今晩から明日の未明にかけて霙になる可能性がある、と思ってネットで「みぞれ」の俳句を探してみた。私の気分と合致するものは見つけられなかったが、心にひかかった句を4句ほど。
★よろよろと枯れたる蓮に霙れけり 日野草城
★墓の文字幾たび消しに来る霙 福田甲子雄
★夕霙みんな焦土を帰るなり 下村槐太
第1句、むろん「よろよろ」は作者自身のこと。作者がいくつくらいの句かはわからないが、晩年あるいは、老いを感じたときの句と理解してみた。議論に疲れたときの気分の句にしては、あまりに色彩がなさすぎる。枯れ蓮と霙と凍えかかった水の色しか思い浮かばない句である。私が晩年の句と考えた理由である。
第2句、雪の場合は積もってしまえば、1度だけ消える。しかし墓石をつたう水はきわめて冷たい。ふんわりした雪に覆われたほうが暖かい。幾度も融けて流れる水滴のその冷たさに文字まで震える。墓には作者の思い入れの強い人も眠っているのである。その人に対するひょっとしたら謝罪の気分がどこかにある句ではないか。すこしうがちすぎかもしれないが。
第3句、戦後間もなくの情景。生き残った人々がまだ灰燼に帰したままの都会を歩いて帰宅する。帰宅する家のある人はまだいい。そしてそんな焦土の中でも人々の生活のための生業は続く。