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伊東良徳の超乱読読書日記

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シンメトリー

2013-04-23 21:59:32 | 小説
 警視庁捜査1課殺人班10係姫川班主任の姫川玲子シリーズの短編集。
 短編集ですので、犯人なりキーパースン側の独白を章の冒頭に挟んでいくスタイルは、表題作のシンメトリーを除いて登場せず、姫川サイドからの視点で単線的に展開します。ミステリーとしては複雑な布石も置けませんので当然にアイディア1点程度の勝負になり、基本的には、姫川玲子シリーズファン向けのサービス的な読み物と位置づけて読むべきでしょう。
 姫川玲子シリーズのファン向けとしてみた場合、「右では殴らない」はどうかなぁという気がします。姫川の取調、まるでガンテツみたいですし、ガンテツキャラのイメージをさておいても明らかにやり過ぎ。これが相手が女子高生ということを見ると、弱い相手には強く出てるって感じがして、姫川のキャラとしても好感を持てません。初出が「小説宝石」2005年2月号で、シリーズ第1作の「ストロベリーナイト」(2006年2月刊)より先に書かれた小品のため、まだシリーズとしての構想が確立していなかったのかという気もしますが、作品での姫川の設定は駆け出しの頃というわけではなく、既に警視庁捜査1課10係2班(姫川班)の主任で、監察医國奥、今泉係長、橋爪管理官も、部下の菊田、石倉、湯田、葉山も登場しています(そうすると時期としては「ストロベリーナイト」より後の設定ですね。大塚が死んだ後に葉山が来たわけですから)。このシリーズが、主要な登場人物のキャラ設定で読ませていること、やはり姫川玲子のキャラに好感を持てるかで読み続けるかどうかが決まると思えることからして、現に私も姫川玲子の一直線ではなくやや日和見的ではあるものの正義感を持ち戸惑いや弱気な一面と自信とプライドの交錯するキャラに好感を持って通し読みを試みたわけですが、「右では殴らない」の姫川はそういう読者の思いには冷水をかけるのではないかなと思います。


誉田哲也 光文社文庫 2011年2月20日発行 (単行本は2008年) 
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