伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ロスト・ケア

2023-04-21 20:55:00 | 小説
 要介護状態の老人を自然死に見えるように密かに殺害し続け、本人と家族を救ったという連続殺人犯を通じて、認知症の老人の介護に追われて心身ともに疲弊して行く家族、介護ビジネスへの参入を煽られ利益が出るようになると介護報酬を下げられ競争の下で疲弊する介護事業者、感情労働も含め過重労働を強いられながら低賃金で疲弊し辞めていく介護労働者ら、介護にまつわる人々の苦しみと、それを生み出している社会と制度の欠陥を問題提起する小説。
 家族の側についても、その家族が疲れ果てながらも本人を思う心情にも、事業者の実情にも、そして介護労働者の側についても、心が痛みいろいろに思うところがあって考え込まされました。
 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作ということですが、少しクセやぎこちなさもないではないものの、こなれて落ちついた文章と展開は新人離れしている感じです。


葉真中顕 光文社文庫 2015年2月20日発行(単行本は2013年2月)
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作
コメント
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