G20でサウジアラビアとロシアは原油価格の安定化に向けて取り組むと共同声明を発表した。この発表の前に原油市場は一時3%ほど上昇したが、その後価格安定化について具体策が見えないことから、結局1.3%程度の上昇にとどまった。
非OPEC国のロシアがOPECの盟主サウジアラビアと原油価格の安定に向けて歩調を合わせるということは、画期的なことながら、実際に減産に取り組むにはハードルが高すぎるというのが専門家の見方のようだ。結局一種のリップサービスで終わり、ここを起点とした原油価格の上昇は長続きしないというのが一般的な見方だ。
株式市場は絶えず相場を動かすトピックを求めている。先週金曜日までは「米国の雇用統計」が鍵を握っていたが、非農業部門雇用者数が市場予想より低かったことから、9月利上げの可能性は遠のいたという見方が広がりつつある。
このこと自体は株式市場にとってプラスだが、さらに株価を押し上げていくには別の材料たとえば原油価格の上昇が必要だ。当面原油価格が上昇気味に推移すれば、内外の株価には上昇余地はある。
一方G20での日銀黒田総裁がマイナス金利の悪影響面に触れたことで、追加緩和が後退したとの見方が広がり、円は若干上昇した。
株式市場が本格的に上昇していくには、各国が掲げるインフレ目標2%が視野に入ってくることが必要だ。
2%のインフレが視野に入るには、賃金が3%以上上昇する必要があるというのが、大方の見方だろう。IMFは最近発表したレポートで労働市場と移民政策の改善の必要性を強調しているが、これらがデフレ脱却に必要であることは間違いない。
言うは易しだが実行に移すことは難しい。なぜなら人間の本性(脳に組み込まれた判断プログラム)は、変化を嫌うものと考えられるからだ。
変化に挑戦するには、心理学者等がいう「システムⅡ」という情報処理システムを使わないといけないが、システムⅡを使うには労力がかかる。したがって人間は一般的に労力がかからないシステムⅠという情報処理システムを使うようだが、このシステムは直観的・感情的なので、理屈で分かっても嫌なものは嫌的な判断を示すので、労働市場の改革などは難しいと私は考えている。つまり教育システムから変えていく必要があるのだが、それにはかなり時間がかかるだろう。