花と野鳥と、虫もいっぱいだった高妻山ハイキング - その② からの続きです。
キバナノアツモリソウ(ラン科アツモリソウ属)
前の記事でキバナノアツモリソウを希少種のランと書いたが、誤っていたので訂正したい。すなわち、希少種については法律で定められており、キバナノアツモリソウはその中に含まれていないのだ。
同じアツモリソウの仲間では、下記の4種が法律で定める希少種になっている。
Cypripedium guttatum チョウセンキバナアツモリソウ 平成14年(2002年)指定
Cypripedium macranthos var. macranthos ホテイアツモリ 平成9年(1997年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
Cypripedium macranthos var. rebunense レブンアツモリソウ 平成6年(1994年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
Cypripedium macranthos var. speciosum アツモリソウ 平成9年(1997年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
ちなみに、希少種に関する法律では、次のように定められている。もし、盗掘を見つけたら、すぐに警察に通報しましょう。
「希少野生動植物種」は絶滅危惧種の保護を目的に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づき種指定される。現在では環境大臣の許可をうけた場合などの例外を除き、採集等は原則禁止である。違反した場合、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられる。
さて、登山道に入ってから、すでに40種近い植物の花を観てきた。
後半に入る前に、観てきた花を整理しておこう。観てきた順に並べると、次のようになる。
春に咲くキンポウゲ科が多いが、多科に渡っている。個人的にはラン科が3種入っていることが、凄いと思う。
【草本】
カラマツソウ(キンポウゲ科カラマツソウ属)
ヤグルマソウ(ユキノシタ科ヤグルマソウ属)
ウマノアシガタ(キンポウゲ科キンポウゲ属)
ヤマオダマキ(キンポウゲ科オダマキ属)
オオバミゾホオズキ(ハエドクソウ科ミゾホオズキ属)
オククルマムグラ(アカネ科ヤエムグラ属)
サンカヨウ(メギ科サンカヨウ属)
エンレイソウ(シュロソウ科エンレイソウ属)
シャク(セリ科シャク属)
ラショウモンカズラ(シソ科ラショウモンカズラ属)
ノビネチドリ(ラン科テガタチドリ属)
クルマバソウ(アカネ科ヤエムグラ属)
ミヤマカラマツ(キンポウゲ科カラマツソウ属)
ミヤマハタザオ(アブラナ科シロイヌナズナ属)
ズダヤクシュ(ユキノシタ科ズダヤクシュ属)
オオダイコンソウ(バラ科ダイコンソウ属 )
ニリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)
シロバナタカネグンナイフウロ(フウロソウ科フウロソウ属)
ゼンテイカ(ワスレグサ科ワスレグサ属)
ハクサンチドリ(ラン科ハクサンチドリ属)
マイヅルソウ(キジカクシ科マイヅルソウ属)
ミヤマクワガタ(オオバコ科クワガタソウ属)
ゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属)
ヨツバシオガマ(ハマウツボ科シオガマギク属)
ウスユキソウ(キク科ウスユキソウ属)
イワカガミ(イワウメ科イワカガミ属)
ユキザサ(キジカクシ科マイヅルソウ属)
ツマトリソウ(サクラソウ科ツマトリソウ属)
キバナノアツモリソウ(ラン科アツモリソウ属)
【木本】
ガマズミ(スイカズラ科ガマズミ属)
トチノキ(ムクロジ科トチノキ属)
タニウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)
マルバウツギ(ユキノシタ科ウツギ属)
ベニサラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)
イブキジャコウソウ(シソ科イブキジャコウソウ属)
アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)
ウラジロヨウラク(ツツジ科ヨウラクツツジ属)
ヤマツツジ(ツツジ科ツツジ属)
ナナカマド(バラ科ナナカマド属)
それでは、再出発しよう。雨が降ったり止んだりで、気持ちも晴れなかったが、キバナノアツモリソウを観たことで、元気が出てきた。
キバナノアツモリソウを観てから、15分ほど歩いて五地蔵に着いた。そこから五地蔵山(ごじぞうやま、標高1998m)の山頂まではすぐだった。
ここまで誰にも会わずに歩いてきたし、五地蔵山の山頂も貸し切りだった。
時刻は7時55分。計画より30分ほど遅れているが、お腹が空いたので軽食を摂った。食事を摂っている間も誰も来ない。
日本百名山の著者深田久弥氏は、初めて高妻山を目指したときに、当時五地蔵にあった小屋に泊まった。翌朝出発しようとしたが深い霧で、霧が晴れるのを待ったが晴れることはなく、登頂を断念して下山したという。
私も雨が止まなかったら、弥勒尾根から下山していたことだろう。しかし、雨は上がった。
山頂からの景色は、東に5.7km離れた黒姫山(標高2053m)が見えた。その他の山は見えなかった。
これから登る高妻山も、厚い雲に閉ざされたままであった。結局、五地蔵山の山頂に20分ほどいて再出発した。
先ずはアップダウンのある道を、お花を見ながら下る。登山道の脇にはお花がいっぱいだ。
アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)とマイヅルソウ(キジカクシ科マイヅルソウ属)。
ゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属)とアカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)。
気持ちよく歩きたいところだが、顔にまとわりつく小さな虫がうっとうしい。
防虫スプレーでは勝ち目がない。
私は、事前に虫が多いことを聞いていたので、この日のために頭にかぶせる防虫ネットを用意していた。
筒型のネットを帽子の上からすっぽり被せ、胸元で絞る。風も通すので、暑さも感じない。視界の邪魔にもならない。これは快適だった。
すぐに六文殊に着いた。
五地蔵山から下り終わると、今度は八観音がある2053mのピークまで登りとなる。
ムシカリ(スイカズラ科ガマズミ属)が咲いていた。
こちらはミツバオウレン(キンポウゲ科オウレン属)だと思う。
ショウジョウバカマ(メランチウム科ショウジョウバカマ属)の花後も観られた。
この黄色い花は、ニガナ(キク科ニガナ属)の仲間だと思うが、花が開いていないのでよく分からない。
七薬師を通過する。
コケモモ(ツツジ科シラタマノキ属)のようだ。手前は、花が終わったイワカガミだと思う。
ベニサラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)やウラジロヨウラク(ツツジ科ドウダンツツジ属)がたくさん咲いていた。
稜線から黒姫山が見えたが、他の山は相変わらず見えなかった。この辺りには、まだ高い木が立っている。
こちらはツバメオモト(ユリ科ツバメオモト属)のようだ。ツバメオモトは、上高地周辺で6月上旬に咲くが、ここはさらに遅いようだ。
8時50分、標高2053mの八観音に着いた。ここからはしばらくなだらかな道が続く。
再び、ミツバオウレン(キンポウゲ科オウレン属)が出てきた。
ここでは、アカモノ、イワカガミ、マイヅルソウ、ゴゼンタチバナが咲いている。
こちらはマイヅルソウの群落。
この先を歩きながら動画を撮ってみたが、小さなお花が見えるだろうか? 鳴いているのはウグイスだ。
ムラサキヤシオ(ツツジ科ツツジ属)が咲いていた。
アカモノは垂直分布の幅が狭いと思っていたが、まだ咲いていた。
九勢至まで来た。休まず進む。
場所はよく覚えていないが、この前後で10人の団体を追い抜いた。弥勒新道から登ってきたそうだ。
ハクサンシャクナゲ(ツツジ科ツツジ属)が現れた。
登山道の周りに笹が多くなり、高い木はなくなった。いつの間にか、森林限界を越えたようだ。
そして、いよいよ最後の急登だ。
連続して岩場が出てくる。ここを乗り切れば、山頂は近い。
お花たちに元気を貰う。イワカガミ!
ツマトリソウ!
ハクサンチドリ!
コケモモ!
ついに、十合目に当たる十阿弥陀に到着した。山頂はこの先にあり、岩場を進む。イワヒバリが鳴いていた。
10時3分、ついに高妻山の山頂に到着した。計画より30分ほど遅れたままだった。山頂はそれほど広くないが、10人ほどなら休めそうだ。辺りはガスガスで、景色は楽しめなかった。
花と野鳥と、虫もいっぱいだった高妻山ハイキング - その④ に続く。
2022/06/27
キバナノアツモリソウ(ラン科アツモリソウ属)
前の記事でキバナノアツモリソウを希少種のランと書いたが、誤っていたので訂正したい。すなわち、希少種については法律で定められており、キバナノアツモリソウはその中に含まれていないのだ。
同じアツモリソウの仲間では、下記の4種が法律で定める希少種になっている。
Cypripedium guttatum チョウセンキバナアツモリソウ 平成14年(2002年)指定
Cypripedium macranthos var. macranthos ホテイアツモリ 平成9年(1997年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
Cypripedium macranthos var. rebunense レブンアツモリソウ 平成6年(1994年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
Cypripedium macranthos var. speciosum アツモリソウ 平成9年(1997年)指定 同年特定第一種国内希少野生動植物種指定
ちなみに、希少種に関する法律では、次のように定められている。もし、盗掘を見つけたら、すぐに警察に通報しましょう。
「希少野生動植物種」は絶滅危惧種の保護を目的に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づき種指定される。現在では環境大臣の許可をうけた場合などの例外を除き、採集等は原則禁止である。違反した場合、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処せられる。
さて、登山道に入ってから、すでに40種近い植物の花を観てきた。
後半に入る前に、観てきた花を整理しておこう。観てきた順に並べると、次のようになる。
春に咲くキンポウゲ科が多いが、多科に渡っている。個人的にはラン科が3種入っていることが、凄いと思う。
【草本】
カラマツソウ(キンポウゲ科カラマツソウ属)
ヤグルマソウ(ユキノシタ科ヤグルマソウ属)
ウマノアシガタ(キンポウゲ科キンポウゲ属)
ヤマオダマキ(キンポウゲ科オダマキ属)
オオバミゾホオズキ(ハエドクソウ科ミゾホオズキ属)
オククルマムグラ(アカネ科ヤエムグラ属)
サンカヨウ(メギ科サンカヨウ属)
エンレイソウ(シュロソウ科エンレイソウ属)
シャク(セリ科シャク属)
ラショウモンカズラ(シソ科ラショウモンカズラ属)
ノビネチドリ(ラン科テガタチドリ属)
クルマバソウ(アカネ科ヤエムグラ属)
ミヤマカラマツ(キンポウゲ科カラマツソウ属)
ミヤマハタザオ(アブラナ科シロイヌナズナ属)
ズダヤクシュ(ユキノシタ科ズダヤクシュ属)
オオダイコンソウ(バラ科ダイコンソウ属 )
ニリンソウ(キンポウゲ科イチリンソウ属)
シロバナタカネグンナイフウロ(フウロソウ科フウロソウ属)
ゼンテイカ(ワスレグサ科ワスレグサ属)
ハクサンチドリ(ラン科ハクサンチドリ属)
マイヅルソウ(キジカクシ科マイヅルソウ属)
ミヤマクワガタ(オオバコ科クワガタソウ属)
ゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属)
ヨツバシオガマ(ハマウツボ科シオガマギク属)
ウスユキソウ(キク科ウスユキソウ属)
イワカガミ(イワウメ科イワカガミ属)
ユキザサ(キジカクシ科マイヅルソウ属)
ツマトリソウ(サクラソウ科ツマトリソウ属)
キバナノアツモリソウ(ラン科アツモリソウ属)
【木本】
ガマズミ(スイカズラ科ガマズミ属)
トチノキ(ムクロジ科トチノキ属)
タニウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)
マルバウツギ(ユキノシタ科ウツギ属)
ベニサラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)
イブキジャコウソウ(シソ科イブキジャコウソウ属)
アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)
ウラジロヨウラク(ツツジ科ヨウラクツツジ属)
ヤマツツジ(ツツジ科ツツジ属)
ナナカマド(バラ科ナナカマド属)
それでは、再出発しよう。雨が降ったり止んだりで、気持ちも晴れなかったが、キバナノアツモリソウを観たことで、元気が出てきた。
キバナノアツモリソウを観てから、15分ほど歩いて五地蔵に着いた。そこから五地蔵山(ごじぞうやま、標高1998m)の山頂まではすぐだった。
ここまで誰にも会わずに歩いてきたし、五地蔵山の山頂も貸し切りだった。
時刻は7時55分。計画より30分ほど遅れているが、お腹が空いたので軽食を摂った。食事を摂っている間も誰も来ない。
日本百名山の著者深田久弥氏は、初めて高妻山を目指したときに、当時五地蔵にあった小屋に泊まった。翌朝出発しようとしたが深い霧で、霧が晴れるのを待ったが晴れることはなく、登頂を断念して下山したという。
私も雨が止まなかったら、弥勒尾根から下山していたことだろう。しかし、雨は上がった。
山頂からの景色は、東に5.7km離れた黒姫山(標高2053m)が見えた。その他の山は見えなかった。
これから登る高妻山も、厚い雲に閉ざされたままであった。結局、五地蔵山の山頂に20分ほどいて再出発した。
先ずはアップダウンのある道を、お花を見ながら下る。登山道の脇にはお花がいっぱいだ。
アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)とマイヅルソウ(キジカクシ科マイヅルソウ属)。
ゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属)とアカモノ(ツツジ科シラタマノキ属)。
気持ちよく歩きたいところだが、顔にまとわりつく小さな虫がうっとうしい。
防虫スプレーでは勝ち目がない。
私は、事前に虫が多いことを聞いていたので、この日のために頭にかぶせる防虫ネットを用意していた。
筒型のネットを帽子の上からすっぽり被せ、胸元で絞る。風も通すので、暑さも感じない。視界の邪魔にもならない。これは快適だった。
すぐに六文殊に着いた。
五地蔵山から下り終わると、今度は八観音がある2053mのピークまで登りとなる。
ムシカリ(スイカズラ科ガマズミ属)が咲いていた。
こちらはミツバオウレン(キンポウゲ科オウレン属)だと思う。
ショウジョウバカマ(メランチウム科ショウジョウバカマ属)の花後も観られた。
この黄色い花は、ニガナ(キク科ニガナ属)の仲間だと思うが、花が開いていないのでよく分からない。
七薬師を通過する。
コケモモ(ツツジ科シラタマノキ属)のようだ。手前は、花が終わったイワカガミだと思う。
ベニサラサドウダン(ツツジ科ドウダンツツジ属)やウラジロヨウラク(ツツジ科ドウダンツツジ属)がたくさん咲いていた。
稜線から黒姫山が見えたが、他の山は相変わらず見えなかった。この辺りには、まだ高い木が立っている。
こちらはツバメオモト(ユリ科ツバメオモト属)のようだ。ツバメオモトは、上高地周辺で6月上旬に咲くが、ここはさらに遅いようだ。
8時50分、標高2053mの八観音に着いた。ここからはしばらくなだらかな道が続く。
再び、ミツバオウレン(キンポウゲ科オウレン属)が出てきた。
ここでは、アカモノ、イワカガミ、マイヅルソウ、ゴゼンタチバナが咲いている。
こちらはマイヅルソウの群落。
この先を歩きながら動画を撮ってみたが、小さなお花が見えるだろうか? 鳴いているのはウグイスだ。
ムラサキヤシオ(ツツジ科ツツジ属)が咲いていた。
アカモノは垂直分布の幅が狭いと思っていたが、まだ咲いていた。
九勢至まで来た。休まず進む。
場所はよく覚えていないが、この前後で10人の団体を追い抜いた。弥勒新道から登ってきたそうだ。
ハクサンシャクナゲ(ツツジ科ツツジ属)が現れた。
登山道の周りに笹が多くなり、高い木はなくなった。いつの間にか、森林限界を越えたようだ。
そして、いよいよ最後の急登だ。
連続して岩場が出てくる。ここを乗り切れば、山頂は近い。
お花たちに元気を貰う。イワカガミ!
ツマトリソウ!
ハクサンチドリ!
コケモモ!
ついに、十合目に当たる十阿弥陀に到着した。山頂はこの先にあり、岩場を進む。イワヒバリが鳴いていた。
10時3分、ついに高妻山の山頂に到着した。計画より30分ほど遅れたままだった。山頂はそれほど広くないが、10人ほどなら休めそうだ。辺りはガスガスで、景色は楽しめなかった。
花と野鳥と、虫もいっぱいだった高妻山ハイキング - その④ に続く。
2022/06/27