わが研究所に猫がいつくようになってから、いろんな人が立ち寄るようになった。
居候から家主へと昇格した猫は、窓の外を見ながら、来客の話に耳をすませている。
今日は隣町の肉屋さんが来ていた。
「へんな客がいてね。いつも小犬を抱いてウィンナを少しだけ買うんだ」
店は休みなのか、それとも誰かが店番をしているのか、どうでもいい話が続いた。
「この子に食べさせるんですよ、とわざわざ言うんだよ。なんでだろうね」
少しだけ買うのが恥ずかしいからなのか、思ったままを言う人なのか。
買う理由はどっちでもいいようだが、店主はどこに引っかかっているんだろう。
「うちで売ってるウィンナは、人が食べるほどのものじゃないって言いたいみたい」
それは思いつかなかった。なるほど、売る側のプライドってやつか。
でも、大切なかわいい犬に食べさせるものなら、厳選しているということもある。
肉屋の主人は、犬の食べ物は人の食べ物に劣ると考えているらしい。
この話を猫がどう聞いているのか気になって、猫の方を見た。
猫は相変わらず窓の外を向いたまま、耳だけピンと立てている。
そのまま じっとしていてくれ。肉屋の主人を引っ掻いたりしないでくれ。
猫が突然立ち上がった。慌てたけどすぐわかった。窓の外、上空を鳥の群が流れていった。
🐱 鳥の動きは刺激的だよ。人の思惑なんて 興味ないな。