伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

Q&A・事例解説 令和5年4月施行対応 民法等改正の実務ポイント

2023-04-12 00:05:39 | 実用書・ビジネス書
 所有者が不明あるいは所在不明の不動産について隣地所有者や自治体、再開発事業者等の対応の便宜を図ることを目的とした民法等の改正とそれに合わせて行われた隣地の利用関係、不動産登記、遺産分割関係の法改正について、改正点を各別に解説するとともに、典型的な事例でどのような対応が考えられるかを解説した本。第一東京弁護士会創立100周年記念書籍だそうです(「発刊に寄せて」)。
 所有者が遠方にいて利用せず放置されて荒れ果てた不動産や、相続が繰り返されるなどの経緯でそもそも誰が所有者かも定かでない不動産、居住者がいるがごみ屋敷等で近隣に迷惑をかけている不動産などについて、迷惑している隣地所有者に解決の手段を与えるというものではありますが、隣地所有者だけではなく公共事業や再開発の便宜も狙っていることや、併せて改正された共有関係部分では少数持分共有者が居住しているときに多数持分共有者が立ち退きを要求することを妨げていた最高裁判決を覆す法改正がなされたこと、所在不明共有者の持分を他の共有者が取得したり売却する裁判が可能とされたこと、その場合の代金相当額は供託されるが10年経つと国庫に帰属することなど、少数者の権利保護の点で薄くなり、国に利益となる場面が増えることが、庶民の弁護士としては気になります。
 不動産登記について、相続の登記やさらには氏名・住所変更の登記が義務づけられたり、遺産分割請求時に相続開始(被相続人死亡)から10年経つと寄与分や特別受益の主張ができなくなるなど、不在者等が関係しない場合まで一般市民の権利義務にけっこう大きく影響する改正もなされています。
 不動産登記に関する改正で、登記簿の附属書類(登記申請書、委任状、印鑑証明の他、登記原因となる契約書や遺産分割協議書、判決など)の閲覧が「正当な理由」があるときとされて、従前より閲覧しやすくなることが期待されていること、相続人が被相続人の所有不動産記録証明書(所有不動産の一覧表)の交付申請をできるようになることは、一般的に歓迎すべきことでしょう。
 これらの法改正はほとんどが2023年4月1日からすでに施行されています。相続登記の義務化は2024年4月1日から、氏名・住所変更登記の義務化や所有不動産記録証明書についてはまだ施行日が決まっていないようですが。
 弁護士としては、仕事で必要になるかもと思って法律実務の本はできるだけ目を通すようにしてはいますが、多数の法改正や新法があまり知られないうちになされていることに、なかなかついて行けませんし、空恐ろしく思います。


第一東京弁護士会家事法制委員会・司法制度調査委員会編集 新日本法規 2022年11月15日発行
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