〔更新履歴:11/12補足〕
興味深い報道をみつけたので、紹介しておこう。先ずは、どういう類型にあたるのか、みておこう。
(A) 該当する大衆の誤認誘導効果を有する報道の類型
この類型は、これまでにも多数の例があったので、このブログの過去記事でも幾つか指摘してきたものであり、余り新規性はない。つまり、
ある病気の最近増加は「ストレス」が原因であるとことさらに強調して報道するパターン
のことである。
ストレス(正確には「ストレッサー」)と言えば、一般的には「精神的なもの」「心理的なもの」と理解してしまうのではないだろうか。実は、前にも記事で触れた気がするけど、温度、気圧、酸素濃度とかは身体的なストレッサー、あるいは肉体的なストレッサーであって、当然に放射線(特に人工放射線)もこの一種に分類されるものである。
このため、ストレスの意義に詳しくない人々であれば、仮に身の回りで異変が増加したとしても、「ああ、あの報道は正しかったのか」「(精神的)ストレスに気をつけよう」と思ってしまい、真の原因を探究するきっかけを失い、あるいは探究の開始が遅れて始めてしまうおそれがあるだろう。
ついでに言えば、この類型の本丸はいわゆる「放射能恐怖症」であろう。ちなみに、これが何をすり替えたものであるかを分析しあぶり出していこうというが、「コルチゾール過剰原因説」を展開しているそもそもの理由である。
(B) 疑わしい報道
前置きはさておき、今回紹介したいのは、株式会社産経デジタルのサイト「zakzak」内の「zakSPA!」に掲載されている特集記事
★[女のオス化]が止まらない!
である。現在、9頁にわたって展開されているようで、そのURLはそれぞれ、
日本人女性に異変!“オス化”する女が急増中
2012.11.06
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121106/zsp1211061401005-n1.htm (トップ頁)
女性のオス化が進んでいる。仕事もバリバリこなし、職場やプライベートでの行動、物言いも男前になったのに加え、ヒゲが生えるなど身体のオス化を訴える女性も。このままでは日本から女がいなくなる!?
2 嫁の体臭がオッサンより強烈!まるでギョウザのニオイ
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121106/zsp1211061400004-n1.htm (身体編 -体臭)
3 オス化で起こる“毛”の悩み…薄毛、ヒゲ、体毛の増加
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121106/zsp1211061358003-n1.htm (身体編 -薄毛、体毛の増加)
4 言動がオス化する女が急増!飲み屋→おしぼりで顔拭きます♪
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121107/zsp1211071401003-n1.htm (言動編)
5 怒りがオス化の引き金に!ウザいヤツには心で「黙れカス」
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121107/zsp1211071400002-n1.htm (言動編)
6 身体のオス化はストレスで起こる!生活リズム&睡眠を改善しよう
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121108/zsp1211081400004-n1.htm (身体編 -対処法)
7 恋することでオス化を防止!“女性”を強く意識しよう
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121108/zsp1211081359003-n1.htm (言動編 -対処法)
8 グラドルの身体に興奮するオス化女子!「お尻がいいよね~」
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121109/zsp1211091401003-n1.htm (恋愛・セックス編)
9 オス化を食い止めるために男ができること…触ることも有効
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121109/zsp1211091400002-n1.htm (対処法)
先ず注目すべきポイントは、このような現象が増加していると報道されている点であろう。薄毛とか、体毛の増加などについては、噂話で個人的にもいろいろ耳にしていたが、「体臭」まではレーダーに写っていなかった。
次に注目すべきポイントは、これらの異変が何故起こっているのか、ということであろう。それらの原因については、上記の記事では、婦人科医の談話と精神科医・心理専門コンサルタントの談話が取り上げられている。
後者の方は、「精神面での『抑圧・否定・逃避』による」との原因分析だが、よくわからないので留保しておくとして、個人的には、性ホルモンの異常という前者の意見に同意したい。同特集記事から、
こうしたオス化は、なぜ起こるのか。松村[圭子「成城松村クリニック」院長、婦人科・美容皮膚科医]は言う。
「オス化の大きな原因は、ストレスなどによる女性ホルモンのバランスの乱れです。女性にも男性ホルモンは少量分泌されているのですが、女性ホルモンが減ると、相対的に男性ホルモンが目立ってきてしまい、そうなると、男性ホルモンが体の中でさまざまな“悪さ”をするんです」
男性ホルモンの“悪さ”によって起こるのは、薄毛やヒゲ・体毛の増加、ニキビ、加齢臭など。
「オス化は特に、仕事の影響が大きいですね。現代では、女性も男性と同等に仕事をしている人が多いのに、家事や育児などはいまだに『女性の仕事』とされていることが多く、女性の抱えるストレスが増え、種類も多様化しています。また、不規則な生活によって、身体の調子を整える自律神経が乱れ、自律神経と密接な関係にある女性ホルモンが影響を受けてしまうこともあります」(松村院長) (同特集3頁。強調は引用者)
身体の異変だけでなく、記事で指摘されている言動の変化についても、同じ原因と考えてよいのではないだろうか。
11/12補足: 更に、性ホルモンの異常の原因ついて、記事では、女性が仕事を行うことにより多様化したストレスに曝されることが特に大きいとしつつ、不規則な生活(これは身体的ストレスの一種)も寄与している、と指摘しているものと理解できる。
ついでに、また見かけるかもしれないので同特集記事の担当記者もメモしておくと、
取材・文/田幸和歌子 桜田容子 増山かおり 藤村はるな 安田はつね(SPA!) (同特集9頁)
(C) 補足の解説
上記のような性ホルモンの異常とみられる現象について、精神的ストレスの影響が全くないとは言わないけれど、そもそもの主要な原因は別にあるのではないだろうか。
チェルノブイリにおける性ホルモンの異常については、YNNチェルノブイリ報告(詳細はココ)でも言及されている。例えば、昨年7月に某掲示板の緊急災害板でみかけたものを発掘しておくと(一部改変して部分的に和訳をイタリック体で挿入)、
144 : 地震雷火事名無し(チベット自治区)[sage] :投稿日:2011/07/28 01:00:20 ID:oqFxRDR00 [1/1回(PC)]
高校生の娘が生理不順。二週間毎にきてる、というか、いつも生理っぽい。
鼻血も四月~六月にほぼ毎日だった。
産婦人科に連れて行かなきゃいけないのかな、どういう病気なんだろう。
158 : 地震雷火事名無し(東京都)[sage] :投稿日:2011/07/28 03:10:03 ID:YNe2sFXz0 [1/1回(PC)]
>>144
生理不順関係は、ヤブロコフ・ネステレンコ報告を少しみてみると、よくみられた模様。
ウクライナのある調査では、若い女性のうち14%に月経機能困難があった模様。
汚染地域での月経異常の数は、事故前の3倍程の模様。
>Soon after the catastrophe the majority of fertile women from the contaminated
territories developed menstrual disorders. (ベラルーシ、97頁右)
[・事故の直後に、汚染地域の生殖可能な女性の大部分は月経異常を発症した。]
>Menstrual cycle disorders are commonly diagnosed in the contaminated territories. (ウクライナ、98頁左)
[・月経周期異常は、汚染地域でよく診断されていた。]
>Among 1,017 female children of evacuees (aged 8 to 18 years) examined after the catastrophe, 11% had delayed sexual development (underdevelopment of secondary sex characteristics, uterine hypoplasia, and late menarche), and 14% had disturbed menstrual function (98頁右、ウクライナ)
[・事故後に調査された避難民の女児1,017名(8~18歳)において、11%には性的発達の遅延(第二次性徴の発達不全、子宮発育不全症(uterine hypoplasia)、遅発初経(late menarche))が、14%には月経機能の乱れがみられた。]
>The number of menstrual disorders in the contaminated territories tripled compared with
the pre-catastrophe period. In the first years after the catastrophe there was heavier menstruation, and after 5 to 6 years menstruation decreased or stopped. (ウクライナ、98頁左)
[・汚染地域における月経異常の数は、事故前に比べ3倍となった。事故後1年目には月経が重くなり、5~6年後には月経が減り、又は止まった。]
これには、内分泌(ホルモン)系の異常が関与している可能性が指摘されている。
月経過多は、非悪性l甲状腺疾患の症状のうちの1つとされている模様。
若い女性の特定の月経時期において血清中のセシウム濃度とホルモン濃度(黄体刺激ホルモン、
プロゲステロン)に相関があったとの報告もある模様。
>In all of the contaminated territories, there is a marked increase in nonmalignant thyroid diseases (Gofman, 1994; Dedov and Dedov, 1996). Associated illnesses include: delayed healing of wounds and ulcers, delay in growth of hair, dryness, fragility, hair loss, increased susceptibility to respiratory infections, night blindness, frequent dizziness, ringing in the ears, headaches, fatigue and lack of energy, lack of appetite (anorexia), delayed growth in children, male impotence, increased bleeding (including menstrual menorrhagia)(月経過多を含む出血の増加), lack of gastric hydrochloric acid (achlorhydria), and mild anemia. (83頁左)
>There was a correlation between the level of incorporated Cs-137 and prolactin
concentration in the serum of young women continuing to live in an area with radioactive contamination of 1.5 Ci/km2 (Gomel City) during the first and second phases of their menstrual cycles, as well as a correlation between levels of incorporated Cs-137 and progesterone concentrations during the second menstrual cycle phase (ベラルーシ、79頁右)
個人的な話をすれば、YNNチェルノブイリ報告書を眺めて知識を増やした後、何かの折に、とある幼児向けの歌の一節を含むツイートを知ってかなりショックを受けたのを覚えている。なぜなら、これが契機となり一つの筋が見えたからだ。
@UniqueTwit_bot
「ライオンになりたい女の子♪女の子になりたい男の子♪」って弘道お兄さんが踊ってた頃の子供たちが大人になった今、「肉食系女子」と「男の娘」が流行ってる。NHKの影響力って素晴らしいね。 ryo_tam 1000favs
2012年4月7日 - 6:29 (強調は引用者)
上記引用の歌は、「おかあさんといっしょ」のwikiによれば、1996年4月から2005年4月まで体操の歌として使われていたらしい。
おかあさんといっしょ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8A%E3%81%8B%E3%81%82%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%97%E3%82%87
上記歌の歌詞の全体は、株式会社ソングブックカフェのサイト「Hoick」でみられるようだ。
あ・い・うー 作詞: 日暮真三 作曲:渋谷毅
http://hoick.jp/mdb/detail/468/%E3%81%82%E3%83%BB%E3%81%84%E3%83%BB%E3%81%86%E3%83%BC
上記のツイート主の解釈では、歌に影響を受けた結果としてある傾向を子供達が身に着けたとされている。 しかし、これでは先後関係が逆であろう。
つまり、作詞者は日頃から小さな子供達に接する機会が多く、従来とは違った何らかの変化を感じ取り、それをスナップショット的に歌詞に落とし込んだのではなかろうか。かなり小さな子どもにも影響が出ていたのであれば、その変化の原因が精神的ストレスとか、社会的要因とかである可能性は低くなるだろうと思われる。
次に気づいたのが、「オヤジギャル」なる用語。これがかつて流行ったのが、1990年の話。既に亡くなられているようだが、流行元のwikiから、
中尊寺ゆつこ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B0%8A%E5%AF%BA%E3%82%86%E3%81%A4%E3%81%93
1989年(平成元年)、OLを題材にした漫画『スイートスポット』を『SPA!』(扶桑社)で連載開始。同作で描かれた「オヤジギャル」は、当時の女性の「オヤジ化」現象を表した新語として話題になり、1990年(平成2年)の新語・流行語大賞新語部門・銅賞を受賞した。
ここまで調べて来ると、近年よく言われる「男性の草食化、女性の肉食化」もこの文脈でとらえることができると個人的に理解して、あー、ここまで影響が大きい可能性があったのかと・・・
なお、用語「オヤジギャル」については、冒頭の特集でも言及されている。
精神科医のゆうきゆう医師[(「ゆうメンタルクリニック」の総院長)]は、「余裕のなさや意識の低下が影響している」と指摘する。
「’90年代に『おやじギャル』という言葉がありましたが、この頃から若い世代の女性でも“異性の目を気にしなくなった”ように感じます。気持ちや体力的 に女性らしさを表現する余裕がないというのもありますが、大多数の男性を“異性”として意識していないのではと感じられる女性が増えたように思えます」と 言う。 (同特集4頁)
かなり定性的な話だと分かりにくいと感じる読者の方もいると思うので、もう少し定量的に議論できるデータが必要であろう。定量的に観察される傾向としては、いわゆる「男性の草食化、女性の肉食化」のみではなくて、もっと幅の広い「両性の中性化(らしさの喪失)」ということになると思われる。
このようなデータをみかけたのは、例えば、今年8月の某掲示板の緊急自然災害板から、
495 : 地震雷火事名無し(茸)[] :投稿日:2012/08/04 21:39:39 ID:E4H5pDLd0 [1/1回(PC)]
”女子も「草食化」、経験率減る 日本性教育協会調査”
1974年の調査開始以来、一貫して上昇傾向にあった女子大学生・女子高校生の性交渉の経験率が下落に転じたと、日本性教育協会が4日、公表した。調査委員会の片瀬一男・東北学院大教授(教育社会学)は「『草食化』の傾向が、若い男性だけでなく、女性でも進んでいることが見て取れる」としている。
調査は、若い世代の性に対する意識などを探るために、ほぼ6年に1度実施。昨年10月から今年2月にかけて、全国11地点の中学、高校、大学生計約7700人を対象にした。
その結果、性交の経験率は男子大学生が54%、女子が47%。前回の05年と比べると、男子は7ポイント、女子は14ポイント減り、女子の減り幅が大きかった。高校生も男子が前回の27%から15%に、女子が30%から24%に減少。大学生・高校生とも男子は93年、女子は99年の水準に下がった。
図 性交経験率の推移
http://www.asahi.com/national/update/0804/images/TKY201208040212.jpg
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朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0804/TKY201208040211.html
日本性教育協会HP
http://www.jase.faje.or.jp/
539 : 地震雷火事名無し(東京都)[sage] :投稿日:2012/08/05 13:04:40 ID:gWrP/0ub0 [1/1回(PC)]
[中略]
>>495
いい資料だぬ。
知能低下、男児の女性化、女児の男子化は、あることの影響だろうね。
ちまたでは、それぞれ、ゆとり、草食化、肉食化といわれているけど・・・
図でピークを打ったあたりの子供達が生まれた頃に何があったか、年表ででも調べるとよいよ。 (強調は引用者)
かなり残念なこととは思うが、現役の子育て世代、特に若い女性は、1986年事故の影響を受けている可能性が高い上に、3.11後においては、●の影響が更に上乗せされた可能性が高いと思われる。