金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ソフトスキルを持っている人は不足している

2016年09月01日 | 資格・転職・就職

顧問先の内定者向けにソフトスキルに関する講話をする予定なので、WSJのある記事が目に留まった。

Employers find 'Soft skills'" like critical thinking in short supply(事業主はクリティカル・シンキングのようなソフトスキルを持った人材が不足していることに気づいた)

当然アメリカの話で概要は次のようなことだ。

  • 全米で企業は「明瞭なコミュニケーション能力」「イニシアチブをとる能力」「問題解決力」「仲間との協調性」といったソフトスキルを持つ人材を採用することが次第に難しくなっている。
  • WSJが昨年約900名の経営者に行った調査では92%がソフトスキルはテクニカルスキルと同様かまたはそれ以上に重要だと言っていた。しかし89%の経営者はソフトスキルを持っている人材を採用することは程度の差こそあれ困難だと述べていた。
  • 世界最大のプロフェッショナルネットワークLinkedInが複数の会社に採用申し込みをした人間と1年間に転職した人材のプロファイルを調査したところ、ソフトスキルの中でコミュニケーション能力が一番重視され、オーガナイズ能力、チームワーク力、時間厳守、クリティカル・シンキング、社交知識、創造力、適応力が続いた。
  • 雇用者側はソフトスキルの不足している従業員に教育投資を行うよりも、ソフトスキルを持った人材の採用を好む傾向があるようだ。

企業がソフトスキルに関する教育を行うよりも、スキルを持った人材を採用することを選好するところはアメリカ的だ。

だがもしソフトスキルが先天的なものまたは先天的でないにせよ習得に時間がかかるものであるとすればその判断は正しいかもしれない。

ところで日本で定年退職した人がハローワークなどで「何ができますか?」と聞かれて「部長です」などと答えると相手にされず、具体的にどのようなテクニカルスキルを持っているか?を詳細に聞かれるという話を聞いたことがある。

仮に部長がソフトスキルに優れた人材だとすると、ポストオフした後はソフトスキルではなく、テクニカルスキルが重視されるということなのだろうか?

あるいは日本の企業の部長など管理職は本当のソフトスキルを持っている訳ではなく、調整力だとか雑談力といったソフトスキルのごく周辺的なスキルを持っているに過ぎないということなのだろうか?

などとあまり本筋とは関係のないことを考え始めたのでこの話はこのあたりでやめにしたい。

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クリティカル・シンキングを通じて飛行機人間になろう~内定者向けスピーチ(案)

2016年09月01日 | 資格・転職・就職

来週顧問先で内定者(来年の採用者)向けにスピーチをすることになっている。

スピーチを依頼されたのは、1か月ほど前だったので、話の大筋は既に決めている。ただしこの手のスピーチは落語と同じでその時々のニュース性のある話題を取り入れて、聴き手の関心を引き付ける必要があるので原稿はできるだけぎりぎりにまとめることにしている。

内定者は色々な人の話を詰め込みで聴くだろうから、細かいことは忘れてしまうだろう。だからこれは重要!ということをキーワードとして印象付ける必要がある。キーワードもまた時々の時事を反映する場合もあるだろう。

さて話の粗筋はこんなところだ。

  • 皆さんは今まで学校教育を通じて沢山のことを学び、覚え、優秀な成績をとり、就職競争にも打ち勝ってこの会社に入ってこられた。
  • だから私は皆さんは沢山の知識を持っていると思う。しかしこれからの長い職業人としての人生で勝ち残っていくには「知識」だけではなく、別の何かが必要である。今日はその別の何か?について話をしたい。実はその何か?とは今まで日本の学校教育が軽視してきたものなので皆さんもあまり勉強していないかもしれない。
  • 先月初め(正確には8月1日)に中教審(文部省の諮問機関)は、小中高教育に討論等を通じて主体的に学ぶ「アクティブラーニング」という中間報告を提示した。「アクティブラーニング」の中身は知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」の育成である。
  • このニュースを見て私は外山(とやま)滋比古氏が「思考の整理学」という本の中で述べている「飛行機人間とグライダー人間」という話を思い出した。グライダー人間とは教えられたことを忠実に守っていく人間のことである。グライダーは自力で飛ばないから暴走せず安全である。一方飛行機人間は自分で飛ぶから時に危ない目に会うこともある。だけど飛行機人間でないと新しい文化の創造はできないという趣旨だったと思う。
  • そしてグライダー人間はやがてコンピュータに仕事を奪われると外山さんは言っている。この本が30年前に書かれたことを思うと達見である。
  • 今日に一つ目のキーワードとして「飛行機人間」という言葉を覚えておいて欲しい。
  • さて中教審の提案に話を戻すと「知識・技能」は一般にハードスキルと呼ばれるもので、書物等を通じて学ぶことができる。そしてその習得具合もペーパーテストを通じて測定することができる。つまり可視化されたスキルなのだ。
  • 一方「思考力・判断力・表現力」「人間性」さらに対人能力などはソフトスキルと呼ばれるもので、書物等を通じて簡単に学ぶことができない。そしてその判定も難しい。世界中の企業は今採用時にこのソフトスキルを持つ人間を採用しようとして必死になっているが、これが中々難しい。なぜなら限られた面接時間の中で応募者のソフトスキルのレベルを正しく判定することが困難だからだ。業種によってソフトスキルの重要性は異なるが、今ではすべての企業においてソフトスキルへの需要が高まっていることは間違いない。
  • 二つ目のキーワードとして「ソフトスキル」という言葉を覚えておいてほしい。
  • 会社員として重要なソフトスキルには「コミュニケーション能力」「イニシアティブをとる能力」「問題解決能力」など色々なスキルがあると言われている。この短いスピーチの中で逐一説明することはできないので、私が皆さんにとって今重要ではないか?と考えている「クリティカル・シンキング」についてだけ少し説明をしたい。
  • クリティカル・シンキングを直訳すると「批判的思考」となるが、批判的思考というと本質を見誤る可能性が高いのでクリティカル・シンキングという言葉を使う。クリティカル・シンキングについては解説する人により色々説明があるが、ここでは「客観的情報に基づく論理的な思考方法」とざっくりとらえておこう。もっとシンプルにいうと「なぜWhyを考える思考方法」であると私は考えている。
  • 経済が高度成長とその余力で伸びていた時代は、ビジネスパーソンは実はあまり「なぜWhyを考える」ことは求められなかった。むしろ他の会社がやっていることを少しでもうまくやろう的は「いかにHow」が求められてきた。
  • このことを冒頭の飛行機人間とグライダー人間で考えるとWhyを考えるのは飛行機人間でHowを考えるのはグライダー人間であるということになる。
  • 今日の最後のキーワードは「クリティカル・シンキング」である。つまり知識やノウハウを学ぶだけなく、なぜそれはそうなっているのか?ということを鵜呑みすることなく客観的に考える癖をつけようということである。これによって社会と会社に新しい価値を付加することができると私は考えている。
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