引っ込み思案で余計なお節介なんてやけない性格で、
大人として節度のある距離感をもって人と接することができる。
自分ではいたって普通のどこにでもいるティピカルジャパニーズだと思っている。
ちょいと前のお話。
こんなことがあった。
場所はコーヒーショップ「タリーズ」。
そのタリーズは街中にあるのではなく、
病院内というやや特殊な立地条件であるため、
色々な客が訪れる場所だった。
車いすの客、
赤ちゃんを抱っこした客、
点滴をしたままの客などなど。
当然、年齢性別も様々。
その日、私はコーヒーを飲もうと並んでいた。
前には明らかにこういった場所になれていない高齢の女性がいた。
しばらくして、女性の番が来た。
すると、女性はコーヒーを注文しようとしないで、何か言っている。
しかし、女性の声が小さいのと、
女性が何を言わんとしているのかはっきりしないため、
店員も何度か聞き返して一向に埒があかない。
しばらくして、
どうやらこの女性は外にあるタンブラーが欲しいらしいぞ、
ということが、私にはわかってきた。
しかし、店員はその意をなかなか汲んでくれない。
相変わらずのすれ違う二人。
後ろに並び、
女性の目的を察知した私は、
その女性に向かい、
かつ店員に聞こえるような声で、
「あそこのタンブラーが欲しいんですよね」
と、すばやく助け船を出した。
ああ、なんて親切な私。
ああ、なんてフレンドリーな私。
ああ、なんて機転の利いた私。
「ああ、そうなんですか」
「ありがとうございます」
「いえいえ、そんな」
「今時珍しい方ですねえ」
「いえいえ、当然です」
「こんな素敵な人がまだ日本にもいるのね」
「まだまだ日本も棄てた物ではありませんね」
そんな会話が繰り広げられ、
照れ屋の私は、ややいたたまれなくなり、
注文したコーヒーを受け取って、
すぐに店をあとにした。
店内ではスタンディングオベーションがいつまでも鳴りやまなかった。
そうなるはずだった。
しかし、そんな私の妄想を打ち破ったのは、
他でもない、女性の沈黙だった。
簡単に言うと、無視。
絶対に私の声は届いているはずなのに、
その女性はあたかもなにもなかったかのようにしている。
当然、こちらを見ることもない。
いや、あえて見ようともしていないようだった。
絶対聞こえているからこその、その態度。
え、なんで?
そこで気づいた。
これが日本なのだ。
これが東京なのだ、と。
中国ではあり得ない。
全然知らない人が、
ガンガン話しかけてくる。
当たり前のように話しかけてくる。
なんか、ちょっと悲しくなった。
大人として節度のある距離感をもって人と接することができる。
自分ではいたって普通のどこにでもいるティピカルジャパニーズだと思っている。
ちょいと前のお話。
こんなことがあった。
場所はコーヒーショップ「タリーズ」。
そのタリーズは街中にあるのではなく、
病院内というやや特殊な立地条件であるため、
色々な客が訪れる場所だった。
車いすの客、
赤ちゃんを抱っこした客、
点滴をしたままの客などなど。
当然、年齢性別も様々。
その日、私はコーヒーを飲もうと並んでいた。
前には明らかにこういった場所になれていない高齢の女性がいた。
しばらくして、女性の番が来た。
すると、女性はコーヒーを注文しようとしないで、何か言っている。
しかし、女性の声が小さいのと、
女性が何を言わんとしているのかはっきりしないため、
店員も何度か聞き返して一向に埒があかない。
しばらくして、
どうやらこの女性は外にあるタンブラーが欲しいらしいぞ、
ということが、私にはわかってきた。
しかし、店員はその意をなかなか汲んでくれない。
相変わらずのすれ違う二人。
後ろに並び、
女性の目的を察知した私は、
その女性に向かい、
かつ店員に聞こえるような声で、
「あそこのタンブラーが欲しいんですよね」
と、すばやく助け船を出した。
ああ、なんて親切な私。
ああ、なんてフレンドリーな私。
ああ、なんて機転の利いた私。
「ああ、そうなんですか」
「ありがとうございます」
「いえいえ、そんな」
「今時珍しい方ですねえ」
「いえいえ、当然です」
「こんな素敵な人がまだ日本にもいるのね」
「まだまだ日本も棄てた物ではありませんね」
そんな会話が繰り広げられ、
照れ屋の私は、ややいたたまれなくなり、
注文したコーヒーを受け取って、
すぐに店をあとにした。
店内ではスタンディングオベーションがいつまでも鳴りやまなかった。
そうなるはずだった。
しかし、そんな私の妄想を打ち破ったのは、
他でもない、女性の沈黙だった。
簡単に言うと、無視。
絶対に私の声は届いているはずなのに、
その女性はあたかもなにもなかったかのようにしている。
当然、こちらを見ることもない。
いや、あえて見ようともしていないようだった。
絶対聞こえているからこその、その態度。
え、なんで?
そこで気づいた。
これが日本なのだ。
これが東京なのだ、と。
中国ではあり得ない。
全然知らない人が、
ガンガン話しかけてくる。
当たり前のように話しかけてくる。
なんか、ちょっと悲しくなった。