先日、共同通信から取材を受け、マタニティハラスメントについての配信記事でコメントが載っています。6月22日付け、地方紙の夕刊に載っているなかで東京新聞を紹介します。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062290135417.html
【社会】
働く妊婦いじめ深刻 マタニティー・ハラスメント
2013年6月22日 13時55分
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妊娠した女性に退職を迫ったり、心無い言葉をかけたりする「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」が職場で深刻な問題になっている。連合の今年の調査では四人に一人に相当する26%が経験したと回答。ストレスが流産につながる恐れもある。立場の弱い非正規労働者が増えたことも背景にある。
東京都内に住むデザイナー恵さん(41)=仮名=は二年前、妊娠を報告した時の社長の冷ややかな言葉が忘れられない。「俺の妻なら働いてほしくない。辞めて家にいなよ」
現場のリーダー格だったが、翌日から他の人に仕事を引き継ぐよう求められた。「突然、戦力外通告を受けたようでした」
仕事を続けようとしたが「クビにする材料を探している」と社内のうわさ話が耳に入る。精神的に参っていた時、帰宅中に激しい腹痛がした。切迫流産だった。無事に出産はできたが、一線から外され退職を決めた。「子どもを産むだけでこんな目に遭うなんて」。今も納得できない。
連合が今年五月、全国の働く女性に実施したインターネット調査では、妊娠経験者三百十六人のうち26%がマタハラを受けていた。多いのは「心無い言葉」「解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導」。「重いものを持たされたり、目の前でたばこを吸われたりした」との声もある。
連合非正規労働センターの村上陽子局長は「女性を苦しめている意識が職場になく、女性も妊婦が法律で保護されていることを知らない。解雇を恐れて声が出せない非正規の人も多い」と話す。
妊婦の体を理解しているはずの医療現場の状況も厳しい。日本医療労働組合連合会の調査では、妊娠中に切迫流産を経験した看護職は二〇〇九年に34%。二十年前より10ポイント増えた。迷惑を掛けたくないと妊娠を隠して働く看護師が多いという。
「ルポ職場流産」の著者でジャーナリストの小林美希さんは「授かった命を失う人もいる。職場に他人を思いやる余裕がないことが問題」と指摘する。
母子愛育会総合母子保健センター(東京都港区)所長の中林正雄医師によると、妊娠中は、最も悪いのが人間関係などのストレス。切迫流産の引き金にもなる。「疲れたら我慢せず休める環境にいることが大事」
マタハラに詳しい立教大社会福祉研究所の杉浦浩美さんは「女は大きなおなかをしてまで働かなくてもいい」という日本社会の考え方を問題視する。「国は子育て対策には目が向いているが、産むまでの支援が足りない」
女性労働協会(東京都港区)の小林恭子さんは「企業に健康への配慮をさせるには、まず妊婦が申し出なければならない。都道府県労働局の雇用均等室にも相談してほしい」と助言している。
<マタニティー・ハラスメント> 連合は「働く女性が妊娠、出産を理由に解雇、雇い止めをされることや、職場で受ける精神的、肉体的なハラスメント」と定義。セクハラ(性的嫌がらせ)やパワハラ(職場の上司らによる嫌がらせ)と並び、働く女性を悩ませる三大ハラスメントと位置付けている。
男女雇用均等法は、非正規労働者を含め妊娠、出産を理由とする解雇などの不利益な取り扱いを禁じている。企業には、保健指導に基づき妊婦の勤務負担を軽くすることなどを求めている。
(東京新聞)