド剤の副作用の知見を活用して拾い上げ分類しているとも言えるだろう。

(4) 脂質代謝異常

 まずは用語の解説で、脂質代謝異常は、かつての「高脂血症」のことなのだけど、gooヘルスケアから、

脂質代謝異常(高脂血症) http://health.goo.ne.jp/medical/search/10280300.html (リンクはココ

どのような状態か
 高脂血症はLDLコレステロール140mgdl以上、中性脂肪150mgdl以上、HDLコレステロール40mgdl未満のいずれかを満たすものと定義されます。・・・高脂血症の名称も脂質異常症と変更されましたが、本稿では高脂血症として統一します。
 さて、高脂血症の基準にあるLDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールであり、HDLコレステロールはいわゆる善玉コレステロールです。一般的にはLDLコレステロールが上がれば上がるほど、HDLコレステロールが下がれば下がるほど動脈硬化が起こりやすいと考えられています。中性脂肪に関しても動脈硬化、糖尿病、急性膵炎(すいえん)との関連が示されているので、注意が必要です。
 高脂血症そのもので自覚症状を起こすことはほとんどなく、検診により指摘され、受診するケースがほとんどだと思われます。高脂血症は動脈硬化を進行させる重要な危険因子であり、これにより脳血管障害や虚血性(きょけつせい)心疾患など動脈硬化性疾患を合併し、生命に危険をもたらすことがあります。・・・

血液中のコレステロールや中性脂肪が高くなることであり、これにより何らかの自覚症状が出るというより、動脈硬化の危険因子として注意する必要があるものである。

 脂質代謝異常へのコルチゾール関与の仕方は、以前の記事で触れたコルチゾールの基本的な作用のうち「脂肪分解促進」と関連している。この場合の脂肪分解とは主に、

中性脂肪(トリグリセリド) ─────→ 脂肪酸 + グリセロール(グリセリン)

 「トリグリセリド」というのが脂肪(酸アルカリ的に中性なので「中性脂肪」と呼ばれる)として体内に貯蔵される時の形態であり、これは栄養状態に応じて、体内で合成・貯蔵されたり、取崩し・分解されたりしているものである。分解により得られた脂肪酸は、肝臓ほかの臓器(脳以外)でエネルギー源として活用(分解)され、グリセロールは肝臓での糖新生の原材料とされることとなる。このあたりの脂肪分解の生化学反応の詳細については、例えば、サイト「脂質と血栓の医学」から、

絶食時の代謝 http://hobab.fc2web.com/sub4-zesshoku.htm (リンクはココ

1.絶食が始まった時
 [中略]
 b.脂肪組織が分解されて、脂肪酸が放出される
 脂肪組織のホルモン感受性リパーゼ(注4)が活性化されて、中性脂肪(トリグリセリド)が分解され、脂肪酸が、血液中を、アルブミンと結合した遊離脂肪酸として、運ばれます。
 ・・・なお、脂肪酸は、心筋や、骨格筋では、β-酸化によりアセチル-CoAに分解された後、さらに、TCA回路で代謝され、二酸化炭素と水にまで、分解されますが、肝臓では、β-酸化によりアセチル-CoAに分解された後、ケトン体に生成されます。それから、脂肪酸からは、グルコースは合成できません(奇数炭素の脂肪酸は、例外)。
 絶食時(飢餓時)には、グルコースの供給が不足するので、肝臓は遊離脂肪酸を分解(β-酸化)し、生成されるNADH2+を利用し、グルコースを生成(糖新生)します。・・・
 [中略]
 中性脂肪の分解に伴い生成される、グリセロール(グリセリン)は、肝臓で、グルコースに糖新生されます。

 コルチゾールによる中性脂肪の分解促進というのは、以前の記事で触れたように、もともとフリージング反応での作用であり、お腹がすいても動けるように準備するという趣旨だと考えられるのだが、そのような中で食事を十分にとったりすると、何かよくないことが起きそうな予感がするのではないだろうか。

 中性脂肪は、上述のとおり本来栄養状態に応じて、体内で合成・貯蔵されたり、取崩し・分解されたりしているものである。コルチゾールによる「脂肪分解促進」というのは、詳細にみれば、中性脂肪の分解の促進と中性脂肪の合成の抑制ということを意味している。

 食事をすると消化・吸収した糖質、脂質などの栄養素が血液中に増加するけど、コルチゾールが過剰にある環境だと、中性脂肪の合成が抑制されるため、中性脂肪となれずに余った原材料が血液中に増加し、高脂血症を引き起こすことになるようだ。このあたりの詳細については、同じくサイト「脂質と血栓の医学」から、

ステロイドホルモン http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ

・コルチゾールは、脂肪組織(や肝臓)では、中性脂肪(トリグリセリド)合成を抑制する。
 コルチゾールは、脂肪組織では、インスリンの作用を抑制し、脂肪分解作用を、亢進させる(インスリンの作用の抑制により、グルコース取り込みが抑制され、グリセロール 3-リン酸とアシル-CoAから、中性脂肪が合成されない)。インスリンは、脂肪組織のリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性を上昇させるので、コルチゾールにより、インスリンの作用(インスリン受容体との結合)が抑制されると、LPLにより分解されないカイロミクロン、VLDL、LDLが増加し、高脂血症(高中性脂肪血症、高コレステロール血症)を来たす。コルチゾールは、糖新生を促進させ、血糖値を上昇させ、インスリン分泌を促進させ、その結果、一部の脂肪組織では、脂肪動員(脂肪分解)を上廻って、脂質合成が、促進される。
 その結果、血中への脂肪酸やグルセロール放出が、増加する。グリセロールは、肝臓で、グルコースに糖新生される。

 ちょっと難しくて余りピンとこないので、少し用語の解説「カイロミクロン」、「VLDL」(超低比重リポ蛋白)、「LDL」(低比重リポ蛋白)については、いずれもリポ蛋白とよばれるものでる。血液は水が主成分であり、そのままではコレステロールや中性脂肪を運搬できないので、リポ蛋白が輸送体となりこれらの脂質を血液中で運んでいるのである。この点については、何故かタカノフーズ株式会社のサイト「納豆はコレステロール0」から、

血液とコレステロールの関係は?
http://www.takanofoods.co.jp/fun/cholesterol/cholesterol002.shtml (リンクはココ

 コレステロールは中性脂肪(=脂肪)とともに、血流にのって全身へ運ばれます。しかし、コレステロールも中性脂肪も脂質なので、そのままでは水が主成分である血液には溶けず、単独では移動できません。
そこで、水になじむよう、「アポたんぱく」という特殊なたんぱく質と結合し、「リポたんぱく」という粒子状の物質になって、血液中に存在、移動しています。
リポたんぱくは、カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDLの5種類に大別され、大きさや比重、組成が異なります。

カイロミクロン
 最も大きなリポたんぱくで、小腸で合成されます。食品から吸収した脂質(おもに中性脂肪)を、筋肉などエネルギーが必要な組織へ運び、残りを肝臓へ運びます。肝臓で再合成され、VLDLとなります。

VLDL(超低比重リポたんぱく)
    肝臓で合成された脂質(半分以上が中性脂肪)を、全身の末梢組織まで運びます。その途中で中性脂肪が分解され、筋肉や脂肪細胞に送られます。残りはIDLに換わります。
 [中略]

LDL(低比重リポたんぱく)
    最も大きなリポたんぱくで、小腸で合成されます。食品から吸収した脂質(おもに中性脂肪)を、筋肉などエネルギーが必要な組織へ運び、残りを肝臓へ運びます。肝臓で再合成され、VLDLとなります。 [以下略]

 次に、「リポ蛋白リパーゼ(LPL)」については、酵素の一種であり、血液中を脂質がリポ蛋白で輸送されている際、リポ蛋白から中性脂肪を取り卸す役割を果たすものである。同じくサイト「脂質と血栓の医学」から、

リポ蛋白リパーゼ(LPL) http://hobab.fc2web.com/sub4-LPL.htm (リンクはココ

【ポイント】
 リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、脂肪組織などで合成・分泌され、毛細血管の血管内皮細胞表面(脂肪細胞外)に存在する。リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、細胞外で、血液中の中性脂肪(トリグリセリド)を、遊離脂肪酸とグリセロールに分解し、細胞内(脂肪細胞内など)に、遊離脂肪酸を取り込ませる。脂肪細胞では、リポ蛋白リパーゼ(LPL)により分解されて取り込まれた遊離脂肪酸は、アシル-CoAを経て、中性脂肪に再合成され、貯蔵される(LPLは、脂肪細胞の中性脂肪貯蔵を促進する)。
 なお、ホルモン感受性リパーゼ(HSL)は、脂肪細胞内に存在して、トリグリセリドを、遊離脂肪酸とグリセロールとに分解し、遊離脂肪酸を、血液中に、放出させる(HSLは、脂肪細胞の中性脂肪分解を促進する)。

 リポ蛋白とリポ蛋白リパーゼとの意味がなんとなくわかると、結局、食事によって消化・吸収した脂質などが問題を起こすのだろうという点が垣間見れるのではなかろうか(書いてる本人も未だにピンときていないので、そろそろ先へ進もう)。


 脂質代謝異常に関連する疑わしい症例は、例えば、某掲示板の緊急自然災害板から、
 
862 : 名無しさん@お腹いっぱい。(関東・甲信越) : 2011/11/04(金) 14:17:11.46 ID:JrNX0Gtx [1/3回発言]
  何でこんなに荒れてんだよ…。体調不良書かれたら都合の悪い奴でもいんの?

  マイコプラズマの薬貰って飲んでたら、マジで下痢になる。
  副作用でなる、ってあったけど、咳で胸が痛い上に下痢で肛門まで痛めるって…orz

  あ。中性脂肪がかなり高くなってたけど、予防食材が今危険な玄米や雑穀…。
  皆ならどうする?中性脂肪高いままだと、直ちに健康に影響出るんだよな…。

864 : 名無しさん@お腹いっぱい。(東京都) : 2011/11/04(金) 14:41:44.61 ID:bSUHmSHi [1/1回発言]
  >>862
  揚げ物と酒をやめるだけで全然違うんでないの?
  あとは北海道か九州の胚芽米位にしといたらどーかな。
  [以下省略]

875 : 名無しさん@お腹いっぱい。(関東・甲信越) : 2011/11/04(金) 17:51:34.66 ID:JrNX0Gtx [2/3回発言]
  >>864
  酒、煙草、揚げ物無し。
  素うどんとかだと炭水化物が中性脂肪になるから、毎日野菜350g食えって医者に今さっき言われたorz
  そんな大量に無理だよ!トマトで重さ稼げって言われたんだけど、地元のしかトマト無いよ@栃木
 

 無理に少し脱線して、終わりの方で出てきた医者のアドバイスについて一言(前回記事の耐糖能障害に関連して触れようと思ったのだけど眠たくて断念したので・・・)。

 野菜を多く食えというのは、抗酸化物質を多く含んでいるのでそのとおりだと思うけど、コルチゾールの過剰の環境下だとすると、炭水化物を減らしすぎるのも問題となるのではないだろうか。なぜなら、血液中の糖分が上がらないようだと、コルチゾールの作用からすると、筋肉などのタンパク質の分解が活発になるおそれが否定できないからだ。

 特に、糖質制限食や低炭水化物ダイエットについては、先月、警鐘を鳴らす記事が某新聞社から出ていたので、ちょっと気になっているところ(額面どおり受け取っていいのか、悪いのか? 額面どおり受け取ると、これらの食事法はもともと危ない性質のもので、コルチゾールの過剰の環境下にあると、より一層危なくなりそうな予感)。

極端な炭水化物制限「生命の危険も」…学会警鐘
2012年7月27日 読売新聞
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=62329

低炭水化物ダイエットご用心…発症リスク高まる
2012年7月8日 読売新聞
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=61435


(つづく)

 

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注) ・8/22 タイトルなど変更。


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