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カンチャン狂騒曲

日々の事をあれこれと、大山鳴動してネズミ1匹がコンセプト。趣味さまざまなどを際限なく・・。

「三文オペラ」が楽しい

2015-05-09 12:23:07 | 本と雑誌
 肩の凝らない気軽に読める本を2冊借りてきた、・・・・つもりだった。

 
 「ラヴェル」ジャン・エシュノーズ(著)関口涼子(訳)2007.10みすず書房刊

 ボレロの作曲家モーリス・ラヴェルの晩年を生き生きと描く、音楽みたいな小説と紹介されていたが、私には残念ながら読もうとする意欲が10ページくらいで無くなってしまい、最後のページを読んで終わりにした。

 フランスのノーベル賞受賞作家らしいのだが、どのフランス人作家にも共通して感じるのはパリの町の様子を表現する際、小馬鹿にしたような描写が多いことである。

 そんなにつまらない町なら、さっさと紹介を終わればいいのだが、これが延々と続く。

 考えてみたら、ラヴェルのボレロも同じフレーズが延々と続く曲だったから、曲がりくねった繰り返し表現が音楽的で素敵だったということになったのだろうか。

 よくわからないが、ただ今の自分の気分は心地よくはなく、ただ頭の中が疲れただけだった。

 
 「三文オペラ」ベルトルト・ブレヒト(作)酒寄進一(訳)2007長崎出版

 1928年に初演されている。

 戯曲は初めて読んだが、舞台を見ているようで楽しく読めた。

 新しく上演するにあたって、現代語(若者言葉)訳がおもしろい。

 乞食にも入場料が払えるように格安に設定した、そこでお題は「三文オペラ」。

 登場人物は、乞食あり盗人あり売春婦有りで社会の底辺でうごめいている人間ばかり。

 変わったところでは、乞食に物乞いグッズをリースする商売人が現れたり、警視総監がギャングと竹馬の友だったりというのもありで、奇想天外文句なしに楽しめる。

 つまり高尚なオペラより私には「三文オペラ」の方が波長が合うということなのだ。

 
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読み辛いとこは後まわし

2015-04-15 14:09:20 | 本と雑誌
 図書館から本を2冊借りてきた。

 来週は予定があって留守にするので、今週中に読み上げるべく中編のものにした。

 

 「指の骨」高橋弘希(著)2015.1新潮社(刊)

 作者の初の著書らしい。2014第46回新潮新人賞、2015第152回芥川賞候補作とある。

 著者は1979年生まれでまだ若く、戦争など知るよしもないが文献などから導き出したものと、自身の感性で一兵卒として参加したかの如く先の戦争(南方の戦線)を追体験させてくれる。

 多くの人命が失われた南方で遺骨が内地に送り返されることなどあり得ない状況の中で、野戦病院のベッドで次々と死んでいく兵士の指の骨が、衛生兵によってゴトリと切り落とされていくという描写はとてもリアルである。

 最前線と思いきや既に孤立してしまっていた小さな島の野戦病院を舞台にした戦闘場面のない一兵卒の戦記である。

 

 「嫌なことは後まわし」パトリック・モディアノ(著)根岸純(訳)2015.1キノブックス(刊)

 とにかく人物の名前が多く、特にフランスの町かどの文物の固有名詞が散乱するように多用されるので、ややこしいこと夥しい。原題は「恩赦」とか「特赦」などを意味する法律用語らしいのだが、延期といったニュアンスもあるので、精神的な辛いことを延期するという意訳によったらしい。

 過去の悲惨な思い出などを、思い出していては今を生きられないということなのだ。

 両親から預けられ父親の知人によって育っていく僕と弟、その僕の目を通して見た田舎の村での生活記録、僕が思い出すままに物語は時系列には進まないで錯綜しながら展開していく。

 この錯綜させることでミステリアスに展開していく作風が、2014年ノーベル文学賞受賞の作者の得意技らしい。

 錯綜した展開・登場人物の複雑なフルネームの連発、地名を含めて固有名詞の多さにややへたれそうになる。

 配偶者が人間ドックの再検査のため通院し、待合室で4時間ほど待たされた間に読破した。

 もちろん題名の如く、ややこしくて「読みづらいところは後まわし」にすることが私が会得した読書のコツである。

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日本人の性格構造とプロパガンダに☆三つ

2015-04-10 09:09:57 | 本と雑誌
 天皇・皇后両陛下が日米の激戦地パラオを訪問された。

 海上保安庁の巡視船を宿泊場所とされたというから、体調も思わしくないなか相当の覚悟をもって事に臨まれたに違いないと思い、その熱意に頭が下がった。

 日本人の歴史認識のいい加減さをかろうじて対外的にフォローしているのは、ひとり天皇ではないかと思っている。

 図書館でふと目にとまって先日から読む羽目になってしまった一冊の本が、更に感慨を深めた。

 

 「日本人の性格構造とプロパガンダ」ジェフリー・ゴーラ(著)福井七子(訳)2011.4ミネルヴァ書房(刊)

 ベネディクトの「菊と刀」にも影響を与えたゴーラの日本人論。日本に関する綿密な聞き取り調査と文献研究を通して、日本人の性格構造に関するレポートを書いた。

 米国の戦時情報局でも対日戦におけるプロパガンダに重要な資料とされたという。

 表に出されることのなかった戦中のレポートが翻訳出版され、日本人論に新たな光があてられた。

 本書は「日本人の平均的性格構造が形成されたメカニズム」「軍事的・経済的な理由以外での日本人を戦争に駆り立てた理由」「前述に基づいて日本人にもっとも影響を与えうると思われるプロパガンダの種類」の三本柱によって構成されている。

 生活文化の違いや宗教観などの相違から多少大袈裟になっていたり、あるいは戦後生まれには経験した事も無い戦前・戦中の日本人の家族制度や価値観など違和感も覚える箇所も多々あるが、おしなべて的確な分析がなされていると感じた。

 特に戦後の対日占領政策にまで影響を及ぼしたであろうことが推測できる部分が少なくない。

 面白いのは米国国民向けの対日戦意高揚のプロパガンダで、米軍被害の甚大さも合わせて異常な日本憎しの国民感情が米国内で渦巻き、対日占領政策を誤る恐れが大きいので比較的対アジア人対策にノウハウを持つ冷静なイギリス人たる自分の意見を取り入れたが良いのではないかというくだりだ。

 

 天皇が近現代史に鑑み戦後のレジュームこだわるのも、原爆投下は正当なものだったと言い続けたい米国民のこだわりも、底辺の部分では繋がっている。

 日本人には日本人の性格構造分析は無理だと痛感させられる。

 外からの目は、極端・唐突ではあっても真理を突いている場合が多い。

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世界一の写真

2015-04-01 08:56:20 | 本と雑誌
 春眠暁を覚えずというが、確かに朝でなくとも食後に本など開こうものなら、睡眠薬より効き目がある。

 そこで文字の少ない本で眠くならないものはと探したら、写真集があった。

 

 左から「世界 伝説と不思議の物語」2013.8パイ・インターナショナル(刊)

 写真は通信社など3社のものを編集してある。不思議と驚き、逸話が綴る魅惑の名景とある。

 中は「なぜが頭からはなれない奇妙な絶景50」渋川育由(編)2014.8河出書房新社(刊)

 確かに印象に残る風景が展開する。アングルと処理技術の妙も・・・。

 右は「世界一の写真集」2009.12及川さえ子(編)ピエ・ブックス(刊)

 2社の写真提供による。とにかく世界最大・世界最長・世界最古etc・・・世界一と名の付く名景・絶景60が展開。

 この3冊に共通するのは、カメラの撮影や処理の技術が凄くて、同じ場所に私が行ったとしても、撮った写真は絶対にこの様にはならないだろうということだ。

 「え?同じ場所を移したの?」なんて言われるのがオチだろう。

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性に合わない本もある

2015-03-17 10:26:55 | 本と雑誌
 借りてきた本が2冊あるのだが・・・まあ、性に合わない本も確かに世の中にはある。

 1冊はまあまあ、変わった旅行記みたいなもんで楽めた。

 

 「ランサローテ島」ミシェル・ウエルベック(著)野崎歓(訳)2014.5河出書房新社(刊)

 本文の部分は60数ページで展開も早いし読むのに苦労はいらない。

 ビックリするのは本の表紙の厚さで金属並みの硬度と大袈裟に言っていいくらい。

 それに、本文の前に綴じられている島の紹介写真が半端じゃないページ数で本文より多いかも。

 火山島なので溶岩以外何も無い風景がページをめくってもめくっても延々と続く。

 文章はユーモアに溢れ面白いし、島への好奇心も湧いてくるが、後半の人間関係に入ってくると宗教的なものを入り込ませて複雑化し、結局はキリスト教的ステレオタイプの話で好奇心も見事に萎んでしまう。

 次は性に合わないというか、読みづらかった1冊。

 

 「ばかものギンペルと10の物語」アイザック・B・シンガー(著)村川武彦(訳)2011.12彩流社(刊)

 作者は1904年にポーランドに生まれ、ラビの父の影響でワルシャワのラビ養成神学校に進んでいる。1935年に米国に移住してその後帰化し作家活動を続け、この「ばかものギンペル」が英訳された頃から名声が高まり1978年にノーベル文学賞を受賞している。

 「ばかものギンペル」は何となく読めた。イディシュ語という独特の言語とラビ養成神学校というものが作者の立つ位置を示していて、ユダヤ人としての生き方が作品世界を支配している。

 魯迅の「阿Q正伝」を思い浮かべると、似たような環境を描いても洋の東西で違うなと思う。

 西は死に様を美しく表現し、東は泥濘を描きながら真実を探るという書き方で、私的には魯迅の肩を持つ。

 「・・・・と10の物語」と言うくらいだから、全部で11篇の構成なのだが、3篇めの「妻殺し」の始まりの部分でギブアップしてしまった。

 どれを読んでも旧約聖書のエピソードの現代語訳に見えて・・・正直疲れた。

 で、疲労回復のため・・・4篇から先を投げ出した。

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日本の論点

2015-03-10 13:04:33 | 本と雑誌
 図書館の本、大前研一氏の「日本の論点」を読んだ。

 読みながら、先日読んだトマ・ピケティーの「新・資本論」が頭をよぎった。

 

 「日本の論点」大前研一(著)2014.12プレジデント社(刊)

 プレジデント誌で連載されていた「日本のカラクリ」の一年分の記事などをピックアップして加筆修正・再構成したものらしい。

 トマ・ピケティーの「新・資本論」もリベラシオン誌に掲載されたものの再構成だったので、つい比較する読み方になってしまった。

 「新・資本論」は、西欧における格差社会の拡大への警鐘を、主としてヨーロッパを対象として描き、他の地域でも参考になることが多いはずだというスタンスだった。

 この「日本の論点」は、その名の通り日本の問題に絞っているものの、世はグローバル時代であるし、安全保障問題等を抜きには述べられない問題点もあるので、その内容は多岐にわたっている。

 しかしながら、著者がプロローグで述べているように、各論は多岐に亘りどれも避けては通れない重要な問題であるが、あまり間口を広げると全てが上っ面を撫でるだけの議論になってしまう。

 読んでいて一番納得が出来たところは、この「プロローグ」の部分だった。

 論点を整理して一つに絞るならば、とことわって「約1000兆円を越える巨大な国家債務をどうするか、という問題に尽きると私は考える」と書いている。

 40兆円の税収しかないのに100兆円の予算をくんでいれば綻びが出るのは自明の理である。

 解決法も皆知っている。

 超倹約か、超増税か、あるいは両方か・・・・。

 しかしやがて国家を破綻に導く危険な状態にありながら、正論を述べる政治家は選ばれないし、官僚も浮かび上がれないし、おまけにマスコミも報道しない。

 「大変ですよ」くらいは言えるが、方策を根拠をもって示し説得できる人間が現れないのだ。

 鬱屈した国民感情を煽る、威勢の良い極端論やナショナリズムが台頭し易い状況が出来上がるまでこれは続く。

 ヒットラーの如く戦争でチャラにしようなんて冗談ではないが・・・歴史を学ばないと歴史が繰り返されていることに気がつかない。

 もはや中央政府には問題処理能力はないので、ここは一つ道州制を導入して500兆円は冷凍保存しておいて、500兆円を各道州に経済規模に見合ったように分割して負担させ、アイディアを競って処理させたらどうか。

 という著者の意見に、つい1票を入れたくなった。

 軽い乗りで憲法改正が叫ばれているが、道州制導入と赤字国債の処理を前提に憲法論議をした方がよっぽど有益のような気がする。

 ただし、こっちは軽い乗りでは出来そうもないから、やっぱり政治家も国民も逃げるだろう。

 では軽い乗りで2句いってみよう。

 「成るように なってからする 政りごと」

 「成るように なっているのに 右顧左眄」

 おそまつさま・・・・・。

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絶望と希望の間

2015-03-07 09:33:35 | 本と雑誌
 新刊書が売れない原因の一つに電子書籍などと共に図書館の多様化もあるらしい。

 この頃、自治体の施設管理運営を民間に委託するところが増加中である。

 古色蒼然として利用者が来るのをノンビリ待つスタイルから、あの手この手の集客プログラムが展開され図書館も様変わりしつつあるのだ。

 新刊のある書店も古書店も大好きで、立ち寄ったら手ぶらでは帰れない癖のある私でも、タダで読める図書館はこれまた大好きである。

 何と言っても図書館の最大の魅力は、わざわざ買って読むには冒険的でわけの判らない、それでいてやたら高い本までが並んでいるところが面白い。

 そんな図書館の本棚の、フランスと表記された一角から2冊借りてきた。

 

 「火によって」ターハル・ベン=ジェッルーン(著)岡真理(訳)2012.11以文社(刊)

 一人の青年の焼身自殺から火が付いた「アラブの春」を題材にした物語である。

 チュニジア、リビア、エジプトはてはシリアまで燃え広がった革命の嵐。

 これでもか、これでもかと、虐げられた民衆の不条理への怒りが最高点に達するまでが描かれる。

 ちょっと変わっているのは、126ページの本のうち本編は87ページで、あとは訳者の熱~い解説が延々と続く。

 革命も作家活動も翻訳作業も、激動の渦中に身を置きつつも冷静な次を見据える目が必要だと痛感させられる。

 さて、次の一冊は。

 

 「ようこそ、自殺用品専門店へ」ジャン・トゥーレ(著)浜辺貴絵(訳)2011.9武田ランダムハウスジャパン(刊)

 近未来のとある国のとある町にある、自殺用品専門店をめぐる物語。

 世をはかなんで自殺したいと思うお客の要望に添うべく、あるいは新たな自殺用品を開発し提示していく日常を明るいタッチで描いていく。

 問題なのは、出来損ないの末っ子のこと。

 ネアカで楽観的でおよそ商売の邪魔にしかならないが、愛すべき息子の扱いに家族は振り回される。

 結末に作者魂がきらり・・と。

 いみじくも今回は、2冊とも自殺がテーマになっていることに読んでしまって気がついた。

 人間は寿命がくれば100%死亡するのだから、自分を断捨離する必要はない。

 では一句。・・・「世は一度 二度は回らぬ観覧車」

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Who are you?

2015-03-01 10:26:07 | 本と雑誌
 最近読んだ本の中では、飛び抜けて陰鬱な気分になる本だった。

 母親が決めた望まない歳の差婚によってもたらされる、若い娘の絶望的な日常を延々と描いていく。

 

 「あなたは誰?」アンナ・カヴァン(著)佐田千織(訳)2015.1.15 文遊社(刊)

 白人の墓場と呼ばれる熱帯の植民地で、望まなかった結婚の代償として与えられる試練をこれでもかと描く。

 軒端のタマリンドの木で、人の話し声さえも遮る程の音量で「Who are you?」と啼くチャバラカッコウの声。

 冒頭から最後まで、この鳥の声が作品全体を包み込む。

 夫や使用人は、善玉の娘にとっては完全な悪玉に徹していて、白馬の騎士のような娘と同年代の若者が唯一の救い手となる。

 が、唾棄すべき夫の元から若者と共に逃げることは可能である筈なのに・・・・。

 作者が60歳の頃の作品だというから、その娘の心中を表現する感性には驚くが、娘というより女の情念のようなもの、男と女の間にある埋めがたい闇をこのくらい見せつけられると、男の私は少々辟易する。

 

 今朝は、雨がしょぼしょぼと降っていて里山も雲に霞んで見える。

 この天気をスカッと瞬時に晴れさせる事が出来ないのと同様、現状を変えようとしても変えられない鬱積したものを持ち「Who are you?」という声を聞き続けている若者が沢山いることは間違いない。

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新・資本論

2015-02-25 10:32:35 | 本と雑誌
 図書館で「ドクター・ハック」を借りるとき、たまたま新刊書紹介で隣りにあった「新・資本論」という本を一緒に借りてしまった。

 借りてしまってシマッタと思ったが、一応の礼儀で読んでしまった。

 

 「新・資本論」トマ・ピケティ(著)村井章子(訳)2015.1日経BP社(刊)

 係の親切なのかミスなのか知らないが、本には帯まで付いていた。

 この本は、日刊リベラシオン紙に数年に亘って連載されていた時評をまとめたものである。

 2004年9月から2014年半ばまでのものの中から、古くなったものやテーマが重複するもの等を割愛して整理し、83本が4部構成の中に収録されている。

 貧富の格差が顕著な国・地域から社会的緊張が引き起こされていて、それらの地域は冨の配分が極めて不平等だという共通性がある。

 ヨーロッパの経済危機の責任はEU全体にあるのであって、ギリシャはその矛盾が顕著に表れているに過ぎない。

 富の偏在、放置される税制改革等々、確かに社会保障制度や税制は日本とは異なるというものの傾聴に値する。

 というか、十分に聴いてみる必要がある。

 日本の政治家が何か説明するときによく用いる「ヨーロッパでは・・」とか「各国の数値から言えることは・・」等と、さも参考にしているような言動を耳にするが、日本の現状を見ればまったく参考にされていないことが分かる。

 著者はフランスの経済学者で2013年出版の「21世紀の資本」(みすず書房)が世界的なベストセラーとなって注目されたというが、私はこの本が初めてなので当然読んでいない。

 フランス社会党系の理論家なので、立つ位置は明確であるものの期待に反する政策をとり続ける現政権に、失望を顕わにしたり苦言を呈したりと、なかなか率直な人柄がうかがえる。

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ドクター・ハックの数奇な人生

2015-02-20 10:06:09 | 本と雑誌
 蔵書の整理などのために暫く閉館していた町の図書館が開いてどっと人が押し寄せていた。

 一月初旬から借りていた本を返却に来た人や、再開を待ちわびた人達である。

 我が家では通常返却した日に次の本を借りることにしている。

 返却した後、書棚に向かう途中に新刊書のコーナーがあって、時々は覗いて見るのだが、その中に今朝の朝刊で紹介されていたものがあって、ついつい借りてしまって、書棚まで進めなかった。

 

 「ドクター・ハック」(日本の運命を二度握った男)中田整一著 2015年1月21日平凡社刊

 まさに、できたてのほやほや湯気が立っていた。

 著者は現代史を中心としたドキュメンタリー制作に携わってきた経歴の持ち主なので、まさにドキュメンタリー映像をみているような錯覚に陥るノンフィクションである。

 明治20年ドイツに生まれたハックが、フライブルク大学で博士号を取得し経済学講師をつとめた後、南満州鉄道株式会社(東京)の一員となるところから日本との数奇な関係が幕をあける。

 文官の予備役中尉として青島要塞勤務、第一次大戦の敗戦、日本での捕虜生活、日独協会を立ち上げて理事に就任、日独合作映画の制作、日独防共協定締結、ゲシュタポによる逮捕、スイス亡命、終戦工作で日米和平交渉に携わる。

 などなど、ソビエトのスパイのゾルゲは登場するわ、大戦後米国CIA長官になるダレスは登場するわで、まあまあ20世紀二つの大戦の戦前・戦中・戦後が眼前で展開する。

 三国同盟へと繋がる「日独防共協定」、ナチスとの決別後の「日米和平工作」という成功と失敗のターニングポイントに関わった日本大好き人間(ドイツ国籍剥奪の無国籍人)の限りなき日本への愛の物語である。

 ただ全編を通じて、「情報」の持つ意味と「対案」の重要性がひしひしと身にしみてくる。

 情報化だと言われる昨今、「本当の情報とは何か」、「その情報をどの様に分析するか」については、敗戦を経てもなお教訓は生かされていないと感じてしまう、そんな読後感である。

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