日本百名山の著者深田久弥氏は、石川県江沼郡大聖寺町(現加賀市)に生まれた。そこは私の故郷でもある。久弥氏と私は同じ小学校を卒業した。
久弥氏が故郷の山と呼ぶのは白山であり、私にとってもそれは同じだが、私にはもう一つ故郷の山がある。鞍掛山である。
冒頭の写真の中央の山が白山で、右端に写るのが鞍掛山である。誰が見ても見紛うことのない山であり、その名がどこから来ているかが分かる山でもある。
たまたま空いた休日に私は鞍掛山に出かけた。中学生の時に登って以来、50年ぶりの鞍掛山登山であった。
登山口は小松市の滝ヶ原にある。午前8時に駐車場に車はなかった。
登山口から直ぐに道は二つに分かれ、私は標識に従って西ノ谷に進んだ。西ノ谷は鞍掛山の最も人気の登山道である。
2月だというのに道には雪がなく、道端のシダ類が青々と茂っている。森を形成する樹木はマツやコナラなどを主体にしているように見えた。
道は何度も折れ曲がり標高を上げていく。所々大きな岩の上を歩くが、ステップが切られていて不安はない。
しばらく歩くと左手に鞍掛山の山頂が見えてきた。階段は段差が緩やかで歩きやすい。
20分ほど歩き、傾斜が少し急になったところで、道の先に空が見えた。空が見えるということはピークが近いということだ。
案の定、小さなピーク、舟見平に到着した。
鞍掛山には舟見山という別称がある。これは北前船の時代に、この山が日本海の航路目標だったことに由来している。この山の形は確かに目印になるだろう。
そして、その名の通り、舟見平からは日本海がよく見えた。
また、同時に鞍掛山の山頂もよく見えた。見上げるとかなりの急勾配である。
舟見平からは一旦少し下り、緩やかなアップダウンとなる。道脇にはシャクナゲの木も見られた。
予想通り道は勾配を増していく。このまま急登が続くのだろうか。
雪も現れてきた。勾配が増して雪が付くと滑らないだろうか。
そんな心配は無用で、山頂付近は勾配が緩やかとなった。
そして、青空が広がる山頂に着いた。たった45分の登山であったが、歩きやすく楽しい道であった。
鞍掛山の山頂からの眺めは素晴らしい。何をおいても白山が別山を含めてよく見える。
しかし、残念なのはこの時間は逆光となり写真撮影には適さない。そうは言っても次の予定もあり、夕方までここで待つわけにはいかない。
と、言い訳して白山連峰の写真を観ていただきましょう。
先ずは、白山の主峰で尖がって見えるのが御前峰(2702m)と丸く見える大汝峰(2684m)。大汝峰の右に少し顔を出しているのが剣ヶ峰(2677m)。
御前峰から右に目を進めると別山(2399m)が見える。
逆に左に目を移すと日本二百名山の笈ヶ岳(1841m)とその左奥に大笠山(1822m)が見える。
振り返って目を西に向けると富士写ヶ岳が正面に見える。こちらはこの時間が順光である。
そして、日本海方向。
アップで写すとかなり細部まで見える。こちらは柴山潟と片山津温泉方面。
20分ほど鞍掛山の山頂を独り占めし、写真も十分撮ったので下山することにした。下りのルートはやはり人気の行者岩コースである。
下り始めると直ぐに避難小屋に着いた。
行者岩コースは避難小屋から左に分岐している。標識には鞍掛山散策道とある。真っすぐ進むと後山を経て、加賀市の塔尾登山口に通じる。
道脇には雪があるが、道は乾いている。この季節北陸の山道が乾いているのは不思議だ。
さらに進むと行者岩が現れた。この岩の下部はオーバーハングになっていて、雨露をしのぐに十分の広さがある。岩に登ろうかと思ったが、今回は止めにした。
行者岩から下ると仙人滝がある。清らかな滝は気持ちがよい。
登山道は沢沿いに進む。沢に入ってみた。水は冷たくなかった。
滑滝もあり、夏場は特に楽しいだろう。
何度か沢に入り遊びながら進むといつの間にか中ノ谷登山道と合流した。下りの方が30分も長くかかった。どこで遊んだのだろう。
下りは2名の登山者とすれ違った。そして駐車場に戻ると30台ほどは停まれそうな駐車場は満車で、下にある別の駐車場も満車だった。
平日だというのに人気の山である。それだけの魅力が十分にある山である。
全国に何カ所かある鞍掛山の一つが貴兄の故郷にあることは以前お聞きしておりましたが、登られたのは50年ぶりでしたか。
下界の街並みは変わっても白山連峰などの山なみは当時と変わっていないことでしょう。
白山の名前に相応しい御前峰、大汝峰、剣ヶ峰などの姿、逆光とはいえ素晴らしい写真を見せていただき、昨年の山行を思い出しております。
それにしても雪がありませんね、当地の鞍掛山には例年残雪が消えかかる4月に登りますが、写真を拝見し登山道の様子が何となく似ていると思いながら、なおさら雪解けが待ち遠しくなりました。
ふるさとの山はありがたきかな ですね。
過日、山梨の茅ヶ岳に登り、そのまま長野方面へ車を走らせました。松本から上高地へ、そして県境を越えて平湯へ入りました。
翌朝早く衝動から富山、石川へ移動し、実家に立ち寄ることもなく、墓参りもせず鞍掛山に登りました。
本文にも書きましたが、50年ぶりの鞍掛山でした。
各地で愛されている地元の名山は、不思議なくらい趣が似ています。
登山道が整備され、道標もこんなに要らないだろうというくらいあり、要所にはベンチがあります。
毎日登っているお年寄りがいて、遠くからの登山者には皆さん親切です。
この日は私が朝一番の登山者だと思っていましたが、今思うときっと私の前に朝飯前の登山を済ませた常連さんがいたのではないでしょうか。
ともあれ、私は誰にも会うことなく山頂に着き、そこで20分ほど景色を見て過ごせました。
山の神様がこの素敵な時間を私にプレゼントしてくれたことに、心より感謝しています。
<追伸>
3月10日(火)19時から、NHK BSプレミアムで『「ニッポン印象派 「白い山の花畑への道」』が再放送されます。
https://www4.nhk.or.jp/P5193/x/2020-01-24/44/17650/2055015/
まだご覧になられていなければ、是非ご覧下さいませ。
私の今年の白山登山は、例年より少し早めにしたいと思います。
大聖寺の市街地から白山を写したシーン、手前に鞍掛山と思われる姿を確認しましたし、御前峰、大汝峰、ちょこっと見えている剣ヶ峰も貴兄の写真と同じで嬉しくなりました。
年中枯れない滝に、白山は水の山と教えて頂いたこと、水場には水道のような蛇口があったことを懐かしく思い出しております。
あちこちで見たことのあるニッコウキスゲ、コバイケイソウ、ミヤマキンバイ、白山で初めて見たハクサンコザクラ、クロユリが綺麗に咲いていましたが、黄緑色のハクサンコザクラの芽が映った時は、フキノトウの小さい奴かな?と思ってしましました。
また、クロユリがハエを引きつけるために独特のにおいを出すことなど、興味深く拝見し30分があっという間に過ぎました。
今度白山を訪ねる時は、白山室堂と南龍ケ馬場に宿泊し、ゆっくりと楽しみたいと思いますが、このままでは新幹線の中も山小屋の雑魚寝でも新型コロナウイルスが心配です。