限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

『ベンチャー魂の系譜(13)-- 最終回』

2010-01-22 09:57:19 | 日記
【ベンチャー魂の系譜 12.アメリカ活力の源泉、ベンチャー魂】

今学期の講義もこれが最後。

アメリカのベンチャーでは二つの観点から議論した。まず、アンドリューカーネギーの金儲けとその後の社会福祉への貢献を取り上げた。次に最近のIT業界の両雄である、ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズについてその生き様を議論した。

最後にクレイグ・ベンターについて、モデレーター個人の感想を述べた。

来年度(2010年4月)はこの【ベンチャー魂の系譜】も含み次の4つの科目を教える予定:

【日本語科目】
【前期】:国際人のグローバル・リテラシー(Global Literacy for Cosmopolitans)
【後期】:『ベンチャー魂の系譜』(Genealogy of Venturing Spirits)

【英語科目・KUINEP】
【前期】:Informatics in Japanese Society(日本の情報文化と社会)
【後期】:Craftsmanship in Japanese Society(日本の工芸技術と社会)

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著書名は『』で示す。

モデレーター:セネカ3世(SA)
パネリスト 寅馬(農・1)

(SA)著書紹介:『カーネギー自伝』(中央公論新社)
カーネギーは全米に1700あまりの図書館を寄付した。(世界には合計2800もの図書館を寄付)

しかし、彼にとってはこれぐらい端金。60歳まで稼いで、4億ドルの資産を作った(現在価値にして5兆円ぐらい)が、その資産を全て慈善活動に回した。
参考URL:http://current.ndl.go.jp/ca822

(SA)ビル・ゲイツの資産は現在7兆円あまり。カーネギー同様、Philanthropic(フィランソロピック)な活動を行っている。北京に中国マイクロソフトを設立し、ヤフー・グーグルに対抗。ビルゲイツは中国での成功の方法を知りつくしたのだ

(SA)ナポレオン・ヒル『思考は現実化する』
学生K:自己啓発書として読んだ。

(SA)人生は、40代、50代になると、自分の思った通りになっている人が8割、9割になる。たとえこれは、橋の下のホームレスにしても同じ。深層心理でそう思っているからそうなってしまう。恐ろしいことだ。
ナポレオン・ヒルの本の大半は、『how to get rich』が主題であるが、際物(きわもの)的に見るのはまちがい。

カーネギーとナポレオン・ヒル…カーネギーへのインタビューをして『how to get rich』の話になった。カーネギーがナポレオン・ヒルに成功した人を何人も紹介し、 richになる方法を本にまとめさせた。

但し現在、こうした自己啓発を目的としてセミナーを行い、利益をあげている組織がある。必ずしも善意の活動とは言いがたい、金儲け主義に堕しているセミナーも多い。

(SA)ヴィクトール・フランクル『Man's Search for Meaning』
非常に有名な本である。彼は強制収容所で死の淵にいたが、帰還。強制収容所で、皆同じ条件でいたのに、死んでしまった人もいれば、生き延びた人もいる。その差はどこにあったか、とか、「生きる『価値』とは」という主題で本を書いた。

(SA)『西国立志編』 中村正直訳
学問ノススメと並んで、明治期のベストセラーになった本。当時のイギリスの工業の発達を支えた精神とは何か、について実例に即して考えさせる本である。

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今回取り上げた人物選択:ビル・ゲイツ、(カーネギー)

ビル・ゲイツ …1955~:シアトル生まれ。父:法律家、母:銀行役員秘書

シアトル…工業化が進んでいた。

(SA)アメリカは各州が独立している。それで、ゲイツがいろいろな場所に移り住んで、自分の好みにあった場所を探していた。

(寅)中学校までシアトル。高校~ニューメキシコ州
ゲイツの中学校は、1960年代後半。パソコンが教育方針によって導入されようとし、ビルはそれに興味を示す。資金繰りを行って、導入される。夜に学校に忍び込むぐらい熱中した。それがやがてマイクロソフト設立につながっていく。

Q.学校に侵入するのは、良いことか?
A.いけないことだと思うけど、プログラミングのために熱中していたと思われる。

Q.高価なコンピュータを生徒は勝手に使うことができたのか?
A.学校の方針によって、使用は可能である。
学生S:学校が維持費、使用費を補助していたのではないか。人脈を使って、無料で使わせてもらっていたのではないだろうか。

Q.学校に侵入するのは、泥棒じゃなかったの?
A.友人と協力し、窓の鍵を開けていたりした。

Q.ところで、パソコンはいつから世の中に広まったのか?
学生S:当初は大型の計算機で、大きさは大きな部屋一杯ぐらいの体積を占めていた。
学生K:WWⅡが計算機開発の原動力となった。真空管、暗号解読、弾頭計算

Q.パソコンと計算機は違うと思うが、どうか?初めての計算機は真空管制御の「エニアック」。数多くの真空管を使っているので、真空管の寿命が来る都度、システムがストップするので、ほとんど動かなかったはず。 1960年代(寅:1964年)日本人の嶋正利が4ビットパソコンを発明した。

(SA)当時のコンピューターは非常に高価なもの。現在価格にして1台が億の単位。ミニコン(1960年代「DEC」)で数千万。パソコンが出てようやく個人が使えるようになった。それでも現在価値にして数百万円した。

(SA)ビルゲイツの場合は、ワシントン大学の学生がミニコンを使用していたのを、ゲイツにも使わせてくれた。課題も与えてくれた。アメリカではこういう個人の自由(やりたいことをやらせる)をサポートしてくれることが多い。ビル・ゲイツもこういうサポートがあったのでコンピュータにのめりこむことが可能であった。

Q.ゲイツの大学時代は?
A.ハーバード大学で法律を学ぶ。(コンピュータ関連を学ぶことに関しては親が大反対)しかし、コンピュータを諦めきれなかったので、大学を中退して、交通量計測システムの作成依頼を受けて、作成開始。

(SA)アメリカの大学は、ある学部に入ったからといって、決められた進路というものがあるわけではない。いろいろ試みるうちの一つの選択肢、ただのワンステップで、可能性を試すだけ。日本では、コース、トラックを外れると嫌われる。

(SA)MBAの学生というは、日本では、経済学の大学院という意識であるが、アメリカでは工学部出身者が多い。

学生A.アルバカーキでMicrosoftを創業。

(SA)かつてニューメキシコ州は、砂漠の真ん中の小都市。今は繁栄している。

Q.マイクロソフトは何で伸びたか?
A.最初は、プログラミング言語開発。その後、ソフトウェアの開発

(SA)DOSは当初CP/MというOSの互換性を持たせて市場進出を容易にしていた。マイクロソフトは、競争相手と理不尽な喧嘩をしていたわけではない。お互いの有利になる点を求めて競争相手とでもよく話をするのがアメリカの会社のやりかた。その点(例:ソニーの『ベータ』、『VHS』はもう少し賢く話し合いをしてWin-Winの関係を形成することが出来たのではないかと思う。
例えば、カーネギーも当初は他の鉄鋼メーカーと競争していたが、その後、企業は統合して現在はUSスチールになった。

(SA)マイクロソフトの競争相手:スコット・マクネリはサンマイクロソフトの創業者。
スティーブ・ジョブズは、アップル社の創業者。モデレーター(SA)の個人的な思い出としては、 1984年、カーネギーメロンの卒業式にスティーブ・ジョブズが来て講演をした。当時ジョブスの活躍が絶頂であった。

また、2005年にはスタンフォード大学の卒業での講演は自分の生い立ちから語った感動的な内容で、掲載サイトがパンクした。アメリカでは、小さい会社が大きい会社に対抗すると、応援する。これは、元を辿れば旧約聖書に登場するダビデと巨人・ゴリアテとの決闘で、子供のダビデが、投石機でゴリアテを倒したのを、イメージするのだろうと想像する。

ビルゲイツの最近 …社長を退き、新社長との間で、技術と経営に会社をわけ、ビル・ゲイツは技術を担当。

(SA)カネを貯めて使う。日本人は一部の例外はあるものの、金を儲けて、寄付するという伝統はない。

Q.アメリカはどうしてこの習慣があるのか?
学生A:歴史的なものかも。先住民配慮?
学生K:宗教的なのか?イスラムならお金を貧しい人にあげる(喜捨)が義務づけられている。原罪意識?
学生Y:たたき上げの精神?昔あまり良くなかった時代を考えるのか?

(SA)キリスト教が影響しているのだろうと思う。「博愛」精神。フランスでは、現在、キリスト教の宗教色が薄くなっていてもこのような精神は残っている。

Q.ところで『クレイグ・ベンターは何をしたか?』
学生S:ヒトゲノムを解析。自分の精子を用いて実験した。

(SA)クレイグ・ベンターは良い意味で『気ちがい』じみている。このような偏執狂のような存在はアメリカでは認められている。残念ながら、このような特異体質の人間は、日本では完全に無視されるか、干されてしまう。敵も多いが味方も非常に多い! DNAを解読して全部特許とってやると宣言したので、世界中の政府、研究機関があわてた。世界中の金、人を思いっきり巻き込んでしまったお陰で人のDNA解析があっという間にできてしまった。その意味では人類の知の進歩への功労者。ただ、ヒトゲノム解析が終わらない内に、セレラ・ジェノミクス(Celera Genomics)社の社長を解雇されてしまったが。
コメント
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