ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

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基礎免疫力仮説と糖質制限・アレルギー

2024年02月01日 | その他健康・医療

 本ブログの現在のテーマはとある健康法だけど、その基本の考え方は、西原克成説+安保徹説(前者は進化の考え方と常在共生体病因論、後者は免疫理論)に立脚しつつ、

- 人類の進化過程でみられた生活様式には遺伝子による自動制御機構が備わっているようだ

- 不健康モードにある人は、そのような生活様式のうち良さそうなものに従った方がよいだろう

という趣旨に基づいている。ここでの「良さそうなもの」の評価基準は、免疫力を消耗させるか、させないかということになる。古の生活様式であっても免疫力を消耗させるものはボツとなる。

 また、免疫系に関する記事を今後幾つか書こうかとも思いつつあるので、そのための前振りをしておこうという趣旨もある。

 

 本題に入ると、人類の食性についてみれば、狩猟採集食(低糖質のもの)の時代が長かったのであろう。時には糖質食が主体になっただろうが、季節的で一時的なものであり、長期に継続はしていなかったとみられる。狩猟採集食は、血糖値の変動がそれほどなく、このような状況が常態であっただろう。

 糖質制限食も、血糖値の変動が少なく、膵臓機能の保護など糖尿病の治療法として有効であるほか、各種の疾患に良い効果をもたらし得るとされている。さて、何故だろうか?

 

 結論から先に書けば、

糖質制限食は、血糖値変動がもたらす血管系の損傷を低く抑えることにより、免疫力の消耗を避ける食事法(本来の免疫力を維持する食事法)だから

ということになろう。

 逆に言えば、糖質食により血糖値変動が増加し血管系の損傷が増えると、免疫系の仕事が増え負荷がかかることとなり、その分、平時の免疫力(同力の総力は本来その人の体質で規定されるだろうから、この文脈のように生活様式より変動する能力分を「基礎免疫力」と呼ぶことにしよう)が低下していることになると解釈される。

 

 「基礎免疫力」という概念はなじみがないだろうから、関係仮説の定義・解説をしておこう:

 

・免疫力(疫を免れる力、病気への抵抗力)には、体内の異物除去機構と皮膚・粘膜での防除壁(バリア)による異物侵入防止機構が関係している。

・外傷・感染がなくとも、普段から人体60兆個の細胞のうち毎日1兆個が生まれ変わっている。この際に古い細胞を取り除くために働いているのが免疫力の柱となる異物除去機構であり、同機構の能力の一部が副次的に病気への抵抗力として働いている。また、皮膚・粘膜での異物侵入防止能力が低下すると、外界・管腔から体内へ侵入する異物が増えることから、体内の異物除去能力の余計な負担となる。

・従って、免疫力は、異物除去能力の余力と異物侵入防止能力との兼ね合いで決まってくるのだろう。

 

・免疫力には、働くモードが二つある:

1- 平時応答モード(無症候性で平穏処理モード)
 外傷・感染がない、あるいは慢性的な炎症がない状態であり、このモード時の免疫力が「平時の免疫力(基礎免疫力)」にあたる。

 

2- 免疫応答増強モード(有症候性が多いモード)
 非日常的なこと(外傷・感染など)が起こり、あるいは何らかの理由により慢性的に組織修復が必要となっているが、除去すべき異物量の多過などにより基礎免疫力では処理できない場合にあたる。体内ではやむを得ずに免疫力を増強するスイッチがオンとなり、このモードに変化する。

 主に炎症反応が起きている時全般が、この場合に当たる。このモードでは、発赤・発熱・腫脹・痛みなどの不快な症状を伴い日常の身体活動に影響を与えることが多い。

 例えば、風邪により鼻水・発熱・倦怠感がある場合は、先延ばしできる活動は後回しにしつつ(倦怠感)、不快な症状を伴うものの粘膜バリアの侵入防止能強化(鼻水)や高体温化(発熱)によって基礎免疫力の水準に下駄を履かせることを目指しているのだろう。

 また、アレルギーについては、体内への異物の侵入があったが基礎免疫力で対処できない場合にあたると考えられる(注)。

注)以前のテーマでの健康ブログ時代の難問の一つがアレルギーの話。当時は免疫力が低下しているのか、亢進しているのか整理がつかなかったし、例えば、ヨーグルトを食べると花粉症が軽減するとかいう現象があって、上手く説明できなかったところ。上記の整理によれば、免疫力の低下(基礎免疫力の低下)がアレルギーの発症の主因ということになろう(他の主因としては、体内に侵入する異物の毒性が上がったというのがあり得る。また、ヨーグルトの件は乳酸菌が腸管壁のバリア機能を強化させることにより基礎免疫力が高まるためという説明になろう)。

 

 最後にまとめると、以上のからすれば、


- 糖質食では、血管系の損傷が増えて基礎免疫力を低下させやすい
- 糖質制限食では、血管系の損傷がより少なく免疫力を消耗させず、基礎免疫力を低下させにくい

というのが理解できるのではないだろうか。

 このため、糖質食から糖質制限食に切り替えると、あたかも免疫力が向上したような事象(各種の疾患に良い効果)が見られると考えられる。