神経細胞のしくみと記憶のしくみを説明し、脳科学でわかったこと、まだわからないことを論じ、人工的に記憶を作ることができるのかについての著者らの研究を示して脳科学の今後を語る本。
記憶が特定の神経細胞間のシナプスの強化によること、当初は海馬に納められた記憶が長期記憶になるにつれ脳の他の場所に移されること、その際睡眠中の記憶再現が関与していることなど、よく聞く話が整理されて説明されています。
人間がボーッとしているときは、脳全体が休んでいるのではなくふだん使わない場所が活性化され、おそらく脳がランダムに活動している時にはいろいろな過去の情報を取りだして勝手に比較したり組み合わせてみたりしていて、そのほとんどは意味のない活動となるが、何度かに一度はビックリするほど素晴らしい連合となって、「天啓」になるのではないかという話(111~112ページ、144ページ)も、よく聞く話ではありますが、ホッとします。実際、私も、裁判上の主張のアイディアとか、事件記録中の情報の組み合わせで論証するアイディアが、気分転換中とか何か他のことをしている時に出てくることはよくありますし(やはり、リフレッシュや休養は大切だ (^_^)b。
記憶が作られる過程はよく研究されているが、思い出す過程はまだほとんどわかっていないとか、わかっていないことがたくさん語られるのも、どこかホッとします。
最後の、マウスの実験で、ある体験(丸い部屋にいた:ショック体験なし)の時に活性化した神経細胞と別の体験(ショック体験:その時は四角い部屋にいたが四角い部屋にいたという認識を持つ前に移動)の時に活性化した神経細胞を、後にレーザー光で同時に刺激することで、2つの記憶を関連づけることに成功した(四角い部屋に入れてもリラックスしているが丸い部屋に入れるとすくんだ:158~165ページ、189~191ページ)という話は、それが著者がいうように人工的に記憶を作り上げたということを意味するとすれば、科学の進歩として驚くとともに畏れを感じます。日常的にも、そして職業的にも、記憶というものの確かさを信じて生きている者としては…

井ノ口馨 角川選書 2015年6月25日発行
記憶が特定の神経細胞間のシナプスの強化によること、当初は海馬に納められた記憶が長期記憶になるにつれ脳の他の場所に移されること、その際睡眠中の記憶再現が関与していることなど、よく聞く話が整理されて説明されています。
人間がボーッとしているときは、脳全体が休んでいるのではなくふだん使わない場所が活性化され、おそらく脳がランダムに活動している時にはいろいろな過去の情報を取りだして勝手に比較したり組み合わせてみたりしていて、そのほとんどは意味のない活動となるが、何度かに一度はビックリするほど素晴らしい連合となって、「天啓」になるのではないかという話(111~112ページ、144ページ)も、よく聞く話ではありますが、ホッとします。実際、私も、裁判上の主張のアイディアとか、事件記録中の情報の組み合わせで論証するアイディアが、気分転換中とか何か他のことをしている時に出てくることはよくありますし(やはり、リフレッシュや休養は大切だ (^_^)b。
記憶が作られる過程はよく研究されているが、思い出す過程はまだほとんどわかっていないとか、わかっていないことがたくさん語られるのも、どこかホッとします。
最後の、マウスの実験で、ある体験(丸い部屋にいた:ショック体験なし)の時に活性化した神経細胞と別の体験(ショック体験:その時は四角い部屋にいたが四角い部屋にいたという認識を持つ前に移動)の時に活性化した神経細胞を、後にレーザー光で同時に刺激することで、2つの記憶を関連づけることに成功した(四角い部屋に入れてもリラックスしているが丸い部屋に入れるとすくんだ:158~165ページ、189~191ページ)という話は、それが著者がいうように人工的に記憶を作り上げたということを意味するとすれば、科学の進歩として驚くとともに畏れを感じます。日常的にも、そして職業的にも、記憶というものの確かさを信じて生きている者としては…

井ノ口馨 角川選書 2015年6月25日発行