初冬にはすべての葉を落とし、春にまた新しい樹形を見せる。
この大木の名を初めて聞いたのはOさんの庭だった。広い裏庭に聳えていた。
絶滅したと思われていたが、中国で見つかり、全世界で保存されてきたという。
Oさんの裏庭に面する道を久々に通った。Oさんはもういないけど、メタセコイアは健在だった。
人の寿命は百年前後、スギやヒノキは千年以上。メタセコイアもその仲間。
イチョウやケヤキが天然記念物に指定されているのは、身近だったから。
屋久島の縄文杉は二千年以上という。スギは神木というより建材とみられていたのか。
メタセコイアは、スギやヒノキと近いらしい。
スギの種類に、ラクウショウというのがある。「落羽松」と覚えている。
ちょっと見ただけでは見分けられない。互生と対生の枝の出方で区別する。
樹形を遠目に楽しむには、その違いは問題にならない。
とはいうものの、名を声にするときは、どちらがいいのか迷うときもある。
初めに教えてもらったメタセコイアの名を使うのは、Oさんを思うから。
そして、秋に風に舞う落葉を楽しむときは、落羽松。
呼び名は想い出と密接に関わっている。どちらも大切な想い出の樹。