引き続き予定を変更して、前回記事(ココ)の流れでいこう。その方が書く気が出てくるので・・・
(18) 子供の成長障害
子供の成長がおかしいという報告は、いろいろと見かける。以前にも記事にしたし(郡山の幼稚園児の体重の異変 2011.6月調査 2012/4/27。ココ)、最近みかけた報道だと、多分同記事で触れた体重異変の件と同じものだと思うけど、時事通信から、
子どもに残る心の傷=カウンセラー増員、福島は3倍に-「今後が重要」・被災3県
2012/09/12-16:50
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201209/2012091200685 (リンクはココ)
[福島]県では、東京電力福島第1原発事故による放射能ストレスが深刻化。福島大の筒井雄二教授(47)=実験心理学=によると、放射線量が高い地域の3歳児を調べたところ、親にまとわりつくなど甘える態度が目立った。親が抱える不安やストレスが伝わったためとみられ、筒井教授は「将来、体力や体重などにも影響が出るだろう」と危惧する。
実際、同県郡山市では、4歳児約30人が5歳になるまでの成長過程を追跡調査したところ、震災前は年間2.4キロ増えていたが、震災後は同1.5キロに鈍化。調査した同市の菊池信太郎医師(42)=小児科=は「明らかな異変」と警戒する。・・・ (強調は引用者)
ついでに少し脱線しておくと、上記の記事の主題は被災3県の子供の心理的な異変についてなので、子供たちに観察されたとされる現象をまとめておくと(その原因は議論のあるところだろうから別の機会に)、
・[福島県の]放射線量が高い地域の3歳児を調べたところ、親にまとわりつくなど甘える態度が目立った
・岩手県南部では今夏、「津波を思い出すのでプールに入らない」という小学生が散見
・宮城県南部の中学校では、頭痛や腹痛など体調不良で授業に出られず、頻繁に保健室を訪れる生徒が、今年に入って特に増えた
さて本題に戻り、子供の成長の遅れの原因を考えよう。時事通信の記事に出てくる筒井氏によれば、心理的なストレスということなのであろう(心理的ストレス原因説)。
しかし、3-4歳児なら親が抱える不安やストレスが伝わることもあるだろうけど、30人の4歳児がいれば伝わる度合いもかなりバラバラだろう。大きく影響を受ける子供もいるだろうけど、集団全体として震災前に年間2.4キロ増えていた体重が震災後に同1.5キロ増に鈍化したりするものだろうか。ちょっと首をひねらざるを得ないだろう。
心理的ストレスが原因でないとすれば、何が原因だろうか。先ず第一に考えるべきは、甲状腺の異常の影響であろう。子供の甲状腺については、福島県の超音波検査によれば、これまでのところ4割の子供に異常がみつかっている。「YNNチェルノブイリ報告」からの関係部分の抜粋を再掲しておくと(以前の記事はココ)、
汚染地域の全域で、非悪性腫瘍性の甲状腺疾患に著しい増加がみられた。その関連症状は、以下のものを含む:傷・潰瘍の治癒遅れ、髪の成長遅れ、乾燥(dryness)、虚弱、脱毛、呼吸器系感染感受性の増加、夜盲、頻繁な目まい、耳鳴り、頭痛、疲労・活力不足、食欲不振、子供の成長遅れ、男性不能、出血の増加(月経過多を含む)、胃酸欠乏、軽い貧血。 (強調は引用者)
次に、甲状腺の異常の影響によるものでないとすれば、第二に考えるべきは、コルチゾールの過剰の影響であろう(コルチゾール過剰原因説を踏まえた考え方)。ステロイド剤の副作用としての子供の成長障害については、「財団法人 母子健康協会」のサイトから、
子どもの病気にステロイドを使うといわれたとき
ふたば (No.68/2004)
http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no68/con03_04.htm (リンクはココ)
4 ステロイド薬による成長障害
ステロイド薬で治療するとき、子どもとおとなの最大の違いは、副作用としての成長の障害です。子どもは成長段階にあるため、ステロイド薬の副作用の1つである成長障害に特に注意しなければなりません。ステロイド薬によって成長障害がおこるしくみを図2[リンク先を参照] に示します。
[中略]
ステロイド薬を用いて体内のグルココルチコイドが増えすぎると、過剰になったグルココルチコイドは、成長ホルモンやインスリン様成長因子ができるのを妨げるように働き、結合組織の合成を抑制します。その結果として、身長の伸びが抑制されて成長障害がおこります。
ステロイド剤の投与による場合には、成長障害は一時的なものとされており、遅れも直ぐに取り戻すことができるとされている。サイト「脂質と血栓の医学」から、
ステロイドホルモン http://hobab.fc2web.com/sub4-Steroid.htm (リンクはココ)
9.ステロイド剤と身長
ステロイド剤(グルココルチコイド)は、小児の成長(身長の伸び)を抑制する。
[中略]
ステロイド剤の使用を中止すると、成長期の子供さんの身長は、キャッチアップ(catch up)する(ステロイド剤を飲まなかった時に伸びたであろうレベルにまで慎重が急激に伸びる)。
コルチゾールは本来、短時間使わなくても困らない機能を抑制して時間を稼ぐためのホルモンと理解できるので、キャッチアップすることも可能というのは理解しやすいと思われる。この意味では、定期的に転地療養しておくことは、キャッチアップする機会を設けることに繋がるのかもしれない。
しかし、薬剤として投与する場合、普通は短期間のみであり、キャッチアップは長期にわたってダラダラ投与しないために起こっている現象なのかもしれない。このため、●の影響のように長期にわたり慢性化してしまう状況だと、キャッチアップできずに遅れがなかなか解消されない、とも考えられる。キャッチアップ説はよく分からないので、注意が必要だろう。
いずれにせよ、子供がいるのであれば予防原則に立つ必要があり、先ずは、甲状腺機能の異常に注意する、今後無用な被曝はさせない、といった点が重要であろうと考えられる。
(注)なお、この記事については、後でタイトルを『「コルチゾール過剰症候群」 (18) 子供の成長障害』に変更して、移動する予定。