Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

2019年06月22日 21時58分34秒 | 俳句・短歌・詩等関連
空に残っていた雲も少なくなり、風も緩やかで静かな夜である。

★人殺す我かも知らず飛ぶ蛍       前田普羅

 少しだけ調べてみたがこの句がいつ作られたのかはわからない。戦争に起因する時代背景をうかがう記載もあるが、はっきりはしない。
 あるいは、蛍が飛ぶ闇を作者、あるいは人の心の闇とを重ね合わせて読もうとする記事も多い。
 多分どちらの読みも間違ってはいないと思われる。私は後者の読みに惹かれる。私がこの句を目にするときは必ず「物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る」(和泉式部)を思い出す。蛍を人の魂が悶えるように染み出たものという連想がある。あるいは蛍が人の心の奥に潜む情念を浮かび上がらせるものとして。例えば「蛍火に闇のまんなかありにけり(鈴木蚊都夫)」、「蛍飛びこの世あの世のゆきもどり(木下星城)」、「蛍狩して魂を置いてきぬ(関戸靖子)」、「蛍火の明滅滅の深かりき(細見綾子)」、江戸時代の句でも「川ばかり闇はながれて蛍かな(加賀千代女)」など。
 飛び交う蛍に、ひょっとしたら人を殺してしまうかもしれない、自分自身を失うこと、道を踏み外してしまうこともあると、自問自答し続けるのが人である。
 蛍が飛んでいる闇は人間の心の闇を映し出す。他人ばかりか自分自身にさえもわからない何かが沁み出てくるものがある。強い情念の世界かもしれない。それは人との関係であったり、社会や組織に対する思いであったりする。
 さらに飛ぶ蛍の光は、妖しい情念の不可思議な存在を思わせる。それを男女の関係の不可思議につなげることもある。


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