Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

シューベルト「ヴァイオリンとピアノのための作品全集」から2

2024年01月12日 19時49分37秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等



 CDで2枚組であるが、1枚目のソナチネといわれる3曲と、2枚目のソナタ、幻想曲との間には大きな飛躍という名の溝が横たわっている。前者が習作、後者が完成品というほどの差が感じられる。
 いづれも過去に幾度となく聴いていた記憶がよみがえってきた。前者と後者の違いは、ヴァイオリンの響きである。ヴァイオリンという楽器が良く鳴るポイントを習得して曲に仕上げたといえる。
 弦楽器というのは、ある音を奏でたときに、弦や楽器自体が共鳴する。その共鳴の度合いで自分の弾いている楽器の状態もよくわかる。弦を押さえる指に伝わるかすかな感覚でその日の楽器の状態や自分の状態がよくわかるものである。これで部屋の湿度・温度、周囲の音の反射の具合も図ることができる。演奏者自身の体調すらもわかる。
 不思議なもので、メロディーの要となる音がヴァイオリンの良く響く音と重なると弾きやすく、そして良く響く。優れた曲はそういう要の音を心得て作られている。楽器の特製を作曲家が踏まえている、というのはこういうことなのか、と弾いているとおのずと理解できる。調性の選択も合点がいくものが多い。

 CDの1枚目と2枚目の違いは、この響きを体得していない作曲家と体得した作曲家の違いのように大きいと感じた。
 わずかな期間でシューベルトはその大きな溝を飛び越えたのだろうと感じたCDである。2枚目は今後も繰り返し聴きたい曲としたい。これまで意識して聴いてこなかったのがもったいなかった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。