ヒト遺伝子想定的生活様式実践法

2023年8月にテーマ・タイトルを変更(旧は外国語関連)
2015年4月にテーマ・タイトルを変更(旧は健康関連)

はじめに・・・

 外国語テーマも長く続かずなので、従来の健康ブログに戻してみようかと思いまして・・・ 備忘録的に残しておくと旧タイトルは「タイ語、漢字を使って覚えるの?」でした。(2023.8月記)

 従来の健康ブログ時に記事を書いていて、何故か、そろそろ外国語でも勉強した方がより良いかなーと思いつきまして、以来ちょこちょこと続けてきましたが、なんとなく、ある事を覚えると別の事を忘れてしまうモードに入ってしまったようで、知識量が停滞しつつあるような感じになりました。

 そこで、本ブログを外国語学習ブログに変更して、自分の備忘録的にまとめておこうかなと思いまして・・・。

 しかしながら、少し飽きたのか内容を増やしすぎたのか、書くのに手間がかかるようになり、時間がとれない時は、別ブログ「単語帳の素材?」にてライトな記事を書くことにしました。(この別ブログも徐々にライトでなくなり、記事を500本ほど書いたところで滞り中・・・)

 なお、健康ブログ時代の記事は、コチラの 入り口 からどうぞ。(2015.4月記)
 最近の健康系記事はカテゴリー「タイ語以外(健康2019)」からどうぞ。

〔メモ〕 細胞の傷害と早期老化 (2)

2014年01月16日 |  関連(生物学医学)

 季節の御挨拶

 約1か月半ぶりの更新であり(どうもスミマセン)、あと2か月ほどで3.11後満3年を迎えることとなってしまった。このブログも更新する間隔が長くなりつつあり、その辺りが一つの区切りだろうかと考えているところ。


 さて今回は、かなり疑問も解けたような気がするので、前回記事(ココ)の続きでいこう。

 現状●の影響については、分かり易さで眺めると、
(1) 細胞分裂系の傷害、
(2) 血管系の傷害、
(3) 内分泌系の傷害、
(4) 精神神経系の障害
の4つに大別できそうな気がしている。(1)は例えば、脱毛、粘膜・皮膚の劣化、免疫力の低下(白血球の減少)などを、(2)は心筋梗塞、脳梗塞などを含むだろう。(3)は甲状腺、副腎、すい臓あたりの異常が主ではないだろうか。今回扱う事項は、(1)の主たる原因に関する説ということになるのだろ。

 
 前回記事では、「直ちに影響はない」期間が生ずる理屈の一つをみてみたわけだが、そのポイントは、

・一般の体細胞には寿命があり、その寿命は約5~6年である。

ということだと思われる。これから類推されることは、次のようなことであろう。

・身体を構成する組織には、一般の体細胞が寿命を迎えた際にその組織の機能を維持できるよう、受精卵から分化した組織幹細胞が潜んでいる、
・組織幹細胞は、体細胞の世代交代期に新たに寿命が存分にある体細胞を供給する役割を担う。


 ちなみに、組織幹細胞(体性幹細胞)の意義については、サイト「kotobank」から、

体性幹細胞 【タイセイカンサイボウ】
http://kotobank.jp/word/%E4%BD%93%E6%80%A7%E5%B9%B9%E7%B4%B0%E8%83%9E

 生体のさまざな組織にある幹細胞。造血幹細胞・神経幹細胞・皮膚幹細胞などがあり、限定された種類の細胞にしか分化しないものや、広範囲の細胞に分化するものなどさまざまある。成体幹細胞。組織幹細胞。


 こうしてみると、前回言及した理屈は「直ちに影響はない」期間(潜伏期間)に関する組織幹細胞損傷原因説ともいうことができるだろう。


 前回記事を書く前に、上記の説で白血病の発症が簡単に説明できそうな気がしたので1週間ほど考えたのだが、余りよく分からなかった。ところが、元の発言主が追加でヒントを落としてくれていたようだ。一般の体細胞の世代交代の存在が、厄年の発現につながっているらしい。ツイートから、

@tokaiama  11月30日
人の臓器細胞は6年周期で分裂と再生が大きく行われる
6歳 12歳 18歳 24歳 30歳、36歳 42歳 48歳 54歳60歳 66歳
昔の人は理解しそれが厄年に重なっている
被曝発症もおおむね6年が単位で致死周期が繰り返される
2011年→17年23年30年が致死ピークに

@tokaiama
ごらんの通り、旧ソ連では事故から8年後の1994年に平均寿命が7歳下がる致死ピークが現れた
[リンク1]
発症ピークは5年後の91年だった
[リンク2]
致死ピークは、それから三年後
主に白血病と心筋梗塞だ (リンク省略し別途以下に)


 ちなみに、リンク1は、サイト「社会実情データ図録」から次の記事:

ロシアの平均寿命の推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/8985.html

リンク2は、サイト「内部被ばくを考える市民研究会」から次の記事の図表:

チェルノブイリ原発事故で被ばくした北ウクライナ住民にあらわれた精神、神経、身体の疾患(1987~1992年)
2012.09.09
http://www.radiationexposuresociety.com/archives/1933

 ついでに厄年については、サイト「kotobank」から、

厄年 【ヤクドシ】
http://kotobank.jp/word/%E5%8E%84%E5%B9%B4

とっさの日本語便利帳の解説

 災難に遭うことが多いので、気をつけるべき年とされているのが厄年である。男は数え年の二五歳・四二歳・六一歳、女は一九歳・三三歳・六一歳とされる。・・・また、そもそも厄年は本来的には「役年」であって、男性の場合は、二五歳や四二歳で地域共同体の重要な役目についた。そして六一歳は一切の役目から退く年である。それは祝うべきことでもあるが、同時に身を慎むべきことでもある。その意味では、厄年ではなく役年と考えたほうが、説明がつきそうである。・・・ (強調は引用者)


 これで前回記事でよく分からないと言及した「生体において幹細胞と一般体細胞とがどのように連携しているのかの点」が少し見えてきたような気がする。

 例えば、白血病の発症のピークについては、肥田舜太郎氏によれば、7年後に来たし、来るだろう、ということだったと記憶している。これについては、●の影響が重大な場合には、その初期段階において一般の細胞(造血細胞)が本来の世代交代期が到来する前に死んでしまい外部要因による強制的な細胞の世代交代が起こるけど、次に到来する細胞の世代交代期には、●の影響の継続などにより正常な組織幹細胞(造血幹細胞)が残念ながら足りなかった人々が多く発生したという線で説明できるのかもしれない。

コメント

〔メモ〕 細胞の傷害と早期老化

2013年11月30日 |  関連(生物学医学)

 引き続き手抜きで、素材貼り。

 ●の影響により、がんや白血病が増加すると言われている。コルチゾール過剰原因説で多くのことが説明てきそうと思っているけど(詳細はココ)、がんや白血病は別ではないだろうか。

 がんについては、コルチゾール過剰原因説で無理に説明できないことはないけど(免疫力の低下経由と解する)、白血病の方は、やはり細胞(骨髄造血細胞)の傷害を全面に出したほうがわかり易いと思われる。


 さて、細胞の傷害(あるいは老化)に関連して、これにより潜伏期間(いわゆる「直ちに影響はない」期間)を理解しようとする興味深い説をみかけたのでメモしておこう。ツイッターから、

@tokaiama  11月19日
放射線生物学の基礎知識
アメリカのヘイフリックは「哺乳動物の体細胞は何回かの分裂を繰り返すと増殖を停止し、死滅する」ということを見出しました。これは「ヘイフリックの限界」と呼ばれ、 今日でも広く信じられています
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/byouri/vphome/web-rouka/rouka/di1zhang_lao_huato_shou_ming.html

@tokaiama
細胞は絶え間なく入れ替わっているが、遺伝子が正常にコピーできる回数は限られている 各臓器、器官によって寿命は異なるが、肝細胞は五年程度で死滅、このときDNA情報が損傷していると正常コピー不能になり臓器器官が死滅に向かう この五年という期間が放射線被曝の潜伏期間に一致する


 この潜伏期間に関する説は面白そうなのだが、個人的によく理解できない点があるので全面的には信じていない(これは、生体において幹細胞と一般体細胞とがどのように連携しているのかの点について、理解できていないためだと思われる)。現状では、コルチゾール過剰原因説の方が潜伏期間をも含めいろいろ説明できる感じがしている(その詳細は 〔おさらいメモ〕 ストレス反応とセリエ説 2013/6/4)。 


 では何故メモしておくのかといえば、引用URLの資料がかなり興味深いからである。この資料は、中山裕之氏(東京大学大学院農学生命科学研究科獣医病理学研究室)が書いた次の文の第1章らしい。

老化の比較生物学 ― 「老化の進化学」の提案
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/byouri/vphome/web-rouka/rouka/index.html


 上記資料では
   細胞の老化は分裂回数と傷害刺激の蓄積によって生じる
という点について分かり易く解説してあるので、引用しておこう。●の影響で早期老化が起きることがよく理解できるのではないだろうか。

第1章 老化と寿命
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/byouri/vphome/web-rouka/rouka/di1zhang_lao_huato_shou_ming.html

2)細胞の老化

   [中略]

 それでは、細胞の老化、細胞寿命の決定のメカニズムはどうなっているのでしょうか。10年程前から「テロメア」あるいは「テロメラーゼ」という言葉が新聞の科学記事、科学雑誌などに登場するようになりました。テロメアというのは遺伝子の端に存在する意味を持たない構造体と考えてください。遺伝子とは細胞の中に存在し、生物が生きていくのに必要な情報を保存している化学物質で、生命現象をコントロールするプログラムが書かれています。重要な遺伝子に傷がつくと細胞は死滅したり、あるいは異常に増殖して癌になったりするのです。そして遺伝子は細胞分裂のたびに端のほうからだんだんと短くなっていきます。遺伝子が短くなっても端にテロメアがあるうちはテロメアのみが減っていくだけなので、重要な遺伝子に傷はつきません。ところが細胞が何回か分裂するとそのたびにテロメアが短くなり、とうとうなくなって、遺伝子までもが欠損するようになります。こうなると細胞は増殖できず死滅してしまいます(図7)。これがヘイフリックの限界を定めているメカニズムなのです。テロメアとは細胞分裂の回数券で、使い切ると細胞が死んでしまうのです。このテロメア短縮によっておこる細胞老化メカニズムを「プログラム説」と呼びます。細胞の老化・寿命は遺伝子によってあらかじめ決定されている、というものです。蛇足ですが、生殖細胞や癌細胞の中には無限に増殖するものがあります。このような細胞には分裂によって短くなったテロメアを伸ばす酵素が存在し、テロメラーゼと名付けられています。テロメラーゼがあれば、テロメアはいつまでたってもなくなりませんので、細胞も不死化するのです。

 一方で、細胞は外部から様々な有害刺激を受けています。紫外線、熱、放射線などの物理的刺激、発癌物質、アレルゲンなどの化学物質、ウイルス、細菌、寄生虫などの生物学的刺激です。こういった刺激が直接または間接的に細胞の遺伝子を傷害し、それが蓄積して、ついに細胞死がおこります。

 このように細胞への傷害が累積し、遺伝子が変化、細胞が老化、死滅するメカニズムを「エラー破局説」といいます。図8の左はヒト心臓筋のミトコンドリア DNA(mtDNA)の異常、右は8-OHGという異常DNAの割合をしらべたものです。いずれも60歳を超えると急激に増加しています。こうした遺伝子を傷害する刺激の蓄積によって異常な遺伝子DNAが増加することを示しています。

 プログラム説とエラー破局説、どちらの説が正しいのかまだ分かりません。多分両方正しいのでしょう。両方のメカニズムが相まって、細胞が老化し、死滅していくのだと思います。 (図は省略)

コメント

〔メモ〕 ストレスが脳に及ぼす影響

2013年11月21日 |  関連(生物学医学)

 興味深い記事があったので、素材としてメモしておこう。

 コルチゾール過剰原因説に立つと(詳細はココ)、●の影響によって精神神経症状が出るだろうと推測される。本来であれば、
   「コルチゾール過剰症候群」 (11) 精神神経症状
というタイトルの記事になるはずだけど、いつ書き上がるか分からないのでメモしておくという趣旨のものである。


 その記事は、ブログ「ライブノート LIVE NOTE」から(サイト「GIGAZINE」の記事の転載の由)、

「疲れているほど脳はクリエイティブになる」など脳にまつわる10の事実
2013.11.16
http://codenameo5.blog.fc2.com/blog-entry-1367.html


 興味を引いたのは第2の事実のところで、慢性的なストレスは脳の記憶に関する部位に影響を与える、との指摘であり、引用しておこう。この点は、3.11後における短期記憶に問題を感じる人々や注意力の散漫な人々の増加と関連しているものと思われる。

◆02:ストレスは脳のサイズを縮小してしまう



 いくつかの研究によると、によると、ストレスは長期的に脳に悪影響を及ぼし、ストレスから抜け出しても影響が持続する可能性があります。ネズミに慢性的なストレスを与え続ける実験では、記憶に関わる部位である海馬が縮小するという結果が出ています。


 上記の「いくつかの研究」の部分にはネタ元の英文記事のリンクが貼ってあって、それはサイト「Buffer」から、

How Stress Can Change the Size of Our Brains and What We Can Do to Lower it
Posted on Tuesday, September 3rd, 2013
http://blog.bufferapp.com/the-science-of-stress-how-its-breaking-down-your-body


 関連部分を抜き出しておくと(和訳は残念ながら・・・)

Stress can change our brains

In fact, stress is actually the most common cause of changes in brain function.

Some recent studies have shown indications of how this could happen. ...

  [中略]

Another study found that in rats who were exposed to chronic stress, the hippocampuses actually shrank. The hippocampus is integral to forming memories. It has been debated before whether Post Traumatic Stress Disorder (PTSD) can actually shrink the hippocampus, or people with naturally smaller hippocampuses are just more prone to PTSD. This study could point to the stress being a factor in actually changing the brain.

How stress hormones work

We have a few different stress hormones that affect our bodies. Adrenaline, noradrenaline and cortisol are stress hormones called glucocorticoids that are essential for us to function properly in the face of danger. While these hormones can be useful in helping us to learn and form new memories, too much of them can be unhealthy. When our lives are filled with chronic stress, we can enter a state called cortisol dominance, which negatively affects learning, attention span and memory.

Here’s a great diagram that shows how chronic stress creates a loop of negative side-effects on our brains. (「diagram」は前掲の図。強調は引用者)


 ついでに、もう一つ。ストレスの下での生理現象(動悸)が引き金となって論理的な思考や推論より本能や訓練が優位になる、とも指摘しているので、関連部分を抜き出しておこう。この点は、3.11後において人々の異常行動の増加と関連してくるのではないかと思われる。

Stop thinking

You’ve probably felt how fast your heartbeat can get during stressful situations before. What’s really interesting about this is that your fast heartbeat actually sends a signal to your brain’s prefrontal cortex—the part that handles thought processing and decision making. The signal tells this part of your brain to shut down temporarily and let your midbrain take over. Tania called this part of the brain the “kill or be killed” section.

When we’re in this state, instinct and training take over from rational thought and reasoning.

コメント

〔おさらいメモ〕 ストレス反応とセリエ説

2013年06月04日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:6/9例示追加〕


 他力本願で、最近眺めていた本
 永井 明 「適応上手」(角川書店、2004.7月)
から、ストレスに関するハンス・セリエ博士の説についてメモしておこう。彼は、セリエ博士の下で学んだことがあるらしい。

 同説のおさらいは、過去記事をどうぞ: ストレス反応と副腎機能 (1) セリエ説 2012/7/31
今回新たな点はないような気もするので、おさらいがメインという感じだろう。


 とりあえず、用語の使い方から。

「ストレス刺激(ストレッサー)」― ストレス回路を動かす外部からの刺激。
「ストレス状態」― ストレス回路が作動した結果、心身に不都合が生じた状態。
「ストレス反応」― これら一連の反応の総称。 (前掲書43頁)


 先ずは、ストレスとは何かについて。

ストレスとは何か

 ストレスというとふつう、「精神的な重圧感」と理解されているようだ。それはそれで間違いではないのだが、正確とも言えない。いわゆる精神的なプレッシャーだけでなく、暑さ寒さ、湿気乾燥、空腹満腹、身体的な痛み、騒音、混雑など・・・極端なことをいえば、ぼくたちを取り巻く自然、社会環境のすべてがストレスを起こしうるのである。

 こうしたストレス刺激がぼくたちのからだに加わると、体内ではまず、大脳新皮質が「どんな刺激が、どの程度の強さで加わっているのか」を認識し、間脳の一部である視床下部というところに信号を送り、脳下垂体から副腎皮質と自律神経系に至るストレス回路を回転させる。ここで重要なのは、刺激の種類にかかわらず(非特異的に)、体内ではじめに起こる反応は基本的にいつも同じ(特異的)―「大脳新皮質→視床下部→脳下垂体→副腎皮質・自律神経系」の順で回路が作動しはじめる。

 仮に強度10の空腹というストレス刺激が加わっても、同じ強度の騒音ストレス刺激が加わっても、からだは同じストレス回路を10回転させ、それらの刺激を適正に処理しようとする。つまり、外部からの異なった刺激に対して同じ仕組みで「適応」しようとするのである。

 [中略]

 「ストレス反応はもともとからだを守るための防衛、適応反応だ。病的反応(いわゆるストレス状態)として心身に不具合が現れてくるのは、その適正バランスがなんらかの理由で崩れたときである。」

 例えば、「寒さ」というストレス刺激にさらされているとしよう。そのときまず皮膚でそれを感知し、「寒い」ことを大脳に伝える。すると、大脳新皮質はストレス回路を回転させるように指令を出し、自律神経系・内分泌系を働かせる。その結果、皮膚表面の毛細血管は収縮し、体温の放出を防ごうとする。また、たとえば筋肉運動によって熱の生産を促す「震え」も同じメカニズムで生じる。

 では、ストレスの何が問題かというと、10の強さの刺激に対して5回転しかしない(刺激強度を5と過少に評価する)、逆に20回転もしてしまう(刺激強度を20と過剰に評価する)。「不適応状態」になり、そのギャップが心身に歪みを生じさせてしまうことだ。一般的には、この状態をいわゆる「ストレス」と言っているわけである。

 なぜ、そうしたことが起こるのか。それは、ぼくたち人間が他の動物に比べてとても大きくなった大脳新皮質をもっていて、良くも悪くもあれこれ感じ考えてしまうためだ。

 動物実験では同じ強さのストレス刺激に対しては、生理的に見合ったストレス反応を生じる。人間の場合はそうならず、ストレス刺激強度の認識の仕方は、百人の人がいれば百通り。・・・ (前掲書40-42頁)


 上記の例の寒さと違い、●の影響の場合、匂いも味もしないので五感に反応しないことが多いだろうから、刺激強度への順応といってもより難しいのかもしれない。この意味で、ガイガーカウンターで空間線量を測ることは、目安が得られることとなり、よいとも考えられる。


 セリエ説の主要な点について。

 セリエ博士の提唱したストレス学説の基本軸となる考え方にGeneral Adaptation Syndrome (GAS) というのがある。日本語訳では「汎適応症候群」。
 
 体外から何らかのストレス刺激が加わると、ぼくたちのからだはそれに対して適応(一定の状態を維持)しようと反応しつづける。ストレス学=ホメオスターシスの動的メカニズムを解き明かす学問と捉えてもいいかもしれない。ストレス反応は固定的なものではなく、時間の経過によって、刻々その姿を変えていくということだ。

 セリエ博士は、いろいろな有害物質(ストレス刺激)によって、体内にはいつも「副腎皮質の肥大」、「リンパ組織の萎縮」、「消化器の潰瘍」という三つの変化が起こることを見つけ、それをストレス反応と呼んだ。

 しかし、研究をすすめていくうち、その変化はじつはストレス反応の一部、初期の反応に過ぎないことに気づいた。ストレス刺激が加わると、たしかに三つの変化は起きる。だが、そのまま刺激が加わりつづけると体内の様子が変わってくる。時間の経過により、ストレス反応はその姿を変えていくことがわかったのである。

 セリエ博士はその変化を、「警告反応期」、「抵抗期」、「疲憊(ひはい)期」の三つの時期に分けて説明している。 (前掲書54-55頁)


 以下三つの時期について詳しい解説は端折って、代わりに短いのを置いておこう。ついでに、冒頭の過去記事でも紹介した記事から、三つの時期の図も借りておこう(京都府精神保健福祉総合センターのサイトの記事「〈ストレス〉 ストレスの仕組み-生物、心理、社会的に見た場合-」 http://www.pref.kyoto.jp/health/health/health09_b.html から)。

図 警告反応期、抵抗期、疲憊期について
注)実線の縦軸は抵抗力の強さ、横軸は時間軸を示す。
出典)前掲記事から。



 あるストレス刺激が加わるとき、生体の抵抗力はいったん低下するが、多くの場合、また持ち直す(警告反応期)。そして、その刺激に対する抵抗力は以前より増加する(抵抗期)。外界の変化に適応するわけだ。ただ、そうした刺激が加わりつづけると、やがて適応エネルギーは涸渇し、抵抗力は不可逆的に低下、心身ともに疲労困憊状態に陥る(疲憊期)。 (前掲書157頁)



 低汚染地から高汚染地を訪問すると、いろいろ反応があらわれる人がいる。典型的なものだと、例えば、ツイッターから、

@trust_5  [北海道在住のヒト]
@kado_kado_ginza @onodekita 私も東京に一泊した1週間後から強烈な頭痛を伴う、高熱が続きました。インフルも陰性、風邪でもないって医者に言われました。疲労、っていう診断。そもそもこの10年くらい発熱などなかったのに。2012年1月の話。
2013/03/20


 このヒトは多分、警告反応が出たということだろう(警告反応が出る前に低汚染地に戻っていたようだけど・・・)。他方、東京に住む多くの人々は、既に警告反応期を過ぎ、余り症状も出ていないようにも見受けられるので、抵抗期にあるということではないだろうか。

 想像するに、●の影響が各個人の耐性限度を超えているということであれば、いずれ疲憊期に陥ってしまう可能性があるだろう。そのような人々にとって、その時期は5年後が多いということかもしれない。ツイッターから、

@tokaiama
巨大放射能事故が起きたのはチェリャビンスク [中略] チェルノブイリに次いで三回目だ。低線量被曝の影響には五年という潜伏期間があり、7年目にピークを迎え、その後数十年に渡って子供達の致死的病気や異常が続く。遺伝障害は7世代に及ぶ 被害は全地球上
2013/3/6 (強調は引用者)


 汚染地に住んでいる場合、現在症状が一旦消失していても、それは抵抗期に入っている可能性があるとも考えられる。従って、移住し、あるいは少しでも抵抗期が長続きするよう、できる限り転地療養に努めることが必要なのかもしれない。

 

・6/9追記:
 低汚染地から高汚染地を訪問した場合の例示については、「典型的な」例と書きつつ非典型だよなと最初から気づいていたのだが(探しきれなかったっス)、反省し補足しておこう。

 先週末に福島で盛大にお祭りが開催されたらしいが、熱中症の人がかなり出たらしい。中日新聞と福島民報から、

福島、東北六魂祭に25万人 千人がパレード
2013年6月2日 19時33分
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013060201001970.html

福島市内、大混雑
2013/06/02 11:11
http://www.minpo.jp/news/detail/201306028785

 福島市によると、六魂祭の来場者のうち、熱中症とみられる症状で手当てを受けた人は45人で、このうち1人は重症だった。


 この45人の中には、他県からの訪問者が多くいた可能性があるだろう。福島の当日(1日)の最高気温は25度だったらしく、旅行による疲れだけでは説明がつかないということかもしれない。

 仮に抵抗期にない人には影響が出易いと考えれば、市民を怒らせた次の行為は必要だったと理解できるのかもしれない(むやみに近寄らないのが最善策だが・・・)。ブログ「みんな楽しくHappy♡がいい♪」の記事から、

「我々はそれを知らされない」広瀬隆氏6/3脱原発テント裁判を考える講演会(内容書き出し)
2013-06-05
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3033.html

 ここでお祭りをやる、お祭りをやる前に、つまり六魂祭をやる前に福島県が何をしたかというと、「ここを除染をした」っていうんです。
 わかります?それで福島市の人達は本当に内心で怒った。あたりまえですよ。他から人が来るために除染をした。
 そこに住んでいるんですよ!祭りが終わったらまた放っておくんですよ。それが今の状態なんです。


 この例だけだと、ちょっと漠然とし過ぎてるような気もするので、福島へ行った場合の例について、某掲示板の緊急自然災害板から(この辺りを当初探していたのだが・・・)、

313 : 地震雷火事名無し(茸)[sage] 投稿日:2013/03/05(火) 22:54:51.32 ID:CJd1WPAo0 [1/1回(PC)]
  311以降の自分のまわりの人の病気

  友人の父親が突然死60代@埼玉県
  親が肺炎にかかる@東京都

  姉が福島に行ってから動悸が止まらず。医者の診断では不整脈あり。心臓には問題ない。心筋に何かあるかもとのこと。原因は心理的なものでは…(おいっ…)とのこと。@東京都

  毎年、年賀状の喪中ハガキは0~1枚。
  今年、5枚。

984 : 地震雷火事名無し(鹿児島県)[sage] 投稿日:2013/03/15(金) 22:45:58.51 ID:kysSkL130 [2/2回(PC)]
  しかしこっちじゃ危機感ない人多すぎる。
  旦那さんは福島に単身赴任。
  とくに心配していない。
  本人は東京へ遊びに行って最終日に高熱出した。
  被ばくの懸念はしていない。

  他に子連れ一家でねずみーもあり。
  関東長期帰省もあり。

  外国の出来事のように思っている節がある。 (強調は引用者)


 レス984には、低汚染地(鹿児島)から東京へ行った場合に該当するだろう。福島についてもう一つみておくと、同板から、

123 : 地震雷火事名無し(やわらか銀行)[] 投稿日:2013/03/18(月) 21:12:37.93 ID:YN45D0RB0 [1/1回(PC)]
  >>35
  私は食べ物にもすぐ反応するカナリア体質ですが、
  どうしても移動しなくてはならず福島通過したことがあるんですが、
  熟睡していたら、突然胸が締め付けられるような激しい痛みで目覚めました
  慌ててガイガー取り出したら、警報がびーびー鳴り止みませんでした。
  外を見ると福島通過中だとわかり、自分の身体が反応したんだと分かりました。
  長いこと苦しみがとれず、ここで死ぬのかなと思いました。
  [以下省略]

124 : 地震雷火事名無し(東日本)[sage] 投稿日:2013/03/18(月) 21:26:10.30 ID:7KrPh5oc0 [2/2回(PC)]
  >>123
  移動中の福島でも反応が出るなんてすごいな。
  当方は福島通過時は何も反応が出ないし東京と同じ状態だったんで拍子抜けしたんだが。
  さすがに福島県内で外に居る時はN95マスクに帽子、眼鏡でフード被って防御はしてたけど。
  今、反応が出なくても反動で何年後かに一気に被曝症状が襲ってくるかも知れない。 (強調は引用者)


 レス124のヒトは、東京在住のようだが、問題なかったらしい。もともと強い体質のヒトなのかもしれないし、あるいは、東京在住のため抵抗期に既に入っており、ある程度の予防もするなどストレス刺激の捉え方が丁度よい塩梅だったということかもしれない。


 次に、低汚染地(関西など)から東京へ行った場合の例について、直接関係ない情報も有益そうなので削除せず掲載してみると、同板から、

927 : 地震雷火事名無し(神奈川県)[sage] 投稿日:2013/02/13(水) 04:12:28.64 ID:h8geDRY+0 [1/2回(PC)]
  老けてない人もいるよね。
  気をつけてる人はずっとキレイなのかな?

  頭がボーとしていて、モヤがかかってるみたい。
  よくイライラするし忘れっぽい。
  鍵を忘れたり、車に付けっ放しにしたり、サザエさん状態は日常茶飯事………、
  それと平成23年の記憶がほとんどない。
  ショック過ぎて農が忘れたいのかもしれないけど。
  一昨日の記憶は怪しい。
  思考力がほとんどない。わからない。頭にはいってこない。会話がズレる。
  どうしたらいいか考えると眠くなって疲れる。
  見た目が老けたくらいで仕事できてる芸能人はまだ健康だと思うよ。

932 : 地震雷火事名無し(茸)[sage] 投稿日:2013/02/13(水) 08:46:01.37 ID:SgaVVdEA0 [1/4回(PC)]
  927は放射性物質吸い込んだときの典型的だよね。考えられなくなり、頭がぼーっとするの

933 : 地震雷火事名無し(神奈川県)[sage] 投稿日:2013/02/13(水) 08:48:08.81 ID:h8geDRY+0 [2/2回(PC)]
  >>932
  そうなんだ…
  確かに3月20前後、外にいた。コストコの屋上駐車場にいたんだよなぁ。

  やられたか。スピルリナ飲んできます

934 : 地震雷火事名無し(茸)[sage] 投稿日:2013/02/13(水) 09:27:32.14 ID:SgaVVdEA0 [2/4回(PC)]
  >>933
  自分も元神奈川県民だけど、
  たまにデトックスで、今だったら兵庫真ん中より西に旅行すると(北九州の近く除く)アタマがクリアーになると思うよ。本当は引っ越しがいいけど、難しいなら。
  中国のガスは意外にデマじゃんと身をもってわかるw

935 : 地震雷火事名無し(関東・甲信越)[] 投稿日:2013/02/13(水) 09:50:01.15 ID:GiF53mv7O [1/2回(携帯)]
  >>934
  関西への避難民だが、たまに東京へ行くとアタマが痛くなる。耳鳴りなんかもあるし@姫路

937 : 地震雷火事名無し(dion軍)[] 投稿日:2013/02/13(水) 09:53:46.60 ID:pbGTdy870 [1/3回(PC)]
  東京に1週間いたら頭がニキビだらけになったよ 空気が汚染されすぎじゃね
  頭にニキビなんて出来たことがなかったけどね (強調は引用者)


 レス935のヒトは、低汚染地(姫路)から東京へ行った場合で、レス937のヒトは、居住地不明だが東京へ行って頭皮に湿疹がてきたということらしい。

コメント

タバコ、アルコールでこれらが起こるなら・・・

2013年05月07日 |  関連(生物学医学)

 残念ながら黄金週間も終わってしまったし、短く。前回記事(ココ)に引き続き、最近眺めている本に関連して心臓病関係をみていこう。


 先ずは、アテローム性動脈硬化について。最近眺めている本によれば、喫煙により、活性酸素を経由してアテローム性動脈硬化が起こるとされている。小坂眞一(国際医療福祉大学教授)著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)から、

 [血管]内皮細胞は一酸化窒素(NO)を産生して、中膜をつくっている平滑筋を弛緩させて血管を拡張させます。ところが、タバコを吸うと、ガス溶解中の活性酸素と一酸化窒素とが結合して、きわめて毒性の高いペルオキシナイトライトができ、これが血管内皮細胞を傷つけます。血中のコレステロールは傷ついた内皮細胞の中を容易に通過して、血管壁内に侵入します。内膜と中膜の間に溜まったLDLコレステロールはここでペルオキシナイトライトや水酸化基ラジカルによって酸化されます。

 酸化されたLDLコレステロールは血中の白血球の中にある単球を引き寄せます。内皮細胞の間をすり抜けた単球はマクロファージに変化して、酸化コレステロールを飲み込んで泡沫細胞となり、死滅していきます。・・・ (前掲書110頁。強調は引用者)


 この続きは、死滅したものが沈着物(アテローム、粥腫(じゅくしゅ))となり、動脈硬化につながって行くという一般的な内容なので、図解もあった方が分かり易いだろうから他力本願でいくと、アステラス製薬のサイトから、

生活習慣病と動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞など) - 2.動脈硬化のメカニズム
http://www.astellas.com/jp/health/healthcare/sp/Atheros/02.html (動脈硬化が起こるメカニズムの(3)以降に続く)


 タバコの煙が体内に取り込まれ体液に溶けてできた活性酸素が問題を引き起こすとされている。

 さて、タバコの煙と●の影響は、どちらが多く活性酸素を発生させるだろうか。前者では鼻血を出したというような話はほとんど聞いたことがないが、後者に関連してはよく耳にすることからしても、答えは明らかではないだろうか。


 次は、心筋症について。アルコールの多飲が心筋症(アルコール性心筋症)を招くらしい。

・・・心筋細胞には肝臓ほどの再生能力はありません。一度壊れてしまった心筋細胞は線維に置き換わって、収縮しなくなります。こうなると心筋の収縮力が低下して、心臓から駆出される血液量は減少してしまいます。また、線維化して硬くなった心臓は拡張するために、それ以上に拡がる力が低下して、心臓に血液が戻りにくくなります。こういった状態を心筋症といい、放っておくと、やがて心不全を起こします。

 一般的に、心筋症の原因はビールス性のもの以外は不明なことが多いのですが、アルコールの多飲も心筋症の原因になると考えられています。肝細胞と同じように、アルコールやアセトアルデヒドが心筋細胞も傷つけるからです。 (前掲書140頁。強調は引用者)


 アルコールの「多飲」とあるので量を調べてみると、かなりの量のようだ。「高知アルコール問題研究所」のサイトから、

アルコールによって生じる身体の病気(Q&A集)
http://www.kochi-al.org/url/body.html

Q)大量の飲酒は心臓にも悪影響を与えるのですか?
A)はい。長期にわたる大量飲酒のため、心臓の筋肉(心筋という)が障害されます。これをアルコール性心筋症といい、一日あたり日本酒5合あるいはビール大瓶4~5本を10年以上毎日飲み続けると、生じるといわれています。
 最初は心臓が腫れている(心肥大)だけですが、徐々に進行し、身体を動かした時の息切れと動悸が見られるようになります。そして、ある日突然、ちょっとした原因(たとえば過労)で重い呼吸困難に陥ります。
 早期に発見し、断酒すれば治療可能ですが、末期になると断酒しても心臓の機能は元に戻らなくなります。 (強調は引用者)


 上記記事によれば、骨格筋が損傷する「アルコール性ミオパチー」というのもあるようだ。

 
 さて、アルコールやアルコールの副産物(アセトアルデヒド)と●の影響は、どちらが筋肉に悪いのだろうか。後者についてはでは、ある種の核種は筋肉に溜まりやすいとよく聞くが、前者が筋肉にたまりやすいという話は個人的にはあまり聞いたことがない。前者が筋肉を損傷することがあるのなら、後者でも当然に起こり得るのではないだろうか。


 喫煙やアルコールの害というのは何故か●の影響と似ているような気がするが、多分考えすぎだろう。

コメント

交感神経の緊張と心臓病(不整脈)

2013年05月05日 |  関連(生物学医学)

 ピロリ菌の話を書く予定があるような気がしたけど、気力もわかないので、メモも兼ねて引き続き心臓病関連をみていこう。今回の記事は、一応、次のような過去記事の一環という位置付けというつもり。

交感神経の緊張と発がん 2012/5/26
交感神経の緊張と自己免疫疾患(膠原病)  2012/6/3


 内容的には、基本的に安保 徹氏の言説がベースになると思うのでおさらいしておこう。例によって他力本願でいくと、以前腰痛の記事で言及したような気がする「加茂整形外科医院」のサイト(石川県所在、http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/)の、次の記事が参考になるだろう。

ストレスで交感神経が過度に緊張して起こる病気
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/new_page_367.htm


 ここで念頭におているのはくどいようだけど、次の流れである。この流れを前提とすれば、前々回記事のタイトル(「高血圧の増加には一酸化窒素の不足が関与するのか?」。リンクはココ)は「交感神経の緊張と高血圧」、前回記事(「一酸化窒素の不足と胸痛」。ココ)は「交感神経の緊張と心臓病(異型狭心症)」としてもよいだろう(段取り悪くてスミマセン)。

●の影響 →酸化ストレスの亢進 →交感神経の緊張
 

 先ずは、普通の不整脈について。最近眺めている本の次の一節は、過労による交感神経の緊張下での状況を解説したものだが、他の要因で長期にわたって交感神経が緊張する場合にも、当然あてはまるものと考えられる。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)から、

 過労の一番の問題は、働く時間が長いため交感神経の緊張が高まり、副交感神経へのバトンタッチがうまくできなくなることです。

 過労によって交感神経の興奮が長く続くことは、常に心臓を高ぶらせて、心臓の筋肉への負担を増大させます。もともと不整脈を起こしやすい人はその頻度が増え、また致死率の高いタイプへ変化する可能性があります。

 また、先に述べた、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠動脈の壁が緊張しやすい人は、冠動脈の痙攣を起こし、容易に狭心症になることがあります。・・・ (前掲書182-183頁)


 前半は不整脈について、後半は異型狭心症(あるいは冠れん縮性狭心症)について述べたものだ。後者については前回記事で触れたので(ココ)、前者についてみよう。心拍の乱れが起こる理由を理解するには、心拍と自律神経の関係を頭に入れておく必要があるだろう。サイト「ストレスと自律神経の科学」から、

自律神経活動が心拍変動を発生させる仕組み その1
http://hclab.sakura.ne.jp/stress_novice_autonomicnerve.html

洞房結節とは

 心臓には、「洞房結節(どうぼうけっせつ)」と呼ばれる部位があり、拍動を統括しています。・・・この大きな電気信号の発生、つまり、洞房結節の発火は周期的に繰り返され、この電気信号が心臓全体に伝搬することにより、心臓が拍動するのです。平たく言うと、洞房結節は、「心拍のペースメーカー」なのです。

  [中略]

内因性心拍数とは

 このように、交感神経と副交感神経の活動のバランスによって、洞房結節のペースメーカ細胞の発火の頻度は変化するのですが、薬物で自律神経活動の影響を抑えたり、物理的に自律神経を切断することで、交感神経と副交感神経の活動の影響を受けなくすることができます。自律神経の影響を受けずにペースメーカ細胞が自分だけのペースで発火する場合の心拍数を内因性心拍数(ないいんせいしんぱくすう)と呼びます。内因性心拍数はかなり高い値で、20歳前後で毎分110拍程度、年を経ると徐々に下がっていって、70歳前後では80拍程度になります。私たちの心拍数は、平常状態で毎分60~70拍程度ですから、副交感神経の活動により心拍数を抑えられていることがわかります。


 洞房結節の細胞は「特殊心筋」(あるいは「刺激伝導系」)とよばれることがあるが、上記によれば、これらの細胞は自然の状態では心拍数が大きくなりがちで、副交感神経がこれを抑制することによって普段の活動が行われるとされている。このため、交感神経の緊張が継続するようであれば、副交感神経が興奮しずらくなり上記の抑制作用に支障をきたすのであろう。


 不整脈の解説については、救心製薬株式会社のサイトとgooヘルスケアから、

不整脈を知りましょう(刺激伝導系) http://www.kyushin.co.jp/advice/advice_a02.html

不整脈<子どもの病気> http://health.goo.ne.jp/medical/search/10152700.html
不整脈<お年寄りの病気> http://health.goo.ne.jp/medical/search/10240300.html


 ついでに、心筋の働きについてより詳しく知りたい場合は、東邦大学のサイトから、

心筋 - 心臓は電気とカルシウムイオンで動いている!
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/index.html


 次に、不整脈の一形態である「心房細動」にも触れておこう。再び前掲書「心臓病の9割は防げる」の一節から(前回記事でも少し触れたけど「タバコによる」交感神経の興奮という部分は個人的によく分からないのだが、細かいことは置いといて)、

・・・タバコによる交感神経の興奮によって不整脈が起こりやすくなるのです。特に心房細動や発作性上室性頻拍症などの「心房性不整脈」や「心室性期外収縮」などの不整脈が起こりやすくなるのです。

 この中で一番問題になるのが、心房細動です。

 心房細動とは心臓の4つの部屋のうち、心房という2つの部屋が正常に収縮せず細波(さざなみ)のごとく揺れた状態になることで、実際に手術中に心臓をみていると心房が痙攣しています。

 心房細動になると心房の収縮がなくなるぶん、心臓から出る血液が15~30%も減り、血圧も低下します。ただし、一番の問題は、心房内側に血栓ができることなのです。特に左心房の中の左端にある左心耳(さしんじ)という小さな袋状の場所は血液がよどむために、血栓ができやすいのが特徴です。血液は流れなければ10分以内に固まりますから、極端に言えば、心房細動が10分続けば血栓ができてしまいます。そして11分後に心房細動が収まり、血栓がはがれると全身に飛んでいきます。はがれた血栓の30%は脳に行くので、心房細動が起こると高い確率で脳梗塞が発生することになるのです。 (前掲書114-115頁)
 

 このメカニズムは、タバコでなくとも何らかの別の原因で交感神経の緊張が起こる場合にも当然あてはまるものと考えられる。心房細動から脳梗塞になった例は、著名人ではいずれも3.11前だけど、長嶋茂雄元プロ野球監督とかオシム元サッカー日本代表監督の例があるらしい(前掲書26、34頁)。


 ここでなんとなく思い浮かんだのは、次の記事である。何故かはよく分からないけど、若くて女性だと動脈硬化というのも「?」という気がして。ニッカンスポーツの記事から、

大橋アナ34歳脳梗塞「まさか自分が…」
2013年1月19日7時59分
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20130119-1073819.html

 大橋アナはこの日、同局を通じてマスコミ各社にファクスを送付。「少しの間お休みをいただくことになり、多くの皆様にご迷惑をおかけしますことを、この場を借りて、おわび申し上げます」とコメントを発表した。その上で、「今まで健康診断でも血圧やコレステロールで注意を受けたこともなく、まさか自分がと驚きました」と、これまで何も兆候を感じたことがなく、突然、襲ってきた病気だったことを明かした。 (強調は引用者)


 最後に、不整脈中心に書いてみたけど、他力本願でいくと、類似の話題で手短にまとまっている次の記事もどうぞ。「内科・循環器科 あおやまクリニック」のサイト(愛知県所在、http://www1.s3.starcat.ne.jp/aoyama_c/)から、

ストレスは交感神経を刺激する
http://www1.s3.starcat.ne.jp/aoyama_c/backnumber/1-4.html

コメント

一酸化窒素の不足と胸痛

2013年05月02日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:5/5追記、5/19追記〕


 前回記事(ココ)は前置きということにして、一酸化窒素の不足について引き続き頭の体操をしておこう。

 一酸化窒素はいろいろな生理作用をもつので、仮に高血圧の原因が一酸化窒素の不足にあるなら、他の症状の出現にも影響を与えているものと考えられる。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)をながめていると、他の症状というのは胸痛かなという気がしてくる。

 3.11後は、不可解な胸痛や違和感などを訴える人をよくみかける。最近だと、ツイッターから、

@ShinmonK
@onodekita 大阪ガレキ焼却丁度3ヶ月:ネットの健康被害報告は約千名。目、鼻、喉がいつまで経ってもすっきりせず。日本全国、放射能からは逃げらないが、大阪から70kmほど離れると空気は随分ましに。大阪に帰り様子見。時折胸に違和感、阪大卒の医者は調べても分からず気のせい?
2013/5/1 (強調は引用者)


 ここで言及されている報告というのは、「大阪おかんの会のブログ」の記事だろうか。大阪ガレキ焼却に際しての体調変化の報告を集計した結果によれば、8%程度の人が「心臓・動悸・胸が痛い」の症状を訴えているらしい(動悸も入るので胸痛のみの数字ではないが・・・)。

大阪で119番通報が激増!体調変化レポートNo,10(~3/13)
2013年03月26日(火)
http://ameblo.jp/osakaokan2012/entry-11498469658.html

≪症例数≫

症例総数1,505/報告人数806名 =1.87(一人あたりの平均発症数)

① 喉の異常・咳・痰…554
② 鼻の異常…鼻水・痛み181+鼻血86 ! =267
③ 眼の痛み・かゆみ…263

④ 頭痛…131
⑤ 皮膚の異常…71
⑥ 肺、気管支の異常・息苦しい…79 !

心臓・動悸・胸が痛い…69 !
⑧ 発熱…48
⑨ 倦怠感…47
⑩ 腹痛・下痢…38

その他…吐き気、骨・筋肉、吐き気、耳、めまい、眠気、ヘルペス、痙攣等
*( )は、前回からの変化。 (強調は引用者)


 通常、心臓からくる胸の痛みは、動脈硬化の進行に伴う酸素不足に起因するとされている。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)から、

 しかし、運動したり、興奮したり、また風邪を引いたりして心臓が激しく動くと冠動脈は拡張して、血流が4~5倍にまで増加するのです。

 ただし、動脈硬化で冠動脈が硬くなると、血管が拡張できなくなります。そうなれば、血流が十分に増加せず、心筋に十分な酸素が運ばれなくなるため、酸欠となります。手足の筋肉と同じように、酸欠になると乳酸が溜まり、心筋に痛みを生じます。これが心臓の胸痛で、通常、「締め付けられる」とか、「胸に重しを載せられたように感ずる」ので、狭心痛と言います。 (同書19-20頁)


 中高年に起こる胸痛はこのタイプが多いと想像しているけど、3.11後の胸痛は中高生あたりの子供達にも出ているようなので、別のタイプのものもあると考える必要があるだろう。

 多分、「異型狭心症」(あるいは冠れん縮性狭心症)の初期状態における狭心痛がこれにあたるのではないだろうか。これは、高血圧の場合と同様に、●の影響由来の酸化ストレスによって一酸化窒素の不足が起こるという流れが関与するものである。再び「心臓病の9割は防げる」から、

 冠動脈を含めた動脈が拡がるのは、血管壁を構成する三層構造の真ん中にある中膜のはたらきです。中膜は主に伸び縮みしやすい平滑筋や弾力繊維から成り立っており、弛緩すれば血管は拡がり、緊張すれば収縮して狭くなります。

 中膜の平滑筋をコントロールしているのは、自律神経の交感神経と副交感神経です。しかし、交感神経と副交感神経以外の生理活性物質も、平滑筋を緊張させたり弛緩させたりします。

 生理活性物質のうち一酸化窒素(NO)は、血管の内膜を構成する内皮細胞から生じ、平滑筋を弛緩させて血管を拡張させることが知られています。何らかの原因で内皮細胞に障害が起きると、血管は十分に拡張しなくなります。それどころか平滑筋の緊張が高まって、血管が狭くなることもあります。・・・これが「異型狭心症」発症のメカニズムで、その多くは喫煙によって誘発されることが知られています。 (同書20-21頁)


 少し脱線してみると、この本の残念な点は、著者が古いタイプのタバコ有害説を信奉していることだろうか。このため、喫煙で摂取するニコチンの作用でこのような症状が起こることがあるとしているようだ。

5/5追記:ニコチンの作用について、次のような理解をしているらしい。

 ニコチンは、交感神経を興奮させる強力な血管収縮物質です。タバコを吸った直後に血圧が上がり、手足の温度が下がるのは、ニコチンで全身の動脈が収縮するためです。
(前掲書110頁)


 実際にはニコチンの作用はそれほど単純ではなく、臓器によって異なっていることが最近は明らかになってきている。日本薬学会のサイトから、

 明らかにされてきたニコチンの血管作用
http://www.pharm.or.jp/hotnews/archives/2003/08/post_28.html (2003.8月の記事か?)

 タバコの主成分のニコチンは,喫煙によって肺から吸収され血液中を循環する. ニコチンでよく知られているのは実験動物に静注すると血圧上昇が起こることである.この作用は自律神経を介したもので, 交感神経節のニコチン性受容体を刺激し交感神経の興奮を起こす.しかし,ニコチンは血管に直接作用させると血管を開く(弛緩)作用があり, 最近,その仕組みがわかってきている.脳の血管(豚,猫,犬)では,ニコチンによって血管弛緩が起こる. この作用を起こすには血管を取り巻く神経が必要で,その神経は一酸化窒素(NO)を神経伝達物質とする. ニコチンはこの神経に働きNOを遊離して血管弛緩を起こす.・・・


 分子生物学レベルでみれば、サイト「ストレスと自律神経の科学」から、

アセチルコリンとアセチルコリン受容体 ~副交感神経を中心に~
http://hclab.sakura.ne.jp/nerve_phis_parasympathetic.html

アセチルコリン受容体 (アセチルコリンレセプター)
 迷走神経(副交感神経に属する)の終端より放出されたアセチルコリンの受容体が心臓にあることがわかっています。アセチルコリンがこの受容体に結合することで、心臓の活動が抑制され、拍動が遅くなります。その一方、運動神経と骨格筋の接合部でも、アセチルコリンの放出とその受容体があることが分かっています。こちらは、アセチルコリンが受容体に結合することで、骨格筋である横紋筋(おうもんきん)が興奮し収縮することがわかっています。つまり、アセチルコリンは心臓の細胞活動を抑制し、その一方、骨格筋を興奮させています。このようにアセチルコリンの作用は臓器によってまったく異なっており、アセチルコリン受容体は複数種類あることが推測され、実際にそれが確認されています。

  [中略]

ニコチン性アセチルコリン受容体 (ニコチン受容体・ニコチンレセプター)
 その名前の通り、ニコチンがアセチルコリンと同様の効果を示す受容体です。・・・


 上記によれば、ニコチンは神経伝達物質の一種であり、骨格筋では交感神経を緊張させるが(血管を収縮させる方向)、脳や心臓では副交感神経を刺激し活動を抑制方向に作用するとされている(血管を弛緩させる方向)。

 この理解のほうが実感にあっているのではないだろうか。多くの人は一服するために喫煙し、傍から見ていてもリラックスしているように見えるので(仕事をさぼっとるから当然か?)、やはりニコチンの作用で交感神経が緊張するのみというのは違和感があるのではないだろうか。

 個人的には、タバコに関しても安保 徹氏の言説を支持している。タバコは少量であれば有益だろうというものである(10本程度が境目かどうかはよくわからないけど・・・。また、3.11後は非汚染のタバコは少なくなっていることだろう)。他力本願でいくと、ブログ「アンタッチャブル 911」の記事から、

たばこの害に異議あり
2011年01月21日
http://untouchable911.seesaa.net/article/181794473.html

 ちなみに、僕は日に10本ほど吸っています。何故か?免疫学の先生の本より抜粋します。「自分ですぐにできる免疫革命」安保徹ーこの本、お奨めです。

 「タバコは肺がんの原因とされているが、実際に肺がんが増えているおもな原因はタバコではないと考えられる。、、、ニコチンは副交感神経を刺激し、リンパ球を増やす作用をしますが、タールなどは逆に顆粒球を増やすという反対の作用をする。、、、、いい作用と悪い作用の境目は一日十本程度までで、それ以上吸うと悪影響のほうがどんどん大きくなる、、、。沖縄の100歳以上の長寿者でタバコを吸っている人は、のんびりとした暮しの中でタバコも嗜好品として楽しみで吸っているので、一日せいぜい十本程度です。、、、、」抜粋終わり。 (強調は引用者)


 少量のタバコに何らかのストレスを除去する効果がありそうな点は、次のエピソードが示していると個人的に感じている。サイト「武田邦彦(中部大学)」の記事から、

知の侮辱(8)・・・副流煙(結論が先にある罵倒合戦)
***http://takedanet.com/2012/02/post_d70b.html

 日本に住む誇るべき民族:アイヌは平和を愛し、戦争をしなかった民族ですが、人間が戦争をしないというのはかなり大変なことで、それを達成するためにアイヌはタバコを愛しました。ケンカをしそうになると相手にタバコを勧め、一服して争いを収めたのです.


 本題に戻ると、異型狭心症の一般的な解説については、例えば、東大医学部附属病院のサイトの記事が参考になるだろう。

異型狭心症
http://plaza.umin.ac.jp/~utok-card/info/03.html


 これによれば次のように、誘発因子として「心身の疲労・ストレス」が含まれているので、●の影響由来の酸化ストレスもこの場合に含まれるとして理解してよいと思われる。

治療について
  [中略]

 誘発因子として、心身の疲労・ストレス、喫煙、怒責、寒冷、過換気、女性ホルモン欠乏(更年期など)、アルコールなどが、あります。


 ついでに、異型狭心症も命にかかわる事態になることもあるので(心室細動や心筋梗塞に発展した時)、当然注意が必要であろう。3.11前のエピソードだけど、サイト「怖~い病気のお話」の記事から、
 
怖~い病気のお話 - 異型狭心症
2008 05-07
http://blogpress6.blog111.fc2.com/blog-entry-29.html

・・・胸に重石を載せられたような痛みは、病の始まりを告げる最初のサイン。この時、ストレスによって異常をきたしていた心臓の冠動脈は、過剰に縮んでいたのです。そのため、心臓の筋肉に血液が届かず、酸素不足に陥っていました。しかし、冠動脈は数分後には元に戻ってしまうため、痛みはウソのように消えてしまったのです。これが異型狭心症の恐ろしさ。すぐに痛みが治まるため、多くの人が「たいしたことはない」と思い込んでしまうのです。こうして症状は次第に悪化。そして極度の酸素不足に陥り、異常な動きが生じてしまう心室細動によって死に至ってしまったのです。・・・ (強調は引用者)


 前回もあわせて考えると、●の影響に一酸化窒素の不足が関与するというのが正しいとすれば、酸化ストレスの亢進により体質によって、全身の多くの部分で一酸化窒素が不足するようであれば血管が拡張しないため高血圧の傾向にとなり、心臓の冠動脈付近でで一酸化窒素が不足するようであれば酸素不足を経由して胸痛の傾向になるということかもしれない。

 

・5/19追記: この著名人も異型狭心症だった可能性があるということらしい。

天海祐希「心筋梗塞」45歳スリム女性がなぜ?三谷幸喜の舞台に緊張
2013/5/9
http://www.j-cast.com/tv/2013/05/09174663.html

・・・天海は身長171センチでスリムな体型。心筋梗塞とは無縁のようにみえるが、健康院クリニックの折茂肇名誉院長は原因について、「ストレスや過労だと思う。緊張状態が続くとよくない。血管を収縮するような物質が出て、血管が詰まってしまうのです」という。・・・

コメント

高血圧の増加には一酸化窒素の不足が関与しているのか?

2013年05月01日 |  関連(生物学医学)

 最近読んでいる本に関連し、短くメモしておこう。

 ●の影響によって高血圧が増えるとされている。

 チェルノブイリでの事例は以前に触れた気がするので省略して、3.11後の疑われる事例については、他力本願でいくと例えば、4/30のNHKニュースを紹介したブログ「低気温のエクスタシー byはなゆー」の記事から、

原発事故後の岩手県で「高血圧」「肥満」が目に見えて増加
2013年4月30日火曜日
http://alcyone-sapporo.blogspot.jp/2013/04/blog-post_9946.html


 高血圧の原因はいろいろあると思うけど、一酸化窒素(NO)の不足が関与している可能性があるだろう。小坂眞一 著「心臓病の9割は防げる」(講談社、2008.10月)の一節から、

・・・動脈硬化のない抗常な動脈では、血管内皮細胞から中膜の平滑筋に働く血管拡張物質の一酸化窒素(NO)などが分泌されますが、喫煙や高血糖や高LDLコレステロール血症や高中性脂肪血症などによって起こるなどの酸化ストレスによって傷害を受けた内皮細胞からは、十分なNOが分泌されません。このために動脈が十分に拡張せず、血管抵抗が上がって血圧が上昇するのです。 ・・・ 正常な血管内皮細胞はNOの他に、細胞上に血栓ができるのを抑制するトロンボモジュリンというタンパク質を出しており、内皮細胞傷害ではトロンボモジュリンが減少することも心筋梗塞の主因であるアテローム血栓症を起こす原因と考えられています。」(同書52頁。強調は引用者。なお、後半の血栓関係は「おまけ」)


 一酸化窒素(NO)の不足を招く要因は、次の二つがあると考えられる。上記の引用では、前者のみに言及されている。

●の影響 →酸化ストレスの亢進 →血管内皮細胞傷害 →NOの分泌不調
          │
          └─────→NOが活性酸素と反応して減少
         (反応生成物ペルオキシナイトライト自体が毒性の高い活性酸素)


 このあたりを理解するための一酸化窒素(NO)の詳しい解説については、例えば、サイト「脂質と血栓の医学」の記事が役に立つと思われる。

一酸化窒素(NO)
http://hobab.fc2web.com/sub2-no.htm (長いので冒頭のみ引用)

1.NOとは
 NO(Nitric oxide)は、血管内皮細胞から産生され、血管内皮機能を調節している。
 血管内皮細胞から産生されるNOには、血管拡張作用(降圧作用)、血小板凝集抑制作用(抗動脈硬化作用)、単球などの白血球が血管内皮細胞に接着したり内皮細胞下組織に浸潤するのを防ぐ作用、血管平滑筋細胞の増殖を抑制する作用、などがある。 ・・・

コメント

「コルチゾール過剰症候群」とステロイド剤の副作用 (8-2)

2013年04月24日 |  関連(生物学医学)

(8) 消化性潰瘍 (つづき)

 前回記事(ココ)のおさらい。顆粒球原因説について安保 徹氏の解説をサイト「アトピー・ステロイド情報センター(ASIC)」から、
 
再び、胃潰瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチについて(前編)
http://atopy.info/essay/8.html

* 胃潰瘍学説の検証

 胃潰瘍の成因を「顆粒球説」とすると、すべての胃潰瘍の成り立ちを矛盾なく説明できる。ストレスの持続(精神的なものも身体的なものも含む)→交感神経緊張→血流障害と顆粒球増多→粘膜障害である。 このような簡単な理論で胃潰瘍の成因を説明できるのであるが、これを納得させる最も単純な事実は、病理標本で見ると胃炎の粘膜や胃潰瘍の周囲には多数の顆粒球が浸潤しているということである。特に急性炎症にこの傾向がはっきりする。


(C) コルチゾールが関与する際の成因

 (B)で一般的な成因をみたので、ステロイド剤の副作用で消化性潰瘍が起こる機序についてみておこう。一般的には、次のように考えられているのだろう。キョーリン製薬のサイトから、

薬剤による胃潰瘍(ステロイドを含め)
http://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/journal/upload_docs/120556-1-01A.pdf (pdfファイル)

林田: [ステロイド性胃潰瘍]の発症の機序はいかがでしょうか。

吉川[望海氏(昭和大学内視鏡センター長)]:ステロイドに関しましては、仮説でしかないのですけれども、リン脂質にエステル結合したアラキドン酸が遊離する段階で作用するホスホリパーゼA2をステロイドが阻害して胃粘膜のプロスタグランジンが減少する。そのために胃粘液の分泌が減少して、胃液あるいはペプシンに対する粘膜の抵抗性が弱まって防御作用が弱くなり、そこにステロイドの胃酸分泌促進作用が加わってステロイド性胃潰瘍が発症するという仮説があります。

 また、ほかの考え方といたしまして、投与されたステロイドホルモン、ステロイドホルモンというのはコレステロールでもあるわけですけれども、その一部は生理的なものとして普通は尿から排泄されますが、外から投与されたものは、多くは体の中に停滞して酸化コレステロールになって、その酸化コレステロールが微小血流障害と顆粒球の増多を起こして組織を傷害して、ステロイド性胃潰瘍を発症させるという考え方もあります。
 

 前者は、胃粘液減少・胃酸過多が原因とする説で、胃酸原因説の一種とみられる。後者は、血流障害と顆粒球増多からくるとするもので、顆粒球増多原因説の一種と言えるだろう。

 まず、後者からみていこう。「酸化コレステロール」が登場するけれど、これは、ステロイド剤の化学構造はコレステロールの骨格を持つので代謝が難しいとされ、自然と蓄積していく傾向があり、また、体内にとどまれば自然酸化などのため酸化コレステロールに変性していくこととなるためである。この酸化物は、周辺組織に悪さをすると考えられている。サイト「社会問題研究会」(http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/)から、

病気を難治化させるステロイド剤
http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/iryou/iryou200suteroido.htm

 ステロイド剤もコレステロールと同じしくみで悪玉に変化します。使い始めたばかりのころは体外にステロイドを排泄できるので、消炎効果だけを得ることができます。たとえばアトピー性皮膚炎に外用で使用した場合、初めのうちは消炎作用が発揮され、皮膚はものの見事にきれいになります。
 ところが、そのまま年単位でステロイド剤を使い続けると事態は変わります。ステロイド剤は徐々に体に蓄積され、やがて酸化コレステロールに変化して周辺の組織を酸化し、新たな皮膚炎を起こすようになるのです。体内で酸化が進むと交感神経の緊張が強くなり、穎粒球の増加による組織破壊も進行して炎症は悪化の一途をたどります。 (強調は引用者)


 また、コルチゾール、あるいはステロイド剤自体に全身での顆粒球増多を招く作用がある点を指摘しておく必要があるだろう。この点については、また別の機会に(確か、(15)で扱うことになっていたはず)。


 次に、前者をみてみよう。コルチゾール、あるいはステロイド剤は交感神経の緊張を招くので、副交感神経に支配されることの多い分泌作用は、通常低減することとなる。この例の一つが胃粘液の分泌であろう。しかし、胃酸の分泌はこれとは逆方向となっている。

 このようにコルチゾールが胃酸分泌促進作用を持つ理由は、コルチゾールによる免疫抑制を補うためのものと考えられる。コルチゾールの作用の一つには、体内でのエネルギー消費の抑制を目的として免疫抑制作用がある(関連の過去記事はココ)。免疫系の多くは腸管で働いているとされており、免疫抑制があれば、腸管での感染防御が手薄になることとなる。

 他方、コルチゾールの分泌はフリージング(すくみ)反応を誘導するためであり、これは次の闘争・逃走反応のための準備という意味がある(関連の過去記事はココ)。闘争・逃走反応の際には活動量が多くなり、必然的に呼吸量も多くなる。このため、呼吸器系(肺)にいかずに消化器系(胃)の方へ紛れ込む細菌などの異物が多くなりものと考えられる。つまり、コルチゾールが分泌される時には、まもなく感染機会の増加が予想される状態にあると理解できる。

 腸管防御機能の低下がある下で感染機会の増加はやはりまずいということになれば、これを解消するためには、胃における感染防御機能を強化しておく必要があるということになるだろう。胃における感染防御の手段の一つは、強酸(胃酸)によって処理するというものである。


 ●の影響の場合、消化性潰瘍の成因には、別の経路もあるだろう。顆粒球原因説では、顆粒球が持っていた活性酸素が組織破壊を招くものとされている。高濃度に汚染されたものを「食べて応援」しているような場合には、食物に取り込まれていた放射性核種を含む粒子自体が十分な活性酸素の発生源となり、顆粒球を経由せずとも顆粒球の場合と同様な結果を招くものと考えられる(直接粘膜破壊原因説。2011年3月には宮城で出血性潰瘍が多かった点(末尾の関連記事参照)は、この影響かもしれない)。
 

 最後におまけで、組織障害時におけるコルチゾール(あるいはステロイド剤)の役割について理解を深めておこう。サイト「アトピー・ステロイド情報センター(ASIC)」から、

再び、胃潰瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチについて(後編)
http://atopy.info/essay/9.html

* 痛みや炎症反応の正しい病態把握

 ステロイドホルモンやNSAIDsを長期使用することによって、炎症が悪化するメカニズムを述べてきたが、これを正しく理解するためには痛みや炎症がどのようにして生じているかをも理解する必要がある。・・・このような血流障害や組織障害の極期は、その局所や全身が交感神経緊張状態になっている。

 この血流障害や組織障害の部位には顆粒球が集まってきて破壊された組織を取り除く働きをするが、この過剰反応は自ずからの組織を自分でさらに傷つけることになる。そして、生体がこのような状態から逃れようとする反応が次に引き起こされる。つまり、副交感神経反射あるいは治癒反応である。この時、プロスタグランジン、アセチルコリン、セロトニン、ヒスタミンなどが分泌され、血流が回復し組織の治癒が進む。しかし、これらの物質は血管拡張や発赤や痛みを生み出し炎症として,私達の目に留まる。

図2 ステロイドホルモンやNSAIDsは病気の治癒にどのように関与しているのか


 このような反応が十分起こると、組織は修復され正常あるいは健康な状態に戻る。しかし、この副交感神経反射が強く起こり過ぎた時は、「虚血後再巻流」とも呼ばれる反応となる。上記した反応である。したがって、この治癒反応をゆっくりと進める意味で、ステロイドホルモンやNSAIDsの使用は意味を持っている。・・・


 組織障害の際に交感神経の緊張と顆粒球増多がセットで観察される理由が上手く説明されていると思われる。コルチゾール(あるいはステロイド剤)は、副交感神経が支配する各種の分泌作用を抑制することとなり、交感神経の緊張状態を維持する方向に作用するわけである。治療にステロイド剤を使ったとしても、何かを根本的に治すというものでないことがよく理解できるのではないだろうか。


〔関連記事〕
宮城での出血性潰瘍が増加 2011.3-6月  2012/5/29
連続性のある慢性型ストレスの影響  2013/2/20
放射線療法の副作用との類似性 (4) 症状のまとめ  2012/6/11

コメント

ビタミンCの摂取と体内のコルチゾール

2013年04月23日 |  関連(生物学医学)

 手抜きで短く。

 前回記事(ココ)で、笑いとコルチゾールの関係が出てきたけど、今回はビタミンCとの関係について、メモしておこう

 
 ビタミンCの摂取については、3.11後の対策としていろいろな記事をみかける。例えば、ブログ「内科医による新時代の健康革命」から、

放射線に負けない生き方⑥~ビタミンの効果
2011-04-14 12:14:42
http://ameblo.jp/lisalisanet/entry-10852666519.html

 ビタミンCは、私たちの体を健康に保つために不可欠な栄養素です。
もちろん、その抗酸化効果で放射線障害から身体を守ることも報告されています。
過去に受けた放射線障害も改善してくれると言われています。
他の抗酸化物質を補助する効果がありますので一緒にとっておくことで相乗効果が期待できます。・・・

 少しマニアックになると、同ブログ及びサイト「サプリメントで放射能対策」から、

日々の食卓で足し算の抗酸化力
2012-03-22 14:00:34
http://ameblo.jp/lisalisanet/entry-11200218316.html (ビタミンCが体内で酸化防止に役立つことを示唆する図あり)

ビタミンC  放射線防護/放射能防御
http://sapuri-houshanou.seesaa.net/article/220594830.html (多分、富永國比古 著「放射性物質から身を守る食事法」からの引用)


 噂話でみかけたのだと、効果のほどは定かではないが、福島でこんな実験をしている人々がいるらしい。多分ビタミンCのことだろう。ツイッターから、

さくらこママ @murasakitutuji
福島では人体実験とも思われるようなことが行われています。 高濃度ビタミンを摂った人と摂らない人の比較が観察 されているのです。摂った人は、癌細胞が消えましたが、 摂らなかった人は増えました。(森田さん)
2013/02/27


 ●の影響にビタミンCが何らかの効果があると仮定し、コルチゾール過剰原因説(関連記事はココ)に立つと、ビタミンCを摂取した場合、体内のコルチゾールが下がると考えられる。実際にそのような低下を確かめた例があるようだ。

 1日あたり0.9~1.2グラム相当のビタミンCを摂取したところ、体内のコルチゾール濃度が低下したらしい(平均16%減)。「青山皮膚科クリニック」のサイト(http://aoyamahihuka.com/)の資料から、

Dr.亀山のトータルビューティー・コラム 第29回
VCはストレスの指標であるコルチゾールを低下させ、多幸感の指標であるエンドルフィンを増加させます
http://aoyamahihuka.com/column/column29.pdf (pdfファイル。以下は同資料の2頁から)





 チェルノブイリの例をみれば、ビタミンCが万能薬でないことは明らかだが、多少の軽減効果はありそうである。

コメント

脂肪分解促進物質の過剰と糖尿病・動脈硬化などの疾患

2013年04月13日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:4/14図の追加〕


 ちょっとサボリ過ぎたので、リハビリを兼ね予定を変更して、ググッていてみかけた記事をメモしておこう。少し古い話だけど、コルチゾール過剰原因説(過去記事はココ)に関連する話である。

 脂肪分解を促進するある特定のタンパク質(AIM。Apoptosis Inhibitor of Macrophage。無理に訳せば「マクロファージ自殺死阻害剤」か?)が体内で過剰になると糖尿病や動脈硬化になりやすくなるらしい。日経記事から、

太っても動脈硬化にならず、特定たんぱく質解明 東大教授ら
2011/7/5
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0500K_V00C11A7CR0000/

 東京大の宮崎徹教授らは、太っていても特定のたんぱく質が働かないと、糖尿病や動脈硬化にならないことをマウス実験で突き止めた。・・・

 体内では「AIM」というたんぱく質が働き、脂肪細胞にため込んだ脂肪を分解している。研究チームはAIMができないマウスを作製。高いカロリーの食事を与えて肥満にしても、糖尿病や動脈硬化が起きなかった。

 通常のマウスはAIMが脂肪を分解し、免疫細胞を呼び寄せる。免疫細胞が炎症性物質を作り、この状態が続くと糖尿病や動脈硬化に進む。AIMがないと、この流れが断ち切られる。・・・


 上記記事の詳細については、プレスリリースと解説記事を東大のサイトから、

肥満から糖尿病や動脈硬化への橋渡しメカニズムを解明
(2011/7/5掲載)
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/2011press.html#20110705
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/admin/release_20110705.pdf (詳細はpdfファイル。以下に一部引用)

3.発表内容:

   [中略]

 発表者[(宮崎 徹 (東京大学大学院医学系研究科附属 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門・教授)]らは[2010年]、肥満に伴いAIMの血中濃度が上昇し、脂肪組織に蓄積した中性脂肪を分解することによって、からだ全体の肥満の進行を妨げることを明らかにしていた (文献2)。おそらく肥満が進行すると、からだがAIMを沢山作り、脂肪滴を溶かすことによって、これ以上太るな、という反作用を起動するようになるのであろうと推察される。

 今回の研究では、こうしたAIMの抗肥満作用を上回る食生活の乱れなどにより肥満が進行してしまい、血中にAIMが多量に存在する状態では、AIMによる中性脂肪の分解により脂肪細胞から多量の脂肪酸が放出され、それが脂肪細胞表面にあるToll様受容体(注2)の一つを刺激することによって、脂肪細胞自身が、マクロファージを呼び寄せるケモカイン(注3)というタンパク質を産生していることが明らかになった。すなわち、マクロファージを脂肪組織に呼び寄せ炎症を惹起し生活習慣病の引き金を引くのは、肥満して大量に蓄積した中性脂肪を、大量のAIMが分解することなのである

 実際、AIMを作れなくしたマウスに高カロリー食を与え、過度に肥満させても、脂肪組織にマクロファージはほとんど浸潤しない。そのため、慢性炎症も起こらず、結果的に糖尿病も発症しない(文献3)。動脈硬化についても、AIMを作れなくしたマウスでは、発症や増悪が著しく抑制されることを、発表者らはすでに報告している(文献4)。したがって、血中のAIM濃度が低いメタボリックシンドロームの初期には、AIM自身により肥満を抑制し得るし、肥満が進行して血中AIM濃度も高くなってしまい、糖尿病や動脈硬化の危険性が高くなっている状況では、AIM阻害剤を用い、肥満からこれらの病気への橋渡しを阻止できると考えられる。

  [中略]

 7.用語解説:

(注1)AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage):
 当初マクロファージから分泌され、細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制する分子として発表者が発見したもの。その後の研究で、アポトーシス抑制以外にも作用する細胞の種類などの違いにより様々な作用があることが明らかになった。

(注2)Toll様受容体(Toll-like receptor: TLR):
 リンパ球を中心とした獲得免疫に対し、いわいる自然免疫において中心的な役割を果たす、免疫細胞や脂肪細胞の細胞膜上に存在する分子である。刺激されると、サイトカインやケモカインの遺伝子発現を促し、炎症の惹起に寄与する。現在9種類のToll様受容体が見つかっており、脂肪酸は主にTLR4を刺激することが分かっており、脂肪細胞はTLR4を発現している。

(注3)ケモカイン:
 血液細胞や脂肪細胞を始め様々な細胞によって産生される液性タンパク質。マクロファージやリンパ球など、ケモカインの受容体を有する細胞を組織に呼び寄せる働きを持つ。多数のケモカインが見つかっており、今回の報告にある、脂肪細胞によって産生されるケモカインは、主にマクロファージを呼び寄せる働きを持つものである。  (強調は引用者)


図 脂肪組織の肥満進行から慢性炎症が起こるプロセスとAIMの関与
注) 「lypolysis」は脂肪分解の意味。「TLR4」はToll様受容体(前出の注2)の一種。
出典) 前出pdfファイルの資料4頁。



肥満になっても、いいの?
2011/11/09
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/editors-choice/obesity-in-their-sights/

 東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授らは、血中に多く存在するAIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)というタンパク質が、炎症の根本的な原因となっていることを突き止めました。

 実は、AIMには脂肪細胞中の中性脂肪を分解する性質があります。つまりAIMは肥満を防ぐ役割を持つタンパク質なのです。AIMの働きを超えて太り続けてしまう状態は、ちょうど車のブレーキをかけながら同時にアクセルを踏み続けているようなものです。肥満にブレーキをかけるためAIMがどんどん増加し、やがてAIMの血中濃度がある値を超えると炎症が起こり、その炎症が全身に波及する結果、生活習慣病が発症するのです (強調は引用者)



 以上をまとめると、次のような経路があるのであろう。

肥満 →血中AIM濃度の増加 
→更なる肥満進行による血中AIM濃度の過剰 
→血中への脂肪酸の多量放出 
→脂肪細胞によるケモカイン(マクロファージ遊走活性物質)産生・放出 
→炎症(マクロファージの呼び寄せ・浸潤)
→全身に波及し糖尿病・動脈硬化へ

 この理解によれば、脂肪分解促進作用を持つ物質が過剰になることがあれば、AIM以外の物質であっても類似のこと起こり得ると考えられる。


 チェルノブイリの例によれば、糖尿病や動脈硬化が増加したとされている。実際、福島でもこのような傾向がみられるようだ。福島県の調査によれば、避難区域等の住民において、肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常の割合が増加している(関連過去記事はココ)。

 また、コルチゾールの主な作用の一つは、脂肪分解促進作用である点が思い出される(関連過去記事はココココ)。


 AIMの場合は、体内での濃度の増減が肥満と密接に関連しているらしい。コルチゾール過剰原因説によれば、コルチゾール濃度の増減が●の影響の程度と密接に関連しているはずなのだが、果たして・・・

コメント

肺がんタバコ原因説は正しいのか?

2013年04月05日 |  関連(生物学医学)

〔更新履歴:5/19追記〕


 ピロリ菌が濡れ衣を着せられている可能性もあるので、少し整理しておこう。今回は手抜きで、他力本願にて前置きその1。

 先ずは何故か、タバコと肺がんの関係から。

 個人的には武田邦彦氏(中部大学教授)の言説が正しいのではないかと感じており、紹介しておこう。武田説の要旨は、彼の公式ブログ「武田邦彦 (中部大学)」の記事から、長いので結論だけ引用しておくと、

4大原因を考える・・・ディーゼル、核実験、レントゲン検診、そしてタバコ
平成24年4月19日
http://takedanet.com/2012/04/4_0bdc.html

 つまり、タバコが肺がんの一つの原因になるのは確かですが、これらのデータを見ると、統計的にもはっきりとした傾向の見られるものの方が肺がんへの影響は強いと考えるのが科学的には普通です。

 つまり、肺がんの原因は、第一に被曝(核実験と検診)、第二にディーゼル排ガス、そして第三にタバコと考えられます。タバコの副流煙などほとんど無関係と考えられます。 (強調は引用者)


 彼のブログにはタバコ関連の記事はかなり多いが、冒頭記事を理解する上で参考になりそうなものを時系列で挙げておくと、

タバコを考える パート7 データの真実
平成22年5月16日 http://takedanet.com/2010/05/post_decd.html

 女性はこの45年間でほとんど喫煙率は変化していない。しかし、肺がんは8倍になっている。つまり、「喫煙率が変わらなくても、平均年齢が上がっただけで肺がんは8倍に増える」としよう。

 1965年から2009年までの平均寿命の伸びは、女性と男性でほぼ同じ。

 45年間で喫煙率の変わらない女性は肺がんの死亡率が8倍。同じ45年間で喫煙率が2分の1になった男性も肺がんの死亡率が8倍。つまり、喫煙率が変わっても年齢によって肺がんになる可能性は等しいということになる。

 従って、タバコを吸って致命的な肺がんになりやすいという話は、少なくとも全体統計からは事実とは違うということになる。


奇っ怪な結果?? タバコを吸うと肺がんが減る?!
平成24年3月16日 http://takedanet.com/2012/03/post_b49e.html

タバコ・・・中間まとめ(感情的対立の原因)-1
平成24年3月18日 http://takedanet.com/2012/03/post_80c8.html

タバコ・・・中間まとめ(感情的対立の原因)-2
平成24年3月20日 http://takedanet.com/2012/03/post_bdce.html


 ついでに、冒頭記事以降に書かれた記事で参考になりそうなものは、

タバコは吸った方が良いか、禁煙運動かのトリック(解説編)
平成24年4月22日 http://takedanet.com/2012/04/post_98c2.html


タバコと健康をゆっくり考える(新しい1) 数字と論理
平成24年4月28日 http://takedanet.com/2012/04/post_8f48.html

 「外出しなければ交通事故に遭わない」(タバコを吸わなければ肺がんになりにくい)は良いのですが、「だから外出してはいけない」(だからタバコを吸ってはいけない)という表現はこのような整理をする限り不適切であることがわかります。また「交通事故の原因は外出だ」(肺がんの原因はタバコだ)は良いのですが、「外出すると交通事故に遭う」(タバコを吸うと肺がんになる)も不適切です。

 タバコについて、かなり整理が進んだと思いますが、「人間にとって外出も大切だから、交通事故に注意しよう」と言うぐらいが適切とすると、タバコも同じぐらいの確率ですから「気分転換にタバコも良いが、吸い過ぎには注意しよう」ぐらいが妥当と言うことになります。


 以上の記事を読むと、肺がんの主な原因はタバコである、あるいはそのように示唆する主張(肺がんタバコ原因説)は、かなり問題があるらしいことがわかるのではないだろうか(なお、ここでは、タバコが肺がん以外の呼吸器疾患の原因となる点は別問題との取り扱い)。

 武田説は、肺がんの主な原因としてタバコだけが過剰に注目されていることを疑問視するものといえるだろう。この観点から肺がんタバコ原因説(これが世間の一般的な現状認識だと思うが)を評価すれば「肺がん原因タバコ生贄状態ともみることができるだろう。

 武田氏が原因の一つと指摘する項目の関連国・業界を考えてみると、被曝(核実験とX線検査)は核保有諸国(大所は某機関の常任理事国でもある)と医療業界、ディーゼル排ガスは自動車業界、タバコはタバコ業界(主にタバコ製造メーカー、タバコ農家だろうか)となるだろう。これらを「腕力」の弱そうな順で並べると、最初にくるのはどこだろうか。

 
 しかし、政府は、肺がんタバコ原因説を堅持しているようで、新たな政策を進めていくようだ。

病院に「たばこ相談員」 厚労省、禁煙促す - がん拠点病院397カ所に
2012/9/5
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0404O_V00C12A9CR0000/

 厚生労働省は5日、禁煙に関する電話相談や病院紹介などを実施する「たばこ相談員」を来年度から全国の病院に配置する方針を固めた。禁煙を促し、2022年度までに喫煙率を12%に引き下げる政府目標の達成を目指す。費用として来年度予算概算要求に1億6千万円を計上した。同省は「がん予防だけでなく、健康対策につなげたい」としている。

  [中略]
 喫煙率について、政府は今年5月に閣議決定した、今年度から5年間の目標となる「がん対策推進基本計画」に数値目標を初めて明記。10年に19.5%(男性32.2%、女性8.4%)だった喫煙率を、22年度までに12%に引き下げる目標を掲げている。

 たばこの煙には数十種類の発がん物質が含まれ、肺がんなどのリスクを高めるとされる。厚労省によると、本人の喫煙が影響した10年の死亡者は12万~13万人と推計されている。


病院に「たばこ相談員」 禁煙を後押し 
(2013年3月25日)
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20130326134638345

がんリスクの火消し役に 国が配置へ

 厚生労働省は、禁煙を支援する「たばこ相談員」を、2013年度から各地のがん診療連携拠点病院に順次配置する方針を決めた。国による相談員の配置は初めて。喫煙は肺がんや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)のリスクを高めるとされ、禁煙支援を通じて国民が健康に生活できる「健康寿命」を延ばしたい考え。
  [中略]

 厚労省の担当者は、相談員の配置対象をがん診療連携拠点病院とした理由について「がんと関連付けながら専門的、効果的に相談や支援に応じられる」と説明、「一人でも多くの禁煙につなげたい」と話している。


 仮に武田説が正しいとすれば、この取組みは何か別の意図をもって推進されているということかもしれない


 さて、肺がんタバコ原因説を推進しているのは、誰だろうか。歴史的経緯はよく知らないが、最近ではこのあたりが出発点となることが多いのではないだろうか。「がんサポート情報センター」の記事から、

ここまでわかった「胃がんの原因は本当にピロリ菌?」
2010年08月号
http://www.gsic.jp/cancer/cc_02/pylori/index.html

ピロリ菌感染を確実発がん因子とWHOが認定

1994年、ピロリ菌感染は胃がんの確実発がん因子であると世界保健機関(WHO)によって認定されました。最高の危険性を示す「グループ1」に分類されました。強力な発がん性で知られるタバコやアスベストと同じ分類です。・・・ (強調は引用者)


 かの機関では、タバコとピロリ菌は、似たような扱いらしい。

 

・5/19追記: タバコの有害性に関する各種のデータについては、ブログ「大切なものを大切に☆彡」の次の記事が参考になりそうだ。

タバコは”百害あって一利無し”って本当?~①驚くべき薬効の数々
2010.11.15 Monday
http://hanbey8.jugem.jp/?eid=206

タバコは”百害あって一利無し”って本当?~②有害データはヤラセのイカサマ
2010.11.19 Friday
http://hanbey8.jugem.jp/?eid=207

タバコは”百害あって一利無し”って本当?~③いったい何が有害なの?
2010.11.22 Monday
http://hanbey8.jugem.jp/?eid=208

コメント

連続性のある慢性型ストレスの影響

2013年02月20日 |  関連(生物学医学)

[更新履歴:2/21ちょっと追加など]

 暇潰しで読んだ本から一節をメモしておこう。他の部分は余り参考にならないのだが、野本亀久雄 著 「免疫力」(ダイヤモンド社、1998年11月)から、

…ストレスにもその中身の違いや刺激の強さの度合い、それに連続的か断続的かといった差があり、それによって生体の反応も影響力も異なってくるからです。

 たとえば思いがけない形で、何の予告もなしに突然来るストレスは、そのとき受ける心や体のゆがみは決して小さくないのですが、一過性であることがほとんどですから、復元力があればそれほどのダメージは受けません。

 ところが、し細なストレスでも、慢性病のように連続的に刺激が続くと、ダメージが積み重なる可能性がある。気をつけるのはむしろ連続性のある慢性型のストレスのほうであるかもしれないのです。 (同書123頁)

 ここで念頭に置くべきは、●の影響による酸化ストレスあろう (関連の過去記事はココ)。


 それに続く一節は、

 また、ストレスには適度で有効なストレスと、過度で弊害が予想されるストレスとがあります。ストレスと生体防御の関係は、さまざまな研究が行われていますが、病気との関連では次のようなことがわかっていま

 一つはストレスと胃潰瘍の関係です。大した刺激でなくても持続的なストレスを受け続けると胃潰瘍になる。動物実験では次のような例があります。

 動けないようにしたサルの頭部に水滴をたらし続けると、サルはそのストレスに耐えかねて胃潰瘍になってしまうのです。頭に水滴がかかっても、一回や二回ならほとんど気になりません。しかし、持続的に行われると強いストレスになってくる。似たような実験はラットでも確かめられています。

胃潰瘍は、生体内の促進因子と抑制因子のバランスが崩れることによって発症すると考えられます。胃潰瘍の促進因子は胃酸や蛋白質分解酵素のペプシンであり、抑制因子は胃の粘膜やホルモンなどです。ふだんはこれらが拮抗していますが、ストレスによって促進因子が勝ると胃潰瘍になるわけです。 (同書125頁。強調は引用者)

 上記で「適度で有効なストレス」は、生まれ育った土地での自然放射能の水準、「過度で弊害が予想されるストレス」は、それを大幅に超えて追加された放射能の水準とも理解できるだろう (この点について関連の過去記事はココ)。

 また、最初に問題化しやすいのは、胃潰瘍らしい。これで思い出す最近のニュースは、ハリウッドチャンネル株式会社サイト「クランクイン」から、

十二指腸潰瘍のモー娘。田中れいな「ストレスはバンドじゃない」とブログで言及
2013年02月10日
http://www.crank-in.net/entertainment/news/23167

また「もともと胃は弱くていろんな病気にはなってましたが今回ひどいかも」と過去にも症状があったことを明かすも、「知り合いから連絡きて十二指腸潰瘍って、おっさんか。って言われましたが、、そぉです。私、胃がおっさんなんです。笑」と明るく振る舞った。(強調は引用者)


 「胃がおっさんなんです」と語っているけど、おっさんには胃潰瘍が、若い人には十二指腸潰瘍が多いようなのだけど…。gooヘルスケアから、

胃・十二指腸潰瘍
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10G20900.html

胃・十二指腸潰瘍とはどんな病気か
 胃酸の影響を受けて潰瘍を形成するものを総称して消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)と呼んでいます。消化性潰瘍の代表は、胃潰瘍と十二指腸潰瘍です。
 胃潰瘍は、40歳以降の人に多くみられるのに対し、十二指腸潰瘍は10~20代の若年者に多くみられます。十二指腸潰瘍の患者さんは、過酸症(かさんしょう)であることが圧倒的に多いのですが、胃潰瘍の患者さんは、胃酸の分泌は正常かやや少なめの場合がほとんどといわれています。 (強調は引用者)

 粘膜の損傷については、過去記事(ココ)が参考になるはずで、胃酸の過多については、コルチゾール過剰の関連でそのうち書くこととしたい。


 なお、最近急性胃腸炎が増加しているようだけど、消化性潰瘍への道に入り込んだのなら、初期症状は胃炎か、あるいは胃酸が多い型なら逆流性食道炎ということが多いと考えられる。参考までに「たかぎクリニック」(愛知県所在)のサイトから、

胃炎・潰瘍・逆流性食道炎
http://www1.clovernet.ne.jp/mtakagi7/ikaiyou.html



 最後に、免疫力の低下と、前回記事(ココ)でも触れた動脈硬化の部分もみておこう。ちなみに「カテコールアミン」とは、この場合、アドレナリン(あるいはノルアドレナリン)とコルチゾールのことを指すのであろう。

 ストレスによって、生体防御力が低下したことを示す実験もあります。マウスに心理的なストレスを持続的に与え続けた実験では、T細胞、B細胞、NK細胞が明らかに減少、あるいは機能低下したことが確かめられています。

 また、ストレスがガンを悪化させるという動物実験もあります。マウスにある種のガンを植えつけて運動抑制ストレスを与えると、ガン細胞の増殖促進がみられた。ストレスによって生体防御が低下し、ガンの増殖が促進されたわけです。

 ストレスが引き起こしやすい病気の一つに動脈硬化があります。強いストレスを受けると出てくるカテコールアミンというホルモンは、末梢血管を収縮させたり、血液を凝固しやすくする作用があるので動脈硬化が促進されてしまいます。 (同書125-126頁)


  ●の影響の場合、連続性のあるものを断続的にするには、外部被曝なら転地療養が、内部被爆なら時間の経過が必要ということだろう (質の悪い核種の内部被曝であれば、ヒトの一生より長い「時間の経過」を必要とするのだが…)。

コメント

グロイブ & スターングラス著 「The Petkau Effect」

2013年02月04日 |  関連(生物学医学)

 手抜きで、短く。

 借りてきて本を読み始めたところ、酸化ストレスによる障害に関し記述があったので、メモしておこう。いわゆるペトカウ効果の本だけど、タイトルは、

The Petkau Effect - The Devastating Effect of Nuclear Radiation on Human Health and the Environment
Ralph Graeub and Earnest J Sternglass
(邦訳版:肥田舜太郎・竹野内真理訳 「人間と環境への低レベル放射能の脅威」(あけび書房、2011.6月。英語版第2版(1994年)の訳))


  同書の「VI章 第2版へのあとがき」部分から、

8 酸化ストレス

 最終的には、「酸化ストレス」という名の活性酸素障害の決定的な役割が、医学界と薬学会に確固として打ち立てられた事実によって、原子力の専門家たちのペトカウ効果の重要性に反する議論は、ついに否定されるようになった。・・・活性酸素はまた、電離放射線のない通常の状態で人間の健康に障害を与えるので、その制御が疾病の予防と治療のために有益な医療の発展のチャンスを与える。それにもかかわらず、原子力産業は電離放射線によって作られる酸化ストレスに対して関心をもたない。というのも、放射能は原子炉から少量漏洩するし、再処理工場からは環境と人間の健康に以前に信じられたより100倍も1000倍もの被害を与えるからである。残念なことだが、軍拡競争で産み出されたこの産業は、特に放射線生物学の分野では、依然として研究に優先順位付けの決定をしているようだ。 (同書255-2561頁)


 別の一節から、

10 活性酸素による生物学的障害

 [中略]

・・・細胞膜と細胞小器官は活性酸素が攻撃する主目標である。細胞の多彩な能力は、細胞膜の完全性と食細胞の運動性を含む機能に依存しいてる。食細胞は細胞膜が損なわれていない時、侵入するバクテリアに対して活発にふるまうことができる。細胞膜の完全性はが必要なその他の機能としては、細胞結合と細胞間の伝達である。これは免疫機能に強く影響を及ぼす細胞相互の認識と識別の過程を含んでいる 4,5。最近、シュミット(Schmit)は、「酸化した細胞の重要な結果として、免疫機能の損傷がある」ことを立証した 5。さらに、アラヒドン酸のような炎症を起こす媒介物質が、細胞膜の酸化を通じて作られる

 ある条件の下では、活性酸素は細胞膜、たんぱく質、細胞核内にある核酸に障害を与える。このタイプの障害は、細胞機能の障害を生じさせ、多くの疾病を引き起こすこともできること 5をシュミットその他が言及している。疾病には、動脈硬化、白内障の形成、心筋梗塞後の心筋への障害、認知症、ガン、肝臓、腎臓障害、炎症、免疫反応の障害、老化、慢性関節炎、多発性間接障害、肺疾患、喘息を含んでいる

 また、シュミットは「活性酸素を生成することで知られている外部因子には、放射線(紫外線を含む)、スモッグ、タバコの煙、アルコールなどの毒性のある嗜好品、様々な薬物や殺虫剤である」 5と言明した。 (同書257-258頁)


 約20年前、1994年の時点でここまで分かっていたのか、と感心したところ。

コメント

「コルチゾール過剰症候群」 (7-T) 単純ヘルペスウイルス感染症 (2)

2012年10月18日 |  関連(生物学医学)

 ためて一括するより、ちょっとづつ書いていこう。なので短く。

(7) 易感染性

(T) 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症
 (ヒト・ヘルペスウイルス1型及び2型(HHV-1及び2)感染症)(つづき)


 前回の記事では、単純ヘルペスウイルス感染症の代表例として、口唇ヘルペスの疑わしい事例、性器ヘルペスの疑わしい事例をみたような気がする。

 ここでとりあえず、単純ヘルペスウイルス感染症の全体像を一覧表にまとめておこう。ついでに検索性を上げるため、解説などを掲げた有用そうと思われる関連のリンクも置いておこう。

主な単純ヘルペスウイルス感染症
 病名有用そうな関連リンク
1 口唇ヘルペス

口唇ヘルペス、正しい知識で早めにケア*a、
単純疱疹(ヘルペス)*b

2 性器ヘルペス 性器ヘルペス症*b
 3 ヘルペス性
歯肉口内炎
ヘルペス性歯肉口内炎*c、
単純ヘルペス(「2.ヘルペス性歯肉口内炎」の項)*d
4 カポジ水痘様
発疹症
カポジ水痘様発疹症*b
5 ヘルペス脳炎 ヘルペス脳炎とは*e、ヘルペス脳炎*b、
単純ヘルペス(「3.ヘルペス脳炎」の項)*d
6 新生児ヘルペス 新生児ヘルペス*f
7 角膜ヘルペス 角膜ヘルペス*b
8 ヘルペス性ひょう疽 ひょうそ(ひょう疽)*b
9 ベル麻痺 顔面神経麻痺(ベル麻痺)*b
注) 関連リンクはそれぞれ、*aはサイト「セルフドクターネット」から、*bはgooヘルスケアから、*cはメルクマニュアル「医学百科」から、*dはサイト「脂質と血栓の医学」から、*eは国立感染症研究所のサイトから、*fは徳島県小児科医会のサイトから。

 

 単純ヘルペスウイルス感染症の写真について見やすいものを掲載してくれているサイトをみつけたので紹介しておこう。「みやけ内科・循環器科」のサイト『写真で見る「子どもの病気」』から、

単純ヘルペス感染症〈1〉(顔のヘルペス)
http://www.miyake-naika.or.jp/13_medemiru/kodomo_tanjunherupesu.html    (リンクはココ
単純ヘルペス感染症〈2〉(口唇ヘルペス、頬部、舌、からだ、手足のヘルペス)
http://www.miyake-naika.or.jp/13_medemiru/kodomo_tanjunherupesu2.html


 単純ヘルペスウイルス(HSV)の日本人の感染割合については、各種の報告が入り乱れているようだけど、抗体保有率でみると、HSV-1はかつては9割ほどだったが現在はかなり低下した模様で、HSV-2は2割程度と推測されるという雰囲気であろうか。次はそれぞれ、国立感染症研究所のサイト、サイト「セルフドクターネット」及びサイト「脂質と血栓の医学」から引用:

ヘルペス脳炎とは
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ha/herpes-encephalitis/392-encyclopedia/516-herpes-encephalitis.html (リンクはココ

疫 学
 HSV は世界的に広く浸透したウイルスで、感染様式はHSV による皮疹や口唇ヘルペスを発症した患者の唾液との密接な接触、性器ヘルペスからの母子感染あるいは性的感染によると考えられている 2)。
 HSV-1感染の好発年齢は2歳にピークがあり、6歳ぐらいまでに感染を受ける確率が高い。一方、HSV-2感染はsexually transmitted diseases(STD)としての性質を有し、15歳以下の小児における抗体保有率は1%以下である。感染を受ける年齢は20 ~30 歳代が多く、Johnsonら(1989)によると、米国の若年成人における抗体保有率は20.2%であったと報告されている 3)。発症に季節的な変動はないが、男女比ではやや男性の方が多く発症している。


口唇ヘルペス、正しい知識で早めにケア Q03:どうやってうつるの?
http://www.selfdoctor.net/q_and_a/2007_12/herpes/03.html (リンクはココ

 昔は幼少期、親子や祖父母と孫など家族間でほおずりやキスをして感染するケースが多く、ほとんどの人が1~4歳までに感染していました。実際、60代以降の日本人の9割以上が単純ヘルペスウイルスの抗体を持っています。ところが最近は核家族化や衛生面の改善などによって、10代の抗体保有率は6人に1人程度です。幼少期に一度感染するとウイルスに対する抗体ができるため、大人になって再発しても軽症で済みますが、大人になって初めて感染すると、重症化するケースが多くなります。


単純ヘルペス http://hobab.fc2web.com/sub6-HSV.htm (リンクはココ

1.単純ヘルペスウイルス
 ・・・
 日本人は、約70%の人が、10歳までに、単純ヘルペスウイルス(HSV)に、初感染する。感染経路は、幼児の場合、両親(特に、母親)や兄弟からの家族内感染が多いと言われる。
 成人では、50~100%の人が、HSV-1抗体陽性と言われる(HSV-1が体内に、終生潜伏感染している)。
 日本でのHSV-1抗体陽性率は、5歳以下25%、10歳代後半38%、20歳代53%、30歳代63%、40歳以上94%と言う報告もある。
 HSV-1抗体陽性率は、4~20歳にかけて、急激に上昇し、20歳以上では、60~90%の人が、HSV-1抗体を保有する(HSV-1の初感染を済んでいる)。HSV-2の抗体は、12歳以下の児は、陰性の場合が多く、HSV-2の抗体保有率は、成年期でも20%程度と言う報告もある。


(つづく)

コメント