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伊東良徳の超乱読読書日記

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ソウルケイジ

2013-04-22 23:31:38 | 小説
 警視庁捜査1課殺人班10係姫川班主任の姫川玲子シリーズの第2作。
 第1作とは打って変わって、猟奇性を抑え、ミステリーの王道的な展開で、純粋にミステリーとして読めました。ストーリー展開では、悪役の戸部真樹夫のキャラ設定がすごく、仕事柄悪役にも裏側にいい面を読みがちの私から見ても、こいつは殺していい、できるだけ酷い目に遭わせてやりたいと思え、そういう方向を期待しながら読んでしまいました。
 「ソウルケイジ」では、10係のもう一つの班である日下班の主任日下守と姫川玲子の争いがストーリー展開上の軸になります。姫川が日下を「この世で2番目に嫌いな男」と位置づけ、天敵扱いすることについては、直感を重視して突っ走るスタイルの姫川に対して、あらゆる予断を排して証拠に基づき着実に犯人に迫りしかもそれが速い「有罪判決製造マシン」と呼ばれる日下のスタイルに基づく捜査過程での対立として表れることにはなっているのですが、姫川が日下を嫌う本当の理由が姫川が高校生のときに逢ったレイプ被害の犯人の顔に似ていることにあるというのでは、姫川の心情はわかるものの、やはり日下がかわいそう。そういうこともあり、日下を悪役にし続けるのは当然無理筋で、この作品では日下の現在のスタイルを確立するに至る経緯と心情が描かれ、ある意味で日下の物語になっています。
 映画を見てても思ったのですが、姫川に思いを寄せ、姫川も思っているという設定の姫川の部下の菊田。姫川に寄り添って見ているだけで、積極的に話もしないし、事件でもお手柄も挙げないというか何やってんだかよくわからず登場も少ない(ストーリーとしては、いなくても全然影響しません)。恋愛感情に理屈は不要だし現実にも理屈に合わないことは少なくないとは思いますが、作品としてみると、姫川がなぜ菊田を好きなのか、今ひとつストンと落ちないなぁという気がします。


誉田哲也 光文社 2007年3月25日発行
コメント
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