ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

ATP恒常性(清水氏23/8/25記事関連)

2023年09月09日 | 生物医学ネタ絡み

〔更新履歴:追記2023-9-10〕

 

 細胞内のATP(アデノシン三リン酸)濃度はどうやって測定するのか、ダイナミックな(動的な)測定は可能なのか?
 西原 克成氏が、生物は細胞ではなくてミトコンドリアが単位だろう、と指摘したことがあって(確か彼の著作「患者革命 目を覚ましなさい!」(2014年)あたり)、この道で話を転がしてみたところ、ATP濃度が重要ということになって上記の疑問に至っていた。ATP濃度の測定、ということで調べても、細かい技術的な話ばかりで少し困っていたところ。
 そのような状況で見かけたのが、ブログ「ドクターシミズのひとりごと」の次の記事:
 
   果糖摂取は肝臓のATP貯蔵量を大きく減少させる -2023年8月25日
   https://promea2014.com/blog/?p=23401

 

 関心がかなりあるのでリンク先を含めて隅から隅まで読んでみたところ、「ATP恒常性」という概念があると学ぶことができた。この概念を使うとかなり当初の話を転がすことができたようだ。

 ということで、その成果を含む考察に関し備忘録的にその荒筋をまとめておくと:

 

1・多細胞生物は、(真核)細胞内でATP恒常性を維持しているのだろう(この制御モデルについては、例えば「ATP恒常性のミトコンドリア制御仮説」)


2・(ヒトの場合の)糖質食は、低ATPを誘導し食欲を亢進させ脂肪蓄積へと向かわせる越冬準備食にあたる(糖質食の越冬準備食仮説)。糖の種類で経路が異なる:
 - ブドウ糖は、追加分泌されたインスリンの作用過剰による食後の低血糖を利用して低ATPへ
 - 果糖は毒性があり肝臓で代謝されるが、代謝時に低ATPを誘導する設定
  (低ATP誘導により果糖がだぶつき貯蓄に回せるのも望ましい方向)

 

 ついでにプロトタイプを書いておくと:

 

3・ATP恒常性のミトコンドリア制御仮説
 細胞内では生体のATPの95%を賄うミトコンドリアが中心となり、モデルとしては次のように制御するのではないか:
- 恒常性を維持:       平時〔エネルギー代謝は非貯蔵モード〕
- 事前想定内での高ATPの発生:細胞分裂の方向へ
- 事前想定内での低ATPの発生:越冬前など〔エネルギー代謝は貯蔵モードへ変化。他方、細胞自体は低ATPが祟り異物老廃物の除去が滞り早死傾向となり、長期化すると脂肪組織主導の慢性炎症と繋がる模様〕
- それ以外の恒常性の破綻: 細胞死(アポトーシス)へ誘導〔主としてがん化防止のための模様〕

 

追記:


 ついでに、冒頭記事の中に出てくる。身体活動時に細胞内で働き易くなる酵素である、アデノシン一リン酸(AMP)により活性化するタンパク質リン酸化酵素(AMP-activated protein kinase、AMPK)について触れておこう。
 AMPKは、細胞内のATP恒常性を監視して生体のエネルギー恒常性を維持するエネルギー・センサーの役割を果たしている。具体的な働きは:

 

AMPK -バイオキーワード集
 https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/3067.html
 AMPK(AMP-activated protein kinase).細胞内のエネルギー状態を監視し,その状態に応じて糖・脂質代謝などを調節するセリン・スレオニンキナーゼで「代謝マスタースイッチ」とよばれている.低酸素,筋収縮などのエネルギー低下ストレス時に起こるATP低下とそれに伴うAMPの増加によって活性化される.活性化AMPKはエネルギー産生経路(糖輸送,脂肪酸化)を亢進し,エネルギー消費経路(タンパク質合成)を遮断することにより細胞内ATPレベルの回復をはかり,細胞内のエネルギー恒常性の維持に貢献している.

 

 このリン酸化酵素は、運動時に低ATPになりAMP濃度が高まると働き出し、ATPを産生・供給し、運動には無関係な先送りできる細胞機能(グリコーゲン合成,脂質合成,タンパク質合成など)でのATPの消費を抑えることによって、運動時に最大限のパフォーマンスを発揮することを意図した機構と解される。
 エネルギー代謝が貯蔵モードの際には、邪魔な働きを持つ酵素であり、ある程度その働きを阻害する必要性が出てくるのであろう(AMPK活性を阻害の結果、低ATPへ誘導)。