「全然指が動かなかった」
「どうしても間違える」
「もう無理」
「もういやだ」
ネガティブな言葉をLINEで告げてくる娘。
あまりの落ち込みぶりに、
「ママ、そっちに行った方がいい?」
と聞くと、
「うん、来て。」
そう答えつつも、
「眠いからとりあえず寝るね。」
ん?
寝る?
今この時に?
繊細なんだか、図太いんだか。
確かにもともとよく寝る子だし、
試験中や忙しい時なども、気分転換に15分昼寝をしたりする。
寝ることで、気持ちが落ち着くのならそれに越したことはないけれど。
私が大学に到着した時には、すでに練習室でピアノに向かっていました。
何か吹っ切れたようで、自然な笑顔を見せてくれました。
「絶対弾ける! 弾いてみせる! とか気合を入れて臨むと、
かえって体が硬くなって、指も動かなくなるみたい。
だから、次は楽しく弾いてこようと思う。」
私が言葉をかけるまでもなく、
すでにきちんと自分で答えを見出していました。
強くなったね。
どこか達観した様子で、心静かに最後の練習をしていました。
そしてついにその時間がやってきました。
1回目の実技試験で失敗をし、どれだけ心が折れたことでしょう。
努力は必ずしも報われないことを知って、どれだけ傷ついたことでしょう。
同じ日、わずか数時間後の再挑戦。
1回きりのチャンス。
後はありません。
崖っぷち。
また失敗するかもしれない。
これまでの努力が無駄になるかもしれない。
あんなにも熱心に指導してくださったE先生をがっかりさせてしまうかもしれない。
そんな気持ちが渦巻く中、
娘の言う「楽しんで弾く」というのはどれだけ難しいことか。
もう、娘の心を乱すようなことは何も言えません。
「楽しんで弾いておいで!」
と声をかけて送り出しました。
1人で待っている時間はとても長く感じました。
ピアノ科の生徒最後の2人となった段階で出て行ったのでね。
転専攻試験直前になって、弾く曲順が変更になりました。
というより、最初から直前に言い渡されることになっていたのか。
バッハの平均律→ショパンのエチュード→曲 となりました。
曲→バッハの平均律→ショパンのエチュード のはずだったのに。
そろそろ弾き始めたころだろうか。
とてつもなく緊張する。
自分が弾くわけではないのに、ただ待っているだけなのに。
付属高校の入学試験の時以上の緊張。
考えたくないけれど、
かわいそうでそうなったら嫌だけど、
でも、ダメかもしれないな。
自身もピアノの先生をしているママ友が言っていたっけ。
「学科の試験は、間違えてもすぐに消しゴムで消せる。
だけど、ピアノは(ヴァイオリン等他の楽器も含めて)間違ったら終わり。
もう取り消すことはできない。」
本当にその通り。
一発勝負。
1回のミスが致命的な結果を生む。
厳しい世界。
どれだけのプレッシャーを背負って舞台に上がるんだろう。
結果が出た日、苺のロールケーキを食べました。
クリームも苺入りでピンク色。
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