先週末歩いた飯森山から野辺山周辺は穏やかな地形ながら、日本の分水嶺の一部に位置する。つまりこれより北の水は日本海に流れ、南の水は太平洋に流れている。この分水嶺の一部を歩きながら次のようなことを考えていた。
山好きの人の中には目標を定めて登っている人が多い。一番有名なのは深田久弥の「日本百名山」だろう。百名山を踏破した人は二百名山に登り、二百名山を踏破した人は三百名山を目指す。目標達成や数字に追われるのは、サラリーマンの時だけで十分だと思うが、ピークハントに熱心な人には励みになっているようだ。
そのような山歩きの目標設定の一つに「日本の分水嶺を歩く」というプロジェクトがあっても良さそうだが、余り見かけない。思うに北アルプスや南アルプスの高峰は総て分水嶺から外れているからだろう。
だが関東北部から長野県東部にかけての分水嶺には百名山に入る名峰が沢山並んでいる。
北の方から見ていくと燧ケ岳(百=百名山)から至仏山(百)を通る分水嶺は北上して平ケ岳(百)から利根川源流の大水上山に至り、そこから南西に向きを変え、巻機山(百)、谷川岳(百)を越え三国峠に至る。三国峠から野反湖を通り白根山(百)、四阿山(百)と南下し、浅間山(百)に至り、軍艦のような形で有名な荒船山を経て、秩父山塊につながる。
甲武信岳(百)からは分水嶺は西に向かい、金峰山(百)を経て飯森山から野辺山を越えて八ヶ岳の主峰・赤岳(百)と続く。
登山的な観点から分水嶺を歩くとすると、この辺りが一番面白いところだろう。私も赤岳、金峰山、甲武信岳等分水嶺上の名峰を既に何回も登っているが、「分水嶺を縦走する」という意識を持って歩いたことはほとんどなかった。
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暇な時間が増えるとこの分水嶺を縦走してみようかな?と考え始めているところだ。
ただし幾つか問題がある。一つは分水嶺上に登山道がないところがある。例えば大水上山から巻機山の間などだ。ここは残雪期に雪の上を行かねばなるまい。次に営業小屋がない尾根筋もあり、重い荷物を担いでの縦走となることだ。つまり年を取って時間に余裕がでる頃には体力が減っているという問題だ。
だが総ての分水嶺が厳しいところにある訳ではない。写真のように野辺山高原では車道が分水嶺を横断している。因みに分水嶺上の最高峰は標高3,026mの乗鞍岳だ。ここもバスで比較的簡単に登ることができる。分水嶺歩きは意外に長い楽しみ方ができるかもしれない・・・などと考え始めている。