金融そして時々山

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Digital dividesの時代からDigital readinessの時代へ

2016年09月26日 | デジタル・インターネット

Digital dividesデジタル・ディバイドという言葉は通常「情報格差」と訳されている。主にインターネットを中心とした情報通信技術の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差を指す概念で、「情報通信技術にアクセスできる/できない」という二進法で分類されてきた。格差は英語ではdisparityというのが一般的だが、デジタル技術にアクセスできるかどうか?でばっさり切った点ではここではdivideという表現が適していると思う。

話はいきなり余談になるが「差と格差」という言葉について考えてみた。格差は「同類のものにおける価格・品質などの差」であるから、基本的には「差」と同じ意味(格差は差の大きなもの)だと思うが、格差はしばしば是正という言葉を伴うように、価値観を伴って使われることが多いと私は思う。格差はしばしば不均衡の同義語として使われ、是正すべき対象と考えれるようだ。

本題にもどると米国の調査機関Pew Research CenterがDigital readiness Gapsというレポートを発表していた。Digital readinessデジタル・レディネスという言葉は「直訳するとデジタル情報に対する準備」だが、それでは分かり難いので、ここではデジタル・レディネスのまま使うことにして、まずPewの説明を見てみる。

Pewはデジタル・レディネスの要素を「コンピュータを通じてデジタル情報にアクセスする技術への自信」「オンラインで得られる情報の信ぴょう性を判断する能力」「e-ラーニングを学習手段として利用している度合い」に分解している。

「情報格差」は単にデジタル情報にアクセスできるかどうか?という時代から「インターネット上に氾濫する情報の中から信頼できるものを選ぶ」能力や「インターネットを学習手段に活用できる」能力で評価される時代に入ってきたようだ。

Pewはクラスター分析の結果、デジタル学習を物差しとしたデジタル・レディネスの観点からアメリカ人を5つのグループに分けている。

【準備ができていないグループ】 全体の14% 女性・50歳以上の人・低所得層・正式な教育水準が低い人

 コンピュータ技術が低く、オンライン情報の信頼性に自信が持てないグループ

【伝統的な学習者】 全体の5% 女性・少数グループ・50歳以上・低所得層

活動的な学習者である程度のコンピュータ技術を持っているが、コンピュータを学習機材として使っていないグループ

【気乗りのしないグループ】 全体の33% 男性・50歳以上・低所得層・正式な教育水準が低い人

上の二つのグループに比べると高いコンピュータ技術を持っているが、新しい教育システムに対する知見が低いグループ

【慎重なクリッカー】 全体の31% 高いコンピュータ技術やインターネット上の情報を判断する自信を持っているが、デジタル学習に熱心でないグループ。相対的に所得が高い。30代から40代

【デジタル学習の準備ができているグループ】 全体の17%。デジタルツールを積極的に学習に活用しているグループ。所得・教育水準が高い。30代から40代

★   ★   ★

Pewの調査は、デジタル学習(e-ラーニングやオンラインリサーチの活用)という切り口から、コンピュータの活用度合いでアメリカ人のユーザをグループ化したもので、e-ラーニングの普及度合いからみてそのまま日本に適用することは難しいと思う。

ただしデジタル情報の利用が、単にアクセスできるかどうか?の時代を超えて、その信ぴょう性を判断する能力の時代に入っている点では日米の共通性は高いと思う。

要はハード面からソフト面の格差が新しい情報格差を生む時代になってきたということである。

 

 

 

 

 

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