蛇口が取れた

4年半の杭州生活を終え、ついに帰国。現在、中国人化後遺症に悩まされ、好評リハビリ中。

お世話になりました

2010-12-30 14:57:23 | リハビリ
今年一年、ほんとにいろいろな方にお世話になりました。
新しい出会いもあり、生活も激変し、
とにかく、にぎやかな一年となりました。

無事過ごせたのも、みなさまのおかげです。
ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。

にしても、久々の日本の正月。
五年(六年?)ぶり。

なので、年賀状も久しぶり。
と思っていたら、さきほど、大きなミスに気がつきました。
もう出してしまったので後の祭り。
もし、お手元に届いた方は、

「ああ、あいつ、やっぱりリハビリ終わっていないんだな」

と、新年早々あきれはててやってください。

では、よいお年を。


*写真は、杭州の元代に作られた磨崖仏

空気のような存在

2010-07-05 18:34:21 | リハビリ
引っ込み思案で余計なお節介なんてやけない性格で、
大人として節度のある距離感をもって人と接することができる。
自分ではいたって普通のどこにでもいるティピカルジャパニーズだと思っている。

ちょいと前のお話。
こんなことがあった。
場所はコーヒーショップ「タリーズ」。

そのタリーズは街中にあるのではなく、
病院内というやや特殊な立地条件であるため、
色々な客が訪れる場所だった。

車いすの客、
赤ちゃんを抱っこした客、
点滴をしたままの客などなど。
当然、年齢性別も様々。

その日、私はコーヒーを飲もうと並んでいた。
前には明らかにこういった場所になれていない高齢の女性がいた。
しばらくして、女性の番が来た。

すると、女性はコーヒーを注文しようとしないで、何か言っている。
しかし、女性の声が小さいのと、
女性が何を言わんとしているのかはっきりしないため、
店員も何度か聞き返して一向に埒があかない。

しばらくして、
どうやらこの女性は外にあるタンブラーが欲しいらしいぞ、
ということが、私にはわかってきた。
しかし、店員はその意をなかなか汲んでくれない。
相変わらずのすれ違う二人。

後ろに並び、
女性の目的を察知した私は、
その女性に向かい、
かつ店員に聞こえるような声で、
「あそこのタンブラーが欲しいんですよね」
と、すばやく助け船を出した。

ああ、なんて親切な私。
ああ、なんてフレンドリーな私。
ああ、なんて機転の利いた私。

「ああ、そうなんですか」
「ありがとうございます」
「いえいえ、そんな」
「今時珍しい方ですねえ」
「いえいえ、当然です」
「こんな素敵な人がまだ日本にもいるのね」
「まだまだ日本も棄てた物ではありませんね」

そんな会話が繰り広げられ、
照れ屋の私は、ややいたたまれなくなり、
注文したコーヒーを受け取って、
すぐに店をあとにした。
店内ではスタンディングオベーションがいつまでも鳴りやまなかった。


そうなるはずだった。

しかし、そんな私の妄想を打ち破ったのは、
他でもない、女性の沈黙だった。
簡単に言うと、無視。

絶対に私の声は届いているはずなのに、
その女性はあたかもなにもなかったかのようにしている。
当然、こちらを見ることもない。
いや、あえて見ようともしていないようだった。
絶対聞こえているからこその、その態度。

え、なんで?
そこで気づいた。
これが日本なのだ。
これが東京なのだ、と。

中国ではあり得ない。
全然知らない人が、
ガンガン話しかけてくる。
当たり前のように話しかけてくる。

なんか、ちょっと悲しくなった。

基本の喪失

2010-05-19 00:57:41 | リハビリ
今日、区役所に行った。
書類を提出するためだ。

しばらくは順調に過ぎていった。
一ケ所目ではなんの問題もなく終わった。
問題が出たのは二ケ所目の窓口に行った時。

国から少しばかりお金を分捕る算段をしているとき、
今日は別にそんな手続きをする予定ではなかったので、
銀行の口座と保険証など持っていっていなかった。

なので、
「コピーしてあとで送って下さい」
と、宛先が印刷された封筒が渡された。
もちろん、切手は自分で貼って。

私は、
「はい、わかりました」
と素直に返事をしたものの、
ひとつどうしても気になることがあった。

しかし、へっぽこな私は悩んだ。
引っ込み思案の私は大いに悩んだ。
聞くべきなのか、それともそのままスルーすべきか。

だが、今聞かないと、
またあとで誰かに聞くことになる。
じゃあ、もうここで聞いてしまえ、
清水の舞台から靴を脱いで両足揃えて跳んでしまえ、
とばかりの決心を持って、ついに尋ねた。

弱々しい声で、
上目遣いで、
濡れそぼった子猫のように。

「すいません、切手って80円でしたっけ?」

ああ、基本中の基本。
日本国民としての常識。
それすらも忘却しつつあったのであった。

パブロフってる

2010-05-05 00:51:54 | リハビリ
まさに、ヨダレだらーな感じ。
そんな条件反射が誰にでもあるはずだ。

本屋の料理本コーナーに行ったとたんに腹がグーと鳴るとか、
電車の中でぶつかられると、その人を半分白目で睨んでしまうとか、
これからの季節、乙女らの脚につい目がいってしまうとか、
街中でいちゃいちゃしているカップルを見かけると、つい呪詛してしまうとか。
品行方正な私は、もちろん、そんなことはいたしませんが。

そんな由緒正しき家柄の子女である私にも条件反射はある。

職場でのこと。
その日、ようやく私の部屋にパソコンが届いた。
早速、箱からだし、もろもろセッティングをしていた。
元来、機械類に弱い私は、あれやこれや苦心しながら闘っていた。
もちろん、パソコン設定にのみ意識は集中していた。

まさに条件反射が出現する絶好のとき。

突然、部屋がノックされた。
同僚が用事があって来た模様。

私は当然、返事をする。
パソコンに意識を残しながら、返事をする。
相手に聞こえるように大きな声で、返事をする。
なんのためらいもなく大きな声で、返事をする。

そして、
私はこう叫んだ。

「請進!」

と。

ああ・・・
中国語だぁ・・・
完全に無意識だ・・・
ヨダレだら~だ・・・


*写真は小石川後楽園の「西湖堤」。条件反射で撮影。

似て非なる状況

2010-05-02 00:34:08 | リハビリ
最近、ようやく治ってきたことがある。

先月の初め頃、
若い子たちがいっぱいいる場所へ行った。
というより、現在の職場なんだけど、
とにかく、若い子たちがいっぱいうろうろしている。
そこで、少しばかり戸惑ってしまったことがある。

みんなに話したら、
「イヤ、それは私もそうだよ」
と、何人かの人たちに言われた。
でも、違うと思う、少し。
いや、かなり。

さて、何を戸惑ったのか。
それは、
「道ですれ違う若い子たちが何を言っているのか、一瞬わからなかった」
ということ。

恐らく、これを読んでいる人も、
「ああ、私もそうだよ。最近の子たちの言葉はねえ。」
と思うかもしれない。

だけど、そうじゃないのです。
ボクは、彼ら・彼女らが「何のことを言っているのか」がわからないのではなく、
彼ら・彼女らが「何語を話しているのか」が瞬時に判断できなかったのです。

よく冗談で、
「あいつの話している言葉は外国語みたいでわからないよ」
というけれど、
本気で、外国語のように聞こえてわからなかったのです。

つまり、彼ら・彼女らの言葉に声調がついていて、
その声調にボクの耳が反応し、
一瞬、中国語で会話しているように聞こえるんだけど、
当然、中国語としての意味を成していないので、
何を言っているのか、さっぱりわからなかった。

そして、しばらくして、
「ああ、日本語を話しているんだ」と理解して、
ようやく、内容が頭で理解できるようになった。

今はもうそんなことはほとんどないけど、
不意をつかれたら恐らくわからないかもしれない。

似ているけど、違うでしょ。

ブルータス、お前もか・・・

2010-04-29 01:04:16 | リハビリ
先日、みんなで飲んだ。
会合のあとにみんなで飲んだ。
会場近くの飲み屋で飲んだ。
屋根まで飛んで、壊れて消えた。

ってなわけで、飲み会に参加した。
人数が多く、テーブルが三つになった。

ボクが座ったところには、
一人、韓国人留学生が居た。
日本語も大変上手く、優秀な留学生だ。

さて、宴もたけなわ。
ボクは例によって騒いでいた。
好き放題しゃべっていた。
大きな声でしゃべっていた。

いろんな話題で盛り上がっていた。
意見が異なることもあれば、
意見が一致することもあった。
いつもどおりの展開のように見えた。

でも、なぜか韓国人留学生にこう言われた。

「しゅいえほんさんって、日本人ではないですね」

ん?
んん?
んんん?
んんんん?

敵は本能寺にあり

2010-04-27 00:48:59 | リハビリ
ご無沙汰です。
みなさん、
いかがお過ごしですか?

私は、日々リハビリに励んでいます。
何とか日本の習慣に馴染もうと頑張っています。

などと書いていますが、
実際のところ、
心の奥底では、
「リハビリなんて、ほんの冗談さ」
と思っています。

だって、そうでしょ。
よく考えてごらんなさい。

生粋の日本人である私が、
ほんのちょっと故郷を離れ、
異国で過ごしたところで、
日本人魂を忘れるわけがない。
身に付いた生活習慣や思考回路がそんなに簡単に変わるわけがない。
そんな染まりやすい性格のわけがない。

本気でそう思っております。

しかし、どうでしょう。
世間にはそう見えないこともあるようです。
しかも結構身近な人たちにも。

ちょっと前の話。
家族で食事をしていた時の話。

私には、両親の他に妹が一人います。
彼女はすでに結婚し、
とってもカワイイ子どもたちもいます。

そんな彼女たちも一緒に食事をした時に、
私がいつもの調子で、
「いやー、中国人っぽくなっちゃって、困るよ~」
と、心にもないことを言ったりしていました。

当然、私は、
「え、そうなの?全然日本人じゃん。」
「ちょっと中国に行ったからってかぶれるなよ。」
くらいの突っ込みを期待していました。

そんな突っ込みを入れられた私は、
調子に乗ったことを後悔し、
ちょっと自己嫌悪に陥ったりする感じを想像していました。

しかし、どうでしょう。
妹は、さも当然というように、
「うん、そうだね。私もそう思う」
と、言い放ったのでした。

そんなことには、
今更興味などないという態度を前面に押し出して。

私は二の句が継げませんでした。
一体彼女はどこをどう見て、
そう判断しているのでしょうか。
恐ろしくて聞けません。

妹にとってもう兄は異国の人と映っているのでしょう。
選挙権もなく、住民票もない人と思われているのでしょう。
道でお巡りさんに、外国人登録証を提示させられていると思っているのでしょう。
赤い靴を履いていたら、さらわれると思っているのでしょう。

ああ、恐ろしや。

リハビリの道は長いようです。