蛇口が取れた

4年半の杭州生活を終え、ついに帰国。現在、中国人化後遺症に悩まされ、好評リハビリ中。

めずらしくまじめな話題

2006-10-16 14:45:33 | 歴史・文学
中国(上海)でも歴史教科書が問題となっているようです。

http://news.enorth.com.cn/system/2006/10/15/001433736.shtml

発端は『ニューヨークタイムス』に載った記事。
「中国の教科書で、毛沢東の記述が減った」ということに対し、中国国内で大論争に発展しているそう。

この記事は、この教科書問題に関するインタビュー(上海大学歴史系朱学勤教授)が中心なんですが、
新教科書では今までの教科書のように、教条主義的・丸暗記的なものではなく、学生自身に考えさせる(権利と義務はどこにあるかなど)ものになっていること、
階級闘争・暴力革命などの歴史観を薄め、開放的で世界史と中国史との融合をはかっていることなどを目指していること。
さらには、今までの教科書では社会の不公平・不公正に対して立ち向かう手段は「暴力」だと教えていたと強く指摘。
「文革」の紅衛兵の所業は、こういった教育によるものだとも述べて、
「狼のミルクを飲ませる教育で、これでは狼しか育たない!!」と強い口調で非難しています。
こうした暴力に対し、「法律」によって立ち向かうべきことを主張しているのがこの新教科書とのこと。

そして、注目すべきは、植民地時代と愛国教育に関する発言。
植民地政策と反植民の歴史は、統治と反抗の歴史ではあるが、一方で文明導入と文明拡大発展の歴史でもあると捉えております。
さらに、愛国教育はどこの国でもやっているけれど、中国のように、強固で無理矢理詰め込むようなものはない、と指摘。(比較した例はアメリカの教育)

結果、朱氏は暴力史観・革命史観・王朝体系史観などに変わって、文明史観・文化史観・社会史観(どうやらこれらの言葉に含意しているものは、一般庶民の歴史、民衆史のようです)を目指すべきだと主張しています。

実際、彼は大学1年生・院生1年にはまずはいままで学んできた歴史をひとまず忘れることを指示しているとのこと。
さらには、今年より始まった院生の全国共通試験に反対し、院生を取らない宣言もしたそうです(なかなか骨のある漢)。

最後に記者も問題としていますが、なんで上海でこういった動きが出てきたのか、というのは気になりますね。
一方では記憶にあるとおり、昨年大規模な反日デモが行われてもいます。一方ではこうした新しい動き。
上海はなかなか興味深い地域です。

ちなみに、杭州はというと・・・

ちょっと前中国で話題になった『東京審判』という映画(未見)。
内容は東京裁判に判事として列席した中国人判事の視点で描いたもの。すでに各方面でいろいろいわれているらしいですが、未見なのでよくわかりません。
ただ、かなり中国愛国的内容であると言うことだけは確かなよう。
そして、聞いた話によると、杭州のいくつかの大学で新入生に対し、この映画を教育的見地から見せたらしいです。

う~ん。