前から気になっていた宮尾登美子さんが帯の龍村、初代のことを書いた「錦」(中公文庫)を読みました。
500ページもあるので、面白くなくなったらやめるつもりで開いたのですが、読みだすと一気に読んでしまいました。
「龍村の帯」といえば、帯の中ではブランド中のブランド、その最高峰に属するものだそうですが、見識のなさも手伝って、イマイチ実感がわきません。
いまでもそうかも。
しかし、この本を読んで、初代平蔵(本のなかでは吉蔵)の、帯に賭ける執念たるや、あまりにすごい。
それに帯についていくつか知識を。
古い黒繻子の垂れの部分についている文字がありますね。「如是」というのが一般的で、西陣で織ったというブランドなんだそうです。それを「如源」(ものごとは根源をみるべし)という文字に変え、色まで変えて大ヒットさせたのが初代なんですね。
16歳で生家が没落し、生活の糧として西陣で黒繻子を扱い始めた主人公は、何もしらないながら、一つ一つ帯の知識を身に着けていき、纐纈(絞り染め)織や高浪織、ゴブラン織など、次々と新しい帯を考案していくんですね。
まあ、こういったことは龍村のHPに詳しいから、興味のある方はそちらを見てください。
詳しく説明があります。
いまある帯の織り多くが、彼に負っているのかも。
同じ業界の人の模倣や、仲間の裏切り~~、それらに苦しみながらも、いったん帯作りに入ると採算を度外視~~。
初期、帯を担いで行商に回ったりするあたりの修行時代も興味津々。
家業を継いだわけではなく、すべて自分の手で創り上げていったんですね。
小説では「仙」という名前の女性が、これまたすさまじい。
というのは、吉蔵に惚れて、「給金もいらないから、彼の身の回りの世話をさせてください」と願い出て、一生を彼にささげるんですね。
その間に、吉蔵の結婚があり、芸者さんの身請けがありと、彼女には辛いことが続くのですが、
それでも彼のもとを離れない~~。
で、吉蔵さんはといえば、法隆寺だの正倉院だの古布の復元、また天皇筋からのタピスリーの注文に8年もの歳月をかけ、その間家業は傾き、ようやく出来たと思ったら出来以上に遅延を責められる始末。
このあたりの主人公の織物に賭ける鬼気迫る執念と落胆は、まさに巻を置くにあたわず。
それにその織物は結局消失してしまい残っていないんです。
残るのはモノづくりに対する技術と精神~~。
上の写真は「樋口可南子のきものまわり」の龍村帯。
吉蔵がなくなると、その亡骸に自分の長年の思いを託すシーン。
ここは、同じ宮尾さんの團十郎夫人を描いた「きのね」の出産シーンほどの衝撃。
シャネルにしても、その創業者のストーリーはブランドを形作る大切な要素なんだなあ、と思わされます。
ブランドより、それを作り上げた人の話にワクワクします。
京都には龍村の迎賓館があるそうです。だれでも入れるのかどうかは不明だけど。
右はそこで撮影した樋口さん。(きものまわり、より)
私の持っている龍村は、龍村らしくない~~。
ワタシが持っていると、どこかニセモノっぽいけど、一応本物です。
重厚なものは締める機会もあまりないので、このくらいでいいと思っています。
少しずつ、こういう帯、締めていくつもりです。これまでは着付けの下手さと自信のなさで、フォーマル系の帯、避けていましたけど。
で、一生を吉蔵にささげた仙さん、彼が亡き後は、いずこへともわからず消えたそうです。
小説とはいえ、実話ですので、こういう女性、実際にいるんですね。
おそらく物語のなかでも唯一無二の存在。
本を読んだあとも心からなかなか去らない二人です。
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ブログにもアップさせて頂きましたが
リサイクルでも龍村は結構お高いようです。
大事にしないとね。いいですね!(^^)!
いえ!龍村の「箱」だけ持ってます!
本屋さんで探して 読んで見ます(^.^)
コメントありがとうございました。龍村とはわからなかったのですよ。きものを着るようになって、「そうなのか」と。得した気分です。
いえ、箱があるなら、どこかにあると思います。私、「龍村」のこときもの着るようになってもあまり関心なくて、でもこの本を読んでそうなのか、と。
本は面白いです。会が終わったら、読んでみてください。
もうすぐですね。楽しみにしております。