定年後は旅に出よう/シルクロード雑学大学(シルクロードを楽しむ会)長澤法隆

定年後もライフワークのある人生を楽しみたい。シルクロード等の「歴史の道」を調べて学び、旅して記録する楽しみ方を伝えます。

素描エッセイ、出版の案内 坂井眞理子著

2019-02-26 16:21:46 | 図書室

会員の坂井康悦さんから本が届いた。奥さんの坂井眞理子さんが宇部日報に「いのちあけぼの」のタイトルでエッセイとデッサンを組み合わせた連載が、1冊にまとめられた。2006年から22年間も続けた連載の一部だ。


著者の坂井眞理子さんは、1962年に女子美術大学を卒業している。当時、女性が画家を志して進路を決める生き方には、世間の目が厳しかったらしい。まして、坂井眞理子さんの母親の時代は、女性の進み道は限られていたようだ。それだけに、母が我が子を思う気持ちhあ重かったようだ。今は美大へ進む女性も多くなっている。だが、画家を目指すとなると数は少ないように思う。世間は「女性活躍の時代」と言うが、文言の通りになっているのだろうか。笛吹けど踊らずの感があるように思う。もっとも、男性も同じように思うのだが。



エッセイを読んでみると、よく人間を観察していると感心する。100歳過ぎまで人生を全うした母親の事はもちろん、100歳を過ぎても絵を描き続けている女子美大の卒業生である入江一子さんは、個人美術館「シルクロード記念館」を阿佐ヶ谷駅の近くに開設した。シルクロードで描いた風景や街の様子を展示して一般に公開しているという。ライフワークが、文字通りの生きがいの様子だ。うらやましい人生だ。まだまだ続いてほしい。
堀文子さんも女子美大のOG、人生に目的意識を持ち追い続ける人間としての芯の強さも感じると坂井さんは記している。堀さんは、70歳を過ぎてからイタリアにアトリエを持ち、80歳を過ぎても世界の秘境にスケッチに出かけていたという。「挑戦することで新しい世界が開ける」と坂井さんに語ったともいう。「挑戦を続ける」。その難しさを知っているだけに、坂井さんは紹介したかったのだろう。

著者の坂井眞理子さんにしても、公園で遊ぶ若い人を見ては生命力感じ、インドの踊り子像や百済仏の半跏思惟像などを求めて世界各地の博物館も巡っている。古代の土偶の中でも女性土偶を訪ねて世界各地の博物館でスケッチをしているという。テーマのある旅行は、次から次へと旅先が現れるし発見も多いようだ。挑戦を続けている。追いかけたテーマを通して感性を磨き続けるように思う。

坂井さんの著書から学び、ライフワークを追い続ける人生を過ごしたいものです。



「描く さりながら書く」の購入は、宇部日報社総務局(電話0836-31-4343)、あるいは坂井さんの自宅(電話03-3223-3216)まで申し込んでください。本は、1冊1800円(税込み)です。送料や振込先は、申し込みの時に問い合わせてください。よろしくお願いします。

シルクロード雑学大学では、スペイントルクメニスタンへの遠征も準備しています。絵手紙やデッサン、スケッチを趣味としている人の参加も歓迎しています。

中央アジアの食から、シルクロードの歴史を知る

2019-02-15 18:51:51 | 図書室

「食の宝庫 キルギス」(群像社、先崎将弘著)という本が届いた。2週間ほど前に近所の本屋さんを通して注文していた。中々連絡がないので問い合わせた。届いているとの返事だった。

本を手に取ると、キルギスだけでなく周辺にある国々、イランや中国、ロシア等の食の影響も紹介している。料理や文化、イスラム教の影響などの歴史的な背景もある。中央アジアの各国には、歴史的にどのような背景があるのか。わかりやすいと思った。

個人的には、ヨーグルトを乾燥させたクルトという乳製品が好き。ビー玉のように丸い食べ物で、自転車で旅行しながら飴のようにしてなめていたのだった。汗をかいた後の塩分の補給にもなるのだと思う。キルギスや中央アジアの料理を知ると同時に、自分でもクルトを作りたいと思った。できるかな。


以前、同じ著者の「美味しい中央アジア 食と歴史の旅」(東洋書店)を読んでいる。写真もあって中央アジアの食を理解するのに役立っていたと思う。だが、今では、Amazonで調べたら3500円くらいだった。高いものは2万円を超えている。

この2冊、中央アジアへ旅行する人には是非とも読んでほしい。中央アジア各国の歴史的な背景も理解するのに役立ち、旅行がたのしくなると思う。

また、中央アジアの料理を知りたい、作りたいと希望しているのだったら、おいしい中央アジア協会という団体のホームページやfacebookを見たらいいと思う。

さらに、中央アジアの料理を実際に食べたりして、日本に居ながらにして中央アジアの雰囲気を楽しみたいというのなら、東京都新宿区の神楽坂にあるお店「モーリー」
へ行ったらいいと思う。ラグマンという中央アジアの料理(焼うどんのようなもの)を楽しむこともできる。中央アジアのウォッカやブランデーもある。わたしは下戸だから、ウーロン茶とラグマンを楽しんでいるのだが……。1品が、500円から700円位だと思っていたらいい。明日(2月16日(土))は、14時から24時まで営業するとホームページに書いてあった。

このお店の店主は、学生時代に自転車とロバ車で玄奘三蔵の足跡を巡っている。お店には探検やシルクロードに関する本も置いてあり、誰でも自由に読める。旅行好きなお客さんが多いので、旅行に関して相談できる点もうれしい。お客さんから体験談を聞くなど、旅行好きの仲間に知り合えるのもうれしい。

サイクリング『ツール・ド・シルクロード20年計画』のビデオは、https://www.youtube.com/watch?v=JFApYqlJosgをクリックしてください。

植村直己冒険賞受賞 岡村隆さん(70歳/定年退職者)

2019-02-13 14:50:34 | 定年後


2018年度の植村直己冒険賞を、岡村隆さん(70歳)が受賞した。植村直己氏の母校明治大学で、2月12日に発表された。
岡村隆さんは、法政大学探検部に所属している時から、スリランカの遺跡を調査。定年後もNPO法人を設立して遺跡の発見と継続をめざしている。
定年後も目的を持って実践し生きていこうと呼びかけているシルクロード雑学大学にとっては、見本となる生き方を実践していると思う。うらやましいし、その背中を追いかけたい。

岡村さんは、以前、月刊「望星」(東海教育研究所発行/東海大学)の編集長を務めていた。早稲田大学探検部のOBである友人が、岡村さんを紹介してくれて、「ライフワークのある人生」をテーマとした人物ルポを連載せてもらった。

また、中央アジアにあるキルギス共和国に元日本兵の抑留していた収容所があることを調べている時に、2回の連載記事で発表させてくれた。当時、日本の厚生労働省は、「キルギス共和国には、日本人は抑留されていなかった」との立場だった。担当者に会ってもけんもほろろで問題にされなかった。

だが、新聞と「望星」の記事での発表を経て、厚生労働省の見解は「日本人が抑留されていた収容所はあったが、ひとりも現地で亡くなっていないので記録がない」と説明の方法を改めた。キルギス共和国にも、元日本兵が抑留されていたことを認めたのだ。
キルギス共和国のイシククル湖南岸にあるタムガ村に抑留されていた元日本兵などは、125名。全員が生きて帰国している。その為に、厚生労働省は、「日本人抑留者はキルギス共和国にいなかった」としていたのだ。抑留者全員が一人の死者も出さずに帰国できたことは、誇ってもいいことだと思う。厚生労働省の姿勢は、今でもとても残念に思っている。

情報が不確かな時に、わたしの取材を認めて原稿を発表させてくれた元編集長岡村隆さんに感謝する。その編集方針の背景に、岡村さん自身が未知とは言え歴史の事実を追い求めて「探検」活動を続けていたことがあると実感した。その岡村さんの「探検」の活動を評価した植村直己冒険賞の受賞をうれしく思う。おめでとうございます。

また、岡村さんの志を一緒になって追いかける若者のいることを頼もしく思う。
一方、定年後の人たちも夢を思い出して、歩み出し、夢を追いかけてほしいと願う。
夢を追いかけ続けるテーマは、シルクロードにもある。是非、定年前も後も地球のあちこちで、夢を追いかけて人生を楽しんでほしい。

 

「定定年後も学生時代からの夢を追い遺跡発見 岡村隆さん」を見たい方は、こちらをクリックしてください。

「シベリアの民主運動」淡徳三郎 

2019-02-08 20:46:50 | 中央アジアのシベリア抑留

資料を整理していたら「改造」1948年10月号に淡徳三郎氏が書いた「シベリアの民主運動」という記事があった。

淡徳三郎氏は、特待生として京都大学を卒業後、共産党員として警察に追われる中でフランスに渡航し、ドイツ、モスクワを経て満州で敗戦を迎え、中央アジアのカザフスタンにあるアルマトイの収容所で捕虜と過ごしている。戦前から戦後にかけての話だ。

シルクロード雑学大学の会員にシベリア抑留者の事を調べていると話したら、淡徳三郎氏のお嬢さんと高校・大学と同級生だったと教えてくれる人がいた。高校生の時に淡徳三郎氏のお嬢さん招かれて杉並にある自宅へ遊びに行き、父親の淡徳三郎氏とも話したことがあるという。淡徳三郎氏のお嬢さんもその同級生も青山学院大学で学び、お嬢さんは母校の教授として英語を教えたのち定年退職。今は他の大学で講師として英語を教えている。父から、様々な意見や情報を得るうえで外国語が大切だと繰り返し教わったという。


わたしもインターネットで調べてみた。淡徳三郎と日本の古本屋というサイトで検索したら、シベリア抑留から帰国後、多くの著作物を持つ評論家だったことがわかった。
淡徳三郎とAmazonでも検索してみた。こちらでも著作物を知ることができた。シベリア抑留と関係のありそうな本を、何冊か購入したのは数年前の事だ。

「三つの敗戦」には、アルマトイの収容所生活のことも記述されている。数冊だが、Amazonでも1800円くらいから1万円くらいまである。

戦前の共産党員でフランスに渡航している。シベリア抑留中に民主運動に関わっている。後者に関して調べたいと思っていた。シベリア抑留の中でも民主運動の事はよくわかっていない。淡氏の文章を読んで、民主運動も多彩だったこと、ソビエト側が方向性を決めるのではなく、抑留された日本人の中で早く帰国したい人などが方向を決めたように感じた。


詳しいことは今後も調べてみたい。

中央アジアにあるのキルギス共和国には、イシククル湖の南岸にタムガ村にあり、国防省のサナトリウムの中に泥治療の診療所があり、この建物の中にキルギス平和センターがある。泥治療の診療所は、抑留されていた元日本兵が建設に関わっている。2007年の夏前まで、キルギス共和国にソ連に抑留された日本人の一部の人がいたことを、日本の厚生労働省は認めなかった。だが、シルクロード雑学大学が、キルギスで「日本人が建設に関わった」と伝わる建物、「日本人と一緒に働いたことがある」といったキルギス人を紹介する写真展を開催した。この写真展を知らせる新聞記事を読んだ方からシルクロード雑学大学に電話があった。2007年9月の事だった。電話の主は、キルギスに抑留された元日本兵だった。元日本兵からの連絡で、キルギスにも日本人が抑留されていたことが明らかになったのだ。

中央アジアにあるトルクメニスタンにも抑留された元日本兵が建設に関わった建物がある。厚生労働省によれば1700名あまりが抑留されたとされる。トルクメニスタンに抑留された元日本兵にインタビューしたところ「2200名が抑留されていて、200名以上の穴を掘った」と証言していた。

中央アジアにある各国における日本人抑留者に関して、調査はあまり進んでいない。ソビエト時代に、入国が困難だったことも影響していると思う。各国を旅行して日本人抑留者に関して実態を調べて報告すれば、マスコミで発表できる可能性も高いと思う。また、日本のテレビ番組の「おしん」は、中央アジアでもテレビでも放映されており、日本に親しみを持つ市民も多い。日本に親しみを持っている人が多いのだ。日本の熟年の方たちに、定年後の生きがいとして、中央アジアの日本人抑留者の事を調べてほしいと願っている。新発見があれば、新聞やテレビで紹介されることは間違いない。一躍、専門家だ。
自分の見つけた世界、歴史の真実を発見して社会に提示してほしいと思う。

ロンドン、パリ、ローマもいいけれど・・。定年後、歴史の真実を発見するテーマを楽しむことはおもしろいし、社会的に意味がある発見に結びつく。

「中央アジアの日本人抑留者」に関心のある方はこちらをクリックしてください。
「シベリア抑留」に関心のある方は、こちらをクリックしてください。

中央アジアの子どもたちの絵

2019-02-04 16:14:07 | シルクロード中央アジア
  
東京都港区六本木にある国立新美術館へ行った。シルクロードの子どもたちが描いた絵の展示会、最終日だったのだ。絵は、カラフルなものが多いと感じた。服装、草原か、山岳部が多いか、家はユルタなのか(テントのような移動式の家屋)などの違い、中央アジアの各国の風土や民族の特徴も絵に現れていると感じた。

  
ウズベキスタンの子どもたちが描いた絵。夏の風物詩ともいえるスイカ。中央アジアのスイカは大きくて甘い。傘をさしている女の子は、雨を喜んでいる風だ。砂漠の雨は、恵みの雨と言われている。雨の後は、空気が澄んで遠くの山の雪景色もはっきりとみられるようになる。また、雨の後に一気に花が咲くのも砂漠の雨の特徴。

  
カザフスタンの子供たちが描いた絵。草原の中にユルタという移動できる住まいがあり、遊牧民の末裔だとよくわかる。また、砂漠の船と言われるラクダはフタコブラクダだ。

 
キルギスの子供たちが描いた絵。緑が豊かな暮らしのようだ。山が多くきれいなのだろう。子どもの目には、草原と山が身近な風景であり自然の様だ。また、国旗が描かれており、自分の国に誇りや愛着を持っているように感じられる。雨が降れば、次には虹が現れる。それが当然なのだろう。わたしも昨年の夏、キルギスイシククル湖の東にある街で夕立にあった。そのすぐ後に、二重になった虹が草原を覆っていた。
モノクロの絵は、「マナス」という口承で伝わる伝説を、絵にしたものと思われる。「キルギス人の祖先は勇壮だった」と伝わっているが、伝説の物語が子どもたちの心を支えているのかもしれない。

   
タジキスタンの子供の絵。16点が展示されていたが、10才の子供が一人で描いたようだ。絵が好きなのだろう。イランとの文化的なつながりの深いことが感じられる。また、お面をしている様な絵は、何を表してるのだろうか。ちびまる子ちゃん風でかわいい。民族独特の文化を表しているのだと思うのだが。また、馬は身近な動物だと思った。キルギスで見た小学校2年生くらいの子供たちは、日本の子供たちが自転車で遊びに出掛けるような感じで馬にまたがっていた。わたしはまだ、タジキスタンへ行ったことがない。先日の国際シンポジウムで会ったドシャンベの国立博物館の館長は「ぜひ来てほしい」と誘ってくれた。行きたいなあ。

  
トルクメニスタンの子供たちの絵。親戚一同で草原で過ごしている風景か。砂漠の国で地下資源が豊富、加えて自然の豊かな地域もあるように思った。アムダリアの西に圧トルクメニスタンでは、ヒトコブラクダが多い様だ。
また、カスピ海の風景と思われる絵は、日常生活を描いたものだろう。約70年前、カスピ海の沿岸に抑留された元日本兵の中で北海道出身の漁師がいた。「トルクメニスタンの人たちの漁業を指導した」と抑留された元日本兵の手記を読んだことがあることを思い出した。その後、トルクメニスタンの漁師もたくさんの魚を捕ることができるようになったらしい。キャビアもたくさん捕れる国だ。
他の中央アジアの子供たちの絵と比べると、絵を描いたトルクメニスタンの子供たちは年齢が上だった。絵がうまいだけでなく、特別に勉強をしている風でもある。展示の中ではレベルが高い。トルクメニスタンの人たちの日常的な暮らしを感じたいとも思った。
漠の国と言われるトルクメニスタンもイランとの国境には山があり、ブドウの産地だと聞く。ワインもおいしいそうだ。10年ほど前、トルクメニスタンからの留学生が教えてくれた。

この中央アジアの子供たちの絵の展示は、何年続いているかわからないが、地元の人たちの暮らしや風土を知る上ではとても役にたっている。10歳くらいまでの子供たちの絵には、暮らしや遊びが描かれているケースが多い。その点が面白いと思う。

美術館での展示だけでなく、カラーコピーでもいいので、各地の小学生に見てもらえる様な試みに広がってほしいと願っている。開催している人は大変だと思う。でも、日本の子供たちが異文化に接するチャンスでもある。逆に日本を伝える取り組みがあるといいと思う。相互理解のためにも広げてほしい。JR東日本などが、電車の車内に展示をしてくれたら乗客の心も和むし、旅情を醸し出すこともできると思う。